ナザリック地下大墳墓9階層、神話の世界に出てくるような美しい城の幅広い回廊を死霊術師と属性過多娘が歩く。かたや骸骨かたや和服、荘厳たる白亜の城に対してそれぞれがそれぞれに不釣り合いな外見をしていると言える。ゲームの仕様ゆえ各々が好きに外装を弄っているのだから、同じ組織に所属していてもてんでバラバラな着こなしをするのは当然のことだが、奇跡的にも2人の服装には共通点がある。闇のように暗い装備の色である。そう、白亜の城には似合わないのだ。
(たっち・みーさんがこの城を歩く姿は実に絵になりましたね)
純銀の聖騎士たっち・みー。俺が勇者だと言わんばかりの全身鎧に赤マント。アインズ・ウール・ゴウンで、そしてユグドラシル全体でも最強クラスのプレイヤーだった彼はエンダースさん狂信者たる彼女をしても、ちょっとそのかっこよさはずるいと思うんです、とよくわからない非難を浴びせるほどかっこよかった。少なくとも彼女にとってはかっこよさの塊みたいに思えた。彼はナザリックのどこを歩いていても自然だろう。5階層の氷河地帯や8階層の荒野に居ても彼は大いなる目的のために苦難の旅を送っている最中に見えるだろう。
(エンダースさんのテリトリーは6階層に冥界樹と称して造らせてもらった捻じ曲がった木々や、9階層に絶対欲しいと猛プッシュした焼肉屋ぐらいですからね。あと温泉)
エンダースさんの外見と焼肉屋が合うかとギルドメンバーに問えば、元ネタを知るTRPG好きのタブラ・スマラグティナが苦笑を浮かべる以外は全て否と答えただろう。というか焼肉屋に似合う見た目とはいかなるものか。しかし冥燐王エンダースさんと焼肉の間には切っても切れない関係が存在するため、彼女にとってだけは焼肉屋こそがベストプレイスなのだ。
(モモンガさんは強キャラ感というか魔王オーラが凄まじいので廊下歩いている姿は似合いませんね)
ちらり、と我らがギルド長に視線を向ける。少し後ろの方でメイドさんとじゃれ合っていた。首を傾げるメイドさんにアテレコでもしてやろうかなどと考えるが、すぐさまその企みは捨て去る。彼女たちはかつての仲間が造ったキャラクターたちで性格などの設定もしっかりされている。TRPGのキャラならば卓やGMによって性格も変わるだろう。あのエンダースさんも操作する人が変わることで三下キャラを身につけたり、武器は何を使うかとか一人称は何かなどふわふわしていた。しかし彼女たちは明確に独立したキャラとしてそこに在るのだから、その設定を知らない者が勝手に台詞を吹き込むようなことはギルメンとしても声優としてもよろしくない。
そもそも彼女は喉の病気で声が出せないのでやるやらない以前の問題なのだが。
(モモンガさんが廊下を歩いていると、ラスボスがその辺を歩いているみたいでシュールですね。やはり玉座にどっしり構えているのが1番でしょう)
流石は異形ギルドの長、などと勝手にエンダースさんが関心していると貫禄溢れる魔王モモンガが焦り出す。手首の時計盤を見る魔王は滑稽だが、一般的なファンタジー嗜好とはまた別にエンダース性という世にも不思議な価値判断基準を持つ彼女は割と良しとの判定を下す。ダッシュで逃げるのがお約束の魔王もいるし普通普通。
「待たせてしまってすみません」
『構いませんよ。メイド服を真剣に観察する魔王の姿は滅多に見られるものではありませんから』
「うわーはずかしい」
『それもギルド武器片手に』
いやーやめてーゆるしてーとか悪党に拐われる町娘みたいなことを抜かしながら頭の前で手を振る死の支配者と共に、エンダースさんは豊かな狐の尻尾7本をふりふり歩みを進める。
(モモンガさんはだいぶハイになっています。まあ私が戻ってきてからずっとですが。塞ぎ込んでいるよりずっと良いので放置していますが大丈夫なのでしょうか。リアルに戻ったらじゃあ逝くか……。とか言い出したりしそうでふふっ怖い)
