極東の媛魔王《完結》   作:山中 一

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五十二話

 アレクサンドルの策は、東京湾に小島を作り上げ、そこにグィネヴィアを誘き寄せようというものである。ただの小島程度に神祖が興味を示すはずもないが、アレクサンドルが生み出した小島だけは話が違う。グィネヴィアが追い求める最後の王は、未だに日本に眠り続けている。『アーサー王伝説』におけるアヴァロン。王の眠る島ともなれば、グィネヴィアは死力を尽くして小島を目指すであろう。

「さて、奴も焦っているだろうからな」

 アレクサンドルは自分が作り上げた小島を上空から見下ろし、ポケットに鉛筆大の棒――――神具・天逆鉾を仕舞う。

 アヴァロンは罠だ。

 件の《鋼》がこの地に眠っているわけではない。しかし、グィネヴィアにはそれが分からない。愚かな女だとは思う。憐れだとも。彼女が最後の王に行き着く可能性は皆無に近い。東京湾近辺で、月沢キズナの前世を打ち倒した最後の王は、確かにこの地で眠りに就いたのであろう。状況証拠と、キズナ(本人)の発言、そして御老公という守護者たちの存在を考えれば、この地で眠りに就いた最後の王が、どこにもいないというのも不可解ではない。

 アレクサンドルは、最後に小言でミノスの聖句を唱え、アヴァロンに鍵をかける。

 神話に現れる魔物が巣食う迷宮を再現する。

 この一手によって、グィネヴィアは気軽にアヴァロンに侵入することができなくなった。

 どうしてもアヴァロンに侵入したいグィネヴィアは、さて、どうするのだろうか。

 ほくそ笑みながら、アレクサンドルは雷光となった。

 

 

 

 □

 

 

 

 アレクサンドルが小島を生み出したとき、爆発的な呪力が弾けとんだ。国産みの神具を全力で行使したのであるから、当然であろう。この呪力は、瞬く間に広がって、東京に目を向けていた数多の呪術師たちに対して、それと分かる狼煙として認識されることとなった。

 深夜ながら多くの呪術師がこの異常を察知した。

 そして、その動きは、奥多摩に陣を構えるキズナと龍巳も知るところとなった。

「アレクが動いた」

「ああ。予想通りではあったな」

 小島を作り、グィネヴィアを誘き寄せる。

 これは、キズナと龍巳の間ではすでに予想していたことではあった。国産みの神具の能力とグィネヴィアの拘りを考えれば、自ずと導き出せる結論であった。

「アレクが最後の王の骸を囮にしたからには、グィネヴィアも姿を現すでしょうね。行動半径は、東京湾近郊に限定されるか」

「俺が先行して、偵察しておこう。お前の能力なら、連絡を入れればすぐに向かってこれるだろ」

「お願いできる?」

「ああ」

 龍巳は頷いて、黒いトレンチコートを着る。少々の資金と身分証明書さえ用意しておけば問題ないだろう。

「ほんとに何かあったら連絡してね。後、深入りは絶対にしないこと。いい?」

「分かってる。自分の役目を果たすことに集中するよ」

 龍巳がどれだけ実力を持っていたとしても、神々とカンピオーネとさらに神祖が関わるいざこざに不用意に首を突っ込んでは命の保証はない。キズナの目となり耳となるのが龍巳の仕事だ。

「車は中居さんにお願いするわ」

「こんな時間に?」

「中居さんなら、大丈夫。あの人は、特別だから」

「そうか。なら、お願いするか」

 奥多摩から都心まで、車でいけばかなりの時間がかかるものだが、深夜で交通量が少ないこともある。正史編纂委員会が警察を利用して規制線を張っているかもしれないが、それも『月沢の使い』ならば顔パスで通れる。中居は月沢家の名代として正史編纂委員会に顔を出すこともあるので、一線を退いた今でも影響力を持っているのである。

