鎮守府に勤めてるんだが、俺はもうダメかもしれない 作:108036
なにぶん初投稿なので、微調整で頻繁に改稿したりしますが許してくだされ!
その後付いてくると言った夕立は「なんて奴と一緒にいるんだ!べらぼうめー!」とかって叫ぶ人に引っ張られてって別れた。
クソっ俺が何したってんだ!べらぼうめー!
だがこれは好都合だ。
久々に体を動かしたい気分だったけど、訓練中を他人に見られるのはどうにも恥ずかしくて嫌だったし。
...着任半年で艦娘と他人同然ってのもどうかと思うってのはわかるが、言うな...俺もわかってっから
作戦を現地で取るってんだし、この辺もいよいよ改善していかなきゃいけないか....
努力はしようかな、無理だと思うけど
まぁ、そんな事より今は体を動かそう
燦然と並ぶ装備の中から刀のような形状をした物を一本抜き取る
しっかりと握り込むと、懐かしい「武器」の重さに、栄養が足りてない顔も思わず綻ぶ
ここは訓練室だ
艦娘達の練度を向上させる為に作られた物だが、今はほぼ誰も使ってはいない
何故なら訓練室は鎮守府内のここと鎮守府前の海に二つあるからである。
鎮守府内のここは小さく、限られた訓練しか出来ないが、もう一つの海の方は規模も大きく海にあるがゆえにより実践に近い状態で訓練が出来る。
艦娘達はここに来る理由が無いのである。
なのでここは全くと言っていいほど人がいない場所だ。
ただ稀に真夜中に「マイクチェックの時間だオラァ!!」と声が聞こえるという噂もあるが、さて...そいつは一体何島なんだろうな
簡単に言えば武器も弾薬も充実し、誰の目にもつかずに訓練が出来る俺の理想が詰まった素晴らしい場所だって事だ。
ヒュンヒュンと馴染ませるように少し振る。
訓練兵の際に銃剣やら剣道やらやったが、実戦に出る内にほぼ我流になってしまっている俺の動きに規則性は無い。
対峙する物の動きに合わせて自由にあてるだけだ。
そんなだから切る、と言うよりはぶっ叩いている、の表現の方が正しいのかもしれない。
この刀形状の武器にもこだわりは無く、艦娘仕様の物で壊れにくいから使っているだけ。
他にも艦娘が使っている接近戦用の武器は殆ど手に馴染ませている。
なんでかって?
いや、なんてったってこれらの武器無けりゃ俺生きちゃいなかったからね。
部品を回して貰ってたってわけさ。
前も言ったかもだけど、俺の一兵卒時代はまだ艦娘はいなくて...いや、正しくは開発段階とされてて、もちろん艦娘が持つ装備諸々もそうだったわけで。
そんな時にも奴らは問答無用で攻め入ってきたし、なら戦っていたのは当然俺ら下っ端で前線に出る奴らだ。
何回も迎撃したり防衛したりしてたんだけど、そんな中チート持ちな俺は思ったんだ。
壊れねぇ鈍器がほちぃ...ってね。
人間が一人で持てるような火器じゃダメージは無いし何かでどつこうとしても、チート持ちの筋力的にも敵さんの装甲の硬さ的にもその武器の方がもたない。
だから接近されたら逃げるしかない訳だけど、どうしても逃げ切れない状況も存在するんだよ、困ったことに。
殆どが陸戦だったとはいえ、こちとら海軍。
それこそ海上なんかがいい例だ。
そうなると自然に俺は素手で戦うしかなくなるんだよね。
戦いに出て暫くはそれでも運良く生き残れてたけど、それこそ限度がある。
実際に何度も死にかけたし。
何か深海棲艦にも通用する武器が欲しい...そうした旨をダメ元で当時の上官に提出した所、何やら怪しい返事が帰ってきた。
ちょっと今開発中の兵器の試作品があるんだけど使ってみる?質問とかは一切受け付けないけど
勿論こんな文ではないけど、内容をかいつまんで説明すればこんな感じだ。
軍だとやっぱこういう事もあるのか、と一人納得しながら是の方向で返事を返すと、送られてきたのは見覚えのある形状のそれら。
天龍のものらしき剣、雷、電が持つ錨等などなど。
もうこの時点で何を開発中か俺は分かっちゃった訳だけど、あんまり興味もなかったので放置した。
あの呼び出しがあるまで俺はもう提督になるだなんて思っていなかったし、頑丈な武器であればどうでも良かったしね。
んな事もあって、艦娘の装備のあれこれは大体分かっている。
見た感じだと、これも俺が持ってた試作品とあんまり違いは無いかな。
今ぱっと持ってみただけだけど、重さも大差はない。
やっぱり、艦娘と共に完成品で出てくるもんなのかな?
地味に工廠行った事ないから建造された時の云々はわからねぇんだよな....
あ、あと俺が使えたのは近接系の武器だけで艤装の類は動かせなかったから使った事はない。
ってか砲撃とかも使えた事がない。
やっぱそこら辺は艦娘じゃないとダメな理由がなんかあるんだろうと思う。
まぁあれで殴るならそれもできん事は無いとは思うが...流石にね?
それに海でのみ見つかる希少な兵装もあるらしく、それは流石に回された事はない。
多分だけど、ダメコンもそうなんだろうな....有用性が気づかれてるかそうでないかってだけで。
「ハッ、いやに懐かしい...な」
おいマイマウス、無駄口で栄養消費してんじゃねーよ。
ただでさえ飯食ってねーのに、鍛える分の養分も消えるじゃねーかよ。
待て待てイラつくともっと栄養が飛ぶ、クールに行こう、クールに。
...おし、落ち着く意味も込めて、プログラム行っとくか。
ピッとボタンを押すと、がしゃがしゃと天井から吊り下げられる幾つもの大型機銃。
沢山ある訓練プログラムの中で、これは回避の項目だ。
今回赴くのは指揮官としての勤めから。
ならば、これから始めるのが良いだろう。
船で行くつもりではあるが....もしもの場合は『アレ』も出し渋ってはいられない。
できれば使いたくはないけどな.....
