Fate/Masked Rider   作:ガルドン

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プロローグ
カルデア


「…ォウ…フォウ!」

 

「――んん……はっ!」

 

 頬に感じるザラザラとした何かの舌のような感触に、意識が急速に引っ張り上げられる。

寝ぼけ眼を擦って周りに視線を巡らせると、俺の上に猫のようでもあり、リスのようでもある奇妙な生物が乗っかっていた。

 

「何だお前…?」

 

 目覚めて早々に現れた謎の生物に困惑していると、通路の向こうから誰かの足音が聞こえてくる。

え、何々第一村人との遭遇? 筋骨隆々のマッチョメンとかだったらどうしよう…

なんて心配を心の中に抱くが、それは杞憂に終わることになった。

 

「あ、フォウさん。こんなところに――おや?」

 

 あらやだめっちゃ美人…

通路の奥からやってきたのはパーカーを身につけ、メガネをかけたピンク髪の美少女だった。

 

「一日に二人もマスター候補を廊下で見つけ出すとは…どうやら今日のフォウさんはよく鼻が効くようですね」

 

「フォウフォーウ!」

 

 "フォウ"と呼ばれた怪生物は呼ばれるとすぐに少女の肩へ登り、珍しい鳴き声を廊下に響かせる。

どうやらこいつは彼女によく懐いているらしい。その証拠に彼はその小さな顔を少女の顔へすり寄せ、居心地良さそうに彼女の肩の上で伸びている。

 

「……えーと、これはとりあえず自己紹介をした方がいいのかな?」

 

「そうですね。やはり初めて会った方とは互いにそうした方がいいかと思われます。では――」

 

 そう言うと少女は無表情で自らの名前を口にした。

 

「私はマシュ・キリエライトといいます。そしてこちらのリスっぽい方はフォウさん。このカルデアを自由気ままに歩き回っている怪生物です」

 

「フォウ!」

 

「えっと、俺は永瀬未来(ながせみらい)。年は十八歳で、日本人とイギリス人のハーフです」

 

「ほう、ハーフの方ですか……どうりで背が高いわけですね」

 

「ははは、よく言われるよ。で、いきなりで悪いんだけどここってどこかわかるかな?」

 

 周りを見回しながら俺はそうマシュに尋ねる。

あたりに広がっていたのは見慣れない景色だった。

清潔感あふれる青を基調とした壁。そして窓の外に見える猛烈な吹雪。

まっっったく見覚えがないその施設に、内心とても困惑していた。

 

「ここですか? ここはカルデアの中央管制室につながる通路です」

 

「カル、デア…?」

 

「はい。人理継続保障機関フィニス・カルデア、通称カルデアです。――もしや、未来さんはここがどこだかをわかっていらっしゃら無かったんですか?」

 

「う、うん…」

 

 カルデア。人理継続保障機関。聞きなれない単語に頭の中でクエスチョンマークがいくつも出てくる。どうやらここに来るまでの記憶がなぜか数日分すっぽりと抜け落ちているようだ。

 

「あのさ、ここに入る前に俺、変な実験とかされてない? なんでかここ数日の記憶が全然ないんだけど…」

 

「記憶がない、ですか。それは私には分かりかねますね……」

 

「そっか…」

 

 それを境に二人の間に気まずい空気が流れ始める。

しかしそれもつかの間。その空気をマシュのある一言が変えてくれた。

 

「――あ、でももしかしたらレフ教授なら…」

 

「レフ教授?」

 

 俺が聞いたことない人物の名前に首を傾げたその時。

いきなり体中を凄まじい寒気が襲った。

体中から冷や汗が噴き出し、震えが止まらなくなる。あまりにも突然のことに困惑しながら周りを見ると、後方から一人の男がやってくるのが見えた。

 

「ああ、ここにいたのかマシュ。おっと、先客がいたんだな。君は……そうか、今日から配属された新人さんだね。私はレフ・ライノール。ここで働かせてもらっている技師の一人さ。ようこそカルデアへ」

 

 コイツだ。直感的に先ほどの寒気の原因がこの男であることを理解した。

一見ニコニコしていて近づきやすそうな雰囲気だが、何故かこのレフ・ライノールという人物に近づいてはいけないという確信があった。

 

「おや? どうしたんだい? なんだか顔色がすごく悪いけど…」

 

「い、いえ。大丈夫です」

 

 なんとか体の震えを止め、平静を装う。そうしなくてはまずいという感覚があった。

 

「そうか。ならいいんだが…そういえばマシュ、どうしてこの子とこんなところで話していたんだい?」

 

「はい、それがカルデア内を散歩していますとここで熟睡しているに未来さんに出会いまして、そこからいろいろあって今に至ります」

 

「ふむ…さては君、入館時にシミュレーションをうけたね? 霊子ダイブはなれていないと脳にくる」

 

「シミュレーション…?」

 

「あ、未来さんはどうやらここに来るまでの数日分の記憶が無いようなんです」

 

「記憶が無い…? そうなのか、少し心配だな。他のマスターはそんなことは無かったのに…」

 

 マシュが心配そうにこちらを見つめてくる。正直、心配してくれるのはありがたいのだが、今は一刻も早くこのレフという男から離れたかった。

すると、近くのスピーカーから女性の声が聞こえてくる。

 

『ただいまより、所長、オルガマリー・アニムスフィアによる説明会を開始します。マスターは至急管制室に集まってください』

 

