魔法科高校の劣等生 -another family-   作:まな板の上の処刑人

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前回から二ヶ月以上間が開いてしまいました。
ほんっっとうに遅れて申し訳ありませんでした。
二ヶ月以上の中でチマチマかいてて前に書いたのとなかなか繋がらなくて苦戦しました。
次回はこれよりは早くあげたいと思います。
それでは第3話、どうぞ。


入学編3

どうも、那音です。

昨晩の夕食中に「アノ魔法」を使ったことを兄が話してしまい、穂波さんに自分の体を大事にするようにと心配され、母からは精神攻撃多めなお小言を言われた。

そして今朝、駅から降りたらエリカとレオ、美月さん達が居て、計六人で登校している最中です。さらに、後ろから自分と兄の名前を周囲の人達に聞こえるほどの大きな声で呼ばれているけど、あくまで気づいていない振りをしていた。というより気付きたくなかった。

 

「お前ホントに昨日何話してたんだ?」

「ホントに昨日話したとおりです、兄さん。」

「達也く~ん、那音く~ん。」

 

そう、わが一校の生徒会長であり、十師族の一員でもあるということでアイドル的存在でもある七草会長がこちらに向かっているのだ。周りの人達は何があったと言わんばかりに僕達の集団を凝視し、同じようにエリカ達が僕達を凝視するという注目の的が分かるように状況になっていた。

とりあえず会長には受け答えよう、そうしなきゃ会長が不憫になってしまう。

 

「おはようございます、会長。」

「おはよう那音くん、達也くんもおはよう。」

「おはようございます、会長はいつもお一人なんですか?」

「うん、特に朝は待ち合わせはしてないの。」

 

すげぇ、馴れ馴れしく兄さんと話してる。もしかして自分がいない所で仲良くなっていたのかな。

とか思ってたら不穏な雰囲気を感じた。その発生源を見てみれば頬を膨らませてる姉さんが居た。

 

「あの、会長、なにやら兄と弟に話がある用ですが・・・・」

「あ、そうだったわ。深雪さんもですけど、今日のお昼一緒に食べないかしら?」

「お昼・・・・ですか・・・・」

 

一度区切ってこちらに顔を向け目で確認してきた。僕はOKの返事を返す。チラッと兄さんの方を向くと何やら考え込んでいた。

 

「会長、その場所に副会長はいらっしゃるのでしょうか?」

「?ハンゾー君は部活の人達と食べてるから来ないわよ?」

 

ん?なんで服部先輩の所在を聞いてるの?

 

「分かりました、では急いで昼食をとってからそちらに伺うので。」

「あ、三人ともお昼は学食でとってる?」

「はい、そうですが・・・・」

「だったら最初から生徒会室に来てもらえるかしら?そこに自販機があるから生徒会室で食べられるわよ。」

「・・・・ダイニングサーバーが設置してあるとは驚きました。」

 

一瞬言葉が失いそうになった。大抵その使用場所は無人食堂や長距離列車の食堂車両に置かれているけど、まさか高校の生徒会室に置いてあるとは・・・・

 

「ではすぐに向かうことでよろしいですか?」

「ええ、お願いします。それでは。」

 

と、こちらに手を振りながら先へ行ってしまった。

あ、エリカ達はどうしたんだろうと思って振り向いたら驚いた顔をしていて微動だにしていなかった。

 

「おーい、エリカー?」

「・・・・アンタ達よくスラスラと話せるね。」

「ああ。俺だったら会話が続かないぜ。」

「私もです。」

 

エリカの言葉にレオと美月さんはウンウンと頷いてた。

うーん、なんでだろうね。向こうの話し方が砕けてたからかな。

 

「まぁ、慣れれば大丈夫だと思うけど。」

 

きっと皆も経験を重ねれば慣れるよ、うん。

 

 

 

 

 

 

お昼になり、兄さんと合流して生徒会室に向かう。近づいていくにつれて人混みが少なくなっていくのがよく分かる。

辿り着くと僕、姉さんが横に並び、後ろに兄さんという並び順に変えて、姉さんがドアをノックした。

・・・・よく見たら結構なセキュリティ対策されてるな。厳重とかそんな領域超してるな。ここにそんな重要なもの置いてあるのかな?