実戦により近く、乱戦仕様のそれはこちらの避けられるルートを全て潰し、かつランダムに傾いて俺を見つめている。
さぁ、軽く回していくか。
コントロール室から本格的に訓練所に足を踏み入れ、そのまま進む。
そして何の考えもなく、軽くもなければ重くもない、いつも通りの足取りで。
始まりの合図であるスタートラインに踏み出した。
◇◇◇
〜〜鎮守府前の演習場にて〜
「ねぇ暁、どうしてみんなは鎮守府内の訓練所を使わないんだい?」
幾多も出ては消えてゆく的に誤差なく正確に風穴を開けてゆく響は、同じく隣で海を駆ける暁に疑問をぶつけてみた。
自らの練度を上げるための大切な訓練の最中とはいえ、その効果は実践とは程遠いものである。
その為か、今日はなんとなくやる気が出ずにいたのだ。
そう、降って湧いた深い考えもない疑問が訓練の重要度を上回るくらいには、今日はやる気が出なかった。
砲撃の爆音の中では聞き取り辛かったのか、内容を聞き直しながら暁は的を撃つ手を止めた。
「え?なに?なんて言ったの?」
「鎮守府の中にある訓練所の事だよ。どうしてみんなが使わないのか知りたいんだ」
もう一度同じ内容を復唱し、今度こそ聞き取ったであろう暁が語り出そうとした所で
「何の話なのです?」
2人が手を止めたのを不思議に思った電が、話に参加してきた。
第六駆逐隊で縁もある彼女らは仲も良く、訓練も同じように3人で参加していた。
もう一人の第六駆逐隊のメンバーである雷は未だ鎮守府にはおらず、いつかまた四人で揃うことが今の3人の目標だった。
「もう一つの訓練所のことね
響が何でみんな使わないのかって」
「理由はあるのかい?」
そうした質問に、帰ってきた反応はそれぞれ予想していたとおりの物だった。
電は「あー、あそこか」とでも言うような表情をして、暁は満足げな顔で語り出そうとしている。
情報を受け取るべく響は、暁の声に耳を傾けた。
「あそこはね、この鎮守府が建てられる時に練度の高い艦娘用にって作られたらしいわ。
でも、その頃実際に練度の高い艦娘がいなかったから訓練プログラムの調節を間違っちゃって、危ないからみんな使わなんだって」
「ならみんな使わない、じゃなくてみんな使えないのか」
「そうね!
レディーもそう思うわっ!」
誇るように、むふーと胸を張る暁。
「ありがとう暁、理解できたよ」
「なんてことないのよ!
だってレディーなんだから!」
先程よりも更に満足げな暁に「うん、そうだね」と返し、頭ではさらに出てきた疑問に思考を傾ける。
(調節を間違った、ってそこまでの物なのかな?
何人かは使ってそうなものだけど)
長門、不知火、金剛四姉妹、一航戦...パッと思い当たるだけでも、今現在練度が高い人達はそう少ないわけでは無い。
そんな人達ならこの鎮守府近海の訓練所の設備では満足出来ないだろう事は容易に想像できる。
だからこそ、今度は最古参の一人である電に質問を投げかける。
「でも、誰か一回くらい使わなかったのかい?」
突然話を振られてはわわ...と慌てる電だが、いつもの事なので黙って待つ。
やがて話す内容を構築し終えたのであろう電が語り出す。
「そ、それがですね、使った人達が軒並み大破しちゃって...それから正式に使用禁止になったのです...」
「なにそれ!?
それは知らなかったわ....」
思わず、といった様子で暁が声を漏らすが、響も同じ心情であった。
高練度の艦娘を大破させる訓練場など、正直言って想像出来ない。
「何故か反撃機能がついているのです。
実弾仕様で、対深海棲艦用の連装砲や機銃が幾つもあって...訓練の為に作られたとは思えない代物...とのことなのです」
「深海棲艦用のかい?
艦娘の訓練所に?」
「なのです...」
馬鹿な、そんな感想が浮いて出るのも仕方がないくらそれは馬鹿げた事だ。
艦娘の攻撃以外でも深海棲艦にダメージを与えようと研究に研究を重ねられて作られた現代兵器の数々は、しかし威嚇と牽制には使えるものの撃破に至るまでの物はまだ確認されていない。
だがそれでも艦娘に直撃すれば痛いでは済まないようなものばかりであったはずだ。
そんなものを使うなど、訓練を実弾で行っている事と同義である。
「そ、そんなの無理よ...」
「そうだね...」
嫌な想像をしたのか少し震えながら言葉を漏らす暁に、響も同意する。
だが響達は知らない。
その訓練所で今まさに通常の人間であればかするだけで肉片に変わる弾丸を避け続ける男がいる事に。
そしてその人物がこの鎮守府の司令官の1人である事に。
さらにはその事実を近いうちに知る事に。
響達は知らない...今、まだこの時点では。
いったい誰を基準にして訓練所は作られたんでしょうかねぇ...いやぁ、わかりませんねぇ...
お次は提督が疲れを癒しにお風呂に行きます。
お風呂、お風呂ですよ提督諸君。
何かあるといいですね。
はぁ...第六駆逐隊に予定通りのこと喋らせるのって思ったより難しいですね....
いや、書いてるの自分なんですけどね?
持て余すというか、ひとりでに喋り始めちゃうと言うか
説明しにくいので、皆さんも小説書いてみてください(真顔)