1週間前にナザリックへ帰還した彼女を迎えたモモンガの荒ぶりようは面白いものだった。見ているぶんには。驚きと喜びと混乱とが混ざって何を言ったものか迷った彼は結局何も言えず、なぜか身振り手振りでその混乱っぷりのみを表現したのだ。対するエンダースさんはというと、対面して初めてゲームの方でも上手く発声できないことに気がつき、筆談の仕方がよく分からずに身振り手振りで返した。1500人の討伐隊を撃退した恐怖のダンジョン最奥部でジェスチャー会話を試みる魔王2人。威圧感あるボスキャラが普通に生活しているシーンとかそれだけで面白くなってしまうので、世の勇者たちは憎き敵が定位置に着くまで居城に凸ってはならない。向こうの準備が整うまではサブイベントを回収しておくように。エンダースさんとの約束である。
9階層と10階層を繋ぐ階段は横幅の広さもさることながら、とても長い。それは10階層の天井の高さに直結する。階段を降りてすぐの所は広間となっており、複数の高レベルNPCが待ち構えている。玉座の間へ至る道のりの最後の関門、〈
「たっちさんの作った執事と、戦闘メイド“プレアデス”だったか。それぞれの名前はなんだったかな?」
『執事はたしかセバス・チャンでしたね』
「そういえばそんな名前でしたか。安直すぎやしないかとか少し揉めましたっけか」
『プレアデスはやまいこさんのユリ・アルファと……金髪の子がソリューシャンでしたか。和服っぽい子がエントマですね。脱ぐとスゴイ子。他の子も名前とかちょっとした性格くらいはわかります』
「脱ぐとスゴイ子……エンダースさんは結構NPC覚えてるんですね」
『タブラさんたちと一緒に設定作ってましたので』
「スキルや魔法の使い方は忘れていたのでサクッとやられましたが」
『それは言わないでくださいよ』
モモンガは突然インベントリから1つの水晶球を取り出し、ウィンドウを介して操作する。どうやら映像を記録、壁に投射する機能を持つようだ。
[『わが奥義、繁茂分身をとくと味わうがいい!あれ、どうやるんでしたったけ。というか喋りたいことを入力しているうちにガンガン殴られてHPバーがみるみるうちにグワーーーーーーーーーーー!』
【エンダースさんが倒れました。】
『断末魔打ってる暇があったら普通に戦いましょうよエンダースさん!」]
『ちょと待てなぜ私の死亡シーンムービーで保存してるんですか』
「これが最後の冒険だと思って記念に。まあこのあと死亡ペナルティで下がったエンダースさんのレベルを上げる旅が始まりましたけどね」
『こんな時に限ってモモンガさんが好きそうな、家の事情で男装しているが中性的な外見から本当の性別に気づいていない主人公に男友達としての関係を壊してでも告白しようか迷っているボクっ子ボイスで口撃することができない……』
「私の性癖についてどう思っている聞かせてもらいたいのですが」
『だってペロロンチーノさんの親友なんでしょ』
談笑しながら広間を通り過ぎるというところでモモンガが立ち止まる。逡巡している内容に思い当たったエンダースさんが首を縦に振ると
「……ギルド長たるもの、NPCを働かせるべきだな」
『かっこつけてる時のモモンガさんの声、私は好きですよ』
「やめて」
『個人的にはパンドラズ・アクターあれ最高ですね今からでも遅くないので連れて来ましょう』
「フハハハハもう遅い手遅れなのでやめてくださいね。……付き従え、セバスたち」
気持ち顔真っ赤な骸骨とそれをからかう偽狐耳娘に命令を受諾したセバスたちが続く。やがて最奥の大きな門に到着した。巨大な両開きの扉にはそれぞれ美しい女神と恐ろしい悪魔の彫刻が施されている。
『ふたりでそれぞれ開けてみます?リア充死すべしとか言って襲いかかってきたりして』
「やめておきましょう。エンダースさんがこのタイミングでやられたりしたら嫌なので。」
この門の製造者るし★ふぁーはメンバーにも秘密で碌でもない仕掛けを作ったりと、とにかく迷惑なエピソードに事欠かない男だった。TRPGで出目の良くなるイカサマダイスを使われた時には出目が高いほど悪くなるシステムで爆死させるという反撃がなされたが、人の良いふたりはよく被害を受けていたのであった。そんな思い出があるからこその警戒である。おっかなびっくり扉に触るモモンガだが何も起こらない。
