優しい世界   作:ぽんDAリング

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勢いだけで書いた。後悔はしているが反省はしていない。
不定期にも程がある……orz


続・続・優しい世界

一にも二にも言われる事。挨拶は大事、だと。朝はおはよう、昼はこんにちは、夜になったらこんばんは。時間帯での使い分けも確りとやるべきだ。

 

「やっはろー!」

 

「はろはろー!」

 

もう一度言おう。…挨拶は大事だ。

 

「むーっ。ヒッキー!なんで無視すんのっ!?」

 

「……由比ヶ浜、海老名さんおはよう。あのな、お前たちの挨拶はいつも主語が欠けてる。ホントに俺へ向けて言ってるのか分からなけりゃ返事のしようも無いだろ?背後からだと余計にだ。

それと、今は朝だ。『ヤッホー×Hello(やっはろー)』も『Hello×Hello(はろはろー)』も間違ってるだろ」

 

「やだ、挨拶で掛け算なんて…ヒキタニくん早朝から破廉恥……愚腐っ!」

 

「頼むから腐海へ帰ってくれ」

 

ちょいちょい擬態の解ける海老名さんはこれ以上相手にしてはいけない。

 

「ヒッキー何言ってんのか意味分かんないし。朝からキモイ」

 

ーーいや、なんで俺のキモさに帰結すんだよ…

 

「俺の友だちの友だちがな、後ろからおはようって女生徒に声掛けられたらしいんだ。そいつは振り返っておはようと返した。だが、最初に挨拶した女生徒はそいつの前を歩いていた女生徒その2に対しての挨拶だったんだ。女生徒は俺…じゃなかった、そいつを追い抜き女生徒その2に合流してこう言った。『なんかあいつマジでキモいんだけど』とな。

だからそいつは誓った。今後は正面から目を合わせる奴の挨拶か名前を呼ばれてからの挨拶にしか返事はしないと…」

 

登校時に友人と挨拶を交わす。そんな事も今では当たり前だが、去年や中学時代はボッチだった俺にとって本当に様変わりしたもんだと感慨深いものだ。

 

「それメッチャヒッキーの話じゃん!途中で俺って言ってたし!

ってか、さすがに私らの声は分かるでしょ!!ヒッキーに言った挨拶だって分かれし!!」

 

「うっ…」

 

まぁ、日常的に連んでる友人の声くらい聞き分け出来る。あんな変てこな挨拶するのはこの2人くらいなもんだし、当然この2人だと気付いたうえで無視したのも事実だ。

 

反論を諦めて溜め息を漏らす俺を置いて、由比ヶ浜と海老名さんはさっさと教室へと進んで行く。

 

仕方ないので俺は今日の授業科目は何だったか思い出しながらその後を付いて行く。

 

2人が話しながら階段の半ばに差し掛かると同時に由比ヶ浜はハッと何かに気付いてこちらを振り返る。

 

「ヒッキーの変態!スケベ!キモイ!」

 

そう言うと自分の鞄でスカートを抑えて勢い良く階段を駆け上がって行きやがった。

 

突然の事で呆気にとられ、由比ヶ浜の行動を瞬時に理解し弁解する事が出来なかった。

 

ーーちょっ!待て、冤罪だ!

 

俺は言葉を発する暇も無く走り去った由比ヶ浜へ恨めしい視線を送るが当然届かない。

 

そして、未だに階段の半ばに佇む海老名さんは鞄をスカートの前に持ち替えてスカートを抑え、ニヤニヤと厭らしい笑みを浮かべている。だが、目は笑ってない。

 

「いや、マジで見てねぇから!そんなつもりも無ぇから!!」

 

「ふーん。…ま、そういう事にしといてあげるね」

 

再び冤罪を重ねる訳にはいかんと海老名さんを追い抜き、先に階段を駆け上がる。

 

教室まで俺の背後を歩く海老名さんとは終ぞ会話は無く、気まずい雰囲気のままだった。

 

その後、教室で三浦と雪ノ下に犯罪者扱いされたのは言うまでも無いだろう。

 

 

 

 

「おはよーっす」

 

放課後、俺らは部活動に参加すべく教室で適当に会話を交わして解散する。

 

