Fate/Masked Rider   作:ガルドン

28 / 29
お久しぶりです。ガルドンです。
今回の話はかなりの難産で2ヶ月も間が空いてしまいました、申し訳ない。
ここからは(恐らく)前のように投稿できるので、引き続き応援していただけると嬉しいです。
では本編どうぞ。


炎竜降臨

 二振りの剣がぶつかり合うたびに耳障りな金属音が響き渡り、赤い火花が辺りを照らす。

戦闘前にああも意気込んで剣をとったはいいものの、目の前で華麗な剣技を見せるサーヴァント―――バーサークセイバーは予想以上に強かった。

 

「はぁっ!」

 

「っ!」

 

 舞い散る花を思わせるような華麗な動きと、華奢な身体つきからは想像もできないほどの重い一撃。

攻勢に転じようとしても、それを予期していたかのようにすべて封じられてしまう。それ故に、攻めたくても攻められない状態が長い間続いていた。

 

 そんな状態を危険と判断したのか、先ほどから霊基が警告を発している。このまま守りに徹していてもいつか経験の差で押し切られ、間違いなく敗北すると。

そんなことはもちろんわかっている。けれど、体制を立て直そうにもスキがなさ過ぎて無理だ。

だから一瞬だけでもいい。彼女の動きが止まってくれるようなことがあればと、そう願ったその時。

 

「!? くっ!」

 

 絶え間なく攻撃を続けていたセイバーの背後から、突然黒い魔力の塊が飛来した。

驚いて飛来してきた方向に視線を向けてみれば、そこには銃を突きつけるかの如く手を握った所長の姿が。

どうやら苦戦している俺を見かねて援護してくれたらしく、“早く距離をとれ”と視線で促してくる。

思いがけない援護射撃にマスクの下でニヤリと笑いつつ、俺はすぐに距離をとった。

 

 さて、距離をとったはいいものの、どうするべきか。

今のところはセイバーが襲い掛かってくる様子はない。おそらくこちらの出方を伺っているのだろう。

となればこの膠着状態が続いている内に、如何にして彼女を打倒するかを考えたほうがいい。戦闘が再開されれば、相手するので精一杯でまず間違いなく細かい思考はできないだろうし。

ということで思考をフル回転させて打開策を組み立てようとする俺だったが―――何をどうつなげても、この状況を打破する策は組み上がらなかった。

 

 そもそもの問題として、俺の実力が全く足りていないのだ。

一応、前にアタランテを倒してはいるが、あれはあまり接近戦を得意としないアーチャー相手に接近戦を仕掛け続けたから勝てただけで、セイバーやランサーに同じ手が通じるとは思えない。

だから純粋な戦闘能力だけで勝とうとするのは無理だ。であれば、他の手段で対抗するしかない。

 

「―――っ、腹括るしかねぇか…!」

 

 長い黙考を経て、遂に俺は覚悟を決める。

今の実力であいつを倒そうとするのなら、多少の無理無茶は容認しなくてはならない。でなければ、突破口など永遠に開けないままだ。

そう結論づけ、所長に念話を飛ばす。

 

(所長、さっきはありがとうございます。助かりました)

 

(え? あぁいいのよ、サーヴァントを支援するのはマスターの義務だもの。それより、いきなり念話なんて飛ばしてきてどうしたの?)

 

(はい。突然で申し訳ないんですけど、これから魔力供給してもらう事ってできますかね?)

 

(……え?)

 

 警戒するセイバーの背後に見える所長の顔が困惑に染まる。

いやまぁ、当然の反応か。何しろ俺は今まで、所長からの魔力供給をほとんど受けずに戦ってきている。何故そんなことができるのかと言えば、それは俺のスキルである“魔力吸収”が関係してるのだけど…まぁそこは省くとして。

ともかく、俺は魔力供給を受けずに戦ってきた。なのに突然それをしてほしいなんて言われたら困惑するだろう。でも、やってもらなきゃ“あのリング”は使えないのだ。

 

(ちょ、あなた一体何する気よ!?)

 

(いやー、ちょっとした強化をするっていうか―――っと、そろそろ限界か)

 

 そうこうしているうちに、しびれを切らしたセイバーが動き始めた。

どうやら時間稼ぎはもう無理らしい。

 

(とにかく、魔力供給お願いします。じゃないとジリ貧のままなので)

 

(え、ちょ、ちょっと待ちなさ―――)

 

 困惑する所長の声を遮り、俺は一方的に念話を切る。

彼女には悪いと思うが、念話しながら戦うなんて高等技術を俺は身につけていないので仕方ない。

それよりも今は目の前のことに集中するべきだ。

 

