とは言えこれは私の息抜きの様なものなので、遅いのは許して頂ければ幸いです。
暗い、暗い部屋。僅かに月光の差し込む窓に、二人の男がいた。僅かな月明かりでは細かな顔つきまではがうかがい知れないが、厳しい顔つきの男と優しそうな青年のように見える。男はがっしりとした体格で、青年はひょろりとした細い体つきであった。二人はワインらしき飲み物を持ち、窓辺に佇む。
青年が言う。
「首尾はどうですか。」
男が答える。
「上々だ。」
それを聞いた青年は、当然だと微笑み、ワインを一口飲んだ。
「僕の考えた作戦です。失敗するはずがありません。」
その言葉にフン、と鼻を鳴らした男は、窓から眼下を見下ろす。
美しく整備された街並み、真夜中だと言うのに夜市で活気付く人々。平和な国。夜でこれなのだ。日中では、もっと賑わいを見せるであろう。人々は道を行き交い、行きつけの店で店主と談笑する。そんな姿が目に浮かぶ。
人々が幸せそうに暮らしているのを見るだけで、この国の統治者がいかに努力をしてきたかがうかがえる。が、ここの人々は気付かない。その、『統治者』が居なくなっていることに。明日もまた、今日のような変わらない日常があると信じている。大切なものが消えたとも知らずに。
「ふん、愚かだな。」
「ええ、ですからあなたが改革をするのです。そのために、ここまでの事をしたのですから。」
「ああ、もちろん分かっている。第一段階は終わった。次は…」
「邪魔者を排除します。焦る必要はないのです。一番の障害を消すことができたので、後は僕に任せてください。」
「勿論だ。信じて良いのだろう?」
「勿論です。……ふふっ、もうすぐで僕の、いや僕等の悲願が達成されます。…楽しみだ。」
「ああ……そうだな。」
青年から視線を変えた男は街を見下ろし、ニヤリと笑った。
◆◇◆
突然のぶっ込んだ質問を何とか乗り越えた俺たちは、時間になるからいくぞと言うガチムチの声で解散となった。しかし胃が痛い。バレたくないとか言ってるけど嘘が下手すぎだろ。もっとうまいもんかと思ってた。唐突だったのもあるだろうけど、それを差し引いても…うん。
あんまりグダグダ言っても仕方ないよね。なんとかなるさ(白目)。
さてと、日も沈み、辺りも暗くなってきた。寝る前にまだやり切れてなかった現状確認でもするか。まあ、分かる事なんてそんなにないんだけどね。でも、やっとくに越したことはないんだよ。
何かあってからじゃ遅いからね。まあ、既に何かあった後なんだけど。まあ、また何かあった時にあれが出来ない、これが出来ないって判明して焦るよりはいいと思うから。
『と、いうわけで現状確認開始ー。』
『突然だなおい。』
『ほっとけ!んで、今わかってることはだな…』
・どこかに飛ばされた(飛ばされたという表現があってるのかは知らん)
・弱体化している
・念話、人語は使える
・龍王の称号は消えてない
・魔力量は変わらない
・人型にはなれなそう
・強さは上位竜くらい
『ま、こんなもんか。』
『うん、初耳なのがいっぱいあるな。特に魔力量とか。変わってないのかよ。』
『ああ、体感ではな。詳しくはわからないが、変わってないと思う。』
『つまり魔力量だけは龍王の時のままなのか。』
『みたいだな。だが、魔法は弱体化してるかもしれん。要検証だ。後は……称号か。』
『称号なんてあんのか。それがあって初めて龍王として認められる的な?』
『んー、ま、そんなもんだ。にしても称号が残ってるってことは、犯人がいたとしてもコレ目的じゃない感じか?コレ目的なら本格的に殺しにくる筈だし。』
『もしくは、殺そうとしたけど死ななかった的な。』
やめてくれよそういうの。ほんと、面倒ごとだけは勘弁してくれ。できれば事故であってほしい。…でも実際、それが狙いだと考えた方が辻褄があうんだよなぁ。この思考だって若干現実逃避してる感じだし、やっぱ逃げちゃダメだよな。逃げてもいいことないし、多分。
『そーいや、龍王ってもし殺されたらどうなるんだ?』
『んぁ?なんだ、知らんのか。』
『だって前例ないじゃん?あったとしてもアタシは分かんないし。』
しゃーないな。じゃ、ちょっとだけ教えてやる。本当に適当な感じになるけどいいよな?文句は聞かん。
◇◆◇