 

「はーい、どうぞ。」

「失礼します、1-Aの司波深雪です。」

「同じく司波那音です。」

「1-Eの司波達也です。」

 

許可が出て順番に入っていく。中には会長の他に昨日会った渡辺先輩と、知らない女性の先輩が二人居た。てか全員何故か呆けてる。あれ、何かまずかった?

 

「えっと・・・・とりあえず座って食べましょうか。」

 

真由美さんが早く我に返ってきて少しぎこちなさそうに案内してくれた。ダイニングサーバーは複数の料理が頼めるようになっていて、三人とも精進料理を頼んだ。料理が完成するまでに時間があるということでもう一度自己紹介をしてくれることになった。

 

「私の隣が会計の市原鈴音、通称リンちゃん。」

「そう呼ぶのは会長だけです。」

 

市原先輩はあだ名からは違ってとても美人な印象を覚えた。

 

「それから書記の中条あずさ、通称あーちゃん。」

「会長・・・下級生の前で『あーちゃん』は止めて下さい。私にも立場というものがあるんです。」

「それと、今はいないけど副会長のはんぞーくんも加わったメンバーが今期の生徒会役員です。」

 

中条先輩はあだ名に恥じないような姿だった。小柄で童顔というのがさらにフィットして納得してしまった。すみません先輩。服部先輩は見た目よりやわらかい印象になった。ともかく先輩達をあだ名で呼ぶことは一度もないだろう。ていうかサラッと流さないで下さい。中条先輩涙目になってますよ。

と、殆ど説明し終わった時に昼食が作り終えたらしく、サーバーの扉が開いた。僕と中条先輩が立って皆に配り終えて昼食が始まった。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

兄さんが洒落にならない冗談を言い、それを勘違いして顔を赤くした人が二人いたこと以外は何も起きず昼食を終えろと会長が話を切り出してきた。

 

「深雪さん、私は貴女が生徒会に入ってくれることを希望します。」

なるほど、呼んだわけはこれだったんだ。姉さんは少し考え込んで僕を挟んで兄さんを見た。兄さんからの目での返答は『お前に任せる』。姉さんはそれに頷いて承諾――

 

「会長は、兄の成績をご存じでしょうか?」

「「――!?」」

 

――しなかった。何言ってんだ姉さん。兄さん音立てて驚いてるぞ。

 

「ええ、知っていますよ。あの点数を見たとき、本気で自信を無くしました。」

「もし有能な人材を迎えるのならば、私より兄、または弟のほうがふさわしいと思います。」

 

しかも僕までつけてきた。なにをとち狂ったんだホントに。

 

「み、みゆk」

「デスクワークならば、実技よりも知識や判断力が必要になります。もし可能であれば兄、または弟も一緒に入れるでしょうか?」

 

兄さんの言葉をぶった切って言い終わった瞬間、静寂が訪れた。ちょっと待って、どうして姉さんは僕や兄さんを一緒にしようとするんだ?兄さんを連れて行くのはわかる。だが何故僕まで連れて行かれるんだ、何度考えても昔家で愛でられた記憶が公衆の場で再現されるルートに入りかねない。それだけは勘弁して貰いたい。けど、この沈黙をどうやって破ろう・・・・

そう思ってたら市原先輩が答えた。

 

「弟くんはおいといて、お兄さんを入れることは出来ません。生徒会は規則として一科生から選出されます。これを覆すためには生徒総会で全生徒の三分の二の票が必要になりますが、今現在一科生と二科生に溝が出来ており、生徒数もほぼ同数なので覆すのは事実上不可能です。」

「で、では弟は」

「その事なんだが、」

 

と、突然渡辺先輩が手を挙げて話に入ってきた。

 

