とある科学の超兵執事 【凍結】   作:陽紅

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第一期の第一話がこれで終了になります。
これでやっと第一話……。


2人の電撃使い   2-E

 

 

「……」

「……」

 

 空は青くて、嫌でもソロソロ夏だなぁと感じさせるくらいの気温。アタシ達のやってきた公園の噴水が涼しげでいい感じ。

 

 ……なんだけど。

 

 

 

「はぁ……」

 

 

 そんな、落ち込む要素の欠片も無いような空間で、アタシの隣でダークサイドに今にも落ちそうなくらい、うつむいて深いため息をつく御坂さんがいた。……まさか、あのゲコ太っていうカエルのストラップでこんなになっちゃうとは……

 

 

(深音さん、私どう声をかければいいのか分からないんですけど)

 

 とりあえず逆隣に座る深音さんにヘルプを出そう。いや、話すきっかけとかそんなことは考えてないよ?

 しかし、その深音さんもクレープを片手に首を振る。

 

(大丈夫です佐天さん。私も分かりませんから。状況が特殊過ぎます。ここは見守りましょう……大人しく)

 

 アタシ越しに御坂さんを見る深音さんは、苦味強めの苦笑をしてた。……ですよねー。

 

 いやぁ、でもカッコいいなぁ深音さん。上手く言葉に出来ないのが悔しいけど。なんだろう、アイドルとか俳優とかそういうのじゃなくって――ああ表現し辛い! とにかくカッコいいんだって! 

 

 

 

「? ……ああ、一口いかがですか?」

 

 と、1人歯がゆい思いをしていたアタシに自分の食べてたクレープを――

 

(えええぇぇぇぇえええ!?)

 

 迂闊! 見過ぎて味見したい腹ペコキャラに見られた?! 顔見てたから自然とクレープのほう見て――。

 いやいや待ってちょっと待って確かにカッコいいとは思うし優しそうな人だなぁとか思ってるけどいきなり間接キスとかハードル高いってマジでああ深音さん止めてその純朴スマイル止めて間接キスとか考えてるアタシを見ないで!

 

 と、とりあえず!

 

 

 

「い、いただきます」

 

 多分――ホイップとイチゴの、さっぱりした味わい、だったと思う。

 とりあえずなんか食べたくらいの自覚しかない。

 

 

「あ、クリームが――動かないでください」

 

 

 ? 深音さんがアタシのほっぺた辺りを見ながら、というかそこについていただろう生クリームを指で取って……

 

 

 

 

 

 そのまま、食べた。

 

 

 

 

 

「……へ?」

 

 さて。さてさて。

 アタシは今一体何をしてもらったのか、クールになって考えてみよう。

 

 

 ほっぺのクリームを取ってもらいました。

 

 

 ……うん。ちょっと足りない。

 

 

 

 

 『アタシのほぼ唇の端の』ほっぺのクリームを取って『食べて』もらいました。

 

 

 

 

「~~~~ッ!!??」

 

 

 ああ、アタシの顔絶対赤い。茹蛸のリンゴだね。意味わかんないね。

 

 

 

「佐天さんと深音さんはなにコントしていますの? お姉様も、そろそろ戻ってきてくださいな。運が無かったと諦めるほかありません。というよりストラップ一つで大学不合格通知を受け取った浪人決定者並に落胆する人も珍しいですの」

「うっさいわね……期待してただけダメージがデカイのよ……」

 

 別にアタシはコントなんてしてません白井さん。

 自分の中にあった乙女心を深音さんに無自覚なままに刺激されまくってるんです。

 

 いや、でももう少し躊躇いとかそういうの……高校生ってそんなに進んでるの? 間接チューとか『オベント』パクリとか日常茶飯事なの?

