百合ぐだ子 作:百合と百合と百合と
ただしケツァルコアトルの一人称視点で進むので苦手な人はブラウザバック推奨。
カルデアの広い廊下を一人で歩いていた時のことだ。
アナタは私に駆け寄って飛び込むと頬にキスした。
「4月にマシュと一緒に日本に帰ろうと思うんだけどケツァルコアトルもどう?」
私の可愛いマスター。
アナタとなら何処へだって行きたい。
それでも───
「行きまセーン。マシュと二人で楽しむデース」
私がそう言うとアナタは困ったように笑った。
「それ皆に言われる。清姫に言われた時はビックリしちゃった」
そうか、あの娘もきっと同じ気持ちだったに違いない。
マスターとマシュの絆はとても強固で私の入り込む余地なんてどこにもなかった。善神として呆れる話だが、マシュが居なければ私がアナタに寄りそえるのではないかと思ったこともあった。
ウルクで初めて会った時から私はアナタに惹かれていた。空から落ちてくるアナタを受け止めた時、私は恋に落ちた。ティアマトに特攻する前、命を燃やし尽くす覚悟を決めるために口づけしたときのことを覚えているだろうか。
……まあ流石に憶えているか。
バビロニアでの戦いを本来記憶しえない筈の私でさえ憶えているのだから。
「マスターは色んな子にキスしすぎデース」
二人っきりだからだろうか。何となく思っていたことが口に出てしまった。
「そうかなー。私なりの親愛の情を示してるだけなんだけどなぁ」
悪びれるでもなくアナタは呟いた。
その行動が私の心をかき乱していることにはきっと気付いていない。
全く、罪作りネー。
「でもケツァルコアトルは私にとって特別なんだよ。お姉ちゃんみたいだし」
なので恋人にはなれない。
「安心するんだ。マシュと同じくらい」
つまりアナタにとっての一番ではない。
「なんかいつも一緒にいてくれる気がしてさ」
無論そのつもりだ。だから心が辛く、辛い。
「……そろそろ行くね。大分話し込んじゃった。他の子も誘いに行かないと」
そう言って駆け出そうとしたアナタを、私はその手をつかんで引き留めていた。そしてそのまま壊さないように抱き寄せて唇を交わした。
咄嗟のことに大分驚いたようだった。
「──気を付けて行ってきてね、私のマスター」
「……うん!!」
気が早いなどと茶化すこともなく、柔らかな陽射しのような笑みを私に向けてから、アナタは元気よく走り去った。
ふと窓の外に目をやる。
雲が陽を遮り、激しい吹雪だけが音もなく窓ガラスを殴りつけていた。
日の光とは随分弱い物だと思いながら私の行く末、楽しみを酷烈に叩きつけられたような気がした。
書いてる間凄く恥ずかしかった。
ロリの真似しながらア⚪ニーするのと同じくらい。