元バカと能力書庫と召喚獣   作:火御雷

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第四話「転校生と学力と模擬試召戦争」

『何故観察処分者の吉井明久(君)がこのクラスに居るんですか!?』

 

 ……まぁ、誰もが聞く質問だよね、コレ。

 この学園で『バカの代名詞』とまで呼ばれる『観察処分者』の称号を持つのは今の所、僕だけだ。

 それは、ちょっと過去に起こした出来事が関係してるけど、僕はこの事について悔いは無い。むしろ、あの時に僕が動かなければ……親友の一人が欠けていたかもしれないと思うと、正直思い出すだけでもゾッとする。

 だから、あの時の罰として観察処分者になったとしても何度でも受け入れるさ、この称号をね。

 

「皆さん、聞いてください。何故、吉井君がこの場に居るのか不思議に思う事は無理はないと思います。

 ですが、彼がこのクラスに来れたのにはそれに伴った努力があったからです。

 吉井君は、振り分け試験が始まる十日ほど前に……つまりは春休み中ですね。

 学校を訪れて新第二学年の教員に言ったのです『自分に、……後十日で実践で使える勉強を教えてください』って。

 最初にその言葉を聞いた先生達の目は冷ややかな物でしたね。

 『観察処分者にそんな時間はかけられない』『無駄な時間を割くより振り分け試験の問題を作りたいから』『そんなに勉強したいなら自分でやりなさい』

 ……そんな言葉を浴びせた後、周りの先生は吉井君から離れていきました。

 そんな彼を、私はほおっておけませんでした。

 今まで、問題ばかりを起こす問題児と認識されていた吉井君が自ら勉学に励もうとしているのに誰も手を差し伸べない…そんな精神に私は頭にきたのです。

 ですが、一人。私以外にもう一人だけ吉井君の試験勉強に付き合ってくれた先生が居ました。

 試験対策用の小テストを私が用意し、その先生は、昼も夜も寝る間も惜しんで学校に泊り込んで吉井君に試験対策をしてくれたそうです。

 私からは名前を出すのはやめて置きますが、結果から吉井君は自分の学力でAクラスへと昇格できたのです」

 

 そうだ。僕がこの学年最上位クラスに入れたのには、しっかりと理由がある。

 僕の身勝手(わがまま)に最後まで付き合ってくれたあの先生には感謝してもしきれない。

 そして、僕がAクラスに入ろうと思った理由(きっかけ)……。……いや、この事については今は思い出さない方が良いのかな……。

 

「ですが、高橋先生。吉井君の場合、Aクラスに入れたとしても得点差から試召戦争に支障が出るのでは……?」

「……良い質問ですね。では、こうしましょう。吉井君、霧島さん前へ」

 

 有無を言わさず、僕と霧島さんをあのとてつもなく巨大なディスプレイの前へと召集した先生。一体何をやらせるつもりなんだ…?

 

「では、吉井君の実力を見るために霧島さんとの模擬試召戦争をしてみようと思います。

 霧島さんは第二学年の総合点数で学年第二位、それに比べて吉井君は大体クラスの平均。

 もしも単科での対戦で霧島さんを倒す事が出来れば、その実力を知る事ができますよね?」

「確かに、一年時主席の霧島に対して一本を取れれば…」「でも、吉井の単科の点数把握してるのか?」「いくら召喚獣の扱いに慣れているからって幾らなんでも無謀じゃ…」

 

 ……僕に拒否権は無いのですか?

 でも、確かに僕の実力を見せるには丁度いいかもしれないね。

 

「(すみませんね、吉井君。こんな事になってしまって)」

「(大丈夫ですよ、先生。こういうのには慣れているんで)」

「(そうですか)では、吉井君。

 本当なら総合得点で……と、言いたい所ですが点数差が生まれてしまうので得意科目を一つ教えてください」

「では、世界史でお願いします」

「承認します。霧島さんもそれで宜しいですか?」

「……何時でも大丈夫」

 

 双方の同意が取られた事により、高橋先生は召喚獣を召喚する為のフィールドを展開する。

 通常は、自分が担当する教科の召喚獣フィールドしか展開できないのが試験召喚システムの設定らしいけど、特例として『学園長』、『学年の主任』、『生活指導長(鉄人)』、『その他の条件を満たした者』は担当する教科のみと言う縛りから開放される。

 この高橋 洋子(たかはし ようこ)先生は、Aクラス担任教師にして第二学年の学年主任なのだ。

 

「……吉井、準備はいい?」

「僕はいつでもいいよ」

「では、戦闘開始!」

 

『試験召喚獣召喚サモン!!』

 

 僕と霧島さんの一言により、僕達の足元に細かなポリゴンが形成されていく。

 黒の学ランに木刀。それが今現在の僕の召喚獣の装備だ。

 それに対して霧島さんは……武者鎧に刀か。あれに切られたら召喚獣のフィードバックがキツそうだな。

 

「何だ。吉井のヤツ武器も防具もボロボロじゃねぇか」「これじゃ、勝敗は目に見えてるわね…」

「だったら、得点を見てからそういう事は言ってほしいかな!!」

 

 

Aクラス   霧島翔子

 

世界史    432点

 

     VS

 

Aクラス   吉井明久

 

世界史    986点

 

 

『はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?』

 

「なんじゃそりゃ!?」「一年時学年主席の人間相手に得点差倍以上だと!?」「アイツ、頭のネジが遂に吹っ飛んだのか!?」

 

 ちょっと待って、最後。それ完全に悪い意味だよね!? 僕勉強頑張ったのにその言い方酷くない!?

 

「あーもぅ、やる気少し削がれちゃったなぁ…。何処からでもどうぞ、霧島さん」

「……言われなくてもそうする」

 

 僕のGOサインと共に物凄いスピードで僕の召喚獣に迫ってくる霧島さんの召喚獣。だけど、正直に真正面から突っ込んできたら避けるのも簡単なんだよねっ!!

 

 ガッキィン!!

 

「――っ!!」

「いま……何が起きた?」「わからねぇ」「だけど、正面から突っ込んでいった霧島の召喚獣ごと武器が一瞬で吹き飛ばされたぞ…」

 

 原理は簡単さ。正面から迫ってくる刀を木刀の側面で逸らしつつ相手の召喚獣の右側に回りこむ。逸らし終えた後の木刀の位置は、大体召喚獣の腹部に当る所。そこから木刀を動かしてわき腹、背中、首の順に木刀を滑らせる。

 召喚獣は、人間の急所にあたる部分に攻撃を当てると得点が多く減るって言う特徴を持つ――唯単に急所ボーナス的なものなのかもしれない――から僕は『クリティカルアシスト』って呼んでいる。

 とどのつまり、得点差倍以上、急所に三連撃を加えた威力は凄まじくその一連の動作だけで霧島さんの得点が二桁台まで下がった。

 

「では、そこまで! どうでしょう、皆さん。吉井君の技術がAクラスの戦争で有利になる事分かりましたね?」

「まぁ確かに」「何をやったのかは見えなかったが技術は純粋に戦力なるだろうな」「これから一つ頼むぜ! 吉井!」

 

 ……そうだ、ここから始まったんだ。混沌と化した僕の高校生活二年目は…。

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