「那音くんは教職員推薦枠として森崎と風紀委員に立候補されているんだ。明日二人に模擬戦をしてもらい、その勝者が風紀委員となるのだが、万が一のために生徒会に入ることはないらしい。」

 

この話を聞いて姉さんの顔がベタで塗られたように真っ黒になった。そこまでだったのか、これは助かったとみていいのか・・・・。

それでもなんとか表情を取り繕って承諾した。

 

「・・・・わかり、ました。これから生徒会の一員として精進させて頂きます。」

「うん、ありがとう深雪さん。もし差し支えなければ今日の放課後か来てもらってよろしいかしら?」

「はい、その時はこちらにお伺いしてよろしいですか?」

「ええ、お待ちしていますね、深雪さん。」

 

ポンポンと話が進んでいき、再び渡辺先輩が話を挙げてきた。

 

「真由美、前話していた生徒会推薦枠の埋め合わせなんだが。」

「もう摩利、それは人選中から余り急かさないで。」

 

会長が不満げに言っても渡辺先輩はそのまま進めた。

 

「確か一科生制度は副会長、会計、書記にだけ適応されるよな。」

「ええ、そうよ。」

「なら、風紀委員を選ぶときに二科の生徒を選んでも問題は無いよな?」

「・・・・摩利、貴女・・・・」

 

なんとなく先輩の考えていることが分かってしまった。会長も気付いたらしく、体をプルプル震えさせている。

 

「――ナイスよ!」

「はぁ?」

 

兄さんのすっとぼけた声頂きました。

 

「生徒会は達也くんを風紀委員に推薦します。」

「ちょ、ちょっと待って下さい!俺の意思はどうするんですか!そもそも風紀委員とはどんな活動をするのかも聞いてません!」

「兄さん、それ僕もなんだけど。」

 

兄さんはハッとしてこちらを向き、少しの間をおいて平静を装って座った。ちょいとここは先輩達に協力してみよう。

 

「兄さん、もう平穏な日々を過ごすことは諦めた方が良いよ?しかも風紀委員になった方が姉さんをより守れるよ?」

 

周りに聞こえない程度で言うと頭を抱え始めた。多分考えているのだろう、その間は皆なにが起きたと言わんばかりに凝視していた。二分ほど経って、ようやく顔を上げた。

 

「委員長、微塵ながらも尽力させて頂きます。」

「ああ、これからよろしく頼むよ。深雪さんと同じように放課後来てくれ。」

「はい、分かりました。」

 

よし、交渉成立。これには姉さんと会長、委員長もご満悦。上手く言って良かった。

話し合いも全て片付いたので一度お開きとなった。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

放課後になって、特に用事も無かったので帰ろうとしたところ、姉さんが生徒会に行くことを思いだしたのでついて行くことにした。昼と同じように行き、生徒会室に入ると昼とは違い服部先輩もいた。向こうもこちらに気付いて近づいてきた。

 

「司波深雪さん、ようこそ生徒会室へ。」

 

・・・・僕はともかく兄さんを無視するってどういうことだ?委員長から話聞いてなかったのかな?だとしてもその位置からなら三人認識できるはずなんだけど・・・・

 

「よ、来たな。」

「いらっしゃい深雪さん、達也くん。あ、那音くんも来たんだ。」

「はい。突然の訪問すみません。」

「別に気にすることはないさ。あ、達也くんは私と一緒に風紀委員会の本部に来てくれ。那音くんもくるかい?」

「分かりました。」

「僕は・・・・」

 

まだ決まったわけじゃないし・・・・どうしよ?

