私たちに優しい世界へ   作:桔梗

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 おしごとめんどい_("_´ω`)_ペショ


第12話 戦闘開始

 夜空に浮かぶ満月が、地上から伸びる光によって半分に割られていた。

その光柱の中心には、聖剣に囲まれたフリードが祈るように瞳を瞑り、意識を集中している。

この場所が霊園というのもあるのだろう、血塗れの神父なのにも拘らず神聖な雰囲気を醸し出している。

 

「来たか、悪魔と龍の一派ども」

「……コカビエル」

 

 彼らを阻むのは、割れた空に浮かぶ黒き翼を5対持つ堕天使、グリゴリ幹部コカビエル。

人々に占星術や星座について教えたという逸話を持ち、過去の大戦争を生き残った猛者だ。

 

「奴を止めに来たか。言っておくが止めたほうがいいぞ、悪魔どもは特にな」

「あの柱、聖なる光ね。私たちだと、近寄るだけで消し飛びかねないわ‥‥!」

「その通り。堕天使の俺でも少し寒気がするほどに、純粋無垢な光だ」

 

 目を細めるようにして聖剣を統合しているフリードを見つめるコカビエル。

 

「さらに言えば地脈、龍脈と呼ばれる力の流れを使っているらしい。天体専門の俺には少し理解が及ばんが、エクスカリバー自体この惑星の力によって作られたようなものらしいからな。相性は抜群とのことだ‥つまるところ、アレを手にできるのは、因子を持った人間か‥‥聖光に耐えきれるだけの力を持ったものとなるわけだが。‥‥出来そうなのはお前くらいだろうな、赤龍帝」

「あぁそういうわけだから、とっとと始めようぜクソ天使!」

「私も忘れないでね!いっくよ一誠!」

 

 一誠が左腕を、真琴が右腕を掲げた。

 

「「赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)!!!!」」

 

 彼らの腕に、龍の紋章が入った紅き籠手が顕現する。

 

「……やはり、その女も赤龍帝の力をもっていたか」

「まぁ私の場合は半分借りてるというか、なんというか‥‥ドライグとかは一誠にしか宿ってないし、かといって偽物ではないんけど……」

「姉ちゃん、態々説明してやることないって」

 

 言い辛そうにする真琴を脅威として認めたのだろう、コカビエルの鋭い視線が二人を射抜く。

 

「流石に赤龍帝二体に加え、雑魚とはいえ悪魔どもの相手までするのは面倒だな」

 

 そう言ったコカビエルの両隣に巨大な魔法陣が出現する。

その魔法陣から現れたのは……武具を着込んだ大量の人間だった。

 

「人‥?」

「違うわ、霊魂よ」

「あぁ此奴らは古の戦争においてどの勢力でも活躍していた連中だ。英雄、と呼ばれるのに一歩足りなかった連中だが、私に手傷を負わせるほどの猛者ばかりだ」

「殺した相手の御霊を、縛ったというわけですわね……」

「その巫女服、貴様は姫島の‥‥悪魔に転生していた話は本当だったわけか。まぁ俺には関係ないが」

 

 何処か怨念でも籠ったような眼で睨み付ける朱乃を無視して、どんどん英雄未満戦士以上の猛者たちを召喚していく。

只でさえ実力的な面で言っても勝機は薄い。そんな連中を束に相手にしていたら日が暮れてしまう。

 

「おいおいおい、何体要るんだよ!!」

「一誠、一気に吹っ飛ばそ!」

「姉ちゃん‥‥分かった」

 

 フリードを止める前にコカビエルを止めなければこちらが削り殺されてしまう。

フリードを止めるためにコカビエルを倒すことが前提条件になってしまった、これでは相手のペースだ。

 

「一気に崩す!!」

「「バランスブレイク!!」」

『Welsh Dragon Balance Break!!!!!』

 

