優しい世界   作:ぽんDAリング

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気付いた誤字脱字をちょっと修正しました。


優しい世界

「やぁ、おはよう比企谷。…なんだか眠そうだな。また夜更かししたのか?」

 

靴箱から上履きを取り出していると友人から声がかかる。

 

朝から笑顔で挨拶をしてくる友人は葉山 隼人。何の因果が俺とコイツを結んだのかはさておき、校内一のイケメンでモテる男は同性の俺から見ても惚れてしまいそうになる爽やかさ全開のスマイルだ。

 

「ハヤハチ…愚腐腐……」

 

――いや、俺にその気は全く無い。だから鼻血は拭いてくれ、海老名さん。

 

「…よう葉山、海老名さん。昨日買った小説(ラノベ)が面白くてな。寝る前に少しだけと思ってたら読み耽っちまった。寝たのが4時過ぎだったわ。ってことで、授業中寝ちまったらノート見せてくれな」

 

等と冗談を混じえつつ、葉山と海老名さんが上履きに履き替えるまでの少しの時間を会話で繋げて待ち、葉山と並んで教室までの数分をゆっくり歩く。海老名さんが俺らの後ろを不快な含み笑いを浮かべてついてくるのは慣れた。

 

教室に着くとクラスメイトに挨拶を交わしつつ、自分の机に鞄をかけて俺らの定位置である教室の窓際後方へ足を運ぶ。

 

教室の窓際後方にて隣り合う葉山と三浦の机。クラスの中心人物2人の元へ皆が集まるのでココが定位置なのだ。

 

「あっ!ヒッキー、やっはろー!」

 

「八幡、おはよう!」

 

「ヒキオ、おはよ」

 

「ヒキタニくん、チーッス!!」

 

「比企谷、おはよー」

 

「おっす、比企谷!」

 

定位置には友人たちが既に集っていて楽しそうに挨拶をしてくれる。

 

由比ヶ浜、戸塚、三浦、戸部、大岡、大和それぞれに挨拶を返して俺も会話の輪へと入り込む。

 

「ん?川崎と相模はまだ来てねぇのか?川崎は兎も角、相模が遅いのは珍しいな」

 

いつもの定位置に居る友人が少ないのでそれを会話のタネとする。

 

「あ、サキサキは少し遅れるってメール来てたよぉ」

 

「さがみんはさっき校門のトコ走ってるの見えたからそろそろ着くんじゃないかな?」

 

海老名さんと由比ヶ浜が2人の動向を口に出したところで相模が息を切らせて教室へと飛び込んで来た。

 

「よかった、間に合ったぁ…みんなおはよー!いやー、コンビニで立ち読みしてたらついつい長居しちゃってさぁ!」

 

なんてのたまう相模を皆で笑い、少し弄った辺りで担任が教室へと入って来たのでそれぞれが席に着く。

 

因みに、川崎が来たのは二限目が終わってからだった。何でも、妹を保育園に送って行ったのは良いが、保育園への大事な申請書類を家に忘れたらしく取りに帰ったらしい。何とも真面目な奴だ。

 

 

 

 

「あーしさぁ、思うんだけど。ヒキオ髪切れし。んで、髪染めれば良いと思うんだけど」

 

我らが女王様は突飛な事を言い出す時がある。今では慣れたものだが、当初は面をくらったものだ。

 

「あ、ソレあるんじゃね?隼人クンと俺、ヒキタニくんの3人で渋谷歩けばスカウトの一つや二つラクショーっしょ?」

 

戸部の脳内お花畑な想像は稀に…いや、頻繁にある事なのでこの際スルーだ。俺からはツッコまない。ツッコミは大和・大岡に任せる。

 

「いやいや、髪切ったら俺のチャームポイントが無くなっちゃうだろ。小町とお揃いのアホ毛が無くなるなんて耐えられない。ついでに、染髪しちゃうと小町が真似る可能性が出てくる。そうなると、黒くて艶やかでサラサラな小町ヘアーの魅力が失われてしまう。だから、俺は髪は切らないし染めない。全ては小町の為に。兄である俺は妹の小町の為に生きなければならないんだ。

あ、コレ八幡的にポイント高いな」

 

今は昼休み。皆で机を寄せて昼食を摂ろうと準備しているのだが、俺の発言にそれぞれが机ごと一歩後退する。

 

――おい、やめろ。無言で引かれるとマジで傷付くから!

