―数分後―
「うし、着いたぞ。ここが俺たちの拠点だ」
俺の前を進んでいたキャスターがある家の前で立ち止まり、そう告げる。
そこに建っていたのは、日本の住宅地には少し不釣り合いな、大きな洋館だった。
「おぉー……」
思わず感嘆の声がこぼれてしまう。
生まれてこの方、一般家屋にしか住んだことのない俺はこうやってまじまじと洋館なんてものを見ることは無かったので、つい感心してしまった。
「うっし、さっさと中に入っちまうぞ。ここは結界を張ってるとはいえ、外が危険なことに変わりはねえからな」
そう言ってクー・フーリンは足早に洋館へと入る。俺は見ず知らずの他人の家に入ることに若干の後ろめたさを抱えながらも、急ぎ足で洋館へ足を踏み入れた。
「―――すげぇ」
家の中は、THE・洋館という感じだった。
壁には中々に大きな絵画が飾られ、その隣には古めかしい趣のある時計が置かれている。絨毯には何かの模様が描かれており、そういうものには疎い俺でもこれは高いのだろうと感じるものが敷かれていた。
「おーい、帰ったぞー」
キャスターがそう声を上げると、奥のドアが開かれ、二人の人物が出てきた。
「あ、キャスターお帰りー……って、あれ?」
一人はクセのついた黒髪が特徴的な青年。
そしてもう一人は―――
「!? マシュ!?」
「み、未来さん!?」
ぴっちりとしたボディスーツに身を包んだ、懐かしい少女。
知らない人だらけのカルデアの中で、俺の数少ない顔見知りの一人であるマシュ・キリエライトがそこにいた。
「マシュ、無事だったのか! 良かった…! ほんとに良かった…!」
「はい、未来さんもお元気そうで何よりです」
思わぬ再会に感激しながらも彼女に駆け寄ると、マシュは微笑みながら言葉を返してくれる。
そんな他愛もないやり取りが今の俺には堪らなく嬉しいものに思えた。
そんなふうに俺が再会を喜んでいると、不意に隣から声が聞こえてくる。
「えーっと…マシュ、この人は……?」
……忘れてた。
マシュにばかり気を取られ、完全に隣にいた黒髪の彼のことを蚊帳の外にしていた。
自分のあまりにバカな行動に、顔が熱くなっていくのを感じる。
俺は静々とマシュの傍から離れ、彼女から自分が紹介されるのを待った。
「すいません、先輩には紹介がまだでしたね。こちらは先輩と同じマスター候補生である永瀬未来さんです」
「どうも…永瀬です」
「ど、どうも。オレは藤丸立香と言います」
「藤丸…フジマル…? って、まさか!」
聞き覚えのある名前の登場に、思わず声を大きくしてしまう。
藤丸と言えば、レイシフトする前に管制室で聞いた名前だ。
ということは―――
「あの、いきなりで悪いんだけどさ、藤丸君ってここに来る前に管制室に居たりした?」
「えっ、あぁはい。居ましたけど…」
――ビンゴ。
やっぱりこの藤丸くんは管制室にいた藤丸くんだった。
またもや発生した思いがけない再会に、内心でガッツポーズをしながら右手を彼の前に差し出す。
「これからよろしく。藤丸くん」
「はい! よろしくお願いします!」
藤丸くんは俺の右手をしっかりと掴んでくれる。
後で彼らになにがあったのかも聞かないとな。
そう思案しながら握手を終えると、背後にいたキャスターが声を掛けてきた。
「おう、自己紹介は終わったか? 終わったんならリビングに来い。そこで色々と話があるんでな」
そう言い残し、キャスターは奥へと消えていく。
それを聞いた俺たちはすぐにキャスターの後を追い、リビングへ足を運んだ。
* * *
リビングではキャスターが高そうな椅子に腰掛け、俺たちを待っていた。
「おう、来たか。んじゃ好きなところに座りな。これからする話は長くなるからな。なるべく疲れないようなとこに座れよ」
俺たちはそれぞれ思い思いの椅子に座り、キャスターの話に耳を傾ける。
それを確認したキャスターは腕を組み、話し始めた。
「まずはお互いに今まで起きたことを話してもらう。初めは未来、お前が話せ」
「えっ、俺!? ……わかった、じゃあ話すよ」
そして俺は今までに体験したことを全て話した。
カルデアでの事。
気づいたらここにいた事。
アナさんに出会った事。
アサシンと戦った事。
他にあったことも全てだ。
「――と、ここまでか俺の体験した全てのことだ。何か質問あるかな?」
「……未来さんも色々と大変な思いをしてこられたのですね」
「いや…そんなことないさ」
そう言って、俺は首を横に振る。
そうだ、そんなことはない。俺はただ、アナさんに助けられただけに過ぎない。
別に何かを手伝った訳でもないし、ただただ運が良かっただけなのだ。
「よし、んじゃあ次は立香にマシュ。お前らだ」
「あっ、うん。じゃあお話しますね」
* * *
彼の話を要約するとこうだ。