「ほんのちょっぴり寂し……くもないな」
『全然残念でもないですね』
ただただ安堵しながら2人が抜ける重厚な門の向こうには、広大な空間が広がっている。
「おおぉ……」
『ーーー』
モモンガですら感嘆のため息が漏れ、エンダースさんも無粋と口を結ぶ。これまで歩いてきた回廊や広間がとても小さかった気がしてくるほどに広く高い部屋。洗練された美しい装飾やアインズ・ウール・ゴウンのギルドサインが施された真紅の巨大な布。世界に200しかない究極のアイテム、
足音立たぬふかふか絨毯を歩いて目的の場所まで辿り着いたふたり。そこにはひとりのNPCが控えている。
純白のドレスに身を包む美女、ナザリック地下大墳墓階層守護者統括、キャラ再現であちこちつまみ食いしているエンダースさんよりよほど優秀な
「
『タブラさんが勝手に待たせたのでしょうか』
アルベドの製作者タブラ・スマラグディナはTRPG好きとしてエンダースさんと交流を深め、モモンガにはマニアックなファンタジー知識を享受していたりと、その人となりをよく知っていた。アインズ・ウール・ゴウン1の設定魔である。錬金術師のクラスを取得し自分の名前にはエメラルド・タブレットのラテン語名をつけた彼。賢者の石の精製過程の1つ
「皆で集めたアイテムを勝手に……まあ、最後ぐらいはいいか」
『そうですね。……でも私だけワールドアイテム持ってないみたいで複雑ですね』
アインズ・ウール・ゴウンが保有するワールドアイテムは全ギルド中最多の11個。その内3つが今ここにある。部屋に固定された諸王の玉座、アルベドが装備した
「エンダースさんは玉座に座ってみます?諸王の、とついているぐらいですから冥燐王が座ってもいいでしょう」
『エンダースさん的に玉座は高ポイントですが、最後に座っているべきはギルド長のモモンガさんでしょう。……でも興味はありましたのでちょっとだけ座らせてもらいますね』
冥燐王エンダースが運命の人と初めて会ったときは大きな玉座に座っていたなあと脳裏に情景を浮かべエンダースさんは座る。ぼんやりと視線を上に向けると各ギルドメンバーのサインを記した旗が視界に飛び込んできた。
(随分と留守にしておいて我ながら虫のいい話ですが、私はアインズ・ウール・ゴウンが大好きだったのですね)
先輩のぶくぶく茶釜さんから
(楽しかった。本当に楽しかった。しょっちゅう死んではレベル上げをして、これは
ギルドメンバーたちの紋章が刻まれた旗を1枚1枚眺めて、1人ひとりとの思い出に浸る。とはいえ、いつまでもこうしているわけにはいかない。楽しい時間はもうすぐ終わる。その時玉座に座っているべきはただ1人。最もこのギルドを愛した男、最後までギルドに残り続けた男、ギルドで1番魔王っぽいビジュアルの男、モモンガだ。こう言ってしまえば薄情に聞こえるかもしれないがエンダースさん的最重要ポイントは3つ目である。
『とても良い座り心地でしたよモモンガさん。
……ところで先程から何をしているのでしょう』
「えっ⁉︎ああ、いやそのですね」
『
設定魔タブラ・スマラグディナ屈指のお気に入りであるアルベドは彼の趣味をこれでもかと詰め込まれている。彼は愛するキャラの設定を書くことで彼だけの神話世界を構築してみせたのである。
『書き終わった時にはドヤ顔アイコンを垂れ流しながら見せて回っていましたね……おや?』
「ど、どうかしましたか?」
『何か不自然な部分が』
言ってモモンガに視線を向けるエンダースさん。
『おや?』
咄嗟に目を背けるモモンガ。
「実はその、最後のところにですね。『ちなみにビッチである。』と書いてあるのを発見しまして」
『はい』
「最後の時にそばに仕えているのがビッチってちょっとなあと個人的には思いまして」
『多少は理解できます。魔王やってたころのエンダースさんの側近、種籾女は実に一途な女でした』
