「シャアッ!」
アサシンが右手に携えたシンプルな黒塗りのナイフを、力任せに振り下ろしてくる。
私はその一撃を自身の宝具である大鎌で受け止め、弾き返す。
そしてそのまま大鎌で斬り飛ばそうと横薙ぎに一閃するも、一手遅く寸前のところで躱された。
「………やはり」
距離を置いたアサシンを警戒しながら、ボソリと呟く。
前々から感じていた疑惑が、今の攻防のおかげで確信に変わった。
アサシンは間違いなく何らかの強化を受けている。以前とは態度や戦い方が変化していることから、恐らくはバーサーカーの狂化のようなものだろう。
敏捷性、筋力、魔力、etc…
例を挙げればきりがないが、これらが著しく上昇していることは先ほど身を持って知ることができた。
この厳しい状況に心の中で溜息をつきながら、次の行動をどうするべきか思案する。
――おそらく、今のアサシンの筋力は私より下。
しかし先ほどの速さから見て、俊敏性は私より上であることはわかる。
そして、こちらに残された魔力は残り少ない。先ほど未来さんから血――もとい魔力を拝借したはいいが、その量は心もとない。
故に宝具をあと一回使えば魔力が底を尽き、私は戦闘を続けることが出来なくなる。
……となると、一か八か賭けに出るしかなさそうだ。
思考をまとめた私は、一歩前へ出る。
「…ホォ、前ヘ出ルトハ。イイノカ? ソノ小僧ノ守リガ手薄ニナルゾ?」
「問題ありません。その前にあなたを倒しますので」
「…クク、面白イ。ドンナ作戦ガアルノカ知ランガ、ヤレルモノナラヤッテミルガイイ!」
「言われずとも!」
私はそう叫び返し、走りだした。
まずは先ほど立てた作戦を実行するため、アサシンへ急速接近する。
それをアサシンが黙って見過ごすはずもなく、懐から取り出した無数のナイフを投げつけてきた。
流石にこの距離でこの物量をすべて避けるのは難しい。
なので私は、致命傷になるものだけを避けて最短距離を突っ切る形で進撃する。
そうしてある程度近づいた所で自分の髪を鉄鎖に変え、アサシンの体に巻き付けて拘束した。
「…フン、傷ヲ負ッテマデ近ヅイテ何ヲスルカト思エバ、拘束スル為トハ…ダガ、コンナ貧弱ナ鎖デハ俺ヲ縛ルコトハデキン!」
その言葉の通り、動きを封じることができたのは一瞬だけ。
その数秒後には鉄鎖はいとも容易く引きちぎられ、アサシンが動き出そうとする。
しかし、それで十分だ。
なぜなら―――
「――グッ…体ガ…! コレハ…"石化の魔眼"カ…!」
アサシンの体が徐々に石化していき、やがて完全に身動きが取れない状態になる。
これこそ私の奥の手、
視界に捉えた対魔力がC以下の相手を石化させ、身動きできなくするものだ。
完全に動きが止まったことを確認し、トドメに回し蹴りをお見舞いする。
ガラガラと音を立てて石像が崩れ、さっきまでアサシンだったものが辺りに転がった。
「………終わった」
こうして暗殺者にあるまじき戦い方をするアサシンとの戦いは、なんともあっけない形で幕を降ろした。