迷子の龍王様   作:蛇神

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私の更新はかなり遅くなってしまうので、気長に待ってくれれば、と思います。


初会話

さてはて、無事小屋…さっき人が竜小屋と言っていたな…に着いた俺は、今何をするべきか悩んでいた。国にいた頃は仕事やらなんやらで充実?していたんだが、いまは何もやることがない。ぶっちゃけ暇だ。

 

周りには下位竜ばかりだが、隣のルリは上位竜なのだ。新入りの騎士で上位竜を使う奴もいるっつーことは、手練れの騎士レベルになれば上位竜を使っている可能性もありうる。下手したら下位龍がいる可能性だってあるのだ。

 

そんな奴らがいるってことは、そいつらを使役する、つまり少なくとも上位竜に認められるレベルの人間が多数いることになる。少なくとも全くいないなんてことはないだろう。

 

今、俺の力は上位竜の下くらいに下がっている。下がる前ならいざ知らず、今の状態で逃げ出すという選択は、愚行だろう。ほぼ間違いなく失敗する。

 

なら、成り行きに任せた方がいい。そこ、考えるのを諦めたとかめんどくさがりとか言わない。もともと俺は楽観的なんだ。時間だってあるわけだし、多少は人間に付き合っても良い。

 

しっかし暇だな。なんかやることないと気が滅入りそうなんだが。周りは変わらない風景だし、竜小屋の外も特に変化なし。

仕方ない、雲でも見てるかな。

 

『おい、そこの真っ黒』

 

おん?なんか聴こえたな。……気のせいか?

 

『お前だ、お前。真っ黒に金眼のお前だ。』

 

真っ黒に金眼って……俺だ。いや、でも、これって念話だろ。誰が使ってんだ?

 

『おーい、アタシだ、ルリだ。気付いてんだろ、マリュウ。』

 

ルリ?

 

『なんでお前が話しかけてくるんだ?』

 

『なんだ、気付いてんじゃないか。念話使えないと思ったぞ。』

 

『いやいや質問に答えろよ。』

 

『んー?なんで話しかけて来たかって?あー、まあ、簡単に言えばただの暇つぶしと好奇心かな。』

 

好奇心?一体何に?暇つぶしは分かるけども。暇だからな。

 

『なんかな、お前から懐かしい匂いがするんだよ。故郷の匂いっつーか。本国生まれなのか?』

 

あ、そんなことですか、そうですか。確かにこんな所で同郷のやつがいたら話したくはなるわな。

 

『ああ、本国生まれの本国育ちなんだぞ。お前もそうなのか?』

 

『うんにゃ、アタシは本国周辺生まれの本国育ちだ。しかも、本国であんまり生活してない。』

 

なんでやねん!思わずエセ関西弁が出てしまったわ!…あれ、関西ってどこだ?………まあいいや。それよりそこは本国生まれの本国育ちって言うべき所だろ!

 

『なんだい、想像と違ったかい?』

 

『心読むなし。』

 

『なんだ、図星かい。……まあ良いや。とりあえず、本国が懐かしくてね。物心ついてからすぐに旅に出たから、あんまり記憶がなかったんだ。匂いっつーか雰囲気は覚えてたけど。』

 

本国か……懐かしいな。あいつら元気にしてるかな。俺が居なくなったことに気付いてくれているだろうか。気付かれてなかったら割とマジで凹む。いや、ほんと頼むよ。誰か気付いて探しに来てくれ(丸投げ)。

 

閑話休題。それにしても、なぜ旅に出たのかが気になるな。いや、別に旅が駄目だとかそんな話じゃないんだけどさ。本国ならそれなりの生活ができるはずなのに、なんで旅に出たのか。

 

『なんで旅に出たんだ?本国なら何不自由なく暮らせるだろうに。』

 

『んー、あんたも本国育ちなら分かるだろ?アタシ達みたいな上位竜はまだ人型になれないから、ほとんどが特別区で暮らすじゃん。なんか、それが窮屈で仕方なかったんだよなー。』

 

なるほど、失念していた。確かに人型になれない者は基本特別区に住んでいたな。それにしても、特別区はそんな窮屈な作りになっていたか?竜の体格のことを考慮してかなり大きめに作られていたはずだが。それに、苦情もあまり聞いたことがない。あったとしても、居住区が狭いとかは無かった。

 

『それにね、アタシのことを後押ししてくれた人……じゃなくて龍が居たんだ。そん時は知らなかったんだけど、その龍は龍王様だったらしくてね。旅に出る直前に知ったんだよ。そう言えばお礼できてないな。私が変わるきっかけだったのに。』

 

んー?そんなことしたっけな。紺色の竜に声をかけた覚えなんてない……あ、まさか!

