百合ぐだ子   作:百合と百合と百合と

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モードレッド編⑨

モードレッドは人間が嫌いだった。不都合には堪えられず、他者を省みない傲慢さ。彼らは理想を望みながら欲望への忍耐は持ち合わせない。騎士王に対する叛逆はその最たる物だ。

であるならば、その頭目たるモードレッドは───

彼女の奥底にはその実自己嫌悪感が渦巻いていた。

「おや、貴様は……」

カルデア内を一人で歩いていると、ランスロットと偶然出会った。あの一件いや、カルデアに召還されて以来彼とまともに話すのは初めてだった。

「お前、ギネヴィア妃のことどう思ってるんだ?」

モードレッドは尋ねた。

ランスロットは少しの間逡巡し、答えた。

「愛してる」

「昔も、今もか?」

「そうだ」

モードレッドの質問が止まったところで、ランスロットは逆に彼女に尋ねた。

「貴様はどうなのだ。

人当たりが良いとは言え、マスターは女だろう?」

「良いんだよ、俺は女じゃないんだから。

それに、大事なのは気持ちが通じ合ってるかだ」

「惚気か?」

「事実だ」

二人はすれ違う。

それだけの言葉を交わして、あとは無言のままその場を立ち去った。

 

 

 

 

一方その頃、立香は清姫達と会っていた。

魔神柱に洗脳された三人だったが、それ以降の働きは目を見張るものがあった。幻影達によるカルデア侵攻の際には率先して迎撃に当たり、三人合わせてとは言え撃墜スコアはギルガメッシュやカルナらを抑える程だった。

立香はそんな彼女らにお礼と謝罪をしていた。

「……何故謝るのですか?

人が人を好きになるのは致し方ないことだと思います」

「でも」

後ろめたそうに俯く立香に頼光は優しく説く。

「私の想いはあなたの想いとは別。逆もまたしかりなのです」

ですから、と清姫は続けた。

「私は当然あなたの命(愛)を狙います。

浮気をした罪は重いのでお覚悟を」

物騒な笑みを残して、三人は去って行った。立香は後ろ姿が見えなくなるまで、三人を見送っていた。

 

 

 

 

食堂についたのは二人同時だった。時刻はまだ約束の時間の三十分前。相手を待たせたくないという思いが起こしたある種の奇跡だった。

「早くついちゃったね」

「ったく。張りきり過ぎなんだよ、お前は」

二人は食堂の中に入る。

立香は厨房に向かい、モードレッドは席に座った。

立香がカルデアに帰還してから、モードレッドの食事は全て彼女が作っていた。一ヶ月経った今ではレパートリーも増え、モードレッドの舌を楽しませた。

「お待たせー」

立香がモードレッドの前にカレーを一皿用意する。

出来たてのそれは湯気を立ち上らせ、香りも芳ばしい。

「はい、あーんして」

「あーん」

スプーンに一杯分のカレーをよそい、モードレッドの口に運ぶ。初めは恥ずかしがりながらしていたそれも、時間が経てば習慣だった。

「どう美味しい?」

「ああ。

世界で一番だ」

「それ前も言ってた」

「それだけ腕を上げたってことだよ」

「本当に?

じゃあ私にも食べさせて」

同じスプーンでモードレッドはカレーをよそう。

「はい、あーんだ」

「あーん」

こんな風に二人は交互にカレーを食べさせていった。

これでは時間がかかって仕方がないが、相手の顔を見ながら食べられる利点に比べれば些末なことだった。

途中お代わりを差し挟みながらその行為は粛々と、けれどニヤニヤしながら遂行される。真顔でいるつもりでいるのは本人達だけだ。モードレッドにとって愛情で以て接っせ、また接してくれる立香は得難い存在だった。

あらゆることが平凡な立香にとっても、モードレッドへの思いは凡庸でいられない。

(何故だ。日に日に立香が可愛くなっている気がする。こいつは俺の天使なのか?いや、そうに違いない)

(あ、今笑った。絶対笑った。どうして?どうしてモードレッドはモードレッドなの?)

こんな日がいつまでも続けばいいのにと、二人は心の中で思った。過ぎ去った時間は戻らない。通り過ぎていく刹那を笑っていけたら、それが一番幸せなのだと信じて。




今までこんな駄文を読んでくれてありがとう。
次は沖田編を完成させられるといいな……
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