 ってことはさらに進んだ直チューとかその先もやって――

 

 

(落ち着けアタシ)

 

 

 取り敢えず自分のオデコに結構本気のグーを叩き込む。かなり大きな音がして深音さんがビックリしてるケド気にしない。

 噴水に顔突っ込んでこようかな……。いや、止めとこう。それこそ引かれる。深呼吸・深呼吸……。

 

 

 ……よし、回復した。白井さんの言葉で御坂さんも回復してきたのか、手にしたクレープを食べ始める。でもたまに、公園で遊んでいるちびっ子達の手にあるモノを見ては羨ましそうにため息をついてる。諦めきれないけど、諦めるしかない葛藤。……なんか分かるなぁ。

 

 

 

「はぁー……もっと早く来てればなぁ」

 

 

 大きく仰け反る御坂さん。……服がめくれてますよー。おへそが出てますよー。

 しかし、そんなことはお構いなし、って感じで、そのまま後ろを眺めている。

 

「……ねぇ黒子ー、当たり前のこと聞くけど今日って平日よね」

「(ハァハァ)学校帰りですのワタクシ達は。(ハァハァ)それがどうかなさいましてってお姉様?」

 

 ……こんな場所で巨大クレープ相手にフードファイトしている初春もどうかと思うけど、もう変質者としか言えない白井さんもどうかと思う。その高速で動く舌をなにに使うつもりなのか。

 

 ……常盤台って変な人が多かったりするのかな? 今にも飛び掛りそうな勢いだけど、それを常盤台の名を守らんと深音さんが食い止めているけど。

 

 

 

「いやー、平日の昼間に防犯シャッター閉める銀行なんて、おかしいなぁって……」

 

 

 いや、銀行のおやすみは週末で……ってほんとだ。シャッターがしまってる。

 確かに変だなぁ、ってアタシと白井さんと御坂さんが首をかしげたときに……

 

 

 

 頑丈そうな防犯シャッターは、轟音と爆炎と共に木っ端に吹き飛んでしまった。シャッターの金属片や上の階の窓ガラスとかも一緒に飛び散って――

 

「「「は?」」」

 

 

 映画の中でしか見たこと無いようなことが、現実に起きる。

 それを理解するのに、数秒掛った。

 

 

「え、何? 爆発っ!?」

「……初春! アンチスキルに連絡と怪我人の確認を!「はい!」それから――」

 

「黒子、私も!」

「お姉様はここでいい子にしてお待ちくださいな。……これは、ワタクシ達風紀委員のお仕事。佐天さん深音さん。お姉様の見張り、お願いしますわ」

 

 

 さすがジャッジメントだなぁ。白井さんは初春に指示を出して、初春もすぐに対応して。

 ……五人の中で慌ててたの、アタシだけだ。

 

 

 なんか、はずかしい。

 

 

「す、凄いですね……白井さん。それに――初春も」

「……慣れてるだけじゃない? 黒子も初春さんも。普通の女の子があんなの目の当たりにして、パニックにならないだけで十分だと思うわよ……ってことで深音。なんにもしないから離せ」

 

「美琴さんは眼だけで見張れる人じゃないとこの一週間で嫌というほど理解しました。失礼ですが、力で見張らせていただきます」

 

 

 

 ……うん。深音さんに両肩をがっしり押さえられた御坂さんに慰められた。なんだろう、自分の悩みが凄いちっちゃなことに思えるんだけど。

 

 何とかして拘束から逃れんとする御坂さん。しかし、深音さんの技量の前にはなすすべも無いらしい。必死な顔と涼しげな笑顔がなんとも対照的だ。

 

 

 

「み、御坂さん大変で――ってなにやってるんですか……?」

「御坂(妹)さんを御坂(兄)さんが押さえている――って感じかな。初春もどうしたの? そんな慌てて」

「……いや、慌てますよ。事件事故の真っ最中ですし……」 

 

 ……アタシも慌ててたんだぜ初春。ついさっきまでさ、でも深音さん達見てたら……。

 

「じゃなかった! 都市見学に来てた男の子が1人行方不明で」

 

 

 えっと……それ、だいぶヤバイんじゃないの? 爆発の原因とか分からないんだし二回目だってあるかもだし。

 

「探すわよ深音!」

「当然です!」

 

 何かを言う前に、何かを聞く前に。2人は、それはもう阿吽の呼吸で駆け出していた。

 見張りどうのこうのは、……まあ、子供が危ないかもしれないって時には無効よね。

 

 

「アタシたちも探すよ初春!」

「は、はい!」

 

 

 アタシだって!

