Fate/Masked Rider   作:ガルドン

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蒼いキャスター

「はあ……」

 

戦闘を終え、私は一つため息をついてその場に座り込む。

危なかった。

まさかあそこまで強化されているとは思っても見なかった。あのまま正面からぶつかっていたら、恐らく力負けして敗北していただろう。

おかげで柄にもない賭けをする羽目になった。

 

とはいえ、勝ちは勝ちだ。今は素直に生き残れたことを喜びながら次の行動を起こすとしよう。

そう思い、立ち上がろうとするが、しかし。

 

「あれ…?」

 

立ち上がろうとした私の身体を、突如強烈な倦怠感と目眩が襲った。

 

「これは…っ!」

 

思わず心の中で舌打ちしてしまう。

原因を調べる為に急いで魔力の流れや体内の状態を調べてみる。すると、体の一部に淀んだ魔力―――つまり毒が流れているのを見つけた。

 

「…! やはり…!」

 

すぐに魔力を操作し、毒を排出する。

気休め程度ではあるが、これで今より状態が悪化することは無くなった。

まあ、今でも倦怠感や目眩は止まらないのだが。

まったく、アサシンも面倒な置土産を置いていってくれたものだとつくづく思う。

こんなことならあのナイフをきちんと避けておくべきだったと後悔しながら、近くにあった壁に背を預けた。

意識が朦朧とし視界が霞んでいく中、未来さんがこちらに駆け寄って来るのが見える。

その光景を見たのを最後に、私は意識を手放した。

 

* * *

 

アサシンを倒した後、突然倒れてしまったアナさんを前に俺は動揺していた。

 

「ア、アナさん? アナさん! しっかりしてください! そうだ、脈は…」

 

目を閉じて動かなくなった彼女に大声で呼びかけるも、反応は無し。

そこで脈をとってみると多少弱ってはいるものの、脈はある。一応心臓は動いているようだ。

 

「……よかった、気絶してるだけみたいだ」

 

彼女の安否確認を済ませ、一先ず安心する。

どうやらただ気絶しているだけのようなので、彼女が目を覚ますまで待って、それから行動を起こそうと思う。

この場所も今のところは危険が無いようだし。

ということで眠るアナさんの隣に座って、彼女が目覚めるのを待つ。

 

「……今頃カルデアはどうなってるかな」

 

静まり返った中で、ふとカルデアのことを思い出す。

ここにレイシフトしてからそこそこ時間が経つものの、カルデアに帰る手立ては一向に見つからない。

せめて同じカルデアの人間に会えれば状況が変わりそうなのだが。

 

「はぁ……お腹空いたな。なんかなかったっけ」

 

おもむろにゴソゴソと自分の衣服を漁ってみる。

その結果、3つの飴玉が見つかったのでそのうちの1つを口の中に放り込む。

少なくはあるが、これで多少は空腹感を紛らわすことができるだろう。

 

と、その時。

突然前方から声が聞こえた。

 

「おう、坊主。美味そうな飴だな、俺にもくれよ」

 

「――っ!?」

 

驚いて声のした方を見ると、そこにはフードを被り、杖を持った長身の男が立っていた。

すぐさま俺は眠ったままのアナさんの前に立ちふさがる。

それを見た男は感心したような表情を浮かべる。

 

「へえ…すぐに仲間を庇おうとするたぁ、なかなか根性あるじゃねえか。それで足が生まれたての子鹿みたいになってなきゃ、もっと決まってたぜ?」

 

男はニヤニヤと口元に笑みを浮かべながらそう言う。

明らかに小馬鹿にされている雰囲気の中、俺は精一杯の虚勢を張りながら男が何者なのかを尋ねた。

 

「う、うるさい! これは武者震いだ! 決して震えてるんじゃない! そ、そんなことより、アンタ何者だ? アサシンの仲間か!?」

 

「あぁ? ちげえよ。あんなのと一緒にすんじゃねえ」

 

男は心外だと言わんばかりにそう吐き捨てる。

そのまま彼はつかつかとこちらに歩み寄り、そこらじゅうに転がっていた石片に座り込むと、自らのことを語り始めた。

 

「俺はクーフーリン。キャスターのクラスのサーヴァントだ。んで、そこで寝てるランサーは俺の仲間でな。そいつを探して来てみたら、そこにお前がいたってわけだ。」

 

被っていたフードを脱ぎながらそう話すクーフーリン。

アナさんの仲間……つまり敵では無い、と言うことだろうか。

 

「それで? そういうお前さんは何モンだ? 見た感じ魔術師みたいだが、ランサーの新しいマスターかなんかか?」

 

「マスター……? いったいなんのことだ? 俺はただ、いきなりここに飛ばされて襲われたところを彼女に助けてもらった、ただの一般人だ」

 

それを聞いたクーフーリンは、少し考え込んだ様子でしばらく黙り込んでしまう。

その数秒後、彼は何か納得したような表情で立ち上がった。

 

「……はーん、そういうことか。だいたい事情は掴めた。坊主、なにも聞かずにとりあえずついてこい」

 

「はぁ!? いきなり何言って―――」

 

「いいから! 黙ってついて来い。そこに恐らくお前の仲間であろう奴らがいる」

 

「――仲間、だって?」

 

「おう、俺の隠れ家にお前さんの着てるその制服と似たような服を着た坊主とお嬢ちゃんがいる。どうだ? 心当たりあるか?」

 

「心当たりって言われても……」

 

正直、心当たりは無い。

何しろカルデアに集められた全員と顔を合わせる機会なんて一度しかなかったし、その一度しかない説明会の場で居眠りをかましていたせいで、他の人の顔もあまり記憶にない。

なので現時点でその二人が誰なのか、判別することは不可能だ。

 

「…心当たりはなさそうだな。ならついて来い。どうせ、行く宛もねぇんだろ?」

 

いつまでも黙っていた俺をみかねたのか、キャスターが立上がって手を差しだしてくる。

 

俺は少し考えて―――その手をしっかりと握った。

 

「あんたが言ってることが本当かはわからない。けど俺に行く宛がないのも事実だ。だから、付いていくことにするよ」

 

それを聞いたキャスターはニカッと屈託のない笑みを浮かべ、こちらの手を同じように強く握り返してくる。

 

「おう、いい選択だ。うし、そうと決まればとっとと移動するぞ。あんまり長居してもいいとこじゃねえからな」

 

そう言ってキャスターは未だ眠ったままのアナさんを背中に背負い、歩き出す。

その背中を追う形で俺も歩き出す。

 

目指すは、キャスターの隠れ家だ。

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