 

『お前、あの時のちびっこ紺色か!』

 

いやー、今の今まで忘れてた。肉を買いに来たのに少し金が足りなかったあのチビ助か!たまたま通りかかった時にあんまり泣くもんだから一緒に値切ってやった。いやー、大きくなったなー。時が経つのは早いぜ。

 

『あれ?でもお前のことをを後押ししたか?そんな記憶ないけど。』

 

『おいおい、お前さん何言ってるんだ?アタシが会ったのは龍王様でお前の事じゃないんだぞ。ボケたか。』

『えっ?ん、ああ、そうか。そうだったな。〈今〉の姿じゃ分からないか。』

 

『はぁ?お前何言ってんだ?まさかお前が龍王だとか言うんじゃないだろうな。』

 

………あ。しまった、失言した。くっそ、いつもあんまり発言に気をつけるとこ無かったから、そのツケがまわってきた!ぬあぁぁ、ありえんわー。マジありえんわー。自分の注意力の無さに嫌気がさすぜ!

 

…ふう。落ち着け、俺。まだバレたと決まったわけではない。もしかしたら気付かれてないかもしれないじゃないか。……まあ、ルリはやけに鋭いから、そんな事ないと思うが。…いやいや、そんな消極的になるな!そう、大丈夫!大丈夫だ!そう信じればきっと…

 

『なんだい、さっきから一人百面相して。まさか、本当に……』

 

『いやいやいやそんな事ないから絶対ないから!俺が龍王とかありえないしー?そもそも龍王がこんなとこにいるわけないしー?あははははルリちゃんはなーにを言ってるのかなー!?』

 

『いや、必死すぎるから。逆に怪しいから。何をそんなに隠したいんだ。』

 

『かかか隠したい事なんてないですよぉー!?』

 

『声裏返ってるし。…はあ、まさかこんなのが龍王様だなんて。竜の国は大丈夫なのか?』

 

バレとるがなー。確信持たれとるがなー。シラをきればバレないとかそんな事なかったわー。もうやだおうちかえりたい。

 

『おーい、生きてるかー?』

 

『あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"』

 

 

 

 

 

『落ち着いたか?』

 

後悔?する事数分。やっと落ち着いてきた。バレちゃったものは仕方ないよね、うん。後ろ向いてても仕方ない。前を見ないとな!と言うか発言に気をつける練習もしよう。うん、明日からがんばる。

よし、立ち直り完了。待たせたなルリ。

 

『おう。まあ、そんなこともあるよな。』

 

『慰めんなよまた悲しくなる……。』

 

『ああごめんごめん。もう落ち込むなもうめんどくさいから。』

 

『的確に心に傷をつけにくる!もうやだこいつ…。』

 

これからルリが隣人とか今から胃が痛いんですけど。チェンジ!チェンジを要求する!

 

『にしてもコレが龍王様の素か。なんかもう様とかいらない気がしてきた。もう敬称付けずにタメ口でいいか。うん、いいよな。』

 

コレって…。まあ、敬称はいいんだけどさ。あんまり好きじゃないから。国でも龍王様ー龍王様ーって。慕われるのが悪いことだとは思わないけど、息苦しくて嫌になる。フレンドリーになれとは言わないけど、もっとなんかこう、ね?今だけ解放されても許されるのでは無いだろうか。

 

『ま、それ以前にバレたのが問題だよなぁ。』

 

『吹っ切れたんじゃないのかい?』

 

『いや、吹っ切れはしたけどさ。なんで俺がここにいるのかわからない以上、変に情報が広まるのは避けたいんだ。嫌な予感がする。』

 

『ん?なんでここにいるのかわからない?自分で来たんじゃないのか。』

 

『ああ。誰かの仕業なのか、事故なのか。もし悪意があってやってきた奴がいたら危険だろ?面倒は避けたい。』

 

『既に面倒ごとの渦中に居る気がするけど……ま、そういうことならわかったよ。お偉いさんも大変だな。』

 

わかってくれて何よりだ。これで多少は不安が消える。なんとなくルリは嘘をつかない気がするからな。警戒心が薄いわけじゃ無い。勘に従ってるだけなのだ。だがまあ、もっと前に知り合っていたら面白かったかもな。

 

『………よし!』

 

『何がよしなんだ』

 

『アタシも協力してやる。その、原因探し?とか。一人より二人の方がいいだろ。』

 

『いや、これは俺の問題でお前が関わる必要は…』

 

『もうきめた!絶対に手伝うからな!危険だろうとなんだろうと知ったこっちゃねえ、アタシは自分の好奇心に従う!』

 

『最後に本音暴露してんじゃねえか。隠せてねえよ。』

 

『細かいこと気にしたらハゲるぞ。』

 