 姉弟の声に合わせて、一誠の籠手からドライグの声が響いた。

一誠は全身に龍を模した赤い鎧を、真琴は所々肌が見える赤いドレスのような形の鎧‥‥所謂ドレスアーマーと呼ばれる物を装着していた。その頭にはティアラも乗っている。

 変化した二人は一気に飛翔し、霊魂どもを消し飛ばしながら会話をしだした。

 

「禁手の度に想うんだ、何か私の方えっちぃよね。なんでかな?ドライグの趣味?」

「ドライグ、後でちょっと話があるんだが‥‥」

『俺が知るわけないだろう!?』

 

 神器というのは持ち主の意思に影響をもたらされる。

すなわち、それは持ち主がそういう形の方がいいと望んだからなのだが‥‥。

 

「籠手は一誠のだから、一誠の趣味?」

「え!? い、いや、でもほらそっちの籠手は姉ちゃんのなんだから、姉ちゃんの趣味じゃねぇかな?」

「んー??」

 

 姫様願望なんて持っていたのだろうかと首を捻る。

恐らく、一誠の姉に対するイメージと籠手本来の鎧としての禁手、それに加えて真琴の気質が合わさった結果だと考えられるが、今はそれどころではない。

 

「呑気な連中だな」

「っと!」

 

 一誠に向かって空から降ってきた光槍を弾き飛ばす。

結界に当たると、凄まじい衝撃波となって辺りに轟音を響かせた。

 

「アレで壊れないか。流石に魔王の妹たちだ、優秀だな」

 

 流石に話しながら戦っている場合ではなかった。だが、邪魔な霊魂たちを吹き飛ばすのは二人にとっては作業でしかなく、無駄話もでるというもの。

 

「姉ちゃん、アイツは俺がやるから」

「うん。私は部長たちと邪魔な奴らを片付けておくね」

「……怪我、しないでくれよな」

 

 鎧を纏った手で姉の頭を撫でる。

それに頷くことで応えると、二人は各々の持ち場へと飛翔する。

 

「リアス先輩、堕天使は一誠に任せて、私と一緒に霊魂を蹴散らしましょう!指示を下さい!」

「―! えぇ、分かったわ」

 

 基本真琴と一誠はツーマンセルで戦ってきた。独りでも戦ってきたが、団体戦はやったことがない。皆を纏めるリアスに指示を仰ぐのは、当然の帰結だった。

 一瞬さっきまで赤龍帝二人の活躍に見惚れていたリアスは我に返ると、指示を出すために行動しだした。

 

「さぁて、とっとと終わらせようぜクソ天使!!!」

「野蛮な龍が、よく咆える!!!」

 

 地上では過去の亡霊と今を生きる悪魔たちが、空中では亡霊を操る天体の智謀者と赤き龍の力を持つ人間が、争いを開始した。

 

 

 聖剣を纏め上げようとしていたフリードの意識は、深く深く沈み込んでいた。

 

――ここは‥‥俺っちの()、か?

 

 深層無意識ともいうべき場所だろう。所謂、心象風景がフリードを中心に展開されている。

意識の外では悪魔、堕天使、人間が争い合っているというのに、彼のそこは静かだった。

真っ赤な血溜まりが広がっている。辺りには人だった残骸が転がっている。

 

「‥‥‥」

 

 自分が殺した連中だ、自分が壊した者だ、そして何より。

 

「俺、か」

 

 沸き立つ血の中心に横たわっているのは、過去の自分だった。

薬に侵され、実験で砕かれ、人の意思によって壊された自分だった者。

ソイツから出る血は他の者を侵し、砕き、殺す。

 

――汝は何する者だ?

