Fate/Masked Rider   作:ガルドン

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深夜テンションのまま書いたらクッソ長くなりました。
いつにも増して駄文です。


決戦直前

 マシュの宝具発動から数時間後。

拠点に一旦戻り、十分な休息をとった一行は決戦の地となる円蔵山の地下空洞を目指していた。

 

「――んじゃ、作戦はさっき説明した通りだ。今回要になるのはお嬢ちゃんだからな。しっかりやれよ?」

 

「は、はい! 頑張ります!」

 

 対セイバー戦の作戦説明を終え、マシュの肩を叩きながら不敵に笑うキャスター。

彼の立案した作戦の内容は至って単純だ。

 まずセイバーに遭遇後、すぐさまキャスターが宝具の詠唱を開始する。当然セイバーはそれを見過ごすことなどせずに襲い掛かってくることだろう。

襲いくるセイバーを相手にするのはマシュだ。彼女はキャスターが詠唱を終えるまでセイバーを押さえ込む盾役というわけである。

 

 そんな初めての大役を任されたマシュはかつてないほどに緊張していた。

だがそれも無理はない。何しろ相手は伝説に名高き騎士王、アーサー王なのだ。緊張しないわけがない。

カチカチと機械仕掛けの人形のような歩き方をするマシュを前に、隣を歩いていたランサーが見かねて声をかけた。

 

「そんなに緊張しなくてもいいのですよ、マシュさん。貴女は自分のマスターを守ることだけ考えればいいのです」

 

「守る、ことだけ……」

 

 マシュは己の手を見つめながら、ランサーの言葉を噛みしめるように復唱する。

そしてしばらくその場に立ち尽くすと、頭を上げてランサーに言葉を告げた。

 

「…ありがとうございます、ランサーさん。おかげで少し楽になりました」

 

 ペコリと頭を下げ、お礼を述べるマシュ。

その顔には先ほどまでのどこか怯えるような表情ではなく、決意に満ちた少女の表情が浮かんでいる。

それを見たランサーは何も言わずにただ微笑むと、歩みを早めた。

 

 それからしばらくして、彼らはついに地下空洞へと辿りつく。

 

「……すごいなこれ…」

 

洞窟の入り口を見るなり、ミライが感心した様子で言葉をこぼす。

穴の奥は全く見通しが効かない暗闇に包まれており、入り口からは奥の様子がわからないようになっていた。

 

「さーて、いよいよ決戦だ。覚悟はいいな?」

 

 その場にいる全員に向け、覚悟ができたかを問うキャスター。

ここから先は文字通りの死地となる。確実に生きて帰ってこられる保証はない。

この問いは彼なりの忠告なのだろう。覚悟がないのなら引き返せという意味を込めた、事実上の最後通知だ。

しかし、ここまで来た以上彼らの思いは一つだった。

 

 その場にいる誰もが覚悟を決めた眼差しでキャスターを見つめる。

――準備はできている。なにも心配することはないと。

もとより戻る道など存在しないのだ。この先で聖杯を守護しているセイバーを倒さなければ、所長を始めとするカルデアの面々は永遠に元の時代へは戻れない。

 故に彼らは倒さねばならない。この時代を狂わせた元凶たる騎士の王を。

 

「…覚悟はできてるみてえだな。それじゃあ行くぞ」

 

 全員の確認を済ませ、一行は洞窟の奥へと歩き始める。

目指すは最奥、聖杯の眠る地だ。

そうしてそれぞれが洞窟に足を踏み入れようとした刹那。

忍び寄る黒き爆撃手が、暗闇から彼らに牙を剥いた。

 

「――! お嬢ちゃん!」

 

「はい!」

 

 しかし、それに気づかないほど彼らも間抜けではない。

キャスターが即座に呼びかけると、マシュが防御体勢に入る。

背後から迫っていた数本の矢は盾に阻まれ、かすりもせずに地面へ突き刺さった。

 

「…チッ、やはり偽・螺旋剣(カラドボルグ)を使うべきだったか」

 

 構えていた弓を下ろし、苦々しい声色で吐き捨てる襲撃者。

その顔は影に隠れていて見えないものの、声からして最悪な表情を浮かべていることは間違いない。

 

「おーおー、影からコソコソ闇討ちとは…相変わらずいけすかねぇことしやがる」

 

「フン、褒め言葉として受け取っておこう」

 

 キャスターの痛烈な皮肉は襲撃者にはさほど応えていないらしい。

コツコツと靴音を鳴らしながら近づいてきた狙撃手は、言葉を口にしながら冷たい眼差しでこちらを睨みつけてきた。

 

「あいつって――学校の!」

 

「アーチャー…!」

 

 藤丸と未来が難敵の登場に冷汗を流す。

キャスターから現れるだろうとは聞いていたが、やはりいざ目の前にすると威圧感が凄まじい。

特にあの目で見たものすべてを射殺さんばかりの鋭い眼差しは、彼らにとってわかりやすい恐怖の対象として焼き付いていた。

 

「それ以上先へは行かせん。もろともにここで消えてもらうぞ」

 

 暗闇の中で爛々と光る目をこちらに向け、アーチャーは宣言する。

その総身から滾る殺意は並大抵のものではなく、常人があびればすぐに腰をぬかして逃げ出しそうになるほどの圧力を感じさせた。

 

