私たちに優しい世界へ   作:桔梗

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 ※性転換注意報発令中デス!
 ※一話目から原作改変デス!

 少なくとも上記がお気に召さない方はbackをお願いします。


第1話 平穏な毎日

 昔、まだ小学生にも上がらない頃の話。

本来なら一人の少年がとある紙芝居屋に出会い、とある性癖を獲得する‥はず、だった。

 

「ねえちゃん、かみしばいだって!」

「もぅイッセー?イリナちゃんと約束してるでしょ?」

「あ、そうだった!?」

「ほら、わかったんなら行くよ」

 

 ギュッと手を繋ぎ、双子の姉に引かれてその場を立ち去る少年。

仲の良い姉弟はその後もずっと仲良く過ごした。

小学校も中学校も…様々な出会いと、別れを一緒に体験した。

 

 そして――色々な不思議をも一緒に体験し、二人は高校生になった。

 

 

 ジリリリィ―煩いアラーム音が響く。

叩くように止めて、ここ数日でようやく着慣れてきた高校の制服を着る。

 

「ふぁぁぁ‥まだねみぃ」

『やれやれ、大丈夫か一誠?』

「だいじょばねぇ…ねてぇ」

 

 ()に応える彼の部屋には、他に人影はいない。

それもそのはず、その声は彼の中から響いていたからだ。

 目を覚ますついでに、立ったまま目を瞑り神経を研ぎ澄ませる。

ゆっくり水に沈みこむように、精神を内側へと集中させる。

 

「‥‥はよ、ドライグ」

「あぁ、おはよう…‥挨拶してる場合か?」

「いいんだよ、どーせ姉ちゃんはまだ寝てんだろ?」

「相変わらず姉中心だなお前は」

「るせー」

 

 呆れたような言葉を漏らすのは、彼の中‥‥精神世界と呼べるその場所にいる存在、赤き龍の帝王と呼ばれる強大なる者……ドラゴン。

 初めて出会った、というよりも自覚したのは数年前のこと。

とある出来事により、一誠は神器(セイクリッド・ギア)という物が自分に宿っていることを知った。

その話をすると長くなるが、その時からドライグとはかなり濃い付き合いになる。

 何せ自分が自覚していない間もずっと内側にいたのだ……好き嫌いに思考から性癖やら、大体把握されていた。一誠からするとドライグは自分に憑りついてる超強い龍!くらいの認識しかないが、そんなの関係ないほどに仲を深めていた。

 

「さって‥起こさないとな」

 

 内側から現実世界へと意識を戻し、隣の部屋に向かった。

〝おねーちゃんの部屋〟と名札の掛けられた部屋を一度ノックする‥‥が、反応はない。

 

「入るぞー」

 

 もはや何時もの事なので返事は気にせず勝手にドアノブを回す。

部屋は簡素なもので、机やパソコン、ベッドに棚‥それ以外は机の上に女性雑誌が数冊転がってるだけだ。

 この雑誌も友達から借りただけだろう。我が姉ながらこの我欲の無さには恐れ入る。

そう思いながらベッドに包まる姉を揺する。

 

「おーい、おっきろー」

「んー、あと5ふんー」

「って言ってると寝坊しちまうだろ。ほら起きろって」

 

 バサッと掛布団を剥ぎ取ると、桃色のパジャマを着た小動物がその身を丸めていた。

自分より頭一個分は低い身長、腰まで伸びた栗色の髪。胸は大きすぎず小さすぎずといったほどだ‥‥プロポーション整ってる美少女だよなぁ、と眼福しておく。

 一誠自身自分が不細工だとは思っていないが、美少年だとも全く思っていない。

身体は諸事情あって鍛えているし、それなりに外見は気遣っているつもりだが、それでもこの人が自分の姉だとは思えないほどの美少女っぷりだと思っている。

 ドライグ曰く、外見ではなく内面で見れば十分似た者同士だとのことだが‥‥同じ翡翠色の瞳(・・・・・)でなければ全くもって姉弟、それも双子だなんて言いきる自信はなかった。

 

「んんー‥おっはよ、イッセー♪」

「はいはい、おはよ」

 

