Fate/Masked Rider   作:ガルドン

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初陣

「うわああああああ!」

 

「助けてくれえええ!」

 

「怯むな! 逃げれば殺されるだけだぞ!」

 

 いつもであれば静穏なはずの森が、悲鳴渦巻く地獄の処刑場と化している。

上空を飛び交うは緑鱗のワイバーンたち。奴らは小癪にも知性を有しているらしく、恐怖に囚われ背中を見せた者から順に餌食となっていく。

 

 そんな奴らの只中にこれから飛び込むことになるとは、考えただけでも憂鬱になりそうだがもはや背に腹は替えられない。

深く息を一つ吸い込み、自分の指の上で待機状態にあるパートナーに声をかけた。

 

「準備OKだ。いつでも行けるぜ、ゼルノ」

 

「了解。それじゃあ始めようか」

 

 直後、虚空から一振りの剣が顕れる。

その銀と赤に彩られた奇妙な剣には見覚えがあった。

 

「ウィザーソードガン…すげぇな、テレビで見たのとおんなじだ」

 

 ウィザーソードガン。

仮面ライダーウィザードの主武装であり、モードを切り替えることによって剣にも銃にもなる万能武器だ。

 

「作戦についてはさっき話したとおりさ。ミライくんは僕の指示した方向に向けて、その剣を思いっきり振ればいい。角度なんかの微調整はこちらでやるからね」

 

「わーってるよ…って、気づきやがったな」

 

「―――グオオオオオッ!!」

 

 一匹のワイバーンが魔力に反応して、大気を震わす咆哮を轟かせながら一直線に飛来する。

俺はすかさず手にした剣を振りかぶり、目前に迫っていた翼竜の頭蓋を一刀両断した。

 

「うぇ、嫌な手応えだなぁもう…」

 

 手首を振って手に残っている感触に眉をひそめる。

今の感触はなんというか、食材を切るのとはまた違った手応えだった。

これは慣れるのに時間がかかりそうだと思いつつ、また剣を構える。

前方では同胞の死に感づいた何体もの翼竜たちが、こちらに視線を向けていた。

 

「おいゼルノ。ちょっとあの数はまずくねぇか…?」

 

「いや、問題ないさ。ミライくんが僕の指示を間違えなければ必ず乗り切れる」

 

 ホントかなぁ。流石に数の暴力には負ける気しかしないのだが……

 

「ほらほら、弱気なこと言ってないで集中するんだ。気を抜いたら一瞬でお陀仏だよ」

 

「はいはいわかってますよ!」

 

 俺たちが会話をかわしているうちに翼竜たちが行動を開始する。

奴らはまるで編隊を組んだ戦闘機のように上空を滑空し、こちらに牙をむいた。

 

「右、左、左前、後ろ、前!」

 

「オラアッ!」

 

 指示された方向に思いっきり剣を振る。

するとあら不思議。まるで予知したかのようにすべて翼竜に直撃し、ことごとくを戦闘不能に追い込んだ。

 

「ふぅ、これで全部か?」

 

「いや、まだだ。あそこにまだ数匹残ってるよ」

 

 そう言って指輪が光を放ちながら残りの群れの位置を示す。

光の指し示す方向を見てみれば、たしかに何体かの翼竜たちが勝てないと判断したのか、今にも翼を広げて飛び立とうとしていた。

だが、それを見過ごすほど俺も甘くはない。

 

「ゼルノ、細かい照準は任せる。あいつら全員撃ち抜くぞ」

 

「OK。任せ給え」

 

 飛び去ろうとしている翼竜の一団に向け、モードチェンジしたウィザーソードガンを構える。

そしておおよそ当たるであろう向きと角度に調整して何度か引き金を引く。

放たれた弾丸は見事にクリーンヒットし、残存勢力を壊滅させた。

 

「―――ふぅ。終わったか」

 

 身体の力を抜き、剣の顕現を解除する。

終わってみればなんとも呆気ないもので、戦闘前に抱いていた不安感はどこかへ消え去っていた。

しばらくして、離れて兵士たちの治療を行っていた所長もこちらにやってくる。

 

「おつかれさま。初めてにしては上出来の戦いぶりでした」

 

 口元にわずかな笑みを覗かせながら彼女は手を差しだしてくる。

俺はその手を同じく笑いながら握り返し、応じた。

 

「それはどうも。それで、兵士たちの容態は?」

 

「安定しています。何人かはひどい怪我だったのでそれなりの施設に運ぶ必要があるでしょうけど、急を要するというわけではないわ」

 

 それは何より。これでなんとか当初の目的である“兵士たちの救出”は達成できたわけだ。

 

「そうですか。ならすぐにどこかの街に運んで、合流を急ぎましょう」

 

 今は時間が惜しい。太陽の位置から察するに、おそらくもう午後に入ってしまった。このままでは明かりのない暗闇の中で野宿をする羽目になってしまう。

この特異点でそんなことをすれば、いつ襲われるかわかったものではない。なので安心して眠るためにも、一刻も早く合流しなければ。

 

