百合ぐだ子 作:百合と百合と百合と
「これ、どういうこと?」
「あはは……」
玉藻の前を正座させ、白野は酒瓶を片手に問い詰める。酒瓶には媚薬が詰められており、ラベルには『玉藻ちゃんのラブラブらぶじゅ~す』などという何とも頭の悪そうな名前が、達人を思わせる筆づかいで書かれている。
最近身体の感度が不自然に上がっており、どうもおかしいと玉藻の前の周辺を探ってみれば案の定といったところだ。
「毎食私の皿にこれを盛ってたでしょ?」
「いや~なんのことでしょう~?」
露骨に目をそらし、下手な口笛をふきながら良妻(?)狐はすっとぼける。
白野はため息をついた。
「こんなことしなくてももっとちゃんとしてくれれば……」
「今なんて言いました?」
玉藻の前が目を輝かせる。
少し弱みを見せたらすぐにこれだ。
「もう、こっちは真剣に話してるのに!」
今日の白野はきつくお灸を据えるつもりでいた。
しかし体内に蓄積した媚薬の効果か、奥底から訴えかける火照りが収まらず、実のところ今すぐに玉藻の前を抱きたい性衝動を抑えるので精一杯であった。
玉藻にはそれが分かっているようで、目を細めてにやにや口元を歪めていた。
策士である。
当然このまま駄狐の思惑通りにことを進めさせるつもりはない。かといって熱に浮かされるような切なさを無視することも出来ない。
どうすれば良いか。
決まっている。性的欲求を発散させつつ、玉藻を躾ければ良いのである。
白野は酒瓶の蓋を開け、その全てを畳の上にぶちまけた。
「ギャアーー!!
これ作るの大変なんですよ!?」
自作をほぼ裏付ける発言を聞いた所で、白野は右手をかざす。
「令呪を以て命ず。
タマモ、その媚薬を全て舐め取って」
「な!?」
玉藻の前が驚愕するのも刹那、命令権によって縛られた彼女の頭は擦り付けんばかりの勢いで床に近づき、舌を突き出して溢れた媚薬を犬のようになめ回した。
「~~~~//」
さすがに堪えるのか、玉藻の頬は赤く染まっていた。
ピチャピチャという水音を聞く度に白野の心は背徳感による危険な悦に浸る。
「私がタマモのご主人様だってこと、分からせてあげる」
白野は土下座に似た形をしている玉藻の後ろに回りこみ、左胸を鷲掴み、尻尾の付け根を撫で回す。ビクンと震える狐耳を見て、白野は己が優位を確信し、今度はそれぞれの先端を筆の先でなぞるように苛めた。
乱暴な攻めと繊細な責めを駆使し、白野は玉藻の体を弄んだ。
「ふぇ……」
蕩けきった表情が命令を完遂したことを告げている。
それ程多い量を摂取していない白野ですら情欲を抑えきれないのだ。玉藻の前が感じている肉の欲求は計り知れないものがある。
「あ、ああ……」
だらしなく舌を垂らし、荒い息で雌狐は主人を待ち望む。
白野はゴクリと息を吞んだ。
飄々としていて、いつもどこか掴み所のない彼女が今は自分に隷属している。媚びる姿はとても官能的で、強引に扱い、汚し、貶めたい淫らな高揚を煽っていた。このまま無理矢理犯し切るのも良いかもしれない。
そう考えたものの、白野はある望みを捨て切れなかった。
「タマモ、あなたのことだから解毒薬を持ってるでしょう?」
女狐は答えない。
野生の獣さながらに激しい呼吸を繰り返すばかりだ。
「令呪を以て命ず。
解毒薬を出しなさい」
彼女は知性のない瞳のまま四つん這いで台所へ移動し、棚から一本の瓶を取り出して白野に渡した。
『賢者の薬』と書かれたそれから一滴だけ人差し指に垂らしてそれを舐めた後、残り全部を咽を詰まらせないようにゆっくりと玉藻に吞ませた。
しばらくすると玉藻の眼に知性の光が戻り始め、数分後には完全に正気に戻った。
「……ご主人様って結構どSだったんですねぇ。
まさか新調した令呪を2画使うことになるなんて」
疲れた表情で玉藻は呟いた。
「懲りた?」
「かなり。
那須野以来の賢者タイムです」
「じゃあそんなタマモにお願いがある」
白野は玉藻の前の手を握った。そこにはまだほんの僅かだが熱さが残っている。
「私はあなたのマスターで主人。
だけど私も女の子なんだからこういうことはもっと丁寧に扱って欲しい」
俯きながら、彼女は続ける。
「もっとタマモが落ち着いて求めてくれたら、私の身体ぐらい好きにさせてあげてた。
……それで、今は結構落ち着いてるから」
「ええっと、それってつまり……」
「どうせタマモのクールタイムなんて長く続かないだろうし」
聞こえるか聞こえないくらいの声になりながら。
「タマモと今すぐにしたいな」
照れで頬を染めて、あざとく両手で♡の形を作って白野は誘った。
無言で、玉藻の前は彼女を押し倒した。
タマモナインとの決戦を終えた後の話