俺と雪ノ下、由比ヶ浜は奉仕部。隼人と戸部はサッカー部、戸塚はテニス部で大岡は野球部、大和はラグビー部って感じだ。

 

部活動をしていない三浦と海老名さんに相模は他の友人と何処かに行くらしい。川崎は妹を保育園へお迎えだそうだ。お姉さんは偉いなぁ。

 

部員3人でまとまって動いている為、部室に誰かが居る訳じゃないが何となく挨拶をしながら部室へ入ってしまう。

 

「そーいえばヒッキーって何気にちゃんと挨拶はするよね?今朝もなんか言ってたし」

 

「いや、常識の範疇だろ。つか、こんなん挨拶にはならん。軽々しい挨拶は社会に出たら確実に説教くらうからな。そう考えたら由比ヶ浜はアウトだ。今からちゃんと学んどけよ」

 

そう、俺は知っている。例え昼だろうと夜だろうと出勤した時の挨拶は『おはようございます』だ。

上司への挨拶は敬意を込めた30°のお辞儀をもって挨拶しなければならない等々。

 

俺が高校へ進学する際、親父から色々と指導してもらった事だ。全ての会社がそうではないだろうが、覚えていて損は無い内容だった。

 

「あら、珍しくマトモな事を言うのね。何時だったか『将来の就職先は自宅』だなんて言っていた人物だとは思えないわ。ねぇ、社畜谷くん?」

 

「往々にして将来の構想は幾つか想定して然るべきだろ。俺の第一志望は専業主夫で変わりないが、それは相手在りきだからな。学生ならともかく、その相手が見つかるまでは生活の為に働かなきゃならんだろ?永遠と親の脛齧る訳にはいかんしな。その分は考慮して親父から社会勉強も受けてるし、その一環で母親紹介のバイトもしてる。ついでに俺は働くなら公務員希望だ。だから、社畜じゃなく公僕だな」

 

俺は俺なりに将来を考えてはいる。1番は働かずに養ってもらう事だが、世界はそんなに甘くない。なので2番目、3番目の道を今のうちから考えておくのは当たり前だ。

 

「へぇー、ヒッキーってちゃんと将来とかも考えてんだ、意外。私はまだ先の事だーって思ってたけど…」

 

「相変わらずご両親ともに仲が良いのね」

 

由比ヶ浜はほへぇ、とだらしなく口を開け、雪ノ下は俺に対して優しく微笑む。

 

ーーんな慈愛に満ちた微笑み見せんなよ。うっかり惚れちまって告ってフラれちゃうだろ。

 

『…あと、由比ヶ浜さん、あなたはもっとしっかり考えるべきだと思うわよ?例えば、誰かさんとの交際を望むなら特に―』

 

雪ノ下が少し意地悪く笑みを浮かべて由比ヶ浜へ何やら耳打ちすると、突然ワチャワチャと焦りだした由比ヶ浜は雪ノ下の口を塞ごうとする。

 

が、それを軽く躱す雪ノ下。何度かそれを繰り返して楽しそうに追いかけっこへと発展し、俺は1人蚊帳の外だ。

 

仕方ないのでいつもの定位置に座り、喧騒を感じつつも鞄から取り出したラノベを開いた。

 

ーーったく、こいつらと居ると暇しねぇな。

 

 

 

 

「……で?なんでお前がここに居んの?」

 

「むっほん!…新作のラノベを書き終えたのだが、お主の教室へ参じるのは些かハードルが高い!!故に、依頼という形でコレの感想を頼む!」

 

これで何度目になるのか、材木座は3人分の原稿束を自信有り気に机へと置いた。

 

三浦の事恐がってウチの教室へは来ないが、奉仕部には来やがる。依頼だと言えば断られないって慢心してんだろうな。ウチの部長はそんなに甘くねぇぞ……

 

「材木座くん?先日、あなたに課した問題の矯正は出来たの?先ずはその報告から為べきではないかしら?

それとも、コレが課題の結果書き上がったモノだとすると、題名の時点で効果は無かったのだと判断するけれど?

