とある科学の超兵執事 【凍結】   作:陽紅

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キャラ崩壊、本当につけるかどうか悩ませるものになってしまいました……。

お気に入り128件……友人に言われてにやけていたことに気付きました。
すれ違い様にニヤニヤしている小さい女がいたら、もしかしたら私かもしれません…w



都市伝説 火のない所に煙なし   5-2

 

 

 ……負けられない戦い。――私は、それを教えてもらったわけではなく、誰かに聞いたわけでもないのに、知っている。それはきっと、一人の人間として、一つの生命として……理性ではなく知性でもなく……そう、本能の領域で知っているのだろう。

 

 

 

 

 負けて譲れぬ、闘争があることを。

 

 

 

 

 知っているだけではない。実際私は何度かそういう戦いを経験した。個人的な感情論から来る負けられないも、漠然たる事実である負けられないも。

 

 

 

 勝ちを拾うときもあれば、当然勝ち続ける存在などいないように――辛酸を舐めたこともある。

 

 

 

 

 ――そしてこれは多分、個人的な感情論から来る『負けられない戦い』だと私は認識しよう。そして出来れば、勝ちを拾いたいと心から思う戦いだ。

 

 

 

 

「――というわけなんだ。だから君の着ているその涼しげな服を私に貸してくれ」

 

 

 

 

「なにが『というわけ』なのか一切合切分かりません。ので私の服は貸せません。ですからどうかご自分の服を着てください――!」

 

 

 むぅ、コレだけ言っても譲らないとは――中々に手ごわい相手だ……以前似たような状況のときは快く渡してくれたのだが……。

 

 

 

 だがこのうだる熱さの中、私は『私の車を探す』というと気の滅入ることをしなければいけないのだよ。

 

 

 

「――だから、君の着ているその涼しげな服をよこしたまえ」

 

 

「ですから何が『だから』なんですかと。そして『貸して』から『よこせ』になってますからね」

 

 

 

 ……むぅ、これだけ言っても引かないか。これは、今までの相手の中で五指に入るだろう。心して掛らねばならない。

 だが現状は私の方が優勢だ。……なぜなら、彼はもはやワイシャツを残すのみなのだから。

 

 

 

 しかし、あの分厚い生地の上着をこの炎天下で――これは、このワイシャツに涼の秘密があると見て間違いはない。

 

 

 ……タイと第二ボタンまで外せたんだが、そこで両手を押さえられてしまってそのまま硬直状態と言うわけだよ。――それと君、人と話すときはせめて相手の顔を見るべきではないかな? というより何故眼を閉じたままで私の手を掴むことができたんだい?

 

 

  

「と、とりあえず、暑いのなら涼しい場所へ行きましょう! こうやって時間をかけると余計に暑いでしょうし時間も掛りますし!」

 

 

 

 ふむ……確かに、一理ある。正直、数分もこの硬直状態が続いてその上ここは日向。暑いことこの上ない。

 

 移動という提案に異議はないな。

 

 

 

「だが、それは君の服を剥ぎ取ってからだ……!」

 

 

「ただ人の服を脱がせたいだけなんじゃないですか貴女!?」

 

 

 

 やれやれ失敬だな。私はただ涼を求めているだけじゃないか。

 

 ……その過程の道徳非道徳を須らく無視しているだけで。

 

 

 

「……わかりました、服をお渡しします。だからせめて自分で脱がせてください。人の気配が近づいてきてますから……本当に――!」

 

 

 

 ……勝った――!

 

 彼――名前を知らないな。コレだけの強敵だったから名前くらいは覚えておきたいが――は眼を閉じたまま私のことを見ることもなく、渋い顔でシャツのボタンを外していく。

 

 

 

 

「…………ほう」

 

「あの、どうぞ。というより早く着てください本当に人が近づいてますから」

 

 

 

 ……『その手』の話には疎い、というより興味関心がないと自他ともに認める私でも、嘆息を付いてしまったよ。

 

 ……ワイシャツだけじゃなかった。と言うより下にインナーなりを着るのが普通か――いや、問題はそういうことじゃない。

 

 

 インナーも布地に一切の余裕がないのか伸縮性が凄いのかよく分からないが、殆ど上半身裸でその部分にだけペイントしたのでは? と馬鹿げたことを考えてしまうほどの一体感。

 

 

 

 そして、そのインナー越しに、一切の無駄をなくし、ある一点を追求し鍛え抜かれた男の体があった。

 今現在の私の上半身と比べても、男女の差以上に、別の大きな隔たりがあるようにも感じるな……。

 

 

