インフィニット・ア・ライブ   作:雪風冬人 弐式

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調子に乗って進めちゃいました。
今回、とあるキャラがかなり崩壊します。


幕間 「DEMインダストリー」

「諸君!」

 明かりに照らされたホール。ステージの上で、特徴的な白髪の青年が壇上に上がった。

「まずは集まってくれたことに、感謝しよう。諸君、私は―――アイドルが好きだ」

 

 その青年、『アイザック・ウェストコット』は瞳からハイライトが消えた、所謂ヤンデレの眼で、さらりと宣言する。

 

「諸君、私はアイドルが好きだ」

 

 アイドル―――それは、崇拝される人、物。あこがれの的という意味の言語であるが、現在では多くの熱狂的なファンを持つ若い歌手、俳優などにいう。

 大事なことなので二回言いました。その言葉に耳を傾けているのは、全員メガネという脅威のメガネ率……そんな屈強な男達。一部女性アリ。

 ちなみにほとんどのメガネが、牛乳瓶の底のようなグルグルメガネである。

 

「仕事をしているのが好きだ、踊っているのが好きだ、歌っているのが好きだ、お喋りしているのが好きだ、レッスンを受けているのが好きだ、照れているのが好きだ、笑っているのが好きだ、怒っているのが好きだ、泣いているのが好きだ」

 

 とんでもなくアレな発言だが、集まった人達は黙って聞いている。

 感情をこめて、時には淡々と。強弱のある演説。聴く者のテンションを上げて、下げる。そして、もう一度上げる。

 それが、士気を上げるのに一番効果覿面なのだ。

 

「諸君。私はアイドルを望んでいる。諸君。私に付き従う社員諸君。君たちは一体何を望む?」

 

 社員達が聞き入っているということは、少なくともここに居る人間、総勢三千人の心は一つのようである。

 唯一メガネをかけていない壇上の男、アイザックは、再び口を開く。

 

「更なるアイドルを望むか?情け容赦のない剣鬼のようなワーカーホリックのアイドルを望むか?イタズラ好きなお姉さんキャラの限りを尽くし、三千世界の鴉をも虜にする、愛らしいアイドルを望むか?」

 

 社員達は、手にしたiPhoneやスマホといった携帯機器を手に、地鳴りのように一斉に踵を鳴らすと、彼の問いに応えて見せた。

 

「「「「「プロデュース!プロデュース!プロデュース!プロデュゥゥゥゥゥス!!」」」」」

 

 2999人のメガネと1人のヤンデレ(?)、総勢3000人。全員の心は、アイドルという共通の神にも等しい対象を前に、固い絆で結ばれる。

 どんな言葉でも表しきれぬこの感情。それを、非メガネ(仮名)は代弁する。

 

「戦争を!一世一代の大戦争を!我々は僅かに3000人、されど3000人の凡人に過ぎない。だが私は諸君が一騎当千の猛者であると信頼している。ならば我らは、諸君と私で総勢3000人のアイドル防衛部隊となる!」

 

 非メガネ改め、アイザックは口元を三日月の形に歪める。

 

「逝くぞ諸君!我らのプロデュースを待つ、アイドルの元へ!!」

「ウオオォォォ!!」

 高らかにスマホやiPhoneを掲げた男達は、直ぐ様画面をタッチし始める。

「何やっとんじゃ、お前らァァァ!!」

 そんな中、壇上にいた青年は乱入してきた女性、『エレン・M・メイザース』のドロップキックで吹き飛ばされる。

「「「「「ア、アイザック社長オオォォォ!!」」」」」

「騒がしいぞ、ボンクラ共。私のことは、少佐と呼べと言った筈だ。ああ、響が呼んでいる。あのどうしようもない、寂しがり屋が。私は彼女の元へ逝かねばならん」

 グフッ、と口から赤い液体を垂らしながら、アイザックは社員の腕の中で、ガクッと倒れた。

 

「しょ、少佐アアアァァァァ!!」

「何トマトジュースを吐いてるんですか。というか、今日社員の集会はなかった筈ですが?」

「見て分からないかね?」

「分かりません」

 バッ、と起き上がったアイザックが、両手を広げながら自慢げに話すが、バッサリと切り捨てられる。

「ゴホン!まあいい。エレン、これを見たまえ!!」

 アイザックが差し出したスマホを、エレンが覗くと『アイマス期間限定キャンペーン開始!!』と表示されていた。

 察したのか、エレンの瞳がスッと細くなる。

 

「まさか……」

「そう!これから、期間限定キャンペーンが開始されるのだ!我らは非課金組。課金組に対抗できる手段とは何ぞや?ズバリ、人海戦術さ!!」

 

 周りにいる社員達は、既に画面をタッチしたりボタンをカチカチ押していたりして、誰もエレンとアイザックを見ていない。

 だから気付かなかった。エレンの拳がプルプル震えていることに。

 

「しょーりゅーけん!!」

「たわばッ!!」

 

 空へと舞い上がったアイザックは、すぐに床に打ち付けられた。

 

「しゃ、社長に向かって、秘書がする行動かね!?」

「それより、これを見てください」

 

