鎮守府に勤めてるんだが、俺はもうダメかもしれない   作:108036

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今後の設定的に叢雲に執務室で怒鳴られてるとおかしいのでしれっと食堂のところ変更入れました!

んでもって、前提条件の設定と勘違いを早く並べ終えるために今日は2話連続で投稿します。(今回で追いつくわけじゃないけど)


5話 風呂場の巡り合わせ

「ぶぅえくしょい!

あ"〜、風邪かぁ....?」

 

久々の訓練プログラムでいい汗かいたと思ったらこれだ。

 

口調も元に戻ってるって事は、もしかしたら本当に風邪ひいたのかもしれん

 

 

まぁ兎にも角にも今は風呂だ。

 

一汗かいたあとは風呂と相場が決まっている。

 

 

ってな事で現在風呂に向かってるんだけれども...いやー、参ったね。

 

体が鈍り過ぎてやばい。

 

 

思うように動けないわ体に力が入らないわ弾道の読みを間違えるわでもう散々な目にあった。

 

これまでも生き延びてきたわけだし回避には結構自信があったんだが、それも挫けそうだわ。

 

早急に体を元に戻さねば、今度の実戦で痛い目見ること間違いなしなレベルだこれ。

 

 

作戦まで2週間、間に合うかねぇ...いや、間に合わなきゃマジで死ねるから死ぬ気で頑張るんだけどさ。

 

 

そんな感じで落ち込みながらもお風呂場に到着。

 

男女と書かれたのれんで二方向に別たれているまるで温泉といった感じの外観の風呂は、実質中の構造も和風な温泉風に作られている。

 

だが女湯はもちろん艦娘専用で『入渠』を行って傷を癒す為のものであるため、その実見えない壁の中は機械がぎっしり詰まったハイテク風呂になってはいるが。

 

んでもって追加で拡張も行ったので、女湯は結構でかい。

 

 

しかし男湯はほとんどの場合提督しか使わないため、その規模は小さな物だしハイテクなんぞとは無縁の普通の風呂だ。

 

まぁそれでも一人で使うには十分な広さがあるため、俺はこの風呂が好きだった。

 

広過ぎず、だが決して狭くはない。

程々に、という言葉がが当てはまるだろう。

一人で入っていても寂しく無いぐらい、ちょうど心地いい空間の広さだったのだ。

 

執務で忙しかったこれまでも風呂だけはよっぽどのことがない限り入っていたし、それが1日の癒しだったとも言える。

 

 

それが今、時間を気にせず好きなだけ堪能できるのだ。

そう思うと何もしていないのに何かを成し遂げたような感慨深い気持ちになり、涙が滲みそうになる。

 

 

表情はどうにも変わらないが、目ん玉はうるうるの濡れ濡れだ。

 

もしかしたら鼻水も出てるかも。

 

やべぇ、号泣しそう。

 

 

流石に艦娘達も利用する風呂の前で号泣と言うのも如何なものかと足早に暖簾をくぐり、脱衣所で速攻早脱ぎを披露し、そのまま風呂にドボン。

 

そのままゆっくりと力を抜き、仰向けで浮上して目を瞑った。

 

 

俺以外誰もいない浴槽は水の音以外は全くの無音で、そんな空間が俺の心をじんわりと癒していく。

 

心地いい。

 

艦娘の怒号も、汚物を見るような視線も、大量に積まれてはさらに増える書類も、終わりの見えない現状も、今この瞬間はそれらから解き放たれている。

 

 

作戦が終わればまたそんな日々に戻るが、今現在書類からは解放されているわけだ。

 

一個の作戦のあれこれなど日々の書類の量に比べれば軽い軽い。

鉛と羽くらいの差がある。

 

なればこの2週間は実質休暇のような物だ。

 

 

きっと神様か何かが与えてくださった充電期間に違いない。

 

しっかり休みながら体を鍛えて飯も食って、二週間後には健康になって作戦を迎えよう。

 

そして絶対生きて帰ろう。

 

 

決意新たに、俺は深い深い精神統一の闇に意識を落とした。

 

 

.....寝たとも言う。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

〜脱衣所〜

 

 

「どうしましょう....」

 

鳳翔は困っていた。

 

出撃もなく、入浴目的で風呂に来る艦娘もいない夕方手前。

 