 意識を切り替え、一直線に向かってくるセイバーを迎え撃つ。

程なくして身体中に何かが行き渡るような感覚が走る。所長が魔力供給を開始してくれたのだ。

彼女が素直に従ってくれたことに感謝しつつ、同時にろくな説明もしなかったことを申し訳なく思う。

後で詫びの一つでも言っておかなければなどと考えながら、ホルダーに出現した指輪の一つに手を伸ばし、指にはめた。

 

「…そろそろ、自分が勝てないと諦めたらどうだい?」

 

 俺の一連の動作を見たセイバーが問うてくる。

確かに、彼女が言うとおりに諦めたほうがいいのかもしれない。彼女と俺の間に横たわっている実力差は歴然だ。今更小細工を弄したところでどうにかなるものではあるまい。

―――だが。

 

「…諦めろ、だって? 冗談じゃねえ、諦められるわけ無いだろ」

 

 指輪を腰にかざす。

そう、諦めるわけにはいかない。俺が諦めれば所長が死に、フジマルが死に、アリスが死ぬ。それは嫌だ。

だから、()()()()()()()()()()()()()()

 

「! 魔力が急激に上昇して…! いったい何を!?」

 

「なあに、ちょっとした強化さ。ただし、一歩間違えば自滅する類のやつだけどなぁ…!」

 

 視界が明滅する。吐き気がする。頭が痛い。

身体中のありとあらゆる細胞が、この力に対して拒否反応を起こしている。

こうなることを予想していなかったわけではない。むしろこうなると確信していた。

本来であればこの力―――()()()()()()()()()()()()は比較的序盤で手に入れる力ではあるものの、強力な力であることに変わりはない。そんなものを初心者と何ら変わりない俺が使えば、当然拒否反応が起こるだろう。

 

 だがそれでも、俺はこの力を使うしかない。

たとえ負荷で二度と起き上がれなくなろうと、傷だらけになろうと、それでセイバーを倒せるなら構わない。

―――だからよこせ、ありったけの力を!!

 

「う、おおおおおおおおっ!!!」

 

 体内で暴れ回る魔力を気力でねじ伏せ、変身後の姿を強くイメージする。

すると次の瞬間、俺の周囲で巨大な爆発が起き、視界が閃光と煙に包まれた。

 

 段々と煙が晴れ、自分の姿が明らかになっていく。

黒かった腰のマントは真紅に染まり、頭部の装飾はより豪華になって、胸にはドラゴンの頭を象った装飾がついている。

加えてあれほど起こっていた不調はどこへやら。今の体調は悪いどころか絶好調だ。

 

「…魔力量が桁違いに上昇している。なるほど、それがキミの切り札というわけかな?」

 

「そうだ。正直使えるかどうかは賭けだったんだが…成功してホッとしてるよ」

 

 手にした剣を撫でつつ、嘘のない本心を口にする。

一時は失敗するかもしれないとも思ったが、なんとか変身できた。これでセイバーとの実力差は無くせた…と思う。

とはいえ、これは不完全な変身だ。いつガタが来て戦闘不能になってもおかしくはない。

なので―――

 

「はあっ!」

 

 足の裏に魔力を集中させ、一気に放出。ジェット機の如き急加速によって肉薄し、すれ違いざまに渾身の力を込めて一閃する。

確かな手応え。深くはないだろうが、決して浅くもない一撃だ。

 

「ぐっ…! いきなり、不意打ちとは…随分な仕打ちじゃないか…!」

 

 狂気と怒りが見え隠れする瞳でこちらを睨みつけてくるセイバー。彼女が押さえている腹部からは少なくない量の血液が滴っており、手傷を負わせたことを再確認できた。

 

「悪いが、こっちも切羽詰まってるんでね。こっからは手段を選ばずに()りにいかせてもらうぜ」

 

 “コピー”で増やした二振りの剣を構えながら、そう宣言する。

それを聞いたセイバーは歪に口元を歪めたかと思えば、空を震わすような笑い声を上げ、ひとしきり笑ったあとにこう言い放った。

 

「やれるものならやってみろ!」

 

 その一言を皮切りに、再び戦いの幕が切って落とされる。

互いの持てる力をすべて出しきらなければ即座に首が飛ぶ激戦の末、最後まで立っていたのは―――

 

「はぁ…はぁ…」

 

「がはっ…」

 

 美しいドレスを鮮血に染めた女騎士が倒れ付し、光の粒子となって消えていく。

その様子を最後まで見届けた後、俺も後を追うように地面に倒れ込んだ。




戦闘描写難しい…
ということでバーサークセイバー戦終了です。
まだまだひよっこのくせに2騎も鯖を倒してるのはやはりヤバイ(確信)
次回は王妃様と音楽家さんが登場。しばらく大きな戦闘はない…といいね!
ではまた次回!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。