モンスターを追いかける。
その中で、自分の武器を確認する。
よく見てみれば、ここまでの数多くの戦闘でそこかしこが刃こぼれしていた。
それは、武器の耐久度を相当に消耗していることを示している。
折れる可能性のある武器を使い続ける必要はない。
そう判断して、周囲を一度見回した後、一度立ち止まる。
そして、武器を予め用意しておいた予備に変更する。
「よし、これならいけるだろ」
そう考え、モンスターを追いかける。
途中、異様な臭気が漂い始め、顔をしかめる。
しかし、索敵範囲ギリギリにモンスターが集まっているのが分かり、顔に笑みが浮かぶ。
死ぬかもしれない。
そう感じながらも、高揚する気分に戸惑いながらも、密集するモンスターへと突撃していく。
「は...はハ...ハハハ!」
大声を出し、自らに発破を掛ける。
死の恐怖で、足を止めてしまわぬように。
恐怖に呑まれ、足を止めればそこが自分の墓場へとなるのだから...。
そこからの数分...あるいは十数分の詳細を、俺ははっきりとは思い出せない。
倫理的思考など放り捨て、ただ眼前の敵を倒し続けるだけの機械のように。
相手のモーションから攻撃の種類を予測し、その軌道から逃れ。
時には密集している敵を盾にし...
隙があればソードスキルで叩き斬る。
動作の無駄を切り捨て、認識から行動までの速度を上げ続ける。
SAOには《必中の攻撃》というものは存在しない。
故に、理論上はプレイヤーの実力次第では、あらゆる攻撃を回避し続けることができる。
だが、あくまでそれは理論上であり、俺にそこまでの実力はないし、それ以前に敵が多すぎる。
被弾しない、なんてそんな事はできない。
四方から繰り出されるツルが四肢を掠める。
次々と浴びせられる腐蝕液の雫が、コートに穴を開けていく。
掠める攻撃にどんどんHPゲージを削られる。
だが、直撃だけは避け続ける。
直撃を受け少しでも動きが止まれば、その瞬間から死ぬまで追撃を受けるだろう。
HPを削りきられるのか、それとも動きを止められ瞬殺されるのか。
仮想であり現実の《死》へとどんどんと近付いていく。
死にたくない....
死への恐怖が大きくなる。
でも、もうひとつ。
何かの動機が俺を戦いへと駆り立てる。
今、俺の口許を獰猛に歪ませ...笑みともとれる形に変えている何か。
それが何かは分からない。
だが、これこそが俺が求めていたものだ。
そうはっきりとは言える。
意識が極限まで研ぎ澄まされる。
「は......はぁぁああ!」
吼え、地面を蹴る。
ライトエフェクトすら置き去りにして《リーパー》を放つ。
目の前の一匹を左右に斬り分け、そのまま前に走る。
右から襲いくるツルを前転して避け、起き上がり様に目の前のモンスターを蹴り右へと避ける。
先程までいた場所に腐蝕液が浴びせられる。
カシャアァァン!
直後、左側でモンスターが爆散するサウンドとは全く違う破破砕音がした。
反射的にそちらを向きそうになるが、それをこらえ目の前の一匹を屠る。
そこでようやく左を見る。
そこには、五匹のモンスターがいた。
その内の二匹がこちらに突進してくる。
右側のモンスターへとダッシュする。
それに合わせるように右側のモンスターがツルをしならせる。
そして左側のモンスターが腐蝕液噴射のモーションに入った。
迫るツルを避け、唐突に左側のモンスターへと方向転換して迫る。
チャージ中で停止している敵を叩き斬り。残る一匹を、反転して迫り屠る。
後ろから誰かが近付いてくる。
反射的に剣を横に振りきろうとして、止める。
そこには、疲れ果てた顔をしたまま頬をひきつらせた顔のキリトがいた。