「おっと、もうこんな時間か。急いで管制室に行かなくては。君たちも急いで来なよ!」

 

 そう言ってレフは足早にそこから離れる。

ひとまずレフから離れられたことに安堵していると、マシュが話しかけてきた。

 

「未来さん。いきなりで申し訳ないのですが、先ほどのアナウンスの通りにこれから説明会がありますので、早く管制室に向かいましょう」

 

 説明会? 何の説明をするのかは分からないが、先ほどのレフの口ぶりから察するにあまり時間が無いようだ。正直、あの男に近づきたくは無いのだが、仕方が無いので急いで俺とマシュは管制室に向かった。

 

 * * * 

 

「ここが中央管制室です。未来さんの席は…最前列ですね。」

 

「げっ、本当だ…」

 

 どうやら俺とマシュ以外の人たちはすでに集まっていたようで、俺たちが一番最後らしい。

周りから浴びせられる痛いほどの視線を受けながら、俺は席に着いた。

 

「……時間通りとはいきませんでしたが、全員そろったようですね。特務機関カルデアにようこそ。所長のオルガマリー・アニムスフィアです」

 

 前に立っていた女性――オルガマリー・アニムスフィアが口を開く。

容姿はとてもきれいで美人なのだが、なんだか少し怖そうな雰囲気の女性だった。

 

「あなたたちは各国から選抜、あるいは発見された稀有な――」

 

 所長がそこまで言いかけたところで俺の意識は完全にブラックアウトしてしまう。つまり、眠ってしまったのだ。そして、次に目が覚めたときにはマシュが俺の肩を組んで運んでくれていた。

 

「あ、目が覚めましたか」

 

「えっと……もしかして、寝てた?」

 

「はい。眠っていたかどうかで言えば、どことなくレム睡眠でしたが。ともあれ、所長の平手打ちで完全に覚醒したようで何よりです。未来さんはファーストミッションから外されたので、自室へ案内しようとしていたところです」

 

 最悪だ。これで所長の俺えの第一印象は最悪なものになってしまっただろう。これから何を言われるか、ここでうまくやっていけるのか。様々な未来への不安を抱えながら歩いていると、後ろから何かが覆いかぶさってきた。

 

「う、うぉお!?」

 

いきなりの事に体がグラつき、倒れそうになるのを何とかこらえて立て直すと、原因になった生物――フォウが頬をなめてきた。

 

「うひゃあ!?ちょ、やめろよ、くすぐったいって!」

 

「これは…どうやら未来さんはフォウさんに大変なつかれているようですね。私以外の人にはあまり近づかないのですが」

 

「え、そうなのか…てっきり、いつもこんな感じなのかと。」

 

「いえ、実はもう一人フォウさんに懐かれている方がいるのですが――あ、ここです」

 

 そんな会話を交わしているうちにマシュがある扉の前で立ち止まる。どうやらここが目的地のようだ。

 

「着きました。ここが未来さんのお部屋です。それでは私はこれで。これからファーストミッションに参加しなければいけませんので」

 

「そっか、ありがとうマシュ。がんばってね」

 

 そしてマシュは足早に管制室へと戻っていった。

残された俺は特に何もすることが無いので自分の部屋の中でも見ておこうと思い、部屋の中に入る。

 

「さて…何しようかな。しばらく何もないらしいし」

 

 マシュが言うにはこの後にある"レイシフト"というやつに参加出来なくなったらしい。まぁ、初日から居眠りをかませばこうなっても仕方がない。ここを追い出されなかっただけまだマシだろう。

 

「あ、これって…」

 

何か暇を潰せるものはないかと部屋を物色していると、カルデアの設備を説明した雑誌を見つけた。

雑誌は中々の厚さで時間を潰すには持ってこいだ。

取り敢えず、待ち時間はこれを読んで待つことにした。

 

* * *

 

「………あれ、フォウは?」

 

雑誌の半分ほどまで読み終えたところで、ふと肩が軽くなったことに気がつく。

見てみると、肩に乗っていたフォウが居なくなっていた。

多分どこかに行ってしまったのだろう。そう思い読書に戻ろうとしたその時だった。

突如巨大な爆発音が聞こえ、間髪入れずにけたたましいサイレンが鳴り響いた。

 

「!? な、なんだ!?」

 

あまりにも突然のことに軽いパニックに陥る。すると、部屋のモニターに映像が映った。

 

「――なんだよ、これ」

 

そこには、変わり果てた管制室が映しだされていた。

 

「ひどい……ちょっとまて、管制室ってことは――」

 

頭の中で最悪の結果がシミュレートされる。多分、こんな状態ってことはマシュはもう……

 

「…いや、きっとマシュは生きてる」

 

いいや、きっとマシュは無事だ。どこかで爆発をやり過ごしているに決まっている。なら、俺がすべき行動はただ一つ。

 

「マシュを助けに行こう!」

 

なけなしの勇気を振り絞り、俺はそう決意する。

そうして俺は部屋を出て、全速力で管制室へと向かった。




どうも皆さま、Xオルタガチャで大爆死したガルドンです。えっちゃんは絵がめっちゃ好きなので、なんとかピックアップ中に手に入れたいですねぇ…
ここまでの展開は多少の違いはありますが、大体おんなじ流れになってます。ですが、次回からはちょっとずつオリジナル展開に移っていきますので、原作とは違う展開を楽しんでいただければ幸いです。
ではまた次回!

2018/07/09 短かったので前話と統合。
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