 

「あら、本当に小町さんの為を思うのなら存在そのものを消滅させるのが一番効果的だと思うのだけど。ねぇ、シス谷くん?」

 

背後から辛辣な言葉を発しながら現れたのは雪ノ下だ。昼休みになるといつもこの教室へ訪れるが、自分のクラスに友人は居ないらしいので仕方ない。

 

「いやまて。それは駄目だ。小町は世界一かわいいと言っても過言ではない。いや、寧ろ世界一だと断言する。そんな小町だからこそ群がる羽虫が現在進行形で現れているだろう。

だから俺は小町に寄って来る羽虫を逐一駆除せねばならないという使命がある。

よって、俺はまだ俺という存在意義を全うする為に滅せられる訳にはいかない。分かったか?」

 

雪ノ下へ至極当然に反論を返す。

 

「まったく、この男は…」

 

指先を額に当ててため息を漏らし、さも困ったという表現手段を取る雪ノ下。

 

「ヒッキー、マジシスコン。キモい」

 

「ヒキオマジキモい」

 

由比ヶ浜と三浦は蔑んだ瞳を俺に向けてキモいキモいと連呼しては心を抉る。

 

「…これは流石に擁護出来ないな、ハハハ」

 

葉山に至っては苦笑いを浮かべつつ援護を諦めやがった。

 

ま、俺と雪ノ下にとってこんな掛け合いは日常会話の範疇だし、俺の言動に対して三浦と由比ヶ浜がキモいと言うのはいつも通りだから特段傷付いたりもしない。

 

――なんだかんだ言いつつ、こんな遣り取りが楽しいんだよな。

 

これが俺の日常であり、俺たちの生活の一部なのだ。

 

俺からスルーされた戸部がギャースカ喚くが三浦に一蹴されているが……悲しいかな、それも日常だ。

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

「で、さっきの話なんだけどさ」

 

それぞれが広げた弁当に箸を伸ばしている中で、川崎が若干不機嫌そうに俺に視線を向けて口を開いた。

 

「あんたにとってウチの大志も…その、羽虫になるの?」

 

川崎の言う大志ってのは川崎 大志、つまりコイツの弟だ。小町の同級生で、以前小町経由で相談を受けたことがある。

 

相談ってのは川崎…今目の前に居る川崎 沙希の事。あの相談以降接する機会が増えて、今ではこうしていつもの友人たちと共に昼飯を食べる仲になっている。

 

「あいつが小町に群がる羽虫程度の小僧だったら既にプチッと潰してる。お兄さんと呼ばれるのはちと癪だが…まぁ、あいつだったら認めてやらんでもないかな」

 

柄にも無い事言ってる自覚はある。だから、つい言いながら顔を背けてしまった。川崎はそんな俺を見て少しだけ頬を緩めた。

 

「ホント、捻くれてるよね。アンタ」

 

「…ほっとけ」

 

再び自分の弁当へ箸を向けると、視界の端に川崎の弁当が入った。ちょっとした悪戯心で箸を持つ右手を更に伸ばして川崎の卵焼きを頂いて口へ放り込む。

 

「…うん。程良い砂糖の甘さと干し椎茸出汁の効いた卵焼きだな。めっちゃ美味ぇ。毎日食いたい」

 

川崎母は料理上手いんだな、と素直に賞賛を贈ると川崎は顔を真っ赤にして俯いてしまった。

 

――勝手に卵焼きを取った事に怒ったのか?コイツそんなに卵焼きが好きだったのか。なんか悪い事したな。

 

「…勝手に卵焼き食べちまってスマン。俺のやるから機嫌直してくれ」

 

俺の弁当から卵焼きをとって、そっと川崎の弁当へ移す。川崎は俺からの卵焼きを見てから大きな深呼吸をして箸を伸ばした。

 

――ん?そんなに気合入れて食べる程卵焼き好きだったのか?

 

「…醤油を少しと昆布出汁。あと、すり胡麻ね。アンタのも美味しい。今度ウチでも作ってみる」

 

「おう、今日のも俺が作ったんだ。美味いって言われると嬉しいわ」

 

実際、自分が作った料理を美味いと言われるのは嬉しいし、明日からの弁当作りもモチベーションが上がる。

 

と、つい頬が緩んだまま川崎に返事をしたら再び俯いてしまったので俺は気付く。

 

いかん。つい笑い掛けてしまったが、俺の笑顔はキモいらしい。本を読んでるとつい笑ってしまう時がある。それを見た三浦と由比ヶ浜には口を揃えて『キモい』とよく罵られる。

 

「…流石、八幡だねぇ」

 

「ん?あぁ、サンキューな」

 

戸塚から呆れの含まれた苦笑にため息の混じった賞賛(?)を頂いた。何に対しての『流石』なのかに首を傾けるが、きっと自作の弁当に対してだろう。

 

――まさかこれは『毎日僕に弁当作ってよ』という遠回しのプロポーズではないだろうか?もう戸塚ルートに入って良いよね?

 

なんて天使(戸塚)との将来を真剣に考えようとしたら由比ヶ浜と雪ノ下にすげぇ睨まれてた。

 

そんなに俺の笑顔はキモいか。もう有害指定されるレベルなのか。解せぬ。

 

 

 

 

 

 

 

 




なんでこんなの書いたのか自分でも不思議。なので途中まで。

気が向いたら続きます。
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