半オリ展開って中々難しいですね。
原作からの引用も楽しいけど、丸々移しはつまらない。でも半オリ展開なら、難しい分書くのも楽しいし、呼んで下さる人も、ニヤリとするところや、展開がどうなるのか楽しみになる部分も出来るんじゃないかなって思います。
「やぁっ!」
鋭い刺突がフレンジーボアに突き刺さる。猪特有の断末魔とともに、ボアは青白いポリゴン片として四散し、3人それぞれの目の前にリザルト画面が表示された。
仕留めたのはアスナ。
レイピアから繰り出される正確且つ高速の突き。
その挙動はアルゴからすれば、とても初心者とは思えない程で、舌を巻かざるを得ないものだった。
「凄いナ、アーちゃん。剣先が見えないヨ。何かフェンシングでもしてたのカ?」
「…別に。この武器が一番しっくりきたから使ってるだけ。」
しっくりきたから。
そんな言葉も、思わず納得出来てしまうほどにアスナの細剣捌きは巧みな物だった。アルゴもそうだが、エステルもアスナのそれには驚き、そして賞賛に値する物だと感じていた。その理由として、事実として現に部活でフェンシングを習っている友人である凜の存在だ。彼女自身、フェンシングの腕前はかなりの物で、大会では常に上位常連。全国大会にまで駒を進めたこともあるほどだ。そんな彼女の友人ともなれば、その剣捌きを見る機会もあるわけで、フェンシング経験の無いアスナが、凜と謙遜無いほどの巧みな細剣捌きというのは、まさしく天賦の才と言う言葉が似つかわしいかも知れない。
「でもアーちゃん、なんで通常攻撃ばかりなんダ?ソードスキルを使えば、もっと早く倒せるのニ。」
「ソード…スキル?」
まさか…そこまで知らない初心者なのか。これは中々…伝えるのに骨が折れそうだ。アルゴは目の前のビギナーが、よくログアウトスポットまでやってこれたものだと感心した。あの辺りの適正レベルは3、悪くて2あった方が良いとされる場所だ。それを予備知識どころか、基本知識が無いままにたどり着くともなれば、もはやそれは細剣の才能も加味して、かなりの運を持っているのだろうか…。
「全く…仕方ないナ。」
アルゴは苦笑しながら自身のアイテムストレージを操作する。リザルト画面を確認していたアスナに、とある許諾の是非を問うウインドウが開かれた。
「ホレ、○ボタンを押してみロ。」
言われるままに、○ボタンをタップしたアスナの眼前に、一冊のノートがオブジェクト化される。その表紙には、鼠印と共に題名としてこう記されていた。
「ガイド…ブック…?」
「まぁ参考書みたいな物だネ。特別でタダにしておくから、大いに役立ててくレ。」
ぱらり、とページを開いたアスナは立ち上がり、記された文字を指でなぞりながらブツブツと読みふけっていく。
「…な、なんだか怖いヨ、エッちゃん。」
「ま、まぁログアウトスポットに向かった理由が模試って位だし…こう言うことになると読みふけっちゃう質なんじゃないかしら…。」
「…フレンジーボア。」
ぼそりと、しかしはっきり呟かれた言葉に、二人はアスナを見やる。彼女の目先には、見慣れたMOBであるフレンジーボアが、何食わぬ顔で闊歩していた。
「通称青イノシシは非アクティブ…?非アクティブっていうのは……なるほど、こっちから攻撃しない限り敵対してこないのね。…データの出典や前提条件が愛妹だわ。著者はきちんと検証して、妥当性確認しているのかしら。」
「ス、スミマセン…。」
細かな考察と共に、変なところでダメ出しを食らってしまった為に、条件反射でアルゴは謝ってしまい、さすがにそんな彼女には、エステルも苦笑しながら同情の意を向ける。