 キズナが現地に赴けば、彼女の呪力を感じ取る者が現れるかもしれない。荘子の権能とはいえ完璧ではない。万里谷祐理のような霊視能力者もいるが、何よりもグィネヴィアの霊視能力がキズナを上回るものであるという点を考えれば、隠密行動を取るために、キズナが遠巻きに現状を眺めるしかないのはある程度致し方ないところではある。

 

 

 

 

 

 このようにして、龍巳は未明のうちに東京湾を見据える地に足を伸ばした。

 アレクサンドルが生み出した小島(アヴァロン)は、横須賀と富津岬の間におどろおどろしく浮かんでいた。

「凄まじい呪力ですね。あれが、黒王子の迷宮の権能ですか」

 小島の上には異様な雲が渦を巻き、薄らと霧がかかっている。曙の光に照らされたそれは、海上に浮かぶ異界への入口を思わせる。

「これからしばらく張り込むことになると思いますので、ここまでで結構です」

「今更わたしが言うことではないかと思いますけど、無理だけはなさらないようにしてくださいね。キズナさんが心配しますから」

「承知してますよ」

 龍巳は車を降りて、リュックサックを背負った。

 それから、二言三言中居と話をしてから、別れた。

 

 これから日がな一日この近辺をうろつきつつ、情勢を見極めるための情報収集を行うこととなる。これと見定めたのは三笠公園である。

 海に面した公園で、観光名所でもあるので観光客を装えば、うろついていても不審に思われない。

 そう考えて、朝日を保存されている戦艦を眺めつつ拝んだ龍巳は、

 ヘリが空を飛び、海上保安庁の巡視艇が小島に近付こうとしている。

「委員会も気付いたかな」

 このタイミングであの異様な奇岩島に近付くとなれば、正史編纂委員会の息がかかった者に違いない。

 異常を察知してから動き出すまで、数時間。あちらも混乱しているようだ。

「グィネヴィアが動き出すのに、どれくらいの時間がかかるかな」

 龍巳はグィネヴィアと直接の面識がないので、彼女がどのように行動するのか読みきれない。キズナやアレクサンドルは、グィネヴィアは非常に慎重な性格だと語っていたし、話を聞く限り龍巳自身も、早期にグィネヴィアが行動することはないだろうと踏んでいる。

 少なくとも、グィネヴィアは最初期には情報収集に努め、考えなしに小島を目指すことはしないだろう。

「やっぱり近づけないか……」

 龍巳は視力を強化して、ヘリと巡視艇の行方を見守っていた。すると、ヘリは暗雲に呑み込まれた後に錐揉みして墜落し、巡視艇は渦に巻き込まれてひっくり返り、あらぬ方向に流されていった。

 アレクサンドルの『大迷宮(ザ・ラビリンス)』は、任意に迷宮を生み出す権能である。

 敵を迷宮に引きずり込み、自身に優位な状況で戦うという高い地形効果を有するもので、今回のように相手の侵入を妨げる城塞としての利用も可能である。

 直に見るのは初めてだが、攻撃性は皆無ながら極めて戦略的な権能と言えるだろう。

 あの迷宮を突破するには、それこそ破壊力の高い権能で消し飛ばすか、迷宮を突破することに特化した権能を用いるかという程度の選択肢しかないのではないか。少なくとも、神祖程度の呪力で攻略するのは不可能であろう。無論、正史編纂委員会であってもそれは同じ。手出しできず、自ずと草薙護堂が顔を出すことになる。

 そこからが問題である。

 草薙護堂の動き如何によっては、キズナも表立って動かないといけないだろうし、グィネヴィアの行動決定にも大きく関わるのは確実だからである。

 事態の重要性は、先発した偵察部隊が失敗したことで正史編纂委員会も理解しただろう。草薙護堂の性格からすれば、おそらくは今日中には顔を出すはず。

 彼が姿を見せたら、距離を取って観察するとしよう。

 

 

 

 □

 

 

 