 

「待って下さい、渡辺先輩。」

 

考えていると、服部先輩が委員長を止めた。

 

「どうした、服部刑部少丞範蔵副会長?」

「フルネームで呼ばないで下さい!」

「じゃあ服部範蔵副会長。」

「服部刑部です!」

「それはお前の家の官職だろ。」

「学校では『服部刑部』で受理されています!」

 

・・・・こんなポンポンとネタが出てくるって凄いな。

副会長は荒くなった息を整えて考えていることを口に出した。

 

「私はその二人を風紀委員にするのに反対です。」

「それは無茶な話だな。達也くんはすでに本人が受諾していてもう決定事項だし、那音くんは教職員推薦だからそれは教員に言ってくれ。」

「ですが、その二人は昨日の騒動の渦中にいました。」

「それならば深雪さんも一緒だ。それは贔屓に成りかねないぞ。」

 

そんなに入れたくないってどういう考えしてるんだ。入学式でのイメージが全て消えちゃったよ。

 

「過去に二科生(ウィード)を風紀委員になった例はありません。風紀委員は実力で治めるのに乏しい二科生を選ぶのは生徒会の名が廃れます。そこの一科生も一科生としての自覚が足りてません。」

「ほぅ・・なら一科生を抑えられる実力があればいいのだな?」

「ええ、それなら納得しかねませんが。」

 

聞いてて思った、服部先輩は昨日の森崎みたいなタイプだ。自分が他の人より優れているだけで劣っている人達を貶すという僕からしたら超絶胸くそ悪い性格だ。こんな先輩が生徒会にいるから差別が消えないのか。

その間、委員長は考え込んでいたが突如名案が思いついた顔を出した。

 

「なら、実際に闘ってみてはどうだ?それなら実力がすぐ分かるはずだ。」

「はぁ!?」

 

おお、それなら簡単だね。一発で倒せばすぐ認められるかもだし。

 

「ちょ、なんでそんなことを!」

 

なんで服部先輩は納得しないんだ。そんなに二科生を毛嫌ってるのか?すると、兄さんが服部先輩の前に出た。

 

「服部先輩、もしかして実力が乏しい二科生に負けるのが怖いのですか?」

「ッ!!」

 

なるほど、挑発か。これ絶対兄さん悪い顔してるよ。完全に悪者になってるよ。先輩メッチャ震えてるし。

 

「・・・・いいだろう。受けて立とう。」

「だそうだ。真由美。」

「わかったわ。生徒会長の権限により、二年B組・服部刑部と一年E組・司波達也の模擬戦を正式な試合と認めます。」

「これより三十分後、場所は第三演習室、試合は非公開、双方CADの使用を許可する。」

 

こうして兄さんの風紀委員認定試験(?)が決定した。

 

 

 

 

 

 

「兄さん、ごめん。」

「どうした急に。」

 

あのあと事務室に預けていたCADを取って演習室に向かっている途中で兄さんに謝った。

 

「いや、僕が昼誘わなかったらこんなことに成らなかったからさ。」

「大丈夫よ那音。お兄様なら負けるはずないわよ。だから心配しないで。」

「那音、心配してくれてありがとうな。その気持ちだけでも十分だ。」

 

いままで謝ってきたけどホントに怒られたことがないなぁ。もしかして謝ることが些細過ぎるとか・・・・?

 

「ともかく、那音を貶した罪は重いぞ。」

「そうですね、全力でお相手して下さいね。」

 

なんか私怨が混ざってる気がする。兄さんは殺し屋の顔だし姉さんはアルカイックスマイル浮かべていて、二人ともどす黒いオーラが出てるよ。めっさ怖い。

 

第三演習室に入ると関係者は全員集まっていて、服部先輩はCADを設定していた。

 

「那音、二番ストレージを頼む。」

「はいよ。」

 

言われたストレージをトランクの中から取り出して兄さんに渡す。何か視線を感じると思ったら委員長がまじまじと見ていた。

 

「達也くんは複数のストレージを扱ってるのか?」

「ええ、それぞれ相手にあわせた中身になっているんです。」

「やはり君は面白いな。相手はこの学校の五本の指に入るが、大丈夫か?」

「正直言って、勝ち以外無いと思います。」

 

兄さんが強気になってるって事は結構本気で行くつもりだな。なかなか見られない姿勢に姉さんと一緒に笑ってしまった。服部先輩可哀想だなぁ。

 

「では時間だ、双方前へ。」

 