この話に出てくるのは第十三代目龍王なんだがな。今からウン千、下手したら万年前か。その辺は俺も生まれてないから知らん。で、だ。その十三代目はな、努力家だったらしくてな。より良い国にしようと日々頑張っていたらしいんだ。
でも、努力すればするほど、仕事が増えていく。十三代目に仕えていた奴らはちゃんとそれを理解し、賛同してついてきたやつだったから問題なかったんだ。ストライキとか起きなかったって意味な。
ん?特に何をしていたか、だって?まあ、主に法体制の整備やら、道の整備やら、後は商業関係だな。今の国でもその頃の法を参考にしたやつが多いんだ。今までの龍王が考えるだけでやらなかったことを形にしたのがこの代だな。今の国の繁栄にも大きか影響を与えたんだ。
で、話を戻すがそんだけのことを一つの代でやったんだ。だいたいの龍王の任期が二、三千年ぐらいのことを考慮しても、なかなか難しいからな。あの代は凄かったらしいぞ。でも、そんだけのことをすりゃあ負担も大きいわけで。勿論負担が最も大きかったのは十三代目だったんだが、仕えていた奴の一人が謀反を企ててな。
そいつは一番忍耐力がなかった奴らしい。なんでも、友人のコネで十三代目に仕えてたらしくてな。実力主義の強い龍の社会でもそんな奴は一定以上いるんだよ。どこの社会でもそうだけどさ。
で、十三代目の政策についていけなくなったんで実力行使に出ようとしたんだがな。勿論一人では戦えるわけがないから、協力者も必要だったんだ。ん?そうそう、その通り。さっき言ったように十三代目に仕えてたのは賛同していった奴らだからな。勿論その謀反者について行くなんて事はしないんだよ。
謀反者もそれが分かってるから側仕えに声をかけるなんて愚行はしなかった。声をかけてそれが龍王に漏れるのを恐れたんだろうな。でも、冷静になってみると信仰の対象になっている龍王に対して楯突く者はいるのか?という疑問が出てきてな。そいつはその時点で謀反なんか止めとけば
良かったんだ。でも、止まらなかった。
結局行き詰まったそいつは、禁忌に手を出した。その辺はお前も知ってるんじゃないか?そう、空間魔法で禁忌とされるアレ、『壊空』だ。それがなぜ禁忌とされているか。それはな、空間そのものを壊すという効果もそうなんだがな、使用者の命を対価として払うからなんだ。魔力じゃなくて生命力な。生命力が強いほど効果範囲も広くなるっつー魔法でな、加減が効かないもんだから使用者は必ず、な。
んで、絶対強者であるはずの龍王も流石に空間ごと壊されたらたまらないもんで、見つかった時には腰から上がなかったらしい。いや、血飛沫はあったらしいが、飛び散ったはずの破片…あえてこう言わせてもらうが…は無かったらしい。本当に、空間ごと壊されるからな。ほとんど残らないんだとか。
で、廊下には謀反者の死体があったらしい。どうやらそいつはそのリスクを知らなかったみたいでな。龍王に手を出した時点で極刑は免れないんだが、犯人が一人でしかも死んでいるとなればどうしたもんかと随分話し合ったらしくてな。まあ、今回は関係ないんで割愛するが。
で、十四代目を決める必要があってだな。いつもなら引退、とはちょっと違うけど、まあ今回の例で言うなら十三代目か。十三代目が十四代目を決める筈だったんだがな。その十三代目がいない、さあどうしようと言う時にどうなったと思う?
んー、ま、そんなもんだ。一週間もしないうちに龍王の称号を持つ龍が出てきてな。そいつが十四代目になったんだ。
ここまで色々言ってきたけど、まあ、簡単に言うなら龍王が死んだ時はその時最も素質のある龍が受け継ぐって感じだ。大体わかったか?
◇◆◇
『ま、こんなもんだろ。』
『ふーん、そんなことがあったんだ。知らなかったな。』
『まあ、俺らの業界じゃそこそこ有名な話だけど、一般の、しかもまだ若い竜はあまり知らないんじゃないかな。』
『へえ、そうなのかい。でも、これを聞いた限りじゃなんとも言えないな。仮に犯人がいたとして、龍王の座が狙いだとしてもそんな分の悪い賭けなんてするかね。アタシならしないね。確定的に龍王の称号が手に入る方法があれば別だけどさ。』
『んー、俺の知る限りじゃそんな方法ないんだよなあ。』
『聞けば聞くほどこんがらがってくるよ。』
ほんとそれ。で、提案なんだがこの話は一旦ここまでにしておかないか?
