先輩さんと後輩ちゃん   作:サリチル酸

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ペルソナ5を無事クリア。完成度が非常に高くて大満足しました。
ただしハマオン、てめーはダメだ

それでは第三話どうぞ


第三話 先輩さんの受難in文化祭

 

 

後輩ちゃんと映画館に行ってから一週間後の土曜日。今日から二日間、文化祭である。

教室の一つを借りて図書委員会は古本市場をおこなう。今年は僕もその主要メンバーの一人だ。

 

「先輩!雑誌はここでいいですか!」

 

「その一つとなりの机でお願い!それと50円の看板つけといて!」

 

「実行委員長!値札のついてない本が!」

 

「それは100円均一のやつだから大丈夫!」

 

「先輩!机が一つ足りません!」

 

「図書室からとってきて!」

 

「ちくわ大明神」

 

「誰だ今の」

 

というか今回の古本市場、僕が最高責任者だったりします。

本来なら当然のごとく図書委員長が指揮を執るのだが――

 

「うん、ちゃんとできているな。関心関心」

 

このクソ忙しい中、悠々とカウンターの椅子に座りながら本を読んでいる黒髪美人巨乳黒タイツ図書委員長(友人談)に押し付けられたため、こうして僕が指揮を執ることになったのである。

 

「ん?何か言いたそうな顔だね。いいよ、何でも言ってごらん?」

 

憎たらしい笑顔で我らが図書委員長が言う。非常にむかつく。

 

「……ほかの場所で本読んでくれない?」

 

「別にいいだろう?特に邪魔をしているわけでもないし。それともキミは目的のためなら静かに読書に勤しむ一般生徒を教室から放り出すような外道だったかな?」

 

「お前のどこが一般生徒だ」

 

「そうかそうか。つまりキミはそういう人間だったんだな」

 

「エーミールかおのれは」

 

こんなのでも彼女はこの学校の人気者だ。その見てくれとカリスマで、女子生徒主催の『お姉さまにしたい人ランキング』、男子生徒主催の『黒タイツ越しに踏んでほしい人ランキング』、男女合同主催の『Mに目覚めさせてくれる人ランキング』これら全てで堂々の第一位に輝いているらしい。

……こんなランキングが出回っているあたりこの学校はもう終わりじゃないだろうか。

 

「実行委員長!本部の人が来てます!」

 

「ちょっと待って今行くから!」

 

そうだ、こんなことで時間食ってる場合じゃねぇ!

 

「ほらほら、まだ設営は終わってないぞ?さっさと仕事に戻り給え、実行委員長くん」

 

「やろう、ぶっころしてやる」

 

「先輩!図書委員長といちゃつくの止めて手伝ってください!」

 

「解せぬ」

 

そんなこんなで図書委員長の妨害はあったものの、無事設営は終わり――

高校最後の文化祭が始まった。

 

 

 

 

 ……とはいってもほとんどの時間が店番でつぶれるわけですが。最高責任者は楽じゃない。

 

「これください」

 

「5冊で500円です。ご利用ありがとうございました」

 

別段とても忙しいこともないが、常に何人かの客が入る。それが古本市場のいいところでもありめんどくさいところでもある。まあ、常に激務な飲食店とかに比べればホワイトな仕事だ。

 

「実行委員長、俺そろそろ交代の時間なので……」

 

「あ、いいよ。お疲れ様」

 

少なくとも後輩たちの大半にとっては楽な仕事だ。去年までの僕がそうだったように。

そんな風に過去に思いをはせていると、例の図書委員長がやってきた。

 

「どうだい調子は?」

 

「おかげさまで順調だよ。だれかさんが手伝ってくれてればもっと盛況になったとは思うけど」

 

「そんなことはない。古本市場なら集客数はこんなものが限界さ」

 

少なくとも僕の仕事量は減っていたと思うんだ。

 

「ま、それはいいや。ところで、一時からキミは休憩だったよね?」

 

「ん?そうだけど?」

 

僕の今日の休憩はその一か所だけ、計一時間。

……まあ、日曜の午後をすべてフリーにしてもらうための致し方ない犠牲である。

 

「実は行ってみたい催し物があるのだが……一緒に来てくれないか?」

 

「別に一人で入ればいいんじゃないの?」

 

わざわざ俺の貴重な休憩時間をつぶしてまで行く必要はない気がする。

 

「それがお化け屋敷でなければな……さすがにお化け屋敷に一人で入るのは寂しいものがあるだろう?」

 

人それぞれだと思うが。

 

「僕意外にも友達がいるんじゃないの?」

 

「残念なことに今日は都合が合わなくてな」

 

ふーむ。だが僕も昼食の時間が必要だし……

 

「その様子だとダメそうだな……わかった。仕事頑張ってくれ」

 