摩利先輩の声で二人が対峙し一定の緊張感が訪れる。傍観側のこっちは固唾を呑んでいる人がいるけどが僕としては気楽に見れる。

 

「ルールを説明する。直接攻撃・関節攻撃は許可するが相手を死に至らしめる、または回復不可の術式は禁止とする。相手の肉体を破壊するのも同様とする。ただし、捻挫以上の負傷を与えないように。武器の使用は禁止だ。蹴り技を使うのであれば学校指定のシューズに履き替えること。以上のことを守らなければ即刻敗北とみなし、私が力尽くで止めに入る。何か質問はあるか?」

 

二人とも首を横に振る。表情は挑発と憤怒が表れている。前者は兄さん、後者は服部先輩だ。

また静寂が訪れ、渡辺先輩が右手を徐々に上げていく。

 

「それでは・・・・始め!」

 

開始の合図とともに先に動いたのは服部先輩。浮かび上がった魔法式は移動魔法。方向的に壁にぶつけるつもりだろう。それに対して兄さんは微動だにもしない。魔法式が完成し、兄さんに手をかざした。それでもまだ動かない。一体何をするつもりだ?そんな疑問を抱きながら兄さんを見てた。

 

その一瞬、兄さんの姿が消えた。

 

それと同時に服部先輩の呻き声が聞こえ、そっちを向いたら肘を食らわせたポーズをとってる兄さんと、壁に背を預けて腹を押さえて苦悶の表情を浮かべている服部先輩がいた。

 

「・・・・しょ、勝者、司波達也。」

 

戦いの結果に唖然としている周囲の中で摩利先輩が最初に戻り、勝ち名乗りを上げた。こちらに戻ってくる兄さんの顔はスッキリしている。

 

「えっと・・・・やり過ぎじゃない?」

「腹に一発だ、先輩も鍛えてあるはずだ。」

「いや、だからって・・・・」

 

振り返って見れば、未だに服部先輩は体勢が変わらず会長と中条先輩に心配されている。なかなか深く入っているな、あれは。

 

「仕方ないな・・・・」

 

そういって兄さんは服部先輩の前に進んだ。

 

「服部先輩。」

「・・・・なんだ、司波。」

「先程は生意気な発言をしてしまい、申し訳ありませんでした。」

 

深々と頭を下げて謝罪をする。服部先輩はその行動を見て『は?』となっている。

 

「自分はともかく自分の弟が侮辱されることが許せなくてつい・・・・」

 

いや、あなた『つい』で出すような力じゃなかったぞ。

 

「・・・・いや、いい。こっちも悪かった。すまない。」

 

それでいいのか先輩。

 

「それと先輩、突然ですが今まで二科生を見下していましたか?」

「・・・・ああ、見下していたさ。魔法力が一科生より劣っていると見ていたからな。」

「なるほど、ですがそれだけで優劣が決まるとは限りませんよね。」

「そうだな、お前がいい例だ。加速魔法を用いずにあれ程の速度をつけられる奴は初めて見た。」

「言っては何ですが、一科生は器用貧乏、二科生は一部に特化した者が多く存在します。さらに二科生の能力によっては社会に必要とされる必要もあります。なので決して二科生は全てにおいて劣っているとは限りません。」

「そうか・・・・ありがとう司波兄。おかげで何か覚めた気分になった。」

「そうですか、なら良かったです。」

 

服部先輩が感謝の言葉を言うと、すでに回復していたらしく立ち上がって会長達に礼をしてから演習室を退出した。これで見下すことはなくなったかな。

 

「ともかく、達也くん風紀委員入りおめでとう。」

「ありがとうございます。」

 

ともあれ、兄さんが風紀委員に入れて良かった。姉さんもいい笑顔してる。と、ここで会長がある提案をしてきた。

 

「ねぇ達也くん、出来れば魔法を使うところ見せてもらえるかな?欲を言っちゃえば『術式解体』を見たいなー・・・なんて。」

「そうだな、本来模擬戦は魔法を用いて勝敗を決めるものだし、ここは見せてもらおうかな。」

 