 

 

 

 

***

 

 

 

「やっと! ワタクシの個人パートですの!」

「あ!? なに言ってんだテメェ!」

 

 あら? ワタクシは今何を……まあいいですの。

 爆発が起きた銀行より飛び出してきた、『いかにも』な覆面で顔を隠した三人組。三人ともパンパンに膨らんだ鞄を背負って、おそらく近くにある車かなにかで逃走といったところでしょう。

 

 

「ジャッジメントですの。貴方達を拘束いたします」

 

 

 ワタクシのテレポートなら追跡など容易いでしょうけど、正直面倒ですので此処でチャッチャッと終わらせましょう。

 

 

「ジャッジメントだぁ? ……」

 

 

 三人の目がワタクシを上から下まで眺め……あろうことか鼻で笑いやがりましたの。

 

 これ、金属矢を体内にテレポートしてもいいという合図デスワヨネ? いいですわよ? お望みどおり各臓器に一本ずつ郵送して差し上げますわ。

 

 

「へっ、ガキはガキらしく家で大人しくしてなぁ!」

 

 

 と、若干メタボリックな方がワタクシに、殴るか掴むか分かりませんけど向かってこられました。

 

 ので。

 避けて袖を引っ張って足引っ掛けて転ばして顔を踏みつけて。

 

 

「そういう台詞は、死亡フラグですわよー? ……あ、もう聞こえませんか」

 

 はい1人終了ですの。

 

 

((……踏み付け、いらなくね? その前に絶対気絶してたぜ?))

 

 

「ちっ……ならこれでどうだよ!」

 

 と、今度は覆面Bが手を突き出し、その掌からそれなりの圧を持った炎が。発火能力者、先ほどの爆発はこの方の仕業ですのね。威力を見るにレベル3の上。

 ――ですけど。

 

 

「はあ……」

「な、なんだそのため息! さっきの爆発見てただろうが! 吹き飛ばすぞ!?」

 

 

 いや、まあ。確かに爆発力はあるでしょうけど。

 

 

「この距離で爆発させれば、貴方自身も危ないって分かりませんの……?」

「あっ……」

 

 

 分からなかったんですのね……そして、いまの反応で細かい制御が利かないということですの。

 ふっ、ちょろいですわねー……。

 

 

「お、オレは逃げるぜ!?」

「あ、おい!?」

 

 

 覆面Cが逆方向へ走り出しました。走った先には一台の車……用意周到ですこと。

 

「ちっ……爆発だけじゃねえぞオレの力は!」

 

 

 そのままBは手の炎の質を変えて、ワタクシへと放たれる。

 

「なっ、消えガッ!?」

「言われずとも分かってますわそんなこと。それに腕を振りかぶって投げる。そんな見え見えの動作なら避けるのは簡単で――って、もう聞こえませんわね……さて、もう1人――は……」

 

 私が視線を向けた先、覆面Cが車に乗り込み走り去っていく。……子供を抱えた、佐天さんの顔を蹴り飛ばして。

 

 

 

 

 どういういきさつで、そうなったのかはワタクシには分かりませんが……。

 

 

 

 

 

「黒子、あれ……私がやるから」

 

 ワタクシに出来ることは、せめて覆面Cが半殺し程度ですみますように、ということを祈るくらいですの。

 しかし、何時の間にワタクシの後ろに? それにストッパーをお願いした深音さんは……?

 

 

「深音なら佐天さんのとこよ。……私に、自分の分もお願いしますって言った後にね」

 

 

 お姉様が帯電のボルテージを上げつつ、そう零す。見れば、深音さんは巻き添えにならないように離れた場所で佐天さんの怪我を見ていますわね。佐天さんと男の子は何時の間に自分が移動したのかわからない様子で、移動前後の場所と深音さんを交互にみていますの。

 ……っていうか、ワタクシにも視認できませんでしたけど……深音さんは普通の電撃使いですわよね……?