特に気にすることもなく委員長は教室を出ていこうとする。

そんな時、ふと気になったことがあった。

 

「……図書委員長、ちょっと聞いていい?」

 

「ん?なんだ?」

 

「そのお化け屋敷、主催はどこ?」

 

「確か一年のD組とE組の合同企画だったと思うが……それがどうかしたのか?」

 

「……やっぱり一緒に行こうか」

 

一年D組は後輩ちゃんのクラスだから。

 

 

 

 

時間が経過し一時になる。

あれから特に異常はなく店番は終わった。せいぜい妹と母親が様子を見に来たくらいである。

委員長との約束は一時半にお化け屋敷の前に集合、というものである。昼飯を食べてから少し早めに目的地に向かう。それにしても……

 

「やっぱり合同主催になったんだ……」

 

映画館の時から気にはなってはいた後輩ちゃんのクラスの出し物、一週間前でさえ何をするか決めていなかったものを成功させるには『ほかのクラスに寄生する』しかないとは思ってはいたが……その予想が的中してしまった。まあ、そんなこともいい思い出になるだろう。

 

「……ここか」

 

そうこうしているうちに目的の教室に到着。待つお客はいなさそうなので、とりえず一安心する。

 

「あ!お客さんですか?ようこそお化け屋敷へ!」

 

そう言って出迎えてくれたのは入り口前で受付をしていた魔女っぽい服を着た女の子。

 

「ああ、ちょっと待ってね。もう一人来るから……」

 

「はい、わかりました!」

 

せっかくだから後輩ちゃんは何をしているのか聞いてみようか……と思った時。

ふと魔女っ娘の隣を見るとそこには――

 

「…………何やってんの後輩ちゃん」

 

「……おや、先輩さんでしたか。お久しぶりです」

 

真っ白なシーツを頭からかぶった後輩ちゃんが!

 

「……いくらなんでも手抜き過ぎない?」

 

小学生でもやらないようなオバケの衣装だ。体形が小柄だから似合ってはいるが。

 

「いいんですよ。どうせ受付のお化けの衣装になんて誰も期待してないんですから」

 

隣の魔女っ娘の衣装はそれなりに凝ってるんですがそれは。

 

「というか、やっぱりほかのクラスに寄生したんだね」

 

「……言い方は悪いですが、まあおおむねその通りです」

 

話を聞いてみると、どうやら最終的に教師がお膳立てしたらしい。

 

「そのころになると、クラス全員がもう無理って感じの雰囲気でしてね……結局、合同開催ということにして教室と資金を譲渡、店番とかの雑用を引き受けることで決着しました」

 

「何というか、まあ、お疲れ様」

 

これから大丈夫だろうか後輩ちゃんのクラスは。どうにも修復不能なレベルにまで亀裂が広がっている気がするのだが。

 

「それで押し付けられた接客のノルマを今日で消化しようと、今日は働きっぱなしなんですけど……先輩さん、ちゃんと明日の約束覚えてます?」

 

「そりゃもちろん」

 

映画館の一軒の後、後輩ちゃんと文化祭を一緒に回る約束をした。ただ僕は仕事が多すぎたので『日曜日の午後』に落ち合う約束になったのだ。

 

「ならよかったです……忘れないでくださいね?」

 

「大丈夫だよ」

 

「……私、結構楽しみにしてるんですから」

 

そう言って後輩ちゃんは顔を背ける。ちょっと顔も赤い。かわいい。

もともと楽しみだったが、この後輩ちゃんの反応を見る限りもっと楽しいものとなりそうだ。

 

 

「やあ、待ったかい?」

 

 

そんなタイミングで図書委員長はやってきた。

 

「僕もさっき来たところだよ」

 

「それならあと十分は遅れてもよかったか……」

 

「……知ってる?僕の休憩は六十分しかないんだよ?」

 

「もちろん知ってて言ってるさ」

 

こんにゃろ

 

「そんな事よりいいのかい?後ろの娘を放っておいて?」

 

なにか面白いものでも発見したかのような笑みで図書委員長が言う。

後ろの娘?

そう思って後ろを振り返ると――

 

「………………………………………………………………………」

 

後輩ちゃんがいた。

真後ろに後輩ちゃんがいた。

ハイライトの消えた真顔でこちらを見ている。正直言ってとても怖い。

 

「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」

 

なんで何も言わないんですか後輩ちゃん⁉

というかなんで後輩ちゃんはこんな状態に……さっきまではいつも通りだったのに。

な、何とかしなくては……

 

「こ、後輩ちゃん?あの」

 

「センパイサン?」

 

「はい⁉」

 

勇気を出して言った言葉は後輩ちゃんのカタコトな言葉で遮られる。

ヤダこの娘超怖い!