あぁ、確かに取り締まるのに魔法でやり合っているところに素手で押さえるとか馬鹿げてるし、一度見せなきゃ話にならないな。

 

「・・・わかりました。では弟との対人戦でやらせてもらえませんか?」

「別にかまわないさ。風紀委員長として認めよう。」

「私も、生徒会長として1-Eの司波達也と1-Aの司波那音の模擬戦を認めるわ。」

 

あれ、なんか勝手に物事が進んでるんだけど。

 

「え、ほんとに戦うの?」

「いや、耐久のやつでやるぞ。『術式解体』を見せるならこれがいい。」

「まじか・・・まあいいよ、やろう。」

 

言われたからにはちゃんと相手をしよう、めっちゃ疲れるけど。兄さんとある程度距離をとって少し気を落ち着かせる。戦える昂ぶりじゃなくて皆の前にいるという緊張を無くすために行ってるけど、最後にやったのいつだっけな。

ちょっと考えてたら渡辺先輩がこの試合を審判するという声で現実に戻った。

 

「ルールは先程と同じだ。二人ともわかっているな。」

「はい、大丈夫です。」

「それと委員長、制限時間を設けさせてもいいですか?」

「それは何故だ?」

「那音の体力が持たないからです。30秒でお願いします。」

「いや、そこまで続くならいいんだが・・・」

 

そう言いながら手持ちの端末で30秒でアラームが鳴るようにセットする。

 

「では始めるぞ。」

 

その言葉で左腕にあるCADに手を掛ける。向こうは既に両手にシルバーホーンを構えている。できるだけ精霊の目(エレメンタル・サイト)を使わせないことにしよう。

 

「それでは、始め!」

 

 

 

 

 

 

真由美たちは騒然としていた、後輩たちの戦いに。

開始して早々、那音が自分の周囲に無数の魔法式が浮かび上がって『空気弾(エア・ブリット)』が襲いかかるのに対して達也は両手のシルバーホーンで『術式解体』を用いて次々と消していく。

それを見てなのか、那音はさらに空気弾の魔法式を増やしていく。魔法式同士の間隔は限界まで狭まり、遂には高さ6mある天井も魔法式によって埋め尽くされてしまった。

最早浮かび上がっている魔法式の数を見ても受けるダメージの総量を考えると死に至ってしまうと錯覚するだろう。傍観している生徒会役員たちと摩利はそのことを考えてしまい今すぐに止めなければと言葉や行動で中止させようとするが、口や体がうまく動かせなくなってしまった。あずさはともかく、他はそれぞれ肝が据わっており、どんな感情を抱かれても少しも動じなかったが、今回だけは違った。相手を殺さんとする殺気。それも怒りで沸き立つ殺気とは別格の濃密な殺気。自分たちに向けられていないことを理解しても気持ちが殺気に飲み込まれて体が正常に動かないでいた。

唯一深雪だけは、この光景を日常としてとらえて見ていた。

誰か早くこの模擬戦を止めてくれ!摩利は心から思っていると、自分の端末が震えていることに気づいた。30秒後のアラーム。アラームを止めると大きな声で模擬戦の終了を告げた。

 

「双方そこまで!」

 

その言葉で今まで無限につくられた魔法式は消え去り、二人はその場に力が抜けたかのように座り込んだ。

 

 

 

 

 

 

「あー・・・また引き分けだ・・・」

 

いつも家の地下でやるけどこれは30秒でよかった。家だと格闘も混じって10分やるけど、1分も満たない時間で空気弾を大量に使うと体が動きにくい。てか仰向けから動けないんだけど。

 

「那音くん大丈夫!?」

「那音くん!!」

 

うぉ、急に会長と中条先輩の顔が視界に入ってきた。

 

「な、なんとか。けど体が動かない気がします。」

「え!?ホントに!?」

「会長、運びましょう!!」

「落ち着いてください中条さん、真由美さん。」

 

あ、市原先輩いいところに。

 

