私たちに優しい世界へ   作:桔梗

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第11話 いざ決戦の地へ

 

 

 ――俺は何時も、遅すぎる。

 

 

 

「は、はぁ!?!?だ、堕天使の幹部ぅ!?」

 

 深夜、真っ暗な学校にオカルト研究部と生徒会メンバーが集められた。他にも廃教会に住んでいる堕天使メンバーもいる。

保健室で怪我をしたイリナ、ゼノヴィア、そして木場にミッテルトを寝かせ、別の教室からもイスを運び出して来て各々楽な姿勢で一誠たちの報告を聞いていた。

 

「匙、少しうるさいですよ」

「で、でも会長!いきなりこんな、嘘だろ‥?」

 

 生徒会メンバーでも最近転生悪魔になったばかりの匙元士郎が慌てふためく。

しかたない、そもそも連休最終日になって、堕天使襲来のことを聞かされた上に、現状最悪ときたものだ。寧ろ動揺していない者など……二人と一体以外はいなかった。

 

「こうなった以上、こっちから仕掛けるしかないです。これ以上アイツらの思い道理にさせちゃいけない」

「そうそう、何するつもりだとしてもね」

「私はマスターたちにお供しますよ」

 

 兵藤姉弟とその従者、レインだった。

 

「何を馬鹿なことを言ってるの!」

「そうです、そもそも相手がどこにいるのかすら‥‥」

「場所なら分かってます」

「「え!?」」

 

 部長のリアスと会長のソーナ・シトリー二人の忠告をぶった切ってレインが取り出したのは、一枚の紙切れ…‥この駒王町の地図だ。

 

「彼らがやろうとしていることは、恐らく聖剣の統合です」

「聖剣の、統合ですって?」

「なんでそんなことがわかるのですか」

「分かったのはついさっきです……イリナとゼノヴィアから聞いた、重傷を負わされたエクソシストからの情報…‥それと、殺されたエクソシストの場所が、こちらになります」

 

 地図にバツ印が書き足されていく。

 

「始め、殺されたエクソシストたちはどれも強者だから殺された、と聞かされました。加減が出来なかったのだろう、と」

 

 でもそれは違う。こうして地図で見ればわかることだが、殺された者はどれもこれもとある地点から一定の距離(・・・・・)まで近づいて来た(・・・・・・・・・)者なのだ。

 

「あのフリードという男は手加減なんてする人間ではありません。となると、重傷を負わされた者と殺された者には、もっと違う理由がある(・・・・・・・)はずです」

「で、その理由ってのが、まぁ簡単な推測ですけど」

「本拠地と、なによりも狙い(・・)に気付かれたから殺した」

 

 実力がある、イコール強いだけではない。それだけの知識、知恵を持ち得ており、情報収集能力(・・・・・・)にも長けている者のことを言うのだ。

 

「‥‥‥じゃぁ何故重傷で済ませた者がいるのですか?」

「エクソシストを退ければ、それ以上の強者が釣れる(・・・)からだよ、小猫ちゃん」

「そうして態々聖剣を持って来させた(・・・・・・・・・・)

 

 ――「目的は果たした(・・・・・・・)、俺っちは帰るとするさ」

 

「リーダー‥‥フリードはそう言って去りました。その手に聖剣を三つ携えながら」

「これで合計五本。残りは未だ見つかっていない一本と、未だ厳重に保管されている一本……流石に教会も最後の一本を持ち出してくるほど馬鹿じゃない」

「となると、現状の戦力であちらが集められる限界数だと考えられます」

 

 聖剣エクスカリバーは歴代でも最強を謳われた絶大な()だ。

そんな力も今では七分割され、力は分割された以上に弱まった其れを統合するのは、教会勢力全ての悲願だ。

そして、はぐれ神父フリードは、そんな教会に一時期神父として潜りこんでいた(・・・・・・・)

神父から落ちたからこそはぐれの烙印を押された、そう認識を受けているが事実は違う。

 

「フリードは、殺し回ったって言ってた」

「優奈、まだ寝て居なさい」

「大丈夫です部長、大分楽になりましたから‥‥…アイツは、僕以上に独りで戦ってきたんだと思います」

 

 地獄に落ち、聖剣の因子を覚醒させたからこそ神父にされた(・・・)フリードは、陰ながらその暗殺を続けたのだろう。

 

「だとすると、逆に言えばこうなりますよね。奴は、誰よりも聖剣を(・・・・・・・)知る機会があった(・・・・・・・・)

「木場優奈さんも同じ考えに至ったみたいですね……ここからは、皆さんが集まるまでの間に考察した、マスターたちと私の想像です」

 

 フリードは聖剣を扱えるようになった。逆に言えば、それ以外は只の人間なのだ。

アイツは力を欲している。悪魔を滅する力を、堕天使を屠る力を、神を殺せる力を。

 

 そうして、自然とたどり着いたのが手に入れた因子を使う方法。

 

 ○

 

 とある場所にて。

フリードは描いた魔法陣の中心で、五つの聖剣を並べ統合する作業に集中していた。

 

「……皮肉だな」

 

 コカビエルはそんな彼を見て、笑みすら浮かべず嘲笑った。

 

「地獄を壊すために、地獄に落ちた原因を使って力を得るなど。皮肉としか言いようがない」

「それでも、俺っちにはこれ以外方法がないんでさぁ」

 

 悪魔に出会ったわけじゃない、散々嫌いな奴らに利用されてきた。

特別が宿っていたわけじゃない、何処までも凡人だった。

そんなフリードが何もかもを超える力を手に入れる方法なんて、それくらいしかないのだ。

 