 どうやら夢見は良かったらしく、上機嫌に起きて一誠に抱き着く美少女こと兵藤真琴。

一誠がポンポンと頭を軽く撫で、着替えるように誘導する。

 

「機嫌イイね、良い夢でも見たの?」

「まぁねー。久しぶりに昔の夢見たよ」

「へぇ。どんな?」

「イリナちゃん達と遊ぶ昔の夢~楽しかった~♪」

「そりゃよかったね。じゃ、着替えたら飯食いに降りて来いよー」

「はーい」

 

 とりとめのない会話。でも、それが凄く幸せなことなのだと、二人はよく知っている。

この世界には当たり前の悲劇が転がっている…‥そして、不思議なことも、転がっている。

 

「あ、おはようございます」

「おぅ、今日も早いな」

「いえ、これも従者の務めですから」

「アハハ‥相変わらず硬いなぁ」

 

 一階の居間に降りると、蒼い長髪と金色ツリ目の少女が朝食の準備をしていた。

姉よりさらに小柄、小学生ほどの背丈の少女‥‥名前をレイン・ヒョウドウという。

姉に負けず劣らずの美少女だが、彼女は人間ではない。

 

「ん?レイン、首元首元」

「え……あ」

 

 フッと一瞬で肌色になったが、ついさっきまで蒼色だったそこを手で覆い、照れたように頬を染めた。

 

「すいません」

「良いって、まだその姿慣れてないんだろ?」

「でももう一年になりますし、気を緩めただけでこれでは、これから先が思いやられます‥‥」

「気にすんなって。ほら、姉ちゃん降りて来る前に盛り付けちまおうぜ」

「はい」

 

 外見的には外国人だが、作るのは純和食。

降りてきた姉と、匂いに釣られてきた両親も入れて、美味しい朝ご飯を食べる。

そして今日も今日とて駒王学園へと通う二人や、仕事に向かう親をレインは見送るのだった。

 

 

 駒王学園。

今年から共学になったそこは、男子よりも女子の数が多いまさに花園。

期待してウキウキ気分で入学してくる男子生徒が多い中、兵藤一誠は冷静だった。

何故なら、彼がこの学園を選んだのは単純明快。近いからと姉が選んだ学校だからだ。

 合格した時点で既に目的を達成しているため、彼は今日も今日とて平和を甘受する。

唯一残念な点と言えば、姉とは別クラスという事だろう。流石にこればかりは仕方ない。

 

「おはよ、兵藤君」

「おぉ、おはよ木場さん」

 

 窓際の一誠の隣に座ったのは、金のショートヘアの美少女、木場優奈。

よく剣道場で木刀を振るって鍛錬している姿が目撃されているが、剣道部ではなくオカ研だという謎多き美少女だ。

 

「兵藤君、今日は暇かな?」

「あー、時間はあるけど。姉さんが部活終わるまでなら」

 

 一誠も真琴も帰宅部だが、姉は色々な部活の助っ人に呼ばれることが多い。

あの外見と明るい性格によって人から好かれまくっている‥言い方は悪いが、弊害というやつだ。

一誠もたまによばれるが、やはり女子が多いこの学園では男子より話しかけやすい女子である真琴の方が声がかかる。

 

「十分だよ。放課後、またよろしく!」

「あーはいはい」

 

 まるで逢引のようだが、実際は全然違う。

 

 ――木場優奈は、戦闘狂の節がある。

 

 ここ一週間ほどで理解した彼女の一面だった。

一度だけ、質の悪い不良に絡まれていたのを助けたことがきっかけだった。

 

 ―「ありがと。キミ、強いんだね」

 

 あの時、一瞬感じた悪寒に従って無視できれば良かったのだが、いかんせん彼女は同じクラスメイトだった。

逃げ場なんてないも同じ。気づけば夕暮れの中木刀を向けられ、喧嘩沙汰に。

華奢な身体から考えられない踏み込み、年不相応の気の入った太刀筋…‥ギリギリ引き分け続けているが、彼女はまだ力を温存しているであろうことを理解している。

 まぁ、互いに殺傷沙汰にしないためにギリギリを見極めて戦りあっている、と言った方が正しいだろうか。

ともかく、木場優奈からすると兵藤一誠は丁度いい力の発散場所‥‥もとい、対人練習相手となっていた。

 