 

 まあいいですの。……ワタクシも少し離れましょう。正直、お姉様から漏れ出した電流だけで意識が飛ばされそうですし。

 

 

 

「お姉様、お気持ちは分かりますが」

「分かってるわよ黒子。怪我させたりはしないから。……それなりに、痛い目と怖い目にはあってもらうけどね」

 

「よろしくお願い……あー、選択肢を間違えましたわね覆面C……そのまま走り去ればいいものを」

 

 おそらく、ワタクシ達を車で轢こうとしたのでしょうけど……。自分から射程圏内にやってくるとは。

 

 

 

 お姉様が、取り出したコインを上に向かって弾く。それは、決められたルーティン。

 

 50mという射程距離は、打ち出すコインが音速を超える摩擦熱で溶けてしまうせい。ギリギリまでコインに電磁熱や体温からの熱を与えないためにはどうすればいいか、と考えた結果だそうですの。

 

 電圧のボルテージは――とっくに振り切れていますわね。

 

 

 

 

「私の友達に……何してくれてんのよ!!!」

 

 

 

 

 怒りの咆哮と共に打ち出された、轟音と一条の光。

 超高電圧をもって本来の理論をねじ伏せた、お姉様の代名詞たる超電磁砲。

 

 圧倒的な破壊力を伴った一枚のコインは、それでも手加減をしたのか車両を木っ端にすることはありませんでした。

 ……いえ、信じていましたわよ? ええ。信じていましたとも。

 

 

「貴方達の一番の不運は……お姉様がここに居合わせてしまったことと……」

「佐天さんを蹴ったことよ」

 

 

 前方から走ってきたはずの車は吹き飛ばされ、ワタクシ達の後方に墜落。覆面Cは泡を吹いて気絶していますが、目立った外傷はなし。

 

 

「っ、佐天さん大丈夫!? 怪我はない!?」

「怪我……?」

 

 深音さんの腕の中でレールガンの威力に呆けていた佐天さん。駆け寄ったお姉様に言われてようやく蹴られたことを思い出したようで、頬をさすっている。

 

「大丈夫っぽいです。っていうか痛みも無いですし……」

 

「よかったぁ~……にしても女の子の顔蹴るとか……ボコボコにしてやろうかしらあいつ」

「いいですね。私の分も残っているみたいですし」

 

 お姉さまと深音さんの怒気を向けられた、泡を吹いて気絶しているCがビクリと痙攣。根源的な恐怖でも感じたのでしょう。

 

 

「あ、白井さん。アンチスキルももうすぐ来るみたいです。怪我した人も爆発の時に驚いて転んだくらいの軽傷の人が数人いるくらいで、手当てももう終わってます」

 

「そうですの……」

 

 

 深音さんに抱きかかえられていると今更ながらに気づいた佐天さんが、男の子や初春に弄られたりしていますけど、まあ、些細なことでしょう。

 

 

 

「んじゃ、これで一件落着ってことね!」

 

 

 自棄気味の佐天さんや男の子、初春のオー! という声に、お姉様と深音さんはにっこりと微笑んでいました。

 

 

 

 

<おまけ>

 

 

「でー、この爆発は犯人の発火能力者ってのはわかるじゃん……でもコッチの道路の一直線に付いた傷跡は誰じゃん? あと落っこちた車の衝撃で陥没した道路も――正直この二つの方も物的被害が酷いじゃんよ」

 

「「「「……」」」」チラッ

「……」ダラダラダラ……

 

「うし、連行~」

「ちょ!? 犯人逮捕の必要被害でしょ!? 私は無実だぁー!!」

 

 

 とある科学の超兵執事――完――

 

 

 

「っていう流れは……」

「初春さん、自分のパートが出てないからってそういうおふざけは止めたほうが……」

「っていうか――私だけ扱い微妙に酷くないですかこの小説……?」

 

 

 

 




読了ありがとうございます。
もうお分かりかも知れませんが、佐天さんはヒロイン候補に出馬しています。

あとかなり重要なタグを忘れていましたので、更新しておきました。

誤字脱字・ご指摘などございましたらお願いします。
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