「種籾女……?魔王の側近としてその名はビッチよりも致命的な気がしますが」
『今は種籾女のことはどうでもよろしい。不自然なことが書いてあった気がするのですが』
「空いたスペースになにか入れたほうが良いかと思いまして」
『はい』
「『モモンガを愛している』と……」
『モモンガさん』
「はい……」
『私を笑い死にさせる気ですか』
エンダースさんの顔の横から笑いの感情を表すアイコンが連続で表示される。他ギルドのプレイヤーと戦う際によく使われた1秒間16連打煽りである。長年のブランクで戦い方を忘れた彼女だが、ヘイト溜めのためのプレイヤースキルは身に染み付いていたらしい。すごくどうでもいい。
あまりの恥ずかしさにコンソールを操作し、モモンガは自らがやらかした駄文を削除する。
「自分でもどうかと思ってますよ!よりにもよって馬鹿なこと書いたっていう自覚はありますから⁉︎」
『どうやって設定を書き換えたのですか?』
「ギルド武器の所持によってギルマス権限を行使しました」
『権力を濫用して女の子を洗脳催眠とは、さすがはペロロンチーノさんの親友ですね。良い洗脳バカエロゲームを紹介しましょうか?私と茶釜先輩が出てる作品なのですが興味あります?』
「何その自爆も辞さない精神攻撃……」
『ちなみにペロロンチーノさんは悩み抜いた末に購入し、茶釜先輩に叩き割られたそうです』
「本当に馬鹿だなあの姉弟!」
ひとしきり(片方が)笑った後でおそるおそるモモンガは尋ねる。
「……設定書き換えたこと、やっぱ怒ってます?」
『実はそうでもありません』
「え?」
『タブラさんの愛した神話やTRPGというものは、2次創作されるようになってやっと一人前というところがあります。ギリシア神話であればゼウスの浮気相手が後に大量生産されることで世界観の奥行きが広がりました。ポセイドンの正妻ポジだったメデューサが怪物に零落させられたのは、神話を変えることにメリットが感じられたからでしょう。TRPGでは誰よりも狂信的なローマ教皇という設定の男がゲイになったり、恐るべき魔王がぽんこつ化、アイドル化するなどよくあることです』
「例えばエンダースさんとか?」
『まさに。そういうわけで、ある意味ではタブラさんも本望と言えるのではないかと私は考えますよ』
「よかった……」
『でもモモンガを愛しているは無い』
「ですよねー」
「お言葉ですがそのようなことはございません。モモンガ様はとても素敵なお方ですから愛することはむしろ当然、自然の摂理とでも言うべきかと」
「いやいや自分の理想の恋人の設定を作って恋愛話を書いたみたいで恥ずかしくて仕方がないですよ。……おっといけない、もうそろそろ時間だ。位置に着きましようエンダースさん」
「ん?えっ、あっはい」
「畏まりました」
玉座に座ったモモンガの眼前に広がるは、つい先ほどまでエンダースさんが見ていた光景。すなわち、かつてギルドのメンバーが此処に居た証。天井から垂らされた大きな旗。
(エンダースさんの旗は確か……アレか)
新参メンバーであった彼女の旗は玉座から比較的遠い位置に架かっている。もっとも、これらの旗は41人全員が揃ってから作ったものなので、幾つかが不自然な位置にあるということはない。むしろ彼女は家にあったという紋章やシンボルを扱う書籍を電子化して持ち込み、大いにデザインの助けとなった。それらの書物は今も大書庫に収められている。
「エンダースさんにはよく世話になりましたね……この1週間は久しぶりに楽しい時間でした」
左手に立つエンダースさんは背中を向けている。魔王に侍る側近のように、王を守護する近衛のように立っている。しかし7本の立派な狐の尾がそわそわと震えている。まるで急に褒められて照れているような、或いは不可思議な事態に遭遇して困惑しているかのようだ。
眼下には仲間たちが作ったNPCたち、近くにアルベド、少し遠くにセバスと6人のメイドたち。みな片膝を落として臣下の礼をとっている。
そしてここでようやく違和感を覚える。
(ん?)
