「あぁ? 誰だテメェ?」
「ここは、俺たちのナワバリだよぉ~? 大人しく金だけ置いてとっとと失せな!」
「……で、文月学園って何処にあるんだ?」
『(コイツ、聞いちゃいねぇぇぇ!!)』
一例として、ここに道に迷った生徒がいたとしよう。
その生徒は、学校の位置が解らず更に自分の居る場所を確認する携帯電話を自身の寮に忘れてきていた。
道に迷った生徒は考えた。「なら、人にでも道を聞きゃァ良いじゃん」……と。
だが、その行為が『正解』か『否』かと言うならば、『否』だろう。
あろう事かその少年は、わざわざ奥まった路地裏に溜まる"スキルアウト"と呼ばれる少年達に道を尋ねてしまったのだから。
その結果、すぐにその少年は取り囲まれ、道を尋ねられた少年達は良い
しかし、道を尋ねた少年は至って冷静に物事を分析していた。無論、この取り囲んできた少年達を出来るだけダメージを負わせずに無力化する方法についてだが…。
(まァ、この位の数なら
「おぃ……無視してるんじゃねぇぞ!!!」
「そこの"チビ"、沢田さんを怒らせないほうがいいぞ。
このお方は、ここら辺のナワバリを締める
下手に刺激して怒らせたら消し炭にされちまうぜ」
「おい、テメェ……今なんつった……?」
「あ? だから、お前みたいな"チビ"でも沢田さんは容赦しねぇっていったんだよ」
"チビ"……その言葉で道を尋ねた少年――
「人をチビ呼ばわりとァ……良い度胸じゃねェか……」
少しだけ口の端を吊り上げ笑みを作ると、海斗は制服のポケットへと手を伸ばす。
「
「てめぇらやっちまえ!!!」
『おぉ!!!』
遂にスキルアウト側からコングが鳴らされた。
ナイフ、バットが合計六つ、
残りは沢田と呼ばれた男子生徒の後方へと回る。
「このっ!」「チッ、ちょこまかと」「ってうわぁ!?」
海斗に襲い掛かる九人の生徒。だがその攻撃を海斗は全てを避け、自身の攻撃に巻き込み数を減らしていく。
ナイフ持ちの二人は、背負い投げで巻き込んで沈め、バットを持って殴りかかってきた四人は、軌道を少しだけ逸らして地面へ当てる―それだけでも、地面へ思いっきりぶつけた衝撃で数分は腕が使えなくなるからだ―、能力者達の攻撃は、小刻みに上下左右前後にジャンプ・ステップする海斗の動きに一発も攻撃を与えられていない。
その圧倒的な戦闘能力に、沢田の後ろへと付いた二人が違和感を覚え始めた。
「おい、あの動き……どっかで見たこと無いか?」
「真っ白な髪に小柄な身体。それで居て風紀委員って……!!!」
「あ、気がついたようだな」そう海斗が思ったのと、後ろの取り巻きが沢田へと話を始めたのは同時だった。
「さ、沢田さん……アイツはマズイ! 今すぐに逃げましょう!!」
「何言ってんだお前は!!! こんな"ガキ"一人恐れる事なんてねぇんだよ!」
「し、しかしですね……」
「アイツ"
――『
それは、スキルアウトから呼ばれる海斗に対しての畏怖のこもった二つ名である。
南條海斗の暴力行為が絡むの事件検挙数は、ここ一年で学園都市全体から見ても約3%を占める。それは、何処かの支部全体―この場合は、第一七七支部―の検挙数を全て合わせた数ではない。本当に一人だけでその数の検挙を行ったのだ。
そんな事をしていては、スキルアウトに顔や容姿が知れ渡るのも時間の問題といえた。
そして、今回は―自分が道を聞いたにもかかわらず―恐喝と暴力行為の現行犯として
「……あ、道聞くの忘れてた……」
海斗がその後文月学園へと着いたのはそれから約三時間後の事だった。(そして、この検挙の副作用として、大量の始末書が第一七七支部に届き、一人の先輩がてんてこ舞いになっていたのだと言う)