 エレンの言葉と共に、巨大な投影スクリーンが広場に現れた。

 

『臨時ニュースです!』

 

 映ったのはニュース番組で、何やらキャスターが慌しく原稿を読み上げていた。

 

『何と、インフィニット・ストラトス、通称ISを世界で初めて、男性が動かす事に成功しました!!』

 

IS、正式名称を〈インフィニット・ストラトス〉従来の科学、常識を全て塵に返したパワードスーツ。

 宇宙での活動を想定して開発されたスーツだが後に兵器に転用、そこから各国の協議を経て現在はスポーツとして扱われている。

 ISが社会に与えた影響は大きく、何より『ISは女性しか扱えない』

 ただ、それだけのことで世界はあっさりと変貌を遂げてしまい、男女平等であった世界は女性が男性を見下す女尊男卑へと変わり果ててしまった。

 その言葉が世界に浸透するまで時間はかからなかった。

 何より、世界が変貌してしまったのは『白騎士事件』が原因だろう。

『白騎士事件』とは世界各国の軍事コンピューターが同時にハッキングされ、日本に数え切れないほどのミサイルが飛来してきたのをISが単騎で撃破するという偉業の出来事。

 

「マジか……」

 

 そのISを男性が動かしたという事実の重大さを認識した社員の一人が、ポツリとこぼす。

 

「ってことは!」

 

 その一言を切っ掛けに、社員全員が何かに気付いたように顔を上げる。

 

「「「「「あのハーレム野郎、ドジッたのかァァァアアアア!!!!」」」」」

 

 あまりの大音量にエレンが耳を抑える中、アイザック含む3000人の脳裏に浮かぶのは、二年前に社員になったとある少年である。

 勘がいい方は気付いただろうが、先程のニュースが流れる前からここの社員達は、その少年がISを動かせる事を知っている。

 

「違います。動かしたのは、彼です」

 

 エレンが端末を操作すると、画面はニュース番組からISを動かしたと報道された男性の顔と経歴を映し出した。

 

「織斑千夏?」

「織斑って、まさか!?」

「そうです。彼は、一夏君の元弟です。そして、織斑千冬、ブリュンヒルデの弟でもあります」

 

 エレンの報告にアイザックは、再び口元を三日月に歪めた。そう、それは、新しい玩具を見つけた子供のようであった。

 

「で、どうしますか、アイク?」

「決まっている。予定より少々早いが、彼を、我らDEMインダストリー社が誇る《王》、一夏・ウェストコットを送り出そう」

「よろしいので?」

「何、強制はしないさ。彼は、既に我々の家族だ。どこに、好き好んであんな所に送りたがるものか」

 

 アイザックの言葉に、エレンは僅かに安心したようにため息をつく。

 だが、その仕草を6000もの眼は見ていたらしく、擬音で表すならキュピーン、と光った。

 

「では、私は業務がありますので。皆さんも遊ぶのはいいですが、程々で頼みますよ」

 

 そんな事は露知らず、立ち去ろうとするエレンだが、その進行方向を社員が塞ぎ、アイザックが肩をガッシリと掴んだ。

 

「まあ、待ちたまえ、エレン君」

「何でしょう?果てしなく嫌な予感しかしないので、早く立ち去りたいのですが」

「まあまあ。それより、一夏君とはどこまで進んだのかね?Cまで行っちゃった?」

「な、ななななな、何を!?」

 

 顔をゆでタコのように真っ赤にして、エレンはワタワタと手を振る。

 その様子を、我が意を得たりと言わんばかりにアイザックがにじり寄る。

 

「フハハハハ。知っているぞ。三日前のデートの時、着て行く服を選ぶのに五時間かけていたこととかな!」

「な、なぜそれを!?って、ハッ!!」

 

 いきなりのプライバシー暴露に、エレンは取り乱しながらも周りの社員達がニマニマしていることに気付く。

 

「普段は知的クールなのに、一夏君の話題となるとまさに恋する乙女!」

「ごっつあんです」

「我々に至福の時をありがとう!」

「クーデレ乙!」

「あ、貴方達ねえ…!そういう、アイクこそはどうなんですか!?」

 

 散々からかわれ、せめて一矢報いろうとアイザックに話題を振るが、返ってきたのはドヤ顔だった。

 

「フ。私には嫁など何人もいるさ。例えば、彼女もその一人さ」

 

 見せつけられたスマホの画面に映っていたのは、『我那覇響』という名前も一緒に表示された、アイマスのキャラの一人だった。

 

「もうやだこの会社!」

 

 エレンは急激に自身の熱が冷めていくのを感じながら、視線だけで人を殺せるような殺気を放ちながら、モーセの如く人垣を割って離脱してしまった。

 

「やれやれ、つれないねえ」

 

 ふと、広場に設けられた天窓を見上げ、アイザックは胸の内を占める万感の思いを言葉に乗せ、静かに呟いた。

 

「刻は満ちる。人類よ、控えろ」

 

 その呟きは、誰かに聞かせるわけでもなく、ただ発せられる。

 

「―――《精霊王》の凱旋だ」

 

 アイザックの視線の先、天窓の彼方には地球(・・)が浮かんでいた。




やっちゃったZE☆
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