『恐ろしいこと言うなよお前。』

 

『と言うかお前暇とかそんなこと言う前に現状確認しろよ。もう済んでるのか?』

 

いえ、まだです。進展ないので忘れてました。

 

『でも、変わったことなんてあんまりないような……。』

 

『んー、力はどんくらい無くなったんだ?』

 

『上位竜の下くらいかな。』

 

『随分と無くなったじゃないか。これは失ったと捉えるべきか、封印されたと捉えるべきか……ん?』

 

『どした?』

 

『あんた、ペンダントどうしたんだい?前にあった時は付けてたろ。綺麗だったから覚えていたんだけど。』

 

『ペンダント…?え、嘘っ無い!おいおい冗談じゃねえぞ!あれが無くなるとか、もう……。』

 

『大事なものだったのかい?』

 

『………ああ。あれはな、先代…二十二代目龍王に貰ったものなんだ。龍王は代を変えるときに次代の王に大切なものを与える風習があるんだ。俺も、そんときに貰ったんだが…無くなるとか、終わってる。』

 

『たぶんあんたがこうなったときに無くなったと思うんだが、まあ、帰る方法とか原因とか調べてりゃ見つかるさ。きっとな。』

 

『ああ、そうだな。…そうだと良いが。……よし、暗くなるのは好きじゃ無い!違う話しようぜ!』

 

『それって現実逃避…いや、なんでも無い。そうだな、何か違う話しよう。』

 

 

 

こうして雑談しながら時を過ごして居るうちに、あたりがオレンジ色に染まってきた。話していて気付いたが、ルリは憎めない奴だ。カラリとした性格だからだろうか。似たものは引き合う性質でもあるのだろうか。ルリもミコクも度胸があっていい性格している。

 

『おん?誰か来たな。っとあれはミコクとお前んとこのルミエナじゃねえか。隣のガチムチと猫の獣人はさっき見たな。案内してもらってたのか?』

 

『おー、ほんとだ。あ、ミコクが走ってくるぞ。』

 

『ほんとだ。焦っているように見えるが、なにかあったのかね。あ、ほらルミエナも追いかけて来たよ。ご主人サマ同士も仲がいいみたいだし、アタシらで組んだ方が得ってもんじゃないかい?』

 

『なんだその超理論。そしてまだその話を引きずってたのか。』

 

『もちろんさ。で、どうだ?』

 

『………まあ、いいだろう。いくら言っても聞かなそうだしな。』

 

『よっしゃ、言質取ったかんな。男に二言はないよな!』

 

ないです、はい。もういいですよー、諦めましたよー、だ。くそう、うまく丸め込まれた気がする。こら、ニヤニヤするんじゃない。

はあ……ま、仲間が増えることは悪いことじゃないしな。使えない味方は強い敵より怖いと言うが、ルリならそんなこともないだろう。ほら、ポジティブポジティブ。

 

『ミコク、こんなに焦ってどうしたんだろうな。』

 

『さあな。お前のことじゃないか?所属一日目にして移動になりましたーとか。』

 

『ありえんだろ、そんなの。』

 

「なあ、ルリ。お前って上位竜なのか?そうだとしたら、念話とか使えないか?」

 

『ファ!?』

 

おー、突然なんだ。と言うかぶっこんできたな。ルリが上位竜だってことに気付いていたのか。もしくは、あのガチムチに教えてもらったとか。さて、ルリはどうするのかねぇ。ニヤニヤ。

 

『な、なあ、マリュウ。こんな時はどうすればいい?』

 

『少しは俺の気持ちが分かったか。と言うかなんでそんなに悩んでるんだ?念話使えばいいだろ。』

 

俺としては何で悩んでるのか分からん。

 

『いや、アタシは確かにミコクを認めてはいるんだ。だがな、背中を合わせるにはまだまだだからな。せめてそんぐらいになってもらってから念話で話そうかと思ってたんだ。』

 

『ふうん。ま、そう言うことなら仕方ないな。分かってないフリでもしとけ。』

 

『そ、そうだな。』

 

ルリはミコクに向かって首をかしげる。いや、あからさま過ぎるだろ。下手くそか!ほら、ミコクも「あれ、やっぱり話通じてるんじゃ…?」みたいになってるし!怪しまれてますよ。誰か!誰かルリにフォローを!って誰もいねぇ!

 

「あー、ミコクの嬢ちゃん。ルリは上位竜になったばかりかも知んねえな。」

 

ナイスガチムチ!いやー、よかった。ルリが想像以上に演技下手だったからどうなることかと思ったぜ。

 

ちょっと心強いとか思ってたけど前言撤回、やっぱ先行き不安だわ。

 




ちなみにルリさんはメスですよ。
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