「大丈夫ですか?必要であれば保健室に運びますが。」

「ええ、もう少しこのままにしていただければ。」

「だそうですよ、お二人。」

 

それを聞いて中条先輩と会長はほっとしたようで深く息をついた。そんなに心配されてるのかな?と思ったら中条先輩は兄さんの持ってるシルバーホーンに興味を持ったらしく猛スピードで近づいていった。

 

「あ、那音くん。ちょっと聞きたいんだけど。」

「はい、なんでしょうか?」

「那音くんって『魔弾の射手』使えるの?」

「えーと、まぁ使えます。」

「へぇー・・・」

 

『魔弾の射手』

本来の魔弾の射手はドライアイスの弾丸を形成し撃ち出す銃座を、遠隔ポイントに作り出す魔法だけれど、自分の場合はドライアイスが空気弾(エア・ブリット)に変わっただけだけど使用者は会長以外見受けられない。

てか会長の目が怖い。

 

「あの・・・会長?」

「んー?どうしたのー?」

 

ダメだ、この笑顔で聞くのは愚策だ。何をされるかわからない。

 

「まあ深くは聞かないわ。でも、おんなじ魔法が使える人がいて嬉しいわ。」

「そ、そうですか。」

 

笑顔になって皆がいる兄さんの所に行ったけど、まあ警戒するのはよくないか。多分どっかにばれても問題はないと思うけど。

ようやく体が動かせるようになり、兄さんの所に向かった。

 

「お、ようやく動けたか。」

「うん。そっちは大丈夫だった?」

「少しばかり倦怠感があるが大丈夫だ。」

 

お、今回は結構やれた方かな?いつもは息を荒くしてるくらいだけど。

 

「すまない、那音くん。明日模擬戦があるのにヘトヘトにならせてしまって。」

「いえ、自分でやったことですから気にしないでください。」

 

実際、僕と兄さんの中で決めたことだから渡辺先輩は気にする所なんてないのに。

 

「それじゃあ、今日はここまでにしましょ。達也くん達は疲れてるから帰っても大丈夫よ。」

「ありがとうございます。それでは先に失礼します。」

「「失礼します」」

「ゆっくり休んでくれ。あと、那音くんは明日頑張れ。」

「はい、ありがとうございます。」

 

先輩達に一礼して退出した瞬間、訳がわからない疲れがドッと来たんだけど。

 

「ヤバい・・・駅までが遠い・・・」

「『再生』やるか?」

「いや、いい。気力で帰る。」

「頑張って、那音。」

 

この後、駅に着いてからキャビネットに乗ったら死んだように寝ていたらしく駅から家までは少し疲れがとれた。けれども家に着いたらすぐさま寝よう。とにかく明日は森崎くんを吹っ飛ばす。

 

 

 

 

 

 

昨日の疲れがとれて、気持ちよく起きた朝の教室は注目を受けた。

 

「おはよう那音、朝から人気者だね。」

「おはよう雫、なんでこうなってるの?」

「今日那音さんと森崎くんが模擬戦するって聞いて皆盛り上がってるんですよ。」

「あ、そういうことか。」

 

渡辺先輩が多分教師に言って広報とかで生徒達に伝えたんだろう。じゃなきゃこんな盛り上がる話題にならないし。

森崎くんの方を見たらこの前の取り巻き達に煽てられていて何やらいい気になってる。今現在姉が激オコだというのに。

 

「那音、頑張ってね。」

「応援してます!」

「那音、完膚なきまでに叩きのめしなさい。」

 

応援してくれるのは嬉しいよ。だが姉さん、兄さんにいった言葉をそこまで根に持つか。怖いって。

 

――――――――――――――

 

放課後になり、CADを受け取って演習棟に向かうにつれてざわめきが大きくなっていくがよくわかる。

森崎家はボディーガードを家業としている。今頃の歳でも訓練を受けているはずだ。対人戦は得意の相手に魔法界では無名の人が挑むことは皆興味を引くのだろうか。

 

「まあ、そんなのはいいか。」

 