 っと、あまりジロジロ見ては失礼か……とりあえず彼のシャツを着させてもらおう。

 ……いや、しかし凄い体だな……。

 

 

 

 

「君は、その、アレか? なにかのスポーツの選手か何かなのか?」

 

「? いえ、体を動かすことは得意ですが、コレと言った競技は――というより着ましたよね服」

 

 

 それでコレほどの肉体、か。

 

 ――決して太くはない腕は、しかし細かい筋肉の名称が分かるほどに鍛え上げられてたくましく。腹筋や胸も見事に割れて無駄な肉はない。

 かといって『重い』や『堅い』などとは不思議と思わない。押せば返してくるこの弾力は 「あの、何を?」……ふむ。ちょっと癖になりそうだなこれは。

 

 

 

 

 

 

 

「――や、だからね、そういうのは滅多に見れないから都市伝説、とか言われて噂されるんでしょ? そんな簡単にほいほい――見つけられ……たら――」

 

『……御坂さん? 御坂さん? おーい、どうかしたんですかー?』

 

 

 

 おお、すごいな。彼の言ったとおり本当に人が来た。

 

 さてと、それでは彼から献上されたシャツを着るとしよう――

 

 

 

 

「な、ななな……!?」

「……? この声はもしかして美琴さんで『なにやってのよアンタはーッ!?』ズッ!?」

 

 

 

 

 えーと、この技はなんていうんだったかな……とび蹴りの両足――ああ、"どろっぷきっく"だったか。それを私より背の高い彼の顔に当てるなんて、凄い跳躍力だな……。

 そのまま、学園都市の生徒だろう少女の足を顔面につけたまま地面へと倒れる彼――いや、違うな。これはこの女の子の追撃、か?

 

 

「ここここ、こんな天下の往来で女性の服脱がすとか非常識にも程があるわよアンタ!?」

 

 

 

 アスファルトと少女に頭部を挟まれたまま動かない彼。出会い頭に人の頭に"どろっぷきっく"を行う君も非常識さでは負けていないと思うんだが――。

 

 

 と言うより……生きているよな、彼。正直ちょっと不安になってきた……。

 

 

 

 

「そ、そっちの人大丈夫ですか!? なんか変なこととかされたり――いや、その前にシャツ! シャツを着てくださ――……ってあれ、なんか凄いブカブカ……」

 

 

 

 それはそうだろう。男物のシャツだし、身長のずっと高い相手のものだしね。その上私は起伏に乏しいから――余計に余裕がある。

 

 

 

 

「っていうか……これ、深音の……?」

 

 

 

 

「そうか、彼は深音、というのか。このシャツは確かに彼のものだよ、涼しそうだから借り受けたんだが――」

 

 

 サァー、と彼のシャツのボタンを留めていた彼女の顔から血の気が引いていく。――涼しそうだな。

 

 

 

「え、と……ということはご、ご自分の服はどちらに……?」

 

「? ああ、汗で濡れてしまったからね……そこで乾かして――ってもう乾いているか」

 

 

 

 ボタンを留めていた彼女の手が止まり、離れる。そして今だ回復しきれないのか後頭部を主に抑えてうずくまっている彼と、私を交互に見る。……よかった、生きていたんだな。

 

 

 

 

「まさか、脱ぎ――女?」

 

 

 

 ――確かに自分で脱いだが、可笑しな表現をする子だな。携帯が繋がったままで、通話相手のほうもなにやら騒がしい。

 

 

 

『脱ぎ女!? マジですか御坂さん! っていうか今深音って言いました? 言いましたよねそこにいるんですか深音さんが!? 深音さんが脱いでるんですか!?』

 

 

 

 

 女の子が脱ぐ脱ぐと、連呼するものじゃないと思うんだけどね……。

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

「…………………………」

「だ、だからごめんって謝ってるじゃない……いや、ホントゴメン……なさい」

 

 

 後頭部に巨大なコブ(曰く、自分じゃなかったら死んでいた)を築き上げた深音が、凄い珍しく――っていうか初めて見るわね。不機嫌そうに顔を顰めているところ。――や、まあ、私のせいなんだけど。

 

 で、その原因っていうか要因になった女の人はいま飲み物を買いにすぐ近くの自販機へ行ってる。私と深音は屋根のある涼しげなベンチに座って待っているわけなんだけど。

 

 

 

 ……いつも、ニコニコしている優しい人が怒ると怖い、っていうのはあれね、絶対日頃の反動だと思うわけよ。――怖いって言うわけじゃないんだけど。なんかこう、居たたまれないというか、落ち着かないっていうか。

 

 

 

 