「えぇ、それはいいのだけど…この大人数よ? 流石にあのバイクには乗せきれないでしょう」

 

「あぁ、そういうことですか。そこに関しては問題ないですよ。きちんと当てもあるので」

 

 小首を傾げる所長の前で、俺は宝具を発動させる。

兵士の数は両手で数えられる程度。それを運ぶだけならまぁ、“あれ”で足りるだろう。

 

「おや、これはまた…」

 

「大きいわね…」

 

 俺が出現させたのは仮面ライダーWの愛機、リボルギャリー。

この車両を端的に表現するならば、『デカくて速い装甲車』だろうか。

とてつもない馬力と並外れた耐久力でWのピンチを幾度となく救ってきた高性能マシンである。

 

「さ、乗ってください。全速力で近くの街に向かいます」

 

 かくして兵士たちの案内のもと、俺たちは近くにあるという“ラ・シャリテ”という街に向けて車を走らせた。

 

 * * * 

 

 ラ・シャリテに向かう道中。

運転をしている俺以外の二人が兵士たちに話を聞いた結果、徐々にではあるが敵の全体像が見えてきた。

 

「―――なーるほど。つまりその死んだはずの聖女サマが何故か復活して、今度は七人の化物とワイバーンを率いてフランス中を荒らし回ってる、ってわけか」

 

 復活した聖女。おそらく、この人物こそがこの特異点のキーパーソンとなる人物なのだろう。そしてその聖女に付き従う七人の化物というのはきっと―――

 

「…サーヴァントでしょうね。あぁもう、最悪だわ。敵もサーヴァントを率いているなんて…」

 

 まったくもって同感だ。敵もサーヴァントを従えているとなれば、この先の戦いはかなり厳しいものとなるに違いない。

いったいどんなサーヴァントがいるのかは知らないが、特異点Fのように一日足らずで解決できるとは思わないほうが良さそうだ。

 

「ま、手がかりないよかましですし、やるべきことが見えてきた分楽になったと考えましょう」

 

「はぁ…そうね。そうやってポジティブに考えなきゃやってられないわ」

 

 そうやってこの話題をまとめた直後。

巨大な衝撃音と共に車内が激しい揺れに襲われた。

 

「な、なんだぁ!? 何が起こった!?」

 

「敵襲か!?」

 

「きっとあのワイバーンどもだ! オレたちを追ってきやがったんだ!」

 

 一瞬にして車内がパニック状態に陥る。

特に負傷していた兵士たちの一部は半ば狂乱したような状態で暴れだしていた。

こいつはまずいと、一旦車を止めて現状確認のために窓を覗いてみる。すると、遠くから一つの人影が歩いてくるのが確認できた。

 

「オイオイオイ、マジかよ…!」

 

 見た瞬間に直感的に理解する。あの人影は間違いなく“サーヴァント”だ。

しかもよく見れば人影の背後には無数のワイバーンが飛び交っていた。

 

「冗談だろ…! いくらなんでも多すぎる!」

 

 ワイバーンの数は軽く数えただけでも五十はくだらない。

そんな大量の敵に加えてサーヴァント一騎をたった二騎、いや単騎で相手にしなければならないこの状況下は絶望的なまでに劣勢であることは明白だった。

 

「…まぁ、そうだよね。はっきり言って無理だ」

 

「ゼルノ…」

 

 ゼルノが指輪の状態を解く。

久方ぶりに見た彼の顔は随分と険しい顔になっていた。

 

「このままじゃ僕たちはなすすべ無く押しつぶされる。逃げようにも、あの数じゃ逃げ切れないだろう」

 

 静かに、そして冷静に状況を分析するゼルノ。

しかし、彼の口から語られたのは絶望的な言葉だけではなかった。

 

「…でも、生き残る方法がないわけじゃない」

 

「! 本当か!?」

 

「あぁ。成功すれば間違いなくこの絶望的な戦況をひっくり返せる。でも、代償は大きなものになる」

 

 鋭く、真剣な表情でゼルノは語る。

代償―――それがどんなものを指すのかは知らないが、今は悠長に迷っていられるほど優しい状況下ではない。

こちらの戦力は俺たちのみ。そしてもはや戦闘は避けられない。

そんな状況ならば、俺が選ぶべき選択肢はただ一つだ。

 

「―――構わない。たとえどんな代償を払おうと、俺は絶対にみんなを守る!」

 

 怖いだなんて言っていられない。

ここで俺が奮い立たなくては、守れるものも守れなくなってしまう。

それだけは絶対に嫌だ。救えるはずだった命が救えなくなる現実など見たくもない。

だから俺は、胸を張って決断した。

 

「―――わかった。それじゃあ行こうか」

 

 うなずき、ゼルノは手を差し出してくる。

俺はその手をしっかりと握りしめ、翼竜ひしめく戦場へと足を踏み入れた。




初戦闘(チュートリアル)終了。
次回は初の変身回です。
ではまた次回。
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