なにかしらこの題名。『我の友人がクラスでも部活でもラブコメハーレム主人公な件について』?既存のライトノベルに何冊も似たものが出版されている以上オマージュではなくパクリだと何度言えば理解出来るのかしら?」

 

「はぶぐっ!……いや、しかしだな、先日の課題『身の回りで起こった出来事を文章表現してみよう』を実践していてコレが書き上がったのだ。ほぼノンフィクションの大作であるっ!……というか雪ノ下氏がヒロインな訳で」

 

「それならそうと早く言いなさい。先ずは読んでから評価するわ」

 

なんかキャラ変わってません?チョロノ下さんになってません?

 

ってか、ノンフィクションでハーレム主人公なんて存在すんのかよ。……あ、居たわ。隼人か、隼人なのか。あんにゃろ、材木座が作者だとしても本の中でも主人公だなんて羨ましい限りだ。

 

えっと、なになに。

 

ーー総文学園に通う引田八郎。総文学園のマドンナ雨ノ宮雨乃、幼馴染みの弓ヶ丘由実やクラスメイトの山金加奈などの美少女達から愛されるが捻くれた性格の八郎はその愛情に気付かない。八郎を振り向かせたい美少女達が織り成すドタバタラブコメハーレム!ーー

 

……ナニコレ。チョーツマラナソー。

 

「なぁ、材木」

 

「ぬぽっ?!座は!?我、杉とか檜じゃないぞ!」

 

「なぁ、木材」

 

「あるばっ?!とうとうホムセンで販売されてそうな名に……して、何用だ!八幡っ!!」

 

「マジで嫌な予感がすんだけど。コレ、主人公誰がモデル?」

 

「フッ、知れた事を!お主に決まっておろう!!……いや、マジでリア充爆発しろ」

 

ーーえぇ~、うっそぉ~、マジでぇ~、有り得ないんですけどぉ~……うわキモっ!

 

チラリとヒロインのモデル(?)である2人を見ると何時になく真剣に材木座のラノベ原稿を読み進めている。

 

「……あのな、木」

 

「ふぴっ?!遂に加工前になってしまった」

 

「こま……じゃねぇ、妹キャラとクラスメイトの男の娘キャラは攻略可能か?」

 

「いや、今作には出てこんぞ」

 

「は?」

 

「ヒロインは学園のマドンナと幼馴染み、クラスメイトの3人だ。本命はマドンナだと考えていたのだが、書き進めるうちに幼馴染みとクラスメイトのキャラも立ってきてな。『to Loveりんぐ』みたいな結局誰が好きなんだよこのヤロー路線も良いかなぁなんて」

 

「ふざけんなよ、オイ!こま…妹キャラも男の娘キャラも居ないなんて有り得ないだろっ!俺がモデルならこま…妹キャラと、とつ…男の娘キャラは必須だろうがっ!!せめてラノベの中くらい小町や戸塚とキャッキャウフフさせてくれよぉ!!!」

 

「ヒッキーってば小町ちゃんと彩ちゃん好き過ぎっ!!」

 

「そうね、もっと現実を見なさい。さっさとこの原稿も読みなさい。そしてヒロインである、わた…雨ノ宮の様な清楚で可憐な女性の素晴らしさに気付きなさいシスゲイ谷くん」

 

「ゆきのん何言ってんの?!ヒッキーにはユミユミみたいな明るくて気の利く女の子の方が良いに決まってんじゃん!!」

 

「いいえ、私の方が相性は良いはずよ」

 

「はぁ?!私の方がお似合いだしっ!」

 

「ヒッキー!」

「比企谷くん!」

「「どっちが好きなの??!!」」

 

訳の分からないまま詰め寄る2人の威圧感に言葉を発せないでいると……

 

「……リア充爆発しろぉおおお!!!」

 

と謎の叫び声を上げながら材木座はけたたましく走り去って行った。

残された俺はどちらも違ってどちらも良いというニュアンスの説明を1時間ほどかけて行い、なんとか死地を脱する事には成功した。

 

が、帰り道で両腕を2人にガッチリとホールドされて帰宅する姿を平塚先生に見られて八つ当たりを受けたのは良い思い出ですまる

 

やはり俺の青春ラブコメハーレムは間違っている

 

 


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