「でも初心者向けには中々良い参考書ね。索引も脚注もしっかりしているし、適度に図解もあるし。」
「ド、ドーモ…。」
落とされて持ち上げられ、そんな扱いに、喜んでいいのやら落ち込んでいいのやら、微妙な心境になってしまう。
そして…おもむろに腰に携えた鞘からアイアン・レイピアを抜き取り、構える。
「細剣の攻撃方法…ソードスキルって…所謂必殺技ね。初期スキルはリニアー。切っ先を意識して、そして捻るように…」
瞬間
突風と共に、二人の目の前からアスナの姿が消えた。
「あ、できた。」
『ピギィ!?』
そしてアスナの声、聞き慣れたフレンジーボアの断末魔が背後から。
2人が急ぎ振り返ってみれば、アスナのレイピアによって貫かれたフレンジーボアが、一撃で、ものの見事にポリゴン片として霧散していくところだった。
(速っ…!?っていうカ…)
「なぁんだ。やれば出来るじゃない。」
ちょっとした満足感に浸るのは、赤ずきんの彼女の声には変わりない。
しかし目の前に居たのは、ビギナーにしては余りにも完成され、そして速過ぎるリニアーによってフードがめくれ、その奥に隠されていたそれが露わになっていたアスナだ。腰まで届くほどの見事な亜麻色の髪を靡かせる少女。
髪もそうだが、フードで隠れていた整った顔立ちも相まって、アルゴも、そしてエステルも、言葉を失って見ていることしか出来なかった。
ややあって、我を取り戻したアルゴは一つの提案を出す。
「ぜ、前言撤回ダ。…アーちゃん、代金代わりに、オレッちの記事にあんたの名前をのせてもいいカ?」
「私の、名前?」
「そウ。オレッちは情報屋をしていてネ。巷じゃ『鼠のアルゴ』って呼ばれてるんダ。」
「鼠って…たしかあのログアウトスポットの情報提供者の名前じゃ…!?」
「それはオレッちの名前を騙る偽物の、だヨ。…オレッちも中々名前が売れたものだネ。」
「まぁ騙られた本人としては偽情報で犠牲者が出るのが嫌だから、裏付けを取るためにあたしと2人であそこに行ってたのよ。」
「…なるほど。」
続く2人の話を聞いていてアスナは、あのスポットに居た危険なMOBの事を含めての情報を得ることになった。レベルが3で、それも棍術の心得があるエステルでさえ、かなり危ない状態であったとも。その話を聞いていく内に…
「ねぇ、2人とも。」
「「ん?」」
アスナは自身の得物を見つめながら…こういいはなった。
「その化物、私にも倒せるかしら?」
はじまりの街
その一角に設けられたNPC宿。
50コルと、初期としては中々割高で少々狭さがあるながらも、朝食付き、お風呂付きの宿として、アルゴがβ時に見つけた穴場である。
そしてその一室から流れる水音。
開いたドアの隙間から漏れ出す白い湯気。
そして…
「ふぁぁぁ……良い気持ち~……」
蕩けるような声と共に、浴槽に溜められた人肌よりも暖かな水温に調整された湯に身体を沈める。湯によって暖められた身体が絶妙な浮遊感と共に、身体の疲労と力を抜き取っていく。
「ほんと…これが仮想なんて思えないよぉ…」
「大袈裟だナ、エッちゃんは。…まぁそう思う気持ちはオレッちも解らなくもないけド。」
蕩けるような声を出しながら湯船に身体を預けるエステルと、そんな彼女に苦笑しながらシャワーから流れる湯で身体を洗うアルゴ。洞窟でのアルゴの約束通り二人は風呂で、疲労と共に身体にこびり付いた泥を洗い流すことになった。
「でも今までシャワーばっかりだったから、こうしてお風呂に入れるのは日本人として嬉しい限りなんだよ?」
「そりゃたしかにそうダ。…オレッちも風呂に入るのは、一日の内の楽しみでもあるナ。」
「アスナも…日本人よね?…大丈夫かしら?」