NPCたちは基本的に、指示が与えられなければ動かない。モモンガはエンダースさんに位置に着きましょうと言ったし、その少し前玉座まで上がってこようとしていたセバスたちに待機を命じた。だが、ひれ伏すようにコマンドを与えた覚えはない。
(玉座の間でしばらく待機すると自動的に膝をつくAIが組まれていたのだろうか。芸の細かいことだ。さすがはうちのギルメン素晴らしい)
次にエンダースさんの尻尾。あれはエンダースさんに元から備わっている身体部位ではなく、実は強大な力を秘めた
(まさかエンダースさん、ロールプレイを極めんと本来存在しない尻尾を操作する技術を習得したとでも言うのか?さすがはうちのギルメン、というよりはさすがエンダースさん。伊達に日頃からエンダース道とか口走っていないな)
だいぶ苦しくなってきたところで、モモンガはふと気づく。自分が最初に感じた違和感は何であったか?
(さっき綺麗な女性の声が聞こえたような?)
そしてそれ以来エンダースさんがあまり喋っていない。つまりメッセージウィンドウを表示しない。
(そうかさっきの声はきっとエンダースさんの声だな。喉の病気の影響でこっちでも上手く喋れないと言ってたけど、美しい声じゃないか。でも魔王エンダースに相応しい声じゃないのにうっかり出してしまって動揺しているということなのだろう)
エンダースさんは4つの形態を持っており、1つが人間の姿、もう1つが狐耳尻尾の和服姿、そして仮面を被った魔王エンダースとしての姿、12時間ごとに1度とることが出来る真の力を発揮した姿、通称厨二フォルムを持つ。
(魔王形態の時は低い声で喋っていたな。その声が出せないからロールプレイに合わないので喋らない。いつもながら凄い徹底ぶりだ)
感心して一息つく。
(いやずっと女性的な和服姿だったよね?)
やはり何かおかしい気がする。モモンガの脳内を再び疑問符が埋め尽くすが、それどころではないと無理矢理振り払う。
(いや、そんなことより大事なことがある。残された時間はあとどれくらいだ?)
最後に帰ってきてくれたエンダースさんに改めてお礼を言って、喉をお大事にと気遣って、そして堂々と魔王らしく世界の終焉を迎えるのだ。かつての仲間たちやエンダースさん、そして何よりもユグドラシルを愛した自分のために。決意を固めてモモンガは左手のバンドに目をやり、現在時刻を確認する。
0:04:57
(ん?)
何かの間違いだろうか。電脳世界では意味もないのに思わず右手で目元をこすろうとする。握りこぶしが眼窩にめり込む。コォン、と軽いものを打ち合わせたような聞きなれない音が耳元でする。
(んんん??????)
ーー何かがおかしい。
「「……どういうことだ?」」
思わず喉から絞り出した声が、聞き覚えのある声と重なりあった。
「どうかなさいましたか? 至高の御方々?」
前から聞こえるのは初めて、いや実際は2度目に聞く声。モモンガは呆気に取られながら声の発生源ーー顔を上げたアルベドーーを見て唖然とした。
彼らには知るべくもないことだが、この世界線のモモンガは仲間と談笑するあまりに文字通り時間を忘れ、過去を懐かしむ間も無く異界への転移を遂げたのであった。
終わりと始まりの後編なのにまだ終わりしか書けていませんが、これはただの原作リスペクトなので問題はありません。