 

「……なんでその雌犬と一緒にいるんです?」

 

雌犬⁉雌犬って言いましたか後輩ちゃん⁉

というか、雌犬って……

 

「……何かしたの?図書委員長」

 

「うん?君がいないときに図書室で少しちょっかいを出していただけだが?」

 

「あれのどこが少しですか雌犬」

 

妙に後輩ちゃんが不機嫌な日があると思ったら、こいつのせいだったのか。

 

「それより私の質問が先です先輩さん。……なんでこんなのと一緒に文化祭を回ってるんです?」

 

どうやら図書委員長(雌犬)と一緒にいるのが後輩ちゃんはお気に召さないらしい。

というか……

 

「いやいや、そもそも今日見に来たのはお化け屋敷だけ……」

 

「そうそう!コイツの方から誘ってきたんだよ!」

 

なんでこのタイミングんで嘘ぶち込んでくるんだ雌犬図書委員長。

 

「…………へえ、そうなんですかセンパイサン?」

 

「いやいや!そんなことないから!」

 

「お互い恋人のいない者同士だし?高1の時からの付き合いなんだから最後の文化祭くらい一緒に回ろうって話になってねぇ~」

 

もうやだコイツ。

そして後輩ちゃんの反応が怖すぎる。

 

「しっかし楽しかったわよwwwコイツとの恋人ごっこォ~~!」

 

「どこまで嘘つけば気が済むんだお前は!というかだいたい恋人ってお前――」

 

「センパイサン?」

 

「ハイ!」

 

ダメだ!後輩ちゃんが信じちゃってる!

 

「今は受付の仕事があるから深く聞きませんけど……」

 

後輩ちゃんは一拍おいて

 

「アシタ ゼンブ ハナシテ クダサイネ?」

 

「ア、ハイ」

 

形容しがたい笑顔でそう言った。

……この後入ったお化け屋敷なんて目じゃないほど怖かったことだけここに書いておく。

 

 

 

こうして後輩ちゃんのこと(恐怖)しか残らなかったお化け屋敷を終え、僕は古本市場へ戻ろうとしていた。

……なぜか図書委員長と一緒に。

 

「……ねえ、なんでついてきてるの?」

 

「なんとなくだよ。悪いかい?」

 

「悪いわ」

 

あんだけ俺の心に恐怖を刻んでおいてコイツは。

 

「はは、そう邪険にしないでくれ。あんな見え見えの嘘に引っかかる彼女が悪いんだから」

 

彼女とは後輩ちゃんのことだろう。

……コイツはなんであんな嘘をついたのだろうか?

 

「ん?私があんな嘘ついた理由かい?」

 

こちらの表情に気が付いたのか、図書委員長の方から言ってきた。

 

「なんとなーく?おちょくりたくなるんだよね、彼女」

 

「理由になっとらん」

 

後輩ちゃんのためにも、もっと詳しく。

 

「うーん、これはあまり言いたくないんだが……まあいいや」

 

そう言って図書委員長はこちらの目を見て話しだした。

 

「多分似てるんだよ、うじうじしていた頃の私に」

 

「うじうじ?」

 

「そう、好きな人に対して一歩踏み出せずうじうじしてた頃の私に」

 

「……」

 

それは

 

「後輩ちゃんが……」

 

「そう。キミもいい加減気付いてるだろ?彼女の恋心に」

 

何でもないことであるかのように図書委員長は言う。

……気づいてないと言えば嘘になる。というかあれだけ親密になって、後輩ちゃんをそういう対象として見ない方が不自然だろう。だけどそれは――

 

「いや、キミが最後の一歩を踏み出せない理由はちゃんとわかってる。それとは別に、これは彼女の問題だよ」

 

遠い目をして図書委員長は言った。

 

 

「……彼女には、私みたいなことをして欲しくないからね。だから色々ちょっかいをかけちゃうんだよ」

 

 

そう言う彼女の顔には、確かに哀愁が漂っていた。

 

「……でも、最終的にちゃんと結ばれたんだろ?」

 

「私の時はね。でも彼女もそうなるのかは分からないだろう?」

 

……それは、僕次第ということのだろうか。

 

「まあ、結局は彼女がキミをその気にできるかどうかだ。キミはいつも通り彼女に接してあげればいい」

 

「そんなこと言われても」

 

こんな話の後にいつも通りは難しい。

 

「ま、結局最後は二人の問題だよ。頑張りたまえ。せいぜい応援してやろう」

 

「なんで上から目線なんだお前は……」

 

まあそれでも

 

「……頑張ってみるよ」

 

何だかんだで応援してくれるコイツと友人になれてよかったとは思った。

 

 

 

 

こうして一日目は終わり、文化祭は二日目に突入する。

いよいよ後輩ちゃんとの文化祭だ。

 




次は文化祭後編。

リンク召喚にデッキを対応させてから投稿します。

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