百合ぐだ子 作:百合と百合と百合と
物好きなマスターだ。
モードレッドはそう思った。
アーサー王の栄光に終焉をもたらした悪逆の騎士に物怖じしないどころか、まるで友人のように接する者がいようとは思いもしなかった。
信頼したことがなかった訳ではない。
信用されたことがなかった訳ではない。
力だけには自信があった。
その剣技には相手を破壊するだけの説得力があった。
だから何もかもを終わりに追い込むことが出来た。
故に何もかもを失った。
モードレッドは肉体的にも、精神的にも、およそ真っ当ではなかった。表に見せることはしないが、普通の人というのにコンプレックスがあった。
だから機械になることも出来ない人でなしのホムンクルスにいつも笑いかけるマスター──藤丸立香が苦手なのだと気付いた。
そこからは立香の隣に立つのが苦しくて仕方がなかった。彼女の期待が怖かった。
そして今朝、彼女の手を跳ね除けた。
立香はモードレッドの髪を引っ張って悪戯することがあった。気分が沈んでいたモードレッドはつい立香を怒鳴りつけてしまった。
「俺はお前が嫌いなんだよ!あっち行け!!」
余程ショックだったのか、目に涙を溜めて立香は走り去っていった。
良い顛末とはいえないがこれで清々する筈だった。いつも通りの嫌われ者に戻っただけだ。苦しみからは解放さた。
しかし、それならば、この胸を刺す痛みの正体は───?
そんなことをぐるぐる考えて三時間、突然自室の自動ドアが開いた。その先にいるのは立香だった。
彼女は部屋に入り、頭を下げて謝罪した。
「ごめんね。モードレッドが本気で嫌がってるなんて思わなかったから」
心苦しさがぶり返すのを感じながら、モードレッドは言った。
「別に、謝ってくれなんて言ってねえよ」
立香を直視出来ずにそっぽを向いた。
気まずい緊張が流れる。
暫くの重い沈黙のあと、先に口火を切ったのは立香だった。
「私のこと嫌い?」
思ってもみなかった質問にモードレッドは狼狽えた。
「そんなわけねえだろ!?あ……」
自分で叫んで、自分で気付いた。
モードレッドは立香が嫌いではない。寧ろ気に入っている。だから自分が立香を苦しめてしまわないか不安だったのだ。
気恥ずかしさで赤くなるのを感じながら、勇気を出してこんな自分に頭を下げに来てくれた立香に応えるため、自分の思いに決着をつける為にモードレッドは尋ねた。
「俺は叛逆の騎士だ。サーヴァントとしてお前を守るどころか傷つけちまうかもしれない。そんな奴が傍にいて良いのか?」
少し間を置いて、立香が答えた。
「守ってくれなくていい」
モードレッドは驚いた。
「お前何馬鹿なこと言ってんだ!?サーヴァントはマスターを守るもんだろうが!!」
だってと立香は続けた。
「私も皆と一緒に戦う。私のせいで皆の、モードレッドの足を引っ張りたくない」
やられたと思った。
こんな単純なことを見失い、柄でもないことに執心していた自分が恥ずかしかった。
いや、こんな奴だからこそ守ってやりたくなるのか。
とにかくモードレッドの気持ちは晴れやかだった。
“───全く、とんだ物好きの大馬鹿野郎だ”
そう心のなかで呟いて、立香の前に跪いた。
「手、貸せ」
言われるがまま差し出された右腕を両手で受けて、その甲に口づけた。
「俺の剣を預け、名誉を預け、命を捧げる。……騎士としては三流かもしれないがそれでも構わないか?」
そんな問いに、立香は額にキスをして答えた。
親愛と信頼に満たされ、それでも生意気な奴だと心の中で呟きながら円卓の騎士として父に忠誠を誓った日のことを思い出した。
今度こそは最後まで忠義の騎士でありたいと、モードレッドは願った。
モーさんマジモーモーちっ⚪い
読点打つの苦手なんだけどどうだろう?