インフィニット・ア・ライブ   作:雪風冬人 弐式

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未だ未完の作品があるのに、何を書いてるんだか。
でも、閃いてしまったのだから仕方ない!

メインは、リリカル戦記を執筆していますので、こちらは亀更新になります。


プロローグ「邂逅 ~Encounter~」

―――ドイツ 某所

 

『日本代表の、織斑千冬選手の入場です!』

 

目の前のモニターから聞こえた音声に、とある倉庫の柱に縛られて口に布を巻かれた少年はガクガク震え出す。

 

「クソが!」

「どうやら、ブリュンヒルデ様は家族より、名誉が大事みたいだな」

 

 少年の周りにいた五人の男達は罵りながら、少年に近づく。

 その中の一人は、手に黒光りする拳銃が握られていた。

 

「もうお前に人質の価値はねえ」

「そうだな。予告通りに殺すか」

「あばよ、織斑一夏。恨むなら、白状な姉貴を恨みな」

 

 男達はニヤニヤと怖気が走るような笑みを浮かべながら、恐怖で顔を歪ませる少年、一夏に銃を向ける。

 

「あらあら~?殺るなら、キチンと狙わないとその口径の銃では仕留めれませんわよ」

「ああ、分かっているさ。……、って誰だテメエは!?」

 

 突如響いた声に警戒しながら男達が倉庫の中を見渡すと、そこには一人の少女がいた。

 

「どこから入って来やがった!?」

「何者だ!?」

 

 闇のような漆黒と、鮮血のような紅のドレスを身にまとい、左目に金色に輝く時計のような模様が現れている、この世の者とは思えぬ美貌の少女に、男達は一斉に銃を向ける。

 

「きひひひひひひひ!!無粋ですわね、こんな可憐な少女に対して!!」

 

 美貌を一瞬にして狂気に歪めると、いつの間にか両手に取り出したレトロな雰囲気を持つ銃を放つ。

 少女の狂気に一瞬怖気づいたことが命取りとなり、二人の男の額に風穴が空き、地面に崩れ落ちる。

 

「テメエ!よくも!!」

「はい、もう一人」

 

 再び銃声が響き、また一人の男が倒れる。

 

「クソッ!おい、このガキがどうなっても!グギャッ!!」

「ムー!!」

 

 少年を人質に取ろうとした男が、言い切る前に眉間に穴が空いて崩れ落ちる。

 間近で初めて人の死を見た一夏は、さらにSAN値が削られる。

 

「テメエ!このガキを助けに来たんじゃねえのか!?」

 

 残った最後の一人が、少女が仲間を撃つ隙を突いて一夏に近づき、米神に銃口を当てる。

 

「きひひひ!!こォォォォォれはまた、愉快な勘違いをなさってますわね。その通り、私はただの通りすがりですわ」

「この悪魔め!」

「残念、私は『精霊』ですわ」

 

 その少女の言葉が、男が聞いた最後の言葉だった。

 結局、男は人質を有効活用できず、襲撃者の正体も理解できぬまま人生に幕を閉じたのだった。

 

「呆気ないですわね。これだから、人間は……。さて、と」

 

 器用に両手に持った銃を弄びながら、少女は一夏を見る。

 

「ムフームフー」

「あらら。これでは、何を言っているのか分かりませんわね」

 

 少女は一夏を拘束していた鎖を外し、口に詰め込まれていた詰め物を抜き取る。

 

「ゲホッゲホッ!何で、俺を助けたんだ?」

「自惚れないでくださいまし。これは、私の気まぐれ」

「だったら、殺してくれ。俺はもう、生きている意味なんか」

 

 項垂れる一夏に少女は、興味深そうに瞳を細める。

 

「ざぁ~んねん。今すぐ、貴方を殺しませんわ。死のうとしても、死なせてあげませんこと」

「な、何でだよ!!」

 

 激昂し、掴みかかる一夏だが、少女の嗜虐的で冷めた視線に、自然と体の動きを止めてしまう。

 

「私、Sなんですの」

「そんな殺生な!?」

「ま、冗談でしてよ。そうですね。貴方がどうしても死にたいならば、契約を交わしましょう」

「契約?」

 

 悪戯を思い付いた童子のようにクスクスと、無邪気に嗤う少女。

 

「ええ。貴方は私が生かしましょう。私が生きる意味を授けて差し上げますわ。そして、貴方が『まだ生きたい』。そうおっしゃった時に、殺してあげますわ」

「拒否権は?」

「有りません。私の名は、時崎狂三。貴方は?」

「織斑一夏だ」

 

 狂三が差し出した腕を、一夏はしばし戸惑った後にその腕を取る。

 

「ふふふ。よろしくお願いしますわ、一夏さん。精々、私を楽しませてくださいな」

「……うるさい」

 

 狂三の無邪気な笑顔に思わず見惚れ、それを隠すように一夏はそっぽを向いた。

 そんな一夏の反応を楽しみながら、狂三は一夏を連れて歩み出した。

 

 数時間後、独自の情報網でブリュンヒルデこと、織斑千冬の弟が誘拐された場所を突き止めたドイツ軍が突入したが、そこにあったのは、物言わぬ五つの死体だけであった。

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。
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