 

女湯のついでに男湯も掃除しておこうと脱衣所を訪れた先で珍しくも誰かが脱ぎ捨てたであろう服を見つけたのだ。

 

それも提督達がいつも着ている軍服である。

 

 

この時点で頭に浮かぶ可能性は3人しかいなくなったわけだが、その内2人は先程鎮守府内で見かけた所だ。

 

 

ならばもう答えはひとつしかない。

そしてその答えが鳳翔を困らせていた。

 

 

他の二人については鎮守府内での評判はそう悪いものではない。

 

建設が終わっても長らく明確な司令官というトップがいなかったこの鎮守府に配属された初めての提督があの二人だ。

秘書艦を取らず、2人で鎮守府の運営を行っていたもののあまりうまくいっている様子も無く、改めようとする気もないように見え、最初の一ヶ月は皆不安に思っていた。

 

だがもう一人の提督が来てからは置かれた状況からか、少なくとも以前よりはとても上手くやっている。

 

 

その努力が現れている箇所を紹介するならば、あの綿密に作られた...「作戦メモ」と題されたあの指南書は外せないだろう。

簡単に言えば、通常の作戦指令書とは別に配られる異常時のマニュアルのような物だ。

 

驚くべきはその完成度である。

 

それがどんな不測の事態であっても、戦場でのありとあらゆる事情に対して対処法が事細かく記されており、その全てが実戦で試せば「なるほど」と思える合理性のある物ばかりなのだ。

 

まるで実際にその状況に陥った事があるかのような視点から述べられているその作戦メモは、ただ読むだけでもためになると艦娘達の中で評判だった。

 

そこまで書く必要があるのか、という状況のものさえある。

だがそれがあの提督二人のやる気を示しているようにも思え、しかし状況が状況なだけに艦娘達は苦笑いしつつも、毎回提督からの指令書を密かに楽しみにしていた。

 

指揮も作戦メモ以上の事は無いが、今の所大きな失敗も無く轟沈した者も一人もいない。

 

事前に細かい対処法が示された書類が配られ、その対処法が正しく効力を発揮したからだと言える。

 

 

普段はダメだが仕事はやればできる、人間としてはともかく提督として頼れる、これが2人への評価で、皆一定の信頼を彼らに寄せていた。

 

 

しかしもう一人はといえば、その評価は地に落ちていると言っていい。

 

 

最初の一ヶ月は先の2人がそのような状態であった為、もう一人提督が来ると聞いて艦娘達は期待した。

 

これは大本営が二人の状況を見て、この2人を正すために今度は有能な提督を送り込んだのではないか、と。

 

 

そんな期待は着任当日から脆くも崩れ去った。

 

訪れた提督は若かった。

若過ぎた。

 

 

どう考えても20代前半、ともすれば十代に見えない事もない。

 

この年齢で、この大規模な鎮守府で提督をする事が何を示すか。

簡単な事だ、コネとしか考えられない。

 

しかもこの年齢でコネを持っているとすれば、それが親類であろう事も想像に難くない。

 

どれだけ有能であっても、妖精との相性という絶対的な条件から年若い提督が増えているとはいえ、それは立ち上げたばかりの小さな鎮守府だけの話だ。

大きな鎮守府にここまで若くして提督業に着くなど普通ありえない事であり、大本営も認める筈がない。

鎮守府の数にも限りがあるのだ。

軍人として経験を積んだ人物から提督となるのが当たり前であり、実際前者の2人も中年に片足突っ込んでいる。

 

 

しかし現に大本営からの指令で彼はこの鎮守府に着任している。

 

ならば当然、普通でない入り方をした事になるだろう。

 

 

 

さらに着任早々彼は自室から出てこなくなった。

自身の部下にあたる艦娘達への挨拶も無しにだ。

 

しかも他の2人の提督曰く、自室に篭るばかりで提督としての職務を放棄しているというのだった。

 

 

それだけではない。

艦娘は限りなく人に近い存在であり、性別として女性である。

それも今まさに花も恥じらう年頃の乙女達である。

 

無骨な鎮守府で、生きていくために最低限必要な物以外にも欲しいものが沢山ある。

 

 

我慢している物もあるがどうしても欲しいものも、勿論ある。

 

だがそんな時に限って彼は自室から出てきて否と述べるのだ。

 

 

この鎮守府の戦果は客観的に見ても悪くは無く、近頃は演習でも負けなしだ。

 

大本営からの資材供給も金銭的な支援もきっと多い筈。

 

 

艦娘個人の要求する小物などそれほど値が張るものでは無い。

支給される資金と比べて見れば米粒にも足らないようなものだ。

 

それを拒む理由とは何か?