自分は今まで積み上げた努力を思いっきり出せば・・・待って、朝の姉さんの言葉の本心がわからなくなってきた。相手を徹底的につぶすのか、圧倒的な魔力で潰すのか。やばいどっちだこれ。

考えているうちに演習棟についてしまい、結局答えが見つけられなかった。掲示板でどこの演習室か見てそこに向かう途中、1-Eの見知っている人たちがいた。

 

「お、来たな。那音!負けんなよ!」

「ありがとう、レオ。」

「アタシは、那音くんがあんな奴に負けるとは思ってもないからね。」

「あはは、エリカの期待に応えられるようにするよ。」

「え、えっと・・・が、頑張ってください!!!」

「ふふ、ありがとう美月さん。」

 

三人はそれぞれの気持ちを放った後、二階の観覧席に繋がる階段に向かった。

残ったのは兄さんだけ。

 

「那音。」

「なに?」

「お前のやりたいようにやれ。」

 

それだけいうと行ってしまった。軽く言ったな。

 

「まあ、やり方は決まったよ。」

 

目的の演習室に入ると既に向こうは居て、審判に委員長と会長、そして体が別格な人がいた。おそらく三巨頭の最後の一人、十文字克人さんだろう。

三人に礼をして森崎くんと対峙する位置で止まり、相手を見据えた。こちらを視界に入れた途端、目つきをキツくして睨んできた。恥かかされた相手を見れば怒るのも当然か。

 

「二人とも用意はいいな?ルールを説明する。直接攻撃・関節攻撃は許可するが相手を死に至らしめる、または回復不可の術式は禁止とする。相手の肉体を破壊するのも同様とする。ただし、捻挫以上の負傷を与えないように。武器の使用は禁止だ。蹴り技を使うのであれば学校指定のシューズに履き替えること。以上のことを守らなければ即刻敗北とみなし、私ら三人が力尽くで止めに入る。何か質問はあるか?」

 

昨日も聞いた説明に首を横に振り、向こうも無いことを伝えた。それと同時にこの模擬戦を見に来ている観客も静かになった。

 

「それでは・・・始め!」

 

開始の合図が聞こえると同時に、向こうが特化型CADをこちらに標準を向ける。森崎家に伝わる『クイック・ドロウ』の対処は考えている。あの魔法は相手より先に魔法を使うことが第一であり、威力は二の次である。その座標をセットし使うまでのスピードも覚えており、それが起動する直前で違う場所に移動していれば発動はしない。今のように相手の真後ろに移動していれば。

 

「なっ、どこへ行った!」

 

こちらに気づいていないうちにこちらからもやるか。

自前のシルバーホーンで空気弾(エア・ブリット)(威力最小)でこちらに向かせる。

 

「!このっ」

「そこから魔法発動させたら上の魔法式全部が発動するよ。あ、全部だよ。さっきより痛いと思うけど。」

 

こちらに構えたところで忠告をすると上を見て固まった。最弱の空気弾(エア・ブリット)を当てた流れで威力を変えて魔弾の射手で相手の半径3mの至る所に魔法を展開して動きを止めて降参させる算段だったけど、忠告無視して攻撃してたら計画が消えるところだった。

 

「ッ・・・・・!」

 

浮かんでる魔法式の数を見て怯えているようで、さっきから微動だにしない。最後はこの言葉で終わらせよう。

 

「できれば降参してもらえると嬉しいんだけど・・・拒否するなら」

「わ、わかった!降参する!」

 

最後まで言わせてもらえなかった。ちくしょう。渡辺先輩を見ると向こうは頷いた。

 

「勝者、司波那音!」

 

僅かに遅れて観客からも歓声が湧き出て、耳を塞ぐほどまで聞こえた。そちらに目を向けるといつものメンバーがいて、思わずガッツポーズをやってしまった。まあ、期待に応えられたからよかったかな?

とにかく、風紀委員になることはできたよ。

 

あ、森崎くんはあの後少しの間動けなかったらしいってさ。




話数が少ない・・・
早くあげねば。
けど文章力がぁー・・・
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