 一五〇〇年に亘って慕ってきた最後の王が眠る島を引き上げておきながら、迷宮の権能で鍵をかけたアレクサンドルに対して、グィネヴィアの憤りは大変なものであった。

 魔女の目を以てしても、小島の内部を覗き見ることはできない。ただ、その威容を遠巻きに眺めることしかできない。

「なんという卑劣なお方。……いいえ、あのお方の根性が捻じ曲がっているのはこの数年で嫌というほど、理解させられましたけれど!」

 ギリギリと奥歯を噛むグィネヴィアは、眉根を寄せて恨めしそうな顔をする。

 グィネヴィアの地力では、アレクサンドルの権能に太刀打ちはできない。試さずとも分かる。切り札たるランスロットを投入するという手もあるが、ランスロットは長期戦には向かない。おまけにランスロットは草薙護堂との戦いで消耗している。回復には、まだかなりの時間を必要とする。その状態で、カンピオーネ二人を相手に戦えるかといえば、否と答えるほかない。

 とにもかくにもランスロットの智恵なり力なりを借りなければならない。長年、共に最後の王を追い求めてきた間柄で気心の知れた相手である。かつて、グィネヴィアが白き女神であった頃からの旧知であるランスロットならば、何か妙案があるかもしれない。

「叔父様。お知恵を拝借したいのですが」

「ふむ。知恵と言われてもな。戦場しか知らぬ余の知恵が、そなたにどれほどの恩恵をもたらすか分からぬぞ」

 全身を銀色の甲冑に包んだ騎士は、虚空から現れ出でてグィネヴィアと向かい合った。

 ランスロット・デュ・ラック。

 湖の騎士とも呼ばれる騎士の神であり、魔女王グィネヴィアを守護する『まつろわぬ神』もどきである。

 ランスロットの軽口にグィネヴィアは微笑んで首を振る。

「これより戦場に向かおうというのですから、叔父様の知恵ほど頼りになるものはありません」

「ガスコインめの迷宮か」

「はい」

 ランスロットは人智を超越した視力で東京湾に浮かぶ小島を見る。

 アレクサンドルの迷宮の権能に封をされた小島からは、紛れもない最後の王の呪力を感じる。あの小島に、彼とグィネヴィアが捜し求めてきた最後の王の骸があるのは、確定的である。

「しかしな。あの男が用意した舞台だ。不用意に飛び込むのは、まさしく虎の口に飛び込むようなもの」

「故事に『虎穴に入らずんば虎児を得ず』とも申します。あのアヴァロンを前にして、虎の口程度の危険で足踏みしていて、どうして主に届きましょうか」

「なるほど。そこまでの覚悟があるのなら、方法がないわけではない。愛し子よ。聖杯に余力があればだが」

「やはり、『神威招来』を執り行うしかないと?」

「力技に訴えれば、確かにあの迷宮を破壊できよう。しかし、それでは消耗が激しすぎる。ミノスの権能にはミノスの権能をぶつけるのが理に適った方法ではないか」

「それは、そうですが……」

 グィネヴィアはランスロットの提案に渋い顔をする。

 『神威招来』は、聖杯に蓄えた膨大な呪力を基にして偽りの神を具現化する大呪法。偽りの神は、カンピオーネには遠く及ばない力しかないが、権能の性質は同質のものとなる。アレクサンドルのミノスの権能を打ち破るには、やはりミノスの権能に頼るのがいい。それは分かるが、同時にミノスを具現化しているときには、聖杯が使用できなくなるというリスクを伴う。聖杯が使えなければ、エクスカリバーも使えない。戦闘を、本調子ではないランスロットに任せることになってしまう。