 

「ア?」

 

 話しかけられた方を振り向く。

血溜まりから美女が浮かんでいた。

よく見ると、女の足元だけ血の色ではなく、透明‥‥水のようだった。

 聖なる乙女‥‥そんな陳腐な言葉が脳裏をよぎった。

 

――何を求め、私に干渉する。

 

「……」

 

 干渉、という言葉を聞きさっきまで弄っていた聖剣を思い出す。

だが、此奴は違う(・・・・・)。なぜなら、その聖剣は罅だらけの血塗れの状態で、自分の手の中にあるからだ。

 

「俺っちはこいつを使いたいだけだ」

 

―それは既に砕けている、折れている。人の身で直すことは叶わぬ。

 

「知るかヨ。これが必要なんだよ、この力が、絶対な最強って奴が!!」

 

 足りないというのなら持ってくるだけだ。

龍脈から、自分から、それでも足りないというのなら他所から奪ってくるだけだ。

 

―…造られた聖人よ。汝は血に塗れ、人の業に塗れたその剣で何をする‥?

 

「ぶっ殺す。俺っち……この俺の正義の下に、ぶっ壊す」

 

―……。

 

 乙女はフリードの背後、未だ形が遺る(・・・・)幼い死骸を見てから、フリードへ向き直った。

 

―いいでしょう、その剣、私が直しましょう。

 

 フリードの持つ聖剣が、光り輝きだした。

 

―流れ込む力を、貴方を組み込んで、鍛え直してあげます。

 

「そいつはドーモ」

 

―但し‥‥一つだけ、誓いをお願いします。

 

 スッと足音も水音も無くフリードへと顔を近寄らせた。

上目遣いで見つめる長髪の乙女は、瞳を哀しげに潤ませて言った。

 

 

「どうか、貴方の本当の正義を見つけてくださいね」

 

 

 どういうわけか、さっきまで脳裏に浮かび上がるような声は、ハッキリフリードの耳に聞こえ取ることが出来た。

 

 

「私は、あなたの行方に賭けましょう」

 

 

 思わず口元が笑みに歪んだ。

こんな乙女に賭け事をさせるなんて、随分罪な男になったもんだな、なんてふざけた思考が過る。

 

 

「私は、貴方を見守りましょう――あなたに、聖なる加護があらんことを」

 

 

 光り輝く聖剣に力が宿り、辺りの血溜まりが吸い上げられていく。

その全てが干上がる頃、フリードの意識が戻った。

 

 

「―――」

 

 光の中心に自分がいることを認識する。

戻ってきた、と確信して聖剣を見る。

 

「……ハ、ハハハハハハハ」

 

 空笑いが口から洩れた。

本来なら強引な龍脈の使用によって余波が起こり、霊園ごと辺りが吹き飛ぶはずだった。

それを、その流れ(・・・・)を全て収めた者がいる。

自分ではない誰かが、何者かが――あの乙女が、やってくれたのだろう。

 

「ハー‥‥随分、俺っちに似合いの姿になっちまったなぁ」

 

 血の紅色に聖剣が染まっていた。

聖なる力は纏めただけとは思えないほどに膨れ上がっている。

これはもう、聖剣と呼べるのだろうか。聖なる力を持っている禍々しい剣を見て、フリードは思わず苦笑を浮かべる。

 

「ハハ、今日はよく笑える日だなぁ―ン?」

 

 聖剣を持つ手を見て、ふと気づいた。

紅い紋様がその手に浮かんでいる。否、両腕に広がって、恐らく全身に模様が描かれていた。

 

―――流れ込む力を、貴方を組み込んで――

 

 そう言っていたあの乙女を思い出した。

成るほど、と納得すると同時に力の行使の知識が脳裏に浮かんだ。

 龍脈、聖力、其れを組み込まれた自分という存在を理解した。

 

「……力試しと行きますか」

 

 光柱が納まってこちらを見つめる堕天使、悪魔、人間、龍たちへとフリードは歩を進めた。

 

 

 ―――さぁ、聖剣による伝説を紡ぎだそう。他の誰でもない、己が手で。




 コカビーにとっての敵は赤龍帝コンビくらいで他を雑魚扱い。それを地で行けるだけの強化したつもり‥。
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