私たちに優しい世界へ 作:桔梗
ボクはあの日を忘れない――。
○
「はい、アーン♪」
「………あむ」
今日も今日とて小猫を抱えて餌付けするように菓子を与える真琴。
何時もながら美味しい、寧ろ段々おいしくなって行くこの味と真琴の暖かな体温にほだされていると自覚している小猫だが、今日だけは大分居心地が悪そうにしていた。
「………あの、兵藤先輩」
「「ん?」」
「あ…真琴先輩」
「ほいほい?」
抱っこしている真琴だけではなく、目の前で掃き掃除している一誠も反応したのを見て、呼び直す。
此処は駒王学園ではなく離れた場所にある教会。そこに契約した小猫は呼び出され餌付けされていた。
「美味しい?」
「えぇ……それで、何故私をここに?」
「いやー、暇だったし日課をこなそうかと」
餌付けされている小猫も小猫だが、そんな彼女を愛でることが日常になっている辺り、真琴も大概だ。
「おツカれ、さま、でス、みなさン」
「あぁ、ありがとアーシア」
拙い日本語でこちらにお茶を渡してくる、金髪の美少女シスター、アーシア・アルジェント。
彼女と堕天使たちが住まうこの教会に週一で通うのが、兵藤姉弟の日課なのだ。
「……あの、さすがに此処は居心地が悪いというか……正直気分が悪いです」
「あぁ、そういえば悪魔だもんねー」
「先輩は私をなんだと思ってるんですか…」
「可愛い可愛い子猫ちゃん♪」
「ちょっと字が違う気がします…」
少し
彼女自身、小猫が悪魔だと分かっているし、一誠がドラゴンを宿していることも知っている。
全部知った上でこんな風に幸せな日常が遅れることが嬉しいのだ。
「楽しそうね、アーシア」
「はイ!」
「ところでイッセー君、この本の続きはちゃーんともってきたわよね?」
「あぁ。というか、自分で買えよこのくらい」
「視ての通り金が無いのよ。毎日細々と暮らしてるのよ? これでもね」
レイナーレこと天野夕麻は一誠に微笑むと……漫画本を受け取った。
「随分人間界に馴染んだようで何よりだよ…‥他の連中が見ればどれだけ驚くか」
「驚いたのはこっちよ……行き成り悪魔を引き連れてきて、今日からこいつ等にかくまってもらうぞーなんて」
「いやぁ、あの時のお前らの顔ときたら…ハハ、今でも笑えるな」
「もう完全に堕天使の裏切者よ私たちは」
「まぁ許せ。じゃなきゃ今頃もっと大きな面倒事になってただろうぜ」
リアス部長たちと戦闘、敗北すれば堕天使諸共排除され、勝っても上級悪魔且つ現魔王の妹である彼女を打倒したとして悪魔勢力から狙われて結果死んでいたかもしれない。勿論原因である堕天使たちも例外なく‥‥。
それを理解しているからこそ、彼女達もこうしてどやす程度にしているのだ。
「はぁまぁいいわ‥‥‥最近、妙なのを見かけたわ」
「妙なの?」
「えぇ。神父服を着た白髪の男よ」
「神父?教会からの刺客か?」
「どうかしらね、私は遠めに見ただけだから……ただ、ソイツ」
――聖剣を持っていたわ。
○
深夜、とある廃墟にてその男は楽しそうに歌っていた。
「今日も愉快痛快俺様大活躍ってかァ♪」
白く赤い線の入った神父服を着たその男は、愉しそうに顔を歪ませ嗤っていた。
その手に握った剣からは血が滴り、彼の前には
身体はバラバラにされ、そこら中に
戦闘の痕は眼に見えて酷い。辺りは斬痕、殴痕、破壊と血の匂いによって日本で考えられないような非日常が生み出されていた。
そんな獣系、爬虫系のはぐれ悪魔を殺し自画自賛をしていたその神父に、拍手が送られた。
「凄いね、頭の数と手足の数が揃ってない時点で、人間が相対するべき相手じゃないだろうに、ここまで一方的に殺戮するなんて」
「まァ俺っちは戦う正義の神父さんなので、これくらい当たり前のお手の物~。で、誰だ嬢ちゃん?」
「しがない女子高生だよ――但し、ちょーっとバイオレンスだけどね」
喧嘩を売るにはまるで相応しくない柔らかな笑みに応えるように、高々に嗤い声を上げながら聖剣を向けた。
「キッハ―おいおい何がしがない女子高生だァ!!魔剣にその猛々しい魔力!お前さんは正義の神父様を襲う、只の極悪非道の悪魔だろうがよォ!」
「アハハ、そっちこそ何が正義の神父様? もうちょっと優しい笑い方を覚えてから出直した方がいいよ」
「ハ、正義ってのは正しい優しさだけじゃねーんだヨ。俺っちの
得意の素早さで迫る優奈に対し、
人外に対し、人間の枠を超えた速度で対応する。
ただ速いだけではなく、剣戟は重く、その剣線は鋭い。
優奈が二刀という倍の手数を用いているにも関わらず、その一本の聖剣に全てが弾かれる。
気付けば、その速度は優奈を
「どぉよこれがぶっ壊されてバラバラになった聖剣、エクスカリバーの破片によって作られた
「く、ぁ!!」
「ちょーーッと速い程度の木端悪魔が、消えてろ!!!」
魔剣が砕かれた優奈は、加速した神父の蹴りによって吹き飛ばされた。
「ケッケッケっと……ボーナスタイムは終わりか。まったくあの爺さんといい堕天使様といい、もうちょっと人の使い方を考えて欲しいもんだゼ。あんまり荒すぎると弱弱しい俺っちはくたびれちまうっての」
そう愚痴を溢しながら、聖剣の力を使って無駄に素早くその場から立ち去ったのだった。
「う、ぁぅぁ~~……人間の蹴りの威力じゃないなこれぇ。痛たたた」
蹴り込まれた衝撃で壊れて崩れた壁から抜け出しつつ、優奈は呑気に部位を摩る。
「まぁ聖剣の
悪魔ゆえに聖なる力には弱いが、同時にその力に対して他の種族より鋭敏でもある。
走り抜けていった聖気を追うのも、可能。
「行こ」
痛みを無視して、優奈は走った。
○
少ない…それと主人公って誰だっけ?