「あの迷宮さえ破ってしまえば、その後は余が死力を尽くして戦えばよい」

「叔父様」

 グィネヴィアは憂いを含んだ表情でランスロットを見上げる。

 一五〇〇年。

 それほどの長きに亘って守護し続けてくれた彼に対しては、グィネヴィアは感謝してもしきれない。

 転生する前のことは覚えていない。それでも、変わらずに尽くしてくれている。それは、偏に最後の王に出会うため。

 その目的がついに遂げられようというときに、何を弱気なことを考えているのか。

「せめて後一手、草薙様を引き入れることができれば、万全だったのですが。仕方がありません。ここは、勝負に打って出ましょうか」

 グィネヴィアも覚悟を決める。

 自分を付けねらってくるまつろわぬアテナを殺害し、聖杯の糧とするために草薙護堂を一度利用している。そのため、警戒されて付け入る隙がなかった。

 しかし、過ぎてしまったことを悔いてもしかたがない。

 ランスロットに負担を強いることになるが、最後の王が復活すれば現存するカンピオーネはすべて滅びることとなる。それまでの辛抱だ。

 そう思って、口にした言葉だったが、ランスロットはグィネヴィアの言葉を聞いて思案げな顔をした。

「叔父様?」

「いや、なるほど。不可能ではないな」

「はい?」

「忘れたか? 余が本来狂奔を司る軍神であると。思いのままに力を振るい大地を駆けることこそ余の本懐。草薙護堂を呪縛する、よい手がある」

 グィネヴィアは再び渋い顔をする。

 ランスロットの提案もまたリスクが大きい。確かに、この軍神の呪縛であれば草薙護堂をこちらの陣営に引き入れることも不可能ではない。配下にするのではなく、彼自身の闘争心に火をつける形でアレクサンドルと敵対させることはできるのだ。

「しかし、そのためには草薙様に近付く必要がありますが?」

「そのための手段もある。何、問題ない。愛し子よ。手伝いを頼む」

 ランスロットは兜の奥で密やかに笑い、戦いの気配に心を弾ませる。その一方でグィネヴィアは不確定な勝負に出なければならない我が身を憂い、不安を抱えながらも、ランスロットの提案に乗るのであった。

 

 

 

 

 □

 

 

 

 

 小島の周囲は正史編纂委員会の情報規制などによって静けさに包まれており、報道関係者が現れることもない。グィネヴィアが姿を見せることもなければ、大きな呪力の動きがあるわけでもなく、奇岩島は、不気味な静けさを湛えて東京湾に浮かんでいる。

 龍巳が横須賀での監視を切り上げたのは翌日の正午のことであった。

 丸一日監視を行ったが、情勢が膠着状態に入ったと見えて、奇岩島を舞台とした動きはしばらく見られないと思われたからである。

 奇岩島は要するに台風の中心地にあたる。観測していれば、自ずと大きな結果を得ることができるだろう。しかし、そこに至るまでの過程は見られない。

 どの勢力も積極的に動かない以上は、それぞれの勢力が今、何をしているのかを探らなければならない。

 しかしながら、グィネヴィアもアレクサンドルもどこにいるのか皆目検討がつかない状況にある。とすれば、龍巳が見張るのは、当然ながら草薙護堂ということになる。

 彼がこの一件を静観する可能性は万に一つもない。

 赤の他人の問題にまで首を突っ込む男が、自分のテリトリーを荒らされて黙っているはずがないのである。

 むしろ、今、台風の目は草薙護堂にある。

 アレクサンドルもグィネヴィアも草薙護堂という確実に介入してくる第三勢力に気を配っているはずだからである。

 そこで、龍巳は急遽、横須賀から東京に移動した。

 草薙護堂の居所は、すぐに分かる。カンピオーネは存在そのものが呪力の塊なので、探るのは容易なのだ。

 彼の本拠地は文京区の根津。その近辺を探れば、自ずと姿を捉えることはできる。

 上野駅近辺を女友達と散策しているところであった。

 情報にある呪術師の面々ではない。どうやら、一般人のようである。

 感知されるおそれのある呪術は使わず、人込みに隠れて様子を窺う。このとき、すでに正史編纂委員会の誰かが護堂を関していることにも気付いていた。呪力が四方から彼に注がれている。複数のグループが遠巻きに護堂を監視しているのであろう。

 正史編纂委員会には顔が割れている龍巳は、どうしたものかと思いながらも護堂の監視を続行する。キズナはともかく、龍巳はそうと分かって注視しなければ見つからない。キズナ特性の護符などを用いて呪力を隠しているし、彼女と違って外見的にも特徴的なものはないので、委員会の目を潜り抜けるのは難しくない。

