百合ぐだ子 作:百合と百合と百合と
ユリウスとアサシンの撃破を誓った所で、白野は玉藻に昼間からずっと抱いていた疑問を尋ねた。
「昼間、凛と何やってたの?」
玉藻の瞳が怪しく光る。
「ご主人様は何をしてたとお思いですか?」
予想外の表情に、白野は何も言えなかった。緊張しているのだろうか。狐につままれるというのはこのような事を言うのだろう。
「肩の力を抜いて言ってみて下さい。
今なら電源落とされてますから」
玉藻のシリアスは長く続かない。しかしいつものおちゃらけが、今だけはありがたかった。
「何って、魔力供給……」
そうではない。
白野は心の中ではそう思っていながら、本当の事を口にすることが出来なかった。そんな白野を見て、玉藻は妖しく笑って、豊満な胸の隙間に手をいれた。
「そうです、その通りです。ご主人様」
その色気に魅了されながら、白野は疑念を確信に変えた。
「魔力供給の過程で凛さんとそれはもう熱く激しくヤりましたとも。白い壁面に囲まれ、白いカーテンで遮り、そして白いベッドの上で過ちを恐れずに求め合う青春と言いますか。まさにwhite reflection!!」
中々言い出さない白野を気づかってか、玉藻の前が巫山戯つつ、しかし認めた。凛と行為をしたことも。それが玉藻の前にとってそれほど悪いことではなかったことも。
「もし」
「もし凛さんが良いのなら、マスターの権限を彼女に譲ると。そう言おうとしましたね?」
凛の実力なら不可能なことではないと白野は考えていた。それに玉藻の前が自分よりも彼女に仕えることを望むなら、その意思を尊重しようとも。
玉藻の前は少し怒っている様子だった。
「ご主人様には私がそんな薄情な女に見えますか?
そうであるならば、私は自分を抑えられずにご主人様に手を上げてしまうかもしれません」
玉藻の前はいつになく真剣に白野に迫った。
「あれが必要なことだったってことは理解してる。けど」
白野は苦しそうに胸を押さえた。
「ここが、締め付けられるように、痛い……」
白野は胸の内を正直に打ち明ける。
「あなたは私より凛の方が良いんじゃないかって、そう思った」
白野が俯く。
「今回あなたが苦しい思いをしたのだって私が暗殺に気付かなかったから。私に実力がなかったから……」
熱いものが目から溢れ出していた。
「凛ならあなたをこんな目に合わせることもなかったと思う」
ぼやけた視界で玉藻の前を見つめた。一度流れ出したものはどうやっても止まらず、白野は嗚咽交じりに何とか話した。
「それに、あの時満更でもなさそうだったし」
不安、嫉妬、罪悪感が複雑に折り重なって、白野は歯を食いしばる。
そんな白野の元に、玉藻の前はいつも座っている簡易神殿から降りてやってくる。叩かれる覚悟は出来ていた。しかし、玉藻の前はあくまで優しく白野を抱き締めた。
「あ」
止めどなく流れていた涙が不思議と止まった。
この冷たい電脳世界に彼女の暖かさがいつもと変わらずそこにある。それが分かっただけで白野の心は満たされた。
「ご主人様は私のこと、どう思ってますか?」
考えるまでもなかった。
「そんなの決まってる。大好きだよ」
それを聞いて、玉藻の前は白野に表情を見せずにわなわなと震えていた。
「どうしたの……?」
心配になって白野は玉藻の前に声を掛ける。
しかしそれは無意味なことだった。
「言質、とったどーーー!!!!」
玉藻の前は満面の笑みで天井まで跳び上がった。玉藻の前はただの英霊ではない。今をときめくスイーツ(笑)英霊なのである。
「今の発言は正式なお付き合い宣言と見て間違いないですよね!?」
白野はしまったと思った。
しかしそれでもいいかと、気を取り直して言った。
「私はあなたに惚れてる」
「もう一度言って下さいませ」
白野はあまり多くない語彙をたぐり寄せ、頭をフル回転した。
「……私とあなたはラブラブだ」
「こういう親父ダサイところもス・テ・キ」
「親父ダサイ!?」
微妙にショックを受けつつ、白野は穏やかだった。
「とりあえず座ろうか。ちょっと足が疲れた」
二人は玉藻の前がいつも鎮座する神殿に並んで座った。
「しかし意外ですねぇ。
私の真名にドン引きしているのかと思いきや、逆に独占欲を爆発させてたなんて」
「その言い方はどうかと思う……」
白野は玉藻の前の手を取った。
「昼間、あなたがいなくてずっと不安だった。
ここが戦場だからってのもあると思うけど、多分それはあなたが傍にいなくて寂しかったから」
そう言って、白野は玉藻の前にそっと重心を傾けた。
「思えば、初めて会ったあの日から惹かれてた気がする」
そしてそれからの日々は言わずもがな。
白野の困難には前に立ち、倒れてしまいそうな時には後ろから。そしていつもはこうして隣にいるそれに、白野は心奪われたのだ。
「私、もう我慢出来ない」
握りしめた手が熱っぽくなる。この時ばかりは玉藻の前も神妙な顔つきだった。
「私、今日を忘れない。
初めてあなたの名前を知ったこと、あなたのかけがえのなさに気付いたこと。
そして、あなたとこうして……」
「ご主人様?」
息を荒くして手を伸ばす白野に、玉藻の前は顔を赤くしていた。淫乱を気取っていても根は純情なのである。
そして──
「タマモの尻尾、モフモフだ」
白野は玉藻の前の尻尾に抱き着き、幸せそうに頬ずりしていた。
「ご、ご主人様……?」
「もしかして嫌だった?」
「いえ、そういうことではなく……。今の雰囲気って完全にエッチなことする流れでしたよね?」
「……何でエッチなことするの?」
白野はポカンとしていた。
訳が分からないという表情をしている白野を見て、玉藻の前はようやく気付いた。彼女は玉藻の前と凛が魔力供給をしている時に、尻尾をモフモフしていたのだと勘違いしているのだ。
「タマモのそういうピンクな所は少し自重した方が良いと思う」
「挙げ句の果てに叱られた!?」
みこーん、と玉藻の前はないた。しかし彼女の嬉しそうな笑顔を見ると、これでもいいかと思ってしまうのであった。
……次こそはご主人と熱いエロスを交わすと誓いながら。
あなた=玉藻の尻尾
このザビエルが女々しいのはご愛嬌