「それよりも旦那、ちゃーんと警戒してくだせぇよ? 統合と同時に完成の衝撃で、此処は聖なる光によって吹っ飛ぶでしょうけどね。きっと先にアイツらが来る」

「なぜ言い切れる?」

「色々言いすぎちまった……懐かしい顔を見たせいだなァ」

 

 口が滑ったとは正にこの事だ、と自嘲した。

今更、あいつらに何か求めてるんだろうか……。

 

「馬鹿か、んなもんもう―」

 

 とっくの昔に―。

 

 

「俺と姉さん、レインで行きます。場所はこのバツ印の中心辺り‥‥おそらく、地脈の源泉がある此処――駒王霊園」

「危険すぎるわ!」

「えぇ許可できません」

「じゃぁどうしろと? 戦ったから分かります。アレ(・・)は禁手がないと殺せない」

 

 幹部と呼ばれるだけあって、コカビエルの力は軽く手合わせした程度でもその強さを察することが出来た。

 

「俺の禁手は、単純に言えばひたすらパワーアップすることです。‥切り札はまだありますけど、でもどう考えても、この霊園は(・・・・・)吹っ飛びます(・・・・・・)

「それは‥‥私たちが足手まといだと、言いたいのかしら」

「そうです」

 

 きっぱりと言い切る一誠に、リアスの怒気が魔力となって現れだした。

 

「優奈もだ。切り札、使う気がないんなら来んな」

「……」

 

 一誠の勘だったが、木場優奈は既に至っている(・・・・・・・)

元々信者だった者が違法研究に陥り、最後は神への信仰を無くし、果てにその存在を完全否定、殺すことを誓った。

十分至るためのきっかけも実力も揃っている。

だが、其れを使う気がないことも一誠は把握していた。

 

「僕は、」

「遺品だから使わねぇ。別に悪かねぇよ……でもその枷があって負けしかないってのは十分わかっただろ」

「……」

 

 この数日、単独行動でフリードに一太刀も斬撃をまともにくらわせていない。

これが、只の魔剣創造を使っただけの木場優奈の実力だった。

 

「ですが、三人だけでどうするというのですか?」

「そうよ。あちらも二人だけとは考えられないわ」

「それに、これだけだとコカビエルの目的が分かりませんわ」

 

 フリードの状況は大体把握できたが、コカビエルについては分からない……わけでもなかった。

 

「多分、戦争だと思うわ」

「貴女、たしか」

「レイナーレ……この学園、街では天野夕麻って名乗ってるわ」

 

 堕天使幹部、総督に焦がれた彼女だからこそ、把握していることがあった。

 

「総督が神器に目が無いように、コカビエル様も目が無いものがあるの‥‥それが、過去中断された三大戦争よ。あのお方はずっと昔から総督とそのことで揉めている、ってよく噂話になってたわ」

「なるほど。魔王の妹がいるこの街で派手なことをすれば、魔王様が黙ってないわけか」

「相手の都合がどうあれ、どのみち時間はないのです。魔王様に連絡してもすぐ来れるわけじゃないんでしょう?」

「それは……」

 

 リアス、ソーナともに現魔王の妹である。

だが、だからこそ彼女たち最優先に魔王が動くわけにもいかない。

来るのには相応の時間がかかるはずだ。

 

「今すぐ仕掛けないと、何が起こるか分かりません」

「でも、だからと言って私たちが何もしないわけにはいかないわ」

「「………」」

 

 一誠とリアスが睨み合う中、ソーナはジッと考えていた。

 

「……では、こうするのはどうでしょうか。私たち生徒会が霊園に大規模結界を張ります。オカ研メンバーは赤龍帝一行と霊園に突入、強襲を掛ける。コカビエル、およびフリードを兵藤君たちに任せ、梅雨払いを残りのメンバーが行う」

「…まぁ、その辺がベターですかね」

「いざとなったら、私たちも参戦するわ」

「その場合、盾役とかは任せられませんから。後ろで魔法撃ってもらえると助かります」

「まぁ臨機応変で、ということで……行きましょうか」

 

 身支度を整えて出ていこうとすると、一誠たちを呼び止める声がした。

 

「まって…」

「イリナ?」

「どうしたの?」

「‥‥‥聖剣がないから、私はもう足手まといでしかないけど、お願い―リーダーを、殺さないで」

「あぁ」

「まっかせて!」

 

 その言葉に頷く姉弟たちとは違い、共に聖剣遣いとして働いてきたゼノヴィアは驚いていた。

例え神父であろうと、誰であろうと敵ならば斃す。それが教会の掟、だったはずなのに。

イリナはこの街に来て、この姉弟に会って変わった‥‥否、思い出したのだ(・・・・・・・)

元の自分を、独りだった人たちを楽しい場所に連れていく、幸せが大好きな少女という本質を。

 

「……待て、私は行くぞ」

「え、でも」

「聖剣なら、まだある」

 

 グニュンとゼノヴィアの横の空間が歪んだ。

そこから取り出されたのは、一本の大剣だった。

 

「聖剣デュランダル……私は因子を取り込んで覚醒したのではなく、生まれ持って聖剣を扱える者でな。此奴に選ばれてたりする、結構レアな存在なんだぞ?」

 

 まぁ赤龍帝には劣るかもしれないが、と苦笑いを浮かべた。

 

「ここまで来て両者ともに寝たきりなど、教会も赦さないだろう。是が非でも行かせてもらう」

「へいへい、好きにしろよ」

 

 こうして、一行は霊園へと赴くのだった。




バルパー? あぁそんなやつがいたようナ?←フリード談
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