「加減してくれよ?流石に骨折とか勘弁なんだ」

「そっちこそ、加減してよ。僕はか弱いんだからさ」

「なーに言ってんだか」

「あ、酷いなー。いくらなんでも傷つくよ?」

 

 皮肉なことにそんな経緯があったからこそ、このクラスでは一番の仲良しとなっていた二人は先生が来るまで会話を続けた。

 

 

 放課後、剣戟なのか拳撃なのか分からない音が響く中、別の場所では真琴が走り回っていた。

 

「兵藤さーん、次こっちお願い!」

「はーい!ちょっと待って、まだ着替えが‥」

「そのままでいいから!早く早く!」

 

 体育着からユニフォームに着替えようとしていた彼女をそのまま引っ張っていき、次は外へと向かう。

バスケ、テニス、野球、はてはアメフトやら空手の練習相手やらと引っ張りだこで活躍する真琴は、毎度のことながらてんやわんやと目を回していた。

 疲れる‥‥とはいっても、肉体的な意味ではない。

真琴はこのくらいじゃ疲れない、そういう身体をしている。だが、精神はそうはいかない。

状況がコロコロかわるのに適応して体を動かすのは、大変だった。

 でも……。

 

「ありがと!助かったよ!」

「なんのなんの、アハハ」

 

 こうやって喜ばれるとどうしようもなくなってしまう。まぁこのくらいいいかなーなんて思ってしまうのだ。

 この安請け合いを弟には心配されていたりするが、それはそれでありがたいし弟からの心配というのはとても嬉しいため止める理由にはならないのだ。

 

「‥‥?」

 

 ふと、視線を感じて見上げる。

こちらを見下ろすのは、二年生の教室からのぞく赤と黒‥‥リアス・グレモリー先輩と、姫島朱乃先輩だった。

 お姉さまと下級生‥‥果ては同級生や一部の3年生にすら親しまれている存在だ。

こういった視線は初めてではない。あの二人だけではなく、生徒会の支取蒼那先輩や真羅椿姫先輩からも視線をもらうことが多い。

 まぁ、弟の一誠も視線を浴びているのだが、彼自身そこら辺は敵意が入っていないと鈍いようで、気づいていない。

 

「兵藤さん?」

「ん?あぁごめんごめん、次は柔道部だっけ、レッツゴー!」

「え、わ速い速い待って!?」

 

 理由は何となく察しているが、今の所関わる気はないし、理由もない。

平和で平穏で、ちょっと忙しくて騒がしい。そんな普通の学園生活を謳歌するのだった。

 帰って家族とご飯を食べて、話をして、眠る。そしてまた起きる。

 

 ――あぁ、素晴らしい。

 

 今日も白い天井を見上げて眠った。

 

 

 

 

 目を開くと、視界が赤かった。赤い中に、大事な弟がいた。

 

 ―姉ちゃん、姉ちゃん。

 

 昔、もう過去の事だ。だからこそ、返事は出来ない。

 

 ―ごめん、おれ、俺‥!

 

 泣かないで。声は出ない。

 

 ―う、ぁ、ぁぁぁ。

 

 落ち込まないで。声は出ない。

 

 ―頼むよ、ドライグ……俺は、俺はっ!!!

 

 別に気にすることは無いんだよ。声は、出ない。

 

 ―ガ、ァァアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!

 

 あぁ、もう…‥ごめんね、ありがとう。

 

 やっぱりそれも声に、言葉に出せなかった。

仕方ない。独りにしたくないし、させたくないし、なりたくなかったから。

何となく、でも自分の意思でアタシは……自分の中にあるパンドラの蓋を解き放った。

 

 

 あり得ない生まれが、出会いが、出来事が起こった世界。

少しだけ、でも確かに違う、そんな世界の物語。

果てに待つのは何なのか、誰も何も分からないまま彼らの物語が、一年の時を経て始まった。




 作者にも行く末が分からない(オイ。
そんな感じでよろしくお願いします。
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