「しかし、こうして見ると普通の高校生だな」

 一見、仲のよい女子との休日デートでしかない。

 本人にデートの自覚があるかどうかは別としてだ。

 キズナと同格の魔王であるというのが疑わしいくらいだが、彼の業績はまさしく魔王そのもの。特に歴史的遺物を壊すことには格別な才能があるらしい。

 平和主義を標榜し、話が分かるようでいて、やらせてみれば他のカンピオーネとそん色ない大活躍である。

「今回は、海の上だからまだマシか」

 戦いが行われるとすればあの奇岩島である。であれば、草薙護堂の破壊行為も陸地には及ぶまい。

 そう考えていたところで、異変が起きた。

 草薙護堂を監視してた呪力が次々と途絶えたのである。正史編纂委員会の監視者に何らかの問題が発生したと見るべきだろう。

 このタイミングで、草薙護堂の監視を潰す。それは、彼と接触しようとしているからに違いない。

 そう確信して、龍巳は監視を続行したのであった。

 

 

 

 □

 

 

 

 龍巳からの連絡を受けたキズナは、苦笑いを浮かべた。

 草薙護堂がグィネヴィア陣営に加わったという情報であった。

「考えうる限り最悪の展開かしら?」

『まあ、あちらにカンピオーネが就いたとなれば、並大抵の戦力とは比較にならないからな。それに、ランスロットも『まつろわぬ神』になったようだ』

「そう。……ランスロットも。グィネヴィア。勝負に出たのね」

『らしい』

 龍巳とスマートフォンで会話しながら、キズナはグィネヴィアを憐れむ。

 彼女が求める奇岩島に、最後の王はいない。

 あれば、アレクサンドルがそう見せかけただけの紛い物である。よって、今回、グィネヴィアがアレクサンドルを破って奇岩島に到達できたとしても、最後の王には届かない。そして、ランスロットという護衛も失われる。『まつろわぬ神』となったからには、グィネヴィアの守護という理性的な役割に執心することももなくなるはずだからである。

『草薙君を監視していた委員会の呪術師たちもグィネヴィアにやられたらしい。どこまでこの情報が向こうに伝わっているかは分からないな』

「そう。って、龍巳は大丈夫だったの?」

『なんとかな。向こうも本気になって探してはいなかったみたいだ』

「そう。ならいいんだけど」

 草薙護堂を手中に収めることに成功したから、当面の外敵はアレクサンドルだけ。そのように判断したのかもしれない。キズナが都内に潜伏していると知っていたら、もっと厳重な情報統制を図っただろうし、そもそも今回は見送ったかもしれない。

「この戦いでグィネヴィアを殺そうとなれば、今のままでは難しいかもしれないね」

『黒王子がどうするかだ。それに草薙君が向こうに就いたのは、呪詛の類を吹き込まれたからだから、それを何とかすれば、正気に戻せると思うぞ』

「グィネヴィアが賭けに出た以上、わたしが隠れている意味もないわね」

『来るのか?』

「ええ。カンピオーネをどこまで呪詛できるか分からないし、ランスロットが『まつろわぬ神』になったのなら、グィネヴィアがそれらを御していられる時間は短いはず。彼女は、間違いなく勝負を急ぐわ。龍巳は草薙君のお友だちと連絡を取って、呪詛を取り除く方法を検討して。祐理にはわたしから電話するわ」

『承知した』

 そう言って、龍巳は電話を切った。

 キズナはスマートフォンを操作して、万里谷祐理に電話をかける。最近は彼女も携帯電話を扱えるようになってきたので、すぐに通話できるだろう。

 それにしても草薙護堂も忙しい男だ。

 毎月一回は『まつろわぬ神』と戦っているのではないか。キズナ以上に頻度が高い。これで平和主義というのだから笑える。

 個人の主義主張は置いておき、キズナは目の前の課題に取り組むために行動を開始したのであった。


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