 ――若干、嫌われたらどうしよう、って思いもあるし……。

 

 

 

 

「はぁ――――もう、いいですよ。私も同じ状況に立ち会ったら、きっと女性側の味方になりますから」

 

 

 

 ……深い、凄く深ーいため息つかれた……。

 

 いや、でもそれだけ? お返しの一発くらい覚悟してたんだけど……。

 

 

「ションボリしている女の子に手を上げろと?」

 

 ――はい。そんな深音さんを疑って本当にすみませんでした。――でもちょっと女の人に優し過ぎじゃない? って思いはあるけど、黙っておこう。うん。じゃあ優しくしません、で拳骨は避けたい。

 

 

 

「それよりもビックリしましたよ……あの人の車を探していたら『暑い暑い』って言いながらいきなりシャツを脱ぎ出しますし――君の服は涼しそうだね、と言われてほんの一瞬、本当に一瞬呆けただけで上着は脱がされてシャツのボタンもいくつか……」

 

 

 深音が本気で驚愕というか戦慄してるわ。この表情も結構珍しいわね……。

 

 

 

「アンタさ――『脱ぎ女』って知ってる?」

 

「そういえばさっき美琴さんが言ってましたね……電話越しに佐天さんも確か」

 

 

 

 そういえば、慌しくてかけ直すって切っちゃったんだっけ……。

 

 

 私が佐天さんから聞いた、『脱ぎ女伝説』をそのまま聞かせる。

 

 最初は苦笑。でもどんどん苦味が強くなって、最後の服を奪われるあたりじゃ頬を引きつらせていた。

 

 ちなみに、伝染することも漏れなく伝えたわよ?

 

 

 

 

「こ……これ、『脱いだ』という行為に当てはまりますか……?」

 

 

 

 ……大丈夫よ多分。女の子にはちょい刺激が強いかもだけど裸って訳じゃないから。だから、その体格で不安そうな顔すんな。

 

 子犬かアンタは。

 

 

 

<ゲコゲコゲコゲコ♪ ゲコゲコゲコゲコ♪>

 

「……美琴さんですね」

 

 

 ……音の方向とか位置じゃなくてカエルで私って判断すんな。

 

 まあ、私なんだけど。

 

 

「うっさい。はーい『お姉様!? ご無事ですの?』……うっさい。電話越しに叫ばないでよ。無事って――怪我も何もしてないわよ?」

 

 

 耳がキーンとした……。何をそんなに慌ててんのよ黒子は……。

 

 

『佐天さんがいきなり押しかけてきて脱ぎ女がどうの御坂兄妹が脱ぐだの――お姉様脱いでませんわよね!?』

 

「な、脱いでないわよ! 深音が上着とシャツやられただけだっつの! あっ……」

 

 

 

「……」

 

 

 

『み、深音さん脱いだんですか!? 脱ぎ女じゃなくて脱ぎ男に……見たい! 写メ、写メを送ってください御坂s――』 

 

 

 

 慌てて切るけど――遅かった。

 

 

 

「……その、深音?」

 

「……」

 

 

 

 佐天さん……もうちょっと、空気読もうよ。もう隣に座ってる深音が見られないくらいに真っ白になってるから……。

 

 

 

「やぁ、待たせたね……どうかしたのか、二人とも……?」

 

「――いえ、なんでもありません」

 

 

 アンタのせいだ、といえば少しは気が紛れるだろうに。それでも引きつりつつも、笑顔で応じた深音を、私は凄いと思った。

 

 私? ……服を要求された当たりでビリッてるわよ。

 

 

 

「そうか……それより、さっきはすまなかった。どうにも一定時間を越えて暑い場所にいると思考がおかしくなるんだ――シャツはクリーニングに出して必ずお返しするよ」

 

 

 帰ってきた女の人が差し出してきたジュースはお詫びも兼ねているのかなーって――。

 

 ……受け取った瞬間、落としそうになった。

 

 

(え、ホット……!?)