「オレッちが教えたのは、最初期でレベリングをしやすいスポットダ。…相当な無茶をしない限りは危なくないとは思うけド…。」
あれから
3人が街に戻るなり、アスナは別行動を取ると言いだした。曰く、一人で強くなりたいのだという。まぁ生き残るのに強くなるのは必定だから、ソロで何とか出来るようにしようという心がけはいいことだ。
…仲間も、いつ倒れ、一人になるか解らないこのデスゲーム。自分が生き残る術を身に着けるのも、立派な仕事なのだ。
「まぁ段階を踏んで、しっかり強くなるのが一番ダ。メタルスライムみたいな大量経験値持ちは、アインクラッド全体ならともかく、この一層で現れた試しがないからナ。自分が苦戦せずに倒せるMOBを倒して、次のモンスターへと切り替えていク。…無茶をやって倒されたら…文字通り元も子もないせかいなんだかラ。」
「確かにね…あたしとしても、今日みたいなのはもうゴメンだわ。」
今まで何人死んだか…。
一刻も早くクリアするために、レベルも考えず、装備も考えず、ただひたすらに百層を目指して死んだ人間は0ではないだろう。
「だからオレッちは情報屋として、このソードアート・オンライン攻略を…プレイヤーを助けたいんダ。…戦うのは正直苦手だしナ。少しでも確実な情報を広めて…皆が安全に攻略を進めれるようにサ。」
誰にでも向き不向きはある。
エステルのように武術…つまりは剣道や槍術などを嗜んでいるプレイヤーも居る。中には、そう言った経験は無くとも、アスナのようにその才能を持つ者もいるだろう。
だが…戦うのが恐ろしいと思い、踏み出せないプレイヤーも居るはずだ。
誰でも死ぬのは怖い。モンスターにやられれば、それは死とつながるのだから。
ならば彼等に何が出来る?
それを考えて、その先に生産職というもので生きていこうとする者もいるだろう。武器や防具を手掛ける
。
「前にエッちゃん、今日アーちゃんに渡したのは、ほんの初期の初期…最初のレベリングの仕方や、ソードスキルの発動方も知らない、まさしくアーちゃんに相応しい物ダ。でもこれからは、先へ進もうとするプレイヤーの為に、クエストやエリアボスといった、すこし踏み込んだ物を纏めていこうと思ウ。」
「…βテストの時の情報を基にして?」
「それもあるヨ。でも本サービスとの差異も確かめてからダ。βでは美味しいクエストも、今回は強いモンスターがでて危険かも知れなイ。βテスターだからこそ、知ってること、違うところを活かして、ビギナーさんに役立てて貰うのが義務だとオレッちは思うんダ。」
βテスターだからこそ出来ること、βテスターでないと出来ないこともある。それを自覚しているからこその情報屋なのだ。
「ま、難しい話は無しにして、今は風呂を楽しもうカ。」
「う、うん、そうね。せっかくのお風呂だもの。暗い話は無しにしましょ。」
身体を洗い終えたアルゴが、石鹸の泡を洗い落として浴槽に浸かる。二人はゆうに入れるこの浴槽で、アルゴも湯に身を委ねて身体を癒やした。
暫く無言と、そして水音が滴り落ちる音が風呂場を支配した中で、アルゴはふと口を開いた。
「そー言えば、エッちゃんは中2なんだよナ?」
「え?う、うん、そう、だけど?」
「フムフム…ほほウ…」
顎に手を当てて、まるで品定めをするかのようにエステルを一瞥する。その目線を感じてか、湯を跳ねさせながら、自身を抱くように身体を隠した。
「な、なによ…。」
「いやいや、ちょっとおねーさんからしてみれば、発育が足りな…「うっさい!」ふべっ!?」
ニヤニヤと語るアルゴに、思いっきり湯の塊をぶっかけられた瞬間だった。
エステルこと輝崎 陽菜。
自身の身体の成長に、焦りを感じるお年頃である。