『なんでさ。』
『いや、だってあんまり憶測並べても意味ないと思うし、頭の片隅に置いとくだけでいいと思うんだよね。偏った物の見方するのもよくないし。』
『…それもそうか。んじゃ、この話はおしまいってことで。』
『おう。で、次の問題点は……人型になれないってことかな。』
『不便なのか?』
『勿論だ。体が大きいと動くにも不自由する時があるからな。人型は小さくなるから小回りがきいて便利だ。あと器用。』
『とりあえず不便なのはわかった。』
物分かりが良くて助かるよ。しかし、改めて見ると不明な点が多すぎて困る。少しずつ情報を集めるしかないか。
『そういや、あんたはここがどこの国か知ってるのかい?』
『いや、知らない。ルリは知ってんのか?』
『アタシは任意で付いてきたからね。ここはミラールさ。竜騎士が盛んなのは知ってるだろう?』
あ、ミラールで合ってたんだ。国がハッキリしたのは大きな一歩なんじゃないか?でも、ミラールかぁ。
『ミラールって言えば、大陸の南側の平野辺りにある国か。栄えていていい所だって誰かが言ってたな。でも、本国からはかなり距離があるんだよな。弱体化した今では、気軽に帰れる距離ではないな。それに、帰ったとしても』
『本国がどんな状況かわからない今は、やめといたほうがいいよな。』
『だな。返って危険かもしれないし。あんま無茶もしたくないしな。』
『だろうなぁ。となると、暫くは情報収集か?そういやマリュウの側仕えとかはいないのか?』
『んー、いるよ。つっても俺の場合は二人くらいだけどな。やっぱ、信頼できるやつじゃないと。』
『ようするに、友達が少なかったんだな。』
そんなことない、と言えないのがとても悔しいでござる。実際、俺は若干特殊だからな。この若さで龍王になるのは初だとか。そのせいで、色々ゴタゴタがあったりもしたが。
俺がここにきてもう半日以上経っている。あいつらも気付いている頃だろう。何も起きていなければいいが…。一日俺が戻らないことはままある事なんだが、もし俺のペンダントが部屋に残っていたとしたらそれを見たあいつはどう考えるだろうか。多分、緊急事態だと思うだろう。なぜなら、俺がペンダントを外すなんて事はしないからだ。常に身につけているも物をほったらかしにしているなんて事、無いからな。
『その側仕えの奴らもお前のこと探しているのかな。』
『多分、な。』
『竜王が動くってとこはないのか?お前が任命するんだろ、お互いに大切な人じゃないのか?』
『ああ、だが一国の王が動くとなると、国民はどう思うだろう。何事かと訝しむだろう。そこで俺、龍王が失踪したなどと伝えればどうなる。恐慌、とまではいかないだろうが、小さくはない騒ぎが起きるはずだ。統治するものがいない以上、それは避けたい。』
『……いま、初めてお前が王なんだ、って思った。』
おい、それはどういう意味だ。俺が王らしくないとでも言いたいのか?確かにそう思うよ。でも、もう少しオブラートに包んでだなぁ、
『今思ったんだが、犯人が龍だと決めつけるのは早計じゃないか?今までの話だと、高確率で犯人は龍ってことになるよな。』
今までの話からなぜそこに飛んだのかはわからない。が、確かにそうだ。今まで龍を犯人として仮定してきたが、そうだと言い切れる根拠は無いのだ。
『龍以外となると、人族や魔族か?』
因みに人族には人間は勿論、エルフや獣人などの亜人も含まれる。魔族はその名の通りだが、そこら辺にいるやつと違い、知能がある。知能がない奴を魔獣と呼ぶ。魔族は好んで人を襲うなんて事はせず、むしろ友好関係にあり、魔王と呼ばれる統治者の下で国を作って暮らしている。
『もしも、その龍と魔族と人族が手を組んでいたら。それに魔王と人間の人族の王が手を貸していたらと考えると…。』
『めんどくさいどころの話じゃねえなこのやろう。でも、その魔王とはそんなに仲は悪くなかったと思うんだけどな。人族の王はいっぱい居すぎて分からんが。』
『まあまあ、まだ予測の範囲内だ。心にゆとりを持って行こうや。』
うん、そうだよな。分からない事でピリピリしても仕方ないもんな。ガチムチも明日から訓練みたいなこと言ってたし、切り替えていきますか。
街の名前とか、国の名前とか、人の名前とか。適当に考えているので忘れちゃうんですよね。あと魔法の名称とか。数秒クオリティな名前なので、適当さが出てしまいますね。