先輩さんと後輩ちゃん   作:サリチル酸

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ステラのまほうの二次小説が少なすぎて悲しい今日この頃。
ごちうさ二次小説は何個もあるのに……

それでは第五話どうぞ。


第五話 突撃!隣の先輩さん

早いもので、文化祭が終わってからもう一か月たった。

文化祭のころの残暑は消え去り、季節は冬に移り変わる。

食べ物もいつもよりおいしくなり、町はいつもより活気があるように感じられる。

ああ、本当に素晴らしい季節――

 

「全員プリントは持ったな?始め!」

 

いい季節だ。感動的だな。だが無意味だ。

前に言ったかもしれないが、文化祭は高3にとって最後のイベントである。つまりそれは文化祭が終われば後は受験しか残っていないということで。

僕たち受験生にとって季節なんて欠片たりとも関係ない。

今日も今日とて僕は塾でテストを受けていた。

 

「残り30分だ!」

 

当然かもしれないが、さすがに後輩ちゃんと一緒に帰る頻度は減った。今では週一程度だ。

だからといって文化祭の前後で後輩ちゃんと僕の関係が変わったわけではない。いや、ちょっと距離が狭まったかもしれないが。

 

「残り5分!見直しは済ませたか?神様にお祈りは?点数開示でガタガタ震えて命乞いする心の準備はOK?」

 

……もう一度見直ししておこう

 

 

 

 

塾を終えて帰宅の準備をする。

8時までぶっ続けでテストを受けたので、お腹が減ってしょうがない。

『今から帰る』と母親に連絡しようとスマホを開く。すると新着メールが一件入っていた。

……誰からだろ?

気になって開いてみると――

 

『非常に困っています。助けてください。駅前のサイゼ〇ヤで待ってます』

 

それは後輩ちゃんからのSOSだった。

……て後輩ちゃん⁉

ほんの少し驚くが、すぐに心を落ち着けて考える。

何が後輩ちゃんに起きているかはわからない……だが、僕が受験勉強で塾に行ってるってことも、受験勉強でクッソ忙しいことも知っててそれでも助けを求めてきたんだ。相当大変なことが後輩ちゃんの身に起きているはず。

映画館の約束もあるし急がなくては。

そう結論を出して走ろうとした時、ふと気になったことがあり確認してみる。

 

『送信 18:45』

 

……一か月ぶりの大遅刻だこりゃ。

 

……今回はしょうがないよね?

 

 

十分後、全力疾走で息も絶え絶えにサ〇ゼリヤに到着。メールの時間から考えて一時間半は経過しているのだが、果たして後輩ちゃんはちゃんと無事で――

 

「おや、先輩さん。早かったですね」

 

なんか普通に後輩ちゃんがいた。しかも悠々とコーラ片手にニンジャが出て殺す小説を読んでる。僕の心配なんてどこ吹く風だ。

……彼女は何も困っていないのでは?ボブは訝しんだ。

 

「何ですか先輩さん。そんな妙な顔して」

 

おっと感情が顔に出てた。

 

「…………思いのほか大丈夫そうじゃん。後輩ちゃん」

 

「いえ、現在進行形で困ってるんですよ?先輩さんが来てくれて大安心です」

 

フライドポテトをハムハムしながら後輩ちゃんが言う。どう見ても困っている姿ではない。

 

「な、なんですかその目は……コーラはちょっとならいいですがポテトはあげませんよ?」

 

「いらない」

 

後輩ちゃんの前で食い意地はったことなんて一度も無い。逆は数えきれないほどあるが。

 

「……それで?いったい何に困ってるの、後輩ちゃん?」

 

勉強しないといけないし、さっさと要件を済ませてしまおう。

さあ、後輩ちゃんにいったい何が――

 

「ちょっと待ってください、今追加のポテト注文するんで」

 

「………………」

 

(無言のデコピン)

 

「いたっ!ちょっと何するんですか先輩さ――」

 

デコピン。デコピン。デコピン。

 

「痛い!ちょ、やめ」

 

デコピン。デコピン。デコピン。デコピン。デコピン。

 

「痛い!痛い!わ、分かりましたから!話しますから!だから執拗な一点攻めをやめてください!おでこまっかになっちゃいます!」

 

わかればよろしい。

 

「うう……痕ができたらどう責任とってくれるんですか……」

 

その時はその時だ。

 

「ほら、ちゃっちゃと話しなさい。早く帰って勉強しないといけないんだから」

 