カルデアに来て早々、俺と同じように居眠りをしてレイシフトメンバーから外された彼が部屋で待機していたところ、爆発音が聞こえて現場に行ってみると瀕死のマシュがいて、彼女と一緒にいたら急にここへレイシフトしてしまった。
そして、色々あってデミ・サーヴァントとなったマシュと共に街を彷徨っていると、ライダーのサーヴァントに遭遇。戦闘になり、苦戦しているところにキャスターが加勢してくれてなんとか倒すことができた。
そこからキャスターと共闘することになり、この屋敷で待機していたら俺がやって来た、とのことだった。
……なんだか俺よりも大変な思いをしてる気がする。
とまあ、お互いに体験したことを話したわけだが、どちらも所長には会えていない。
未だ安否のわからない所長のことを気にしつつも、俺は話しを再開したキャスターの声に耳を傾けた。
「よし、これで一応お互いの事情は把握できたな。んじゃ、こっからはここで何が起きたかを説明すっから、きちんと聞いとけよ」
俺たち全員がコクリと頷く。
それを見たキャスターは満足げな笑みを浮かべながら、説明を始めた。
「さっきも話したと思うが、オレはこの冬木で行われてた聖杯戦争ってのに参加してた。キャスターのサーヴァントとしてな。そこまではOKか?」
「うん、大丈夫。で、その聖杯戦争っていうのが願いを叶えてくれる聖杯を奪い合う儀式のことなんだよね?」
俺がそう口にすると、キャスターは頷いた。
聖杯戦争やサーヴァントのことについては、一通りさっきの話で理解できたので問題ない。
「あぁ、その通りだ。んで、その聖杯戦争も順調に進んでそろそろ中盤に差し掛かろうか、ってときに信じられねえことが起きた」
「信じられないこと?」
「――この街に住んでた人間がな、みんな消えちまったんだよ。いきなりな」
「「……はあ?」」
キャスターから放たれたなんとも信じがたい言葉に、俺と藤丸は呆気にとられる。
いくらここが地方都市と言っても、その人口は数百万人は有に超える。
そんな大勢の人間が突如として忽然と姿を消すなんて話があるだろうか。
いや、断じてあり得ない。
それこそ魔法でも使わない限り、そんなことは起こりえないだろう。
「……とまあ、信じられねぇとは思うがこれは事実だ。現にお前らはここに来るまでの間に、生きた人間にあわなかっただろ? それが何よりの証拠だよ」
「そ、そうだけど…」
キャスターにそう言われ、俺は口ごもってしまう。
確かに俺はここにたどり着くまでの間、生きた人間には遭遇していない。それは藤丸たちも同様だ。
「つーわけで完全に人の消えた、誰もいない街が出来たわけだ。オレたちはそのまま聖杯戦争を続けるわけにもいかなかったんで、戦いは一時的な休戦状態になったんだが…あるサーヴァントが暴れだしてな。休戦どころじゃなくなっちまった」
「その、あるサーヴァントっていうのは…?」
俺がキャスターに尋ねると、彼は心底うんざりした顔でその名前を口にした。
「セイバーだよ。あの野郎人間が消えた途端、水を得た魚みたいに暴れだしやがって、そのままアーチャー、ライダー、アサシン、バーサーカーの四騎を討ち取りやがった。しかもその倒されたサーヴァントが全員黒くなって復活しやがるし……ほんとに無茶苦茶だぜ」
よほど苦い思いをさせられてきたのだろう。キャスターは嫌いだという思いを隠そうともせずに吐き捨てる。
「セイバーの戦闘の余波で街は炎上、オレとランサーは敗退してない奴同士、同盟を組んでセイバーたちに対抗してる…ってのが今までの経緯だ。どうだ、理解したか?」
「うん。大体分かった」
「オレもOK」
「私も理解しました」
それぞれが頷きながら自分の意思を示す。
キャスターは俺たち三人の顔を一瞥し、おもむろに立ち上がった。
「おし、状況説明も終わったことだし、次はこれからどうするかについて……あん?」
そう言いかけ、キャスターはどこかあらぬ方向へ顔を向ける。
どうやら何かを感じとったようだ。
「? どうしたのキャスター?」
「……お前ら、急いで出るぞ」
そう言いながらキャスターはつかつかと玄関へ続くドアへ向かう。
何が起きたのかわからない俺たちは、急ぐキャスターを再度問いただした。
「ちょっ、ちょっと待てよ! 一体どうしたんだよいきなり! 何かあったんだろ!?」
俺たちの声を背に受けながら、キャスターは尚も歩みを止めようとしない。
そしてドアノブに手を掛けたその時、彼は若干の焦りをはらんだ声でこう言った。
「…アーチャーが出てきた。しかも野郎、生存者を襲ってやがる」
その一言を聞き、俺たちはすぐさま行動に移る。
こうして俺たちは生存者を救うため、その現場へ急行した。
剣豪面白かったですね…(今更)
個人的にはメインシナリオ限定なら5本の指に入る面白さだったと思います。
そして段蔵ちゃんが可愛かったのなんの。
あの可愛さでママ属性持ちとかやばすぎますよ…
ではまた次回。
2018/07/17
短かったので前話と統合。