そもそも何故2人ではなく彼が否と言うのか?

 

悩む艦娘達に2人の提督はぼそりと漏らした。

鎮守府の資金輸入は今現在彼が握っているのだと。

考えられるのは割り振られた資金を自らの物としている事、つまり横領かもしれない....と。

 

 

本人が聞けば「ふざけるなぁぁぁあああああ!!」と吠えたろうが、事情を知らない彼女らからすれば如何にも妥当だと思えてしまう証言で、実際この鎮守府の過半数はこの考えをすんなりと受け入れてしまった。

 

 

 

故に幾人かの艦娘が、2人へ大本営への報告をとアプローチをかけたが、2人からの返事は「できない」というものだった。

 

 

指揮を取る際は敗北か撤退ばかり。

仕事をせず、艦娘達に顔も見せない。

報告できる問題ならば、幾らでもある提督の調査に、何故か「踏み込めない」と。

 

それは圧力がかかったのかと問えば、2人は口を閉ざして答えなかった。

 

それを沈黙の肯定であると彼女らは受け取り、この事がさらに艦娘たちの想像を加速させた。

なるほどそんな存在に睨まれては、サボっていれば命に関わる。

下手に轟沈者を出して大本営に睨まれるような事があれば、その圧力の元がどのような行動をするのか。

2人も仕事をするわけだと。

 

 

そしてこの鎮守府での彼の評価は、引きこもって仕事をせずに鎮守府の資金を横領し、その利益が損なわれる場合にだけ動く「犯罪者」となったのである。

 

 

もちろん艦娘達もそんな状態を良しとしたわけではない。

 

しかし地位の高い繋がりがあるというなら、逆らえば即刻解体し、それをもみ消しするという事もあり得るだろうと彼女らは考えた。

 

だから誰も表立ってその横領の事を口にしない。

 

一部気の強い幾人かは逆にその状況に正義感を駆り立てられたのか、彼に対して言葉でも強く当たるが、殆どは軍人として恥ずかしく無いのかと視線を向けるか無視かの二通り。

 

 

そんな状況を打破する為にこれまた一部の艦娘は決定的な証拠を見つけ、大本営に直訴しようと動いているが、彼がまだ鎮守府にいるところを見れば成果はまだ上がっていないのであろう事は想像に難くない。

 

 

 

そんな彼が今、目の前の風呂に入っているのだ。

 

服は急いでいたのか脱ぎ捨てられている。

 

 

他の二人なら片付けて洗濯して干して、の流れになるのだが、こういう人物は腫れ物だ。

触ればどんな反応が返ってくるかわからない。

下手な事をして何か気に触れたら...という考えも浮かぶ。

 

横領云々に関しては鳳翔しかり半信半疑な艦娘も少なくは無いとはいえ、年若く、滅多に顔を見せないのもまた事実。

 

噂はよく流れては来るが実際に見かけた事も殆どなく、面と向かって話をしたことなど唯の一度もない。

 

 

どの様な人物なのか確証を持てないのだ。

それだけにやはり困ってしまう。

 

 

どうしたものかと判断に迷う内に....

 

 

 

ーーーー風呂場からの扉が開いた。

 

 

 




この話の話は正直苦しいと思わなくもない。
元があんまりに辻褄合わなかったから勘違いってより騙されてる風味に寄せたけど....急ごしらえだから「え?ここ言ってたのと違うじゃん」ってのがあるかも
でもなぁ....丸ごと変えるってなるとあれなんだよな。
矛盾でイライラさせちゃうだろうけど、緩めにご指摘ちょうだいな。


んでもって、どうやら艦娘からの態度がキツイのは、提督が思う理由とは違うようですねー。意外ダナー(棒)


そして誰得な提督のラッキースケべとただの設定説明で終わった今回。
説明長いから飛ばしたよって人もいるかもですね。
私も小説読むときはたまにやっちゃいます。

次の投稿は1分後です。

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