「……なんか今日は冷たくないですか先輩さん?」

 

後輩ちゃんの質問に満面の笑みで答える。

 

「さ っ さ と 言 え」

 

「はいすいません!」

 

それでよい。

するとさっきとは打って変わってもじもじとしながら後輩ちゃんが話し始める。

 

「えーとですね?今日家に帰ったら珍しく母親が会社から戻ってまして……」

 

ほう、後輩ちゃんのお母さんは会社勤めしているのか。

 

「最初は普通に雑談してたんですけど、途中から口喧嘩に発展しまして……」

 

母親と喧嘩する女子高生……

 

「売り言葉に買い言葉で『こんな家出て行ってやる!』てなりまして……」

 

あーなるほど。

 

「ろくにお金も持たずに家を飛び出したので、今日泊まるとこにも……」

 

「OKだいたい把握した」

 

つまり家出したので何とかしてください!と……

 

「……今から謝って家に帰るって選択肢は?」

 

「絶対にありません」

 

デスヨネー

明らかに不機嫌になりながら即答する後輩ちゃん。確かにそれができたら僕に相談なんてしないだろう。

というか……

 

「……お金ないのにポテトやらコーラを頼んだの?」

 

「……喧嘩してイライラしてたので」

 

目をそらす後輩ちゃん。この目は何も考えずにメニューを注文した人間の目だ。

しかし確かにそれは困った。普通こういう時は友人の家に泊めてもらったりするのだろうが、知っての通り後輩ちゃんには友達がいないので……うん。

そうなるとホテルに宿泊するくらいしか手段がないが、それには当然そこそこお金が必要で――

 

「ちなみに今、お金はいくら持ってるの?」

 

「千円ぐらいですね」

 

「せんえん」

 

「あ、でもポテトとドリンクのお会計がありますから……800円とんで残るのは200円くらいですね」

 

「にひゃくえん」

 

どうあがいても無理。

 

「……お金が無いからカプセルホテルにも泊まれないし、たしかにちょっとまずいなこれは」

 

本当に今から謝って家に入れてもらうしかないんじゃ……

そう考えているとと、意外にも後輩ちゃんの方から提案が。

 

「……で、でも一つだけいい案がありますよ?」

 

「……それは?」

 

より顔を赤らめてもじもじしながら後輩ちゃんは言う。

……なぜか嫌な予感がするが、仕方ないので先を促す。

 

「せ、先輩さんのいえに泊めてもら」

 

「却下で」

 

やっぱりそんな内容だったか。

 

「なんでですか!」

 

「……高1の女の子を夜中に家に連れ込むとか問題でしかないからね?」

 

後輩ちゃんは非常にかわいらしくほほを膨らませてこちらをにらみつけているが、それはそれだ。

……さすがに母親と妹がいるので間違いは起きないだろうが、意識してる女の子を家に連れ込むのは健全な高校男子にとってハードルが高すぎる。

…………それよりなにより僕がなんか恥ずかしいというのもあるが。

 

「……」(ぷくー)

 

だからその不機嫌顔をやめてください後輩ちゃん。

 

「はあ……」

 

高校生にとってあまり褒められたことではないが、こうなっては致し方ない。

 

「……もうお金貸してあげるから今日はホテルに泊まったら?」

 

「……先輩さんのいくじなし」

 

なんとでも言え、私とて守るべきもの(羞恥心)があるのだ。

後輩ちゃんとの時間が楽しいのは事実だが、これ以上後輩ちゃんと一緒にいるのはいろいろまずいし勉強時間が刻一刻削られるのも地味につらい。

さっさとお金を貸してホテルを見つけてあげて今日のところは別れなくては。

 

「ほら、そんなムスッとしてないでホテル探そ?ぜったいそっちのほうがいいよ?」

 

「……」(むー)

 

「はあ、とりあえずお金を……あ」

 

ふてくされていた後輩ちゃんもこちらの異変に気付いた。

 

「……先輩さん?どうしました?」

 

「……しまった、今日参考書買ったんだった」

 

いつもは一万円くらいを持ち歩いてるからホテル代ぐらいなら貸してあげられると思ってたけど……ウカツ!そうだ今日はたまたま参考書買ったから二千円ぐらいしか手元にないんだ。これだけじゃあ全額貸したとしても、ホテルの宿泊料金は払えない。

 

「……え?もしかして先輩さん?貸してくれるはずだったお金がないとかですか⁉」

 

さっきまでのむくれ顔から一転。明らかに目の色が輝きだした後輩ちゃんが詰め寄ってくる。

 

「い、いや」

 

「いやーそうですか!さすがに先輩さんの家に泊まらせていただくのは申し訳ないと思ってたんですが、貸してもらうお金がないのなら仕方ないですね!」

 

「ちょ」

 

今日はすごいぐいぐいくるなこの娘!