(しかもカレーですね……しかも私のだけ――何ですか超辛って)

 

「暑いときには温かいものを摂って発汗を促すほうが効率よく体が冷えるし、カレーのスパイスは疲労回復を促す効果もあるからね――どうも、研究ばかりしている所為か、物事を理論的に捉えてしまうんだよ」

 

 

 ……理論理屈はまあ……分からなくもないけど。熱さ・暑さで思考がおかしくなる人の理屈じゃないわよね。

 うん、深音も頬引きつらせてるし。っていうかこの人深音に何か恨みでもあるのかしら。なんか深音の缶だけが超辛。色も赤が強いというか――もう缶の見た目から辛そう。

 

 

 

 

(――土御門さん、青髪さん。これは、お二人を見捨てた罰なんですね。今この場で謹んで、この御坂 深音……お受けいたします)

 

 

 

 なんか意味分からないこと呟いた深音が、プルタブを開けた――あ、これは辛い。においでわかる。

 コレは、ヤバイ。誰も買わないと企業が考えたネタの奴だ。でも、止める間もなく、深音はそれを一気に飲み干した。

 

 

 飲んだ瞬間、ビクッと震えて、生まれたての小鹿みたいに震えながら缶を置く。

 

 もう、アンタゴールしていい……ホント。

 

 

 

「ごちそう、さまでした……!」

  

 

 

 ……隣にいる私でもギリギリ聞こえるくらいの大きさで息を荒くし、相手の見えない机の下でズボンどころか足を握り締めて。

 

 コイツは、耐えて見せた。

 

 ――みんな、コイツが私の義兄よ。凄いでしょ?

 

 

 

「え、えと! 研究って学者さんなんですか?」

 

「んく。ん? ああ。大脳生理学、その中でもAIM拡散力場についてね――なかなか辛いな――いやヤバイなこれ」

 

 

 

 ……貴女はそれよりはるかにヤバイ劇物をうちの義兄に飲ませたんです。

 

 

 

「っと確か、能力者が無自覚に発散している微弱な力――ですよね。人間の五感じゃ感じ取れないほどで機械で計測するっていう」

 

「ひょうか(そうか)。ゆうひゅうなんらな(優秀なんだな)。――わらひ(私)はそれを応用するへんひゅうをしているんら(研究をしているんだ)」

 

 

 ……自滅したわよこの人。構わずしゃべり続けてるけど。

 

 

「へぇ……じゃあ、能力についてもお詳しいんですか?」

 

「んん! ああ、まあ、それなりにね。能力ごとに力場のパターンは変わるし、レベル強度でも変化するからね――何か知りたいことでも?」

 

 

 

 能力で知りたいことねぇ――専門家に聞きたいことなんて今更ない――あ、一つあったわね。すんごい私らしいの。

 

 

 

「たとえば、ですよ? 高位の能力者が戦うとして、最も相性が良かったり悪かったりする相手っていたりするんですかね……?」

 

 

 バトルジャンキー? そうですがなにか?

 

 隣で耐える深音の信じられない、といわんばかりの視線には、ちょっと、ダメージ受けたけどさ。

 

 

「戦う、か。これは面白い発想だが――。組み合わせが多過ぎないか?」

 

「片方はこ、高位の電撃使いとかだとどうでしょう!? 戦いやすい相手と戦い辛い相手はどうなりますか!?」

 

 

「エレクトロマスター、か。応用度自体が高いから、かなりの数の能力より優位に立てるんじゃないか? もちろんレベルにもよるだろうが、同レベルであれば殆どの能力より優位になるだろう――逆に、やり辛い相手となると――金属操作系――は磁界作用で干渉できるか……うむ」

 

 

 電撃使いの応用度は高いってのは、私が七人の中で第三位を与えられている理由でもある。研究有用性とか優先順位で決められた番号だから直接的な強さにはあんまり関係がないらしい。

 

 

「空間干渉系、テレポーター系は苦手なんじゃないか? 自分の体をテレポートさせられる相手に限るが……見えない場所や感知できない場所から相手は攻撃し放題……ある意味、怖いなテレポーター」

 

 

 テレポーター、黒子か。でも私と戦うなんてまずしないだろうし――って仕掛けたか、この前。

 

 

「……ああ、もっと天敵がいたな――電撃使いの」

 

「っ!? それって何ですか!?」

 

 

 

 

 

「電撃使いだよ」

 

 

 

 

 ……電撃使い?

 

 

「えと、どういう意味で?」

 

「電撃使いに電撃は効果がない、というのは多分知っているだろう? その上で互いの出来ることは互いに周知しているから責め辛い上に守りやすい。天敵、とまでは行かないが、かなりいやな相手だろうね。」

 

 

 

 

 そっか、電撃使いの嫌な相手は電撃使いか。

 

 

 

 

 ……へぇ。

 

 

 

 

< おまけ >

 

「で、君は飲まないのかい?」

 

「へ、いや、私はそのー……」

 

「遠慮することはない――さぁ、ぐぐーっと……!?」

 

「ちょ、やめ……カラッ!?」




読了ありがとうございました。

 ……おかしいですね、木山先生は好きなキャラの一人だったのに……。

誤字脱字・ご指摘などございましたらお願いします。
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