「相変わらず信奉者やってんのかテメェは。懲りねぇやつだぜ」

 

「信奉者をしているつもりはないがね。だがまぁ、これも仕事のようなものなのさ」

 

「やっぱり信奉者じゃねえか!」

 

 しかしそんな殺気もキャスターにとっては感じ慣れたそよ風のようなものだ。

彼は臆することなくいつものように軽口を叩くと、静かに戦闘体勢に入った。

 

「まぁいいさ、遅かれ早かれテメェはぶっ倒さなきゃと思ってたんだ。この前の借りも合わせて肩慣らしにさせてもらうぜ」

 

 獣のような笑みを浮かべ、キャスターは準備万端といった様子で衝突の瞬間を待つ。

もはや戦闘は避けられないかと誰もが思ったその時、一人の女性がキャスターの肩を叩いた。

 

「待ってください。アーチャーは私が引き受けます」

 

「あ?」

 

 キャスターの肩を叩いたのはランサーだった。

彼女はいつの間にか戦支度を整えており、手に大鎌を携えて背後に佇んでいる。

キャスターはランサーを怪訝そうに見つめると、ただ一言だけ問いを投げた。

 

「…本気か?」

 

「…えぇ。本気です」

 

 そんなたった一言二言の掛け合いで二人のやり取りは終結する。

この短いやり取りにどんな真意が隠されていたのかはわからないが、キャスターはそれで満足したようで何も言わずにランサーへ戦いを譲った。

 

「行くぞ。ここはランサーに任せる」

 

 どういうわけかよくわかっていない当人たち以外を置いてきぼりにし、キャスターは洞窟へ足を踏み入れる。

取り残されたマシュたちも彼の背を追う形で洞窟へ踏み入った。

 そんな中、未来も一番最後に洞窟へ入ろうとする。

しかし、そんな彼の背にランサーから声がかかった。

 

「未来さん」

 

 いつもと変わらない、優しく艶のある声が耳に届く。

ミライは何故呼ばれたのかもわからないまま、足を止めて後ろを振り返った。

 

「――これを」

 

 そう言ってランサーは首元からなにかを引きちぎると、それをこちらに投げ渡してきた。

思わぬところで不意をつかれたミライだったが、ギリギリのところで反応し、飛んでくる物体を掴みとる。

掴んだ手の中のものを見てみると、それはいつもランサーが身につけていたペンダントだった。

 

「これって、まさか――」

 

 紫色に光るペンダントを握りしめたミライの脳裏に、ある出来事が浮かぶ。

以前、ランサーに『何故ペンダントを付けているのか』と問うたことがあった。

別に深い意味はない。単に興味本位で尋ねてみただけだ。

きっと彼女からは、"ただのおしゃれ"だとか"気に入ったからつけた"だとかの他愛もない理由が返ってくると、その時は思っていた。

しかし、結果は違った。

本当はもっと違う理由で彼女は身につけていたのだ。

 

 曰く、このペンダントは元々彼女のマスターのものだったらしい。

しかし、謎の火災とともにマスターが消失。ランサーは必死に街中を探し回ったものの、影も形もなかったそうだ。

だがしかし、街を探し回る中で彼女はあるものを見つけた。

それこそがこのペンダント。ある日突然マスターを失った彼女が唯一見つけ出せた、いわば"マスターの形見"である。

 それ以来、ランサーはそのペンダントを常に身につけるようになったという。

――たとえ世界がマスターを忘れても、自分だけは絶対に忘れないという決意の現れとして。

 

 そして今、彼女はその大切なはずのペンダントをミライへ渡した。

その行為が意味するものはすなわち――死を覚悟したということだ。

彼女は言っていた。『自分がこれを手放す時は、きっと自分が消えるときだ』と。

消えるというのはつまり、"現世から退去する"ということだ。この発言が契約を終えた末の退去を指すのか、戦闘に敗北した末の退去を指すのかはわからない。

しかし、今回のケースは間違いなく後者だ。

 おそらく彼女は自分がここで終わるということを予感しているのだろう。だから形見を未来に預けた。

 

「――死ぬ気なんですか!? アナさん!」

 

 アーチャーを見据えたまま何も答えないランサーに対し叫ぶ。

そんなはずはない。きっと何かの間違いだ。

そう思い、己の脳裏に浮かんだ馬鹿げた考えを払拭しようと、未来は否定の言葉を待った。

だがランサーはなにも答えることなく沈黙を貫いている。その姿はまるで、未来の考えがあっていると暗に告げているように見えた。

 

「おい、何してやがる! さっさと来い!」

 

 洞窟の暗闇からキャスターの怒号が聞こえてくる。

未来が来ていないことに気がついたのだろう。このままここに留まるのはもう無理だ。

 

「…ちゃんと帰ってきてくださいね」

 

 別れ際にそんな言葉を口走る。

彼女なら無事にアーチャーを倒して帰ってきてくれると信じ、ミライはその場から駆け出した。

そしてその数秒後、轟音とともに背後の入り口が崩れ落ちる。戦闘が始まったのだ。

 未来は歩みを止め、最後に一度だけ入り口だった場所に向き直って小さく呟いた。

 

「――信じてますから」




一応ランサーさんのマスターは桜って設定になってます。
次回はアーチャーVSランサー。
特異点F編もあと二、三話で終わりです。
ではまた次回。
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