 

「さあ行きましょう先輩さん!あ、別に私の寝床はお構いなく。掛布団さえあれば床に寝れますので!でもお金はないのでご飯は恵んでいただけると幸いです!」

 

「ま」

 

「そうだ、手土産に何か持って行ったほうがいいんですかね⁉先輩さんのお母様はいったい何がお好きで――」

 

「落ち着け!」

 

「ふきゃん!」

 

暴走していた後輩ちゃんを恐ろしく速い手刀で落ち着かせる。

 

「うう……めちゃくちゃ痛いです……」

 

「いったん落ち着きなさい!というかお土産買うお金なんてないでしょ後輩ちゃん!」

 

そのせいでここまで大変なことになってるんだから!

 

「で、でもお金ないならもうそれしか手段は……」

 

「僕の母親にお金貸してもらうように何とか頼んでみる!いまから電話するからそこに座って待ってて!」

 

「そ……そんな……」

 

がっくりと肩を落として後輩ちゃんはしょぼんと席に着く。その姿にわずかな罪悪感が芽生えるが、自分の自制心と勉強のために心を鬼にして電話をかける。

 

『もしもし~?』

 

電話に出たのは僕の母親。微妙に変な喋り方なのもいつも通りだ。

 

「あ、母さん」

 

『あら~急にどうしたの~?』

 

「ちょっとたなびたいことがあるんだ」

 

そうして事の顛末を母親に伝える。後輩ちゃんのためにお金を貸してほしいことも。

 

『なるほど~だからお金を~?』

 

「うん、お願い」

 

後輩ちゃんのためなので真摯に頼み込む。

……その当本人である後輩ちゃんは机に突っ伏してぐでんとしながらこちらをにらめつけているが。

 

『う~ん、状況はわかったけど~』

 

「けど?」

 

どうにも母の反応は芳しくない。

……やっぱり『高校生にむやみにお金を貸すのは許されないんDA!』ということだろうか?それとも早く仲直りさせたほうがいいとかそういう――

 

 

『その子をウチに泊めるのはダメなの~?』

 

 

あなたも敵でしたか我が母上!

まずい正直この展開は考えてもいなかった!

 

『あ、でもその子が嫌がってるならそれは無理ね~』

 

やった!いい感じのチャンスが訪れた!これに便乗するしかない!

 

「そうそう!後輩ちゃんが嫌が」

 

「いえいえ!私は全然OKですよお母様!」

 

後輩ちゃん⁉机に突っ伏していたんじゃ⁉

僕の言葉はいつのまにか隣まで来ていた後輩ちゃんのシャウトに上書きされる。

 

『あら~今の声が噂の後輩ちゃん~?』

 

しまった気づかれた⁉

 

『ならその子から話を聞かないとね~電話かわってくれる~?』

 

ま、まずい!話をそらさなくては!

 

「い、いやその」

 

『代わってくれる~?』

 

「こ、後輩ちゃんが、その」

 

『代わってくれる~?』

 

「……え、えーと」

 

『代わってくれる~?』

 

ダメだ。こうなった母さんはどうやっても自分の意思を曲げない。もう何をしようと無駄だ。

このことは18年間息子をしてきた自分がよく理解している。

 

「……後輩ちゃん。母さんが話したいんだって……電話代わってくれる?」

 

「はい!もちろんです!」

 

今まで見た中でもトップクラスの笑顔を咲かせ、心の底からうれしそうな様子で後輩ちゃんは僕のスマホを受け取った。

そんな反応をされて、意識するなというほうが無理だ。

 

……だから嫌だったんだ、後輩ちゃんを家に泊めるのは。

……襲いたい衝動と性欲を抑えるデッドレースが始まるから。

 

 

この数分後、当然のように後輩ちゃんと母さんは意気投合し、後輩ちゃんのお泊りが決定した。

 

僕の耐久レースはこれからだ!(ヤケクソ)

 




おかしい……お泊りは一話だけで終わるはずだったのに……

次回、妹が初登場。
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