とある科学の超兵執事 【凍結】   作:陽紅

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愛を込めて花束を。これにて了、となります。

 本当はこれで一期完全終了とするつもりでしたが――

 OVA。見ちゃったんですね、はい。


 どうしようと悩む私を無視して、本編をどうぞ。




愛を込めて花束を   19-E

 

 

 

 

「はぁ――……」

 

「めずらしいんだね? 君がため息をつ……いてるね、思い返したら意外と。非科学的な言葉になるけれど、幸せが逃げていくよ?」

 

 

 はい。サウンド&ハープの『絶賛追跡されているほう』御坂 深音です。何がしたいんでしょうか、美琴さんたちは――。

 

 

「いえ、なにやら美琴さんたちに追跡されているようで――」

 

 ……私、何かしたでしょうか? 思い返してみても、別段なにかやらかした、という記憶は――ない、はずなんですが。

 無意識のうちに何かをやらかしてしまった、ということでしょうか。

 

 

 私の隣を歩くカエル先生。きょろきょろと周囲を見回しましても見えませんよ。皆さん今は眼に見えない死角で身を潜めていますので、まず分からないかと。

 

 

 固法さんと黒子さんは、なにやら距離を置いて建物の上から。美琴さんと佐天さんは直接的に見えない路地の影から。――初春さんは、私の動きに合わせて首を振っていた監視カメラ……ですかね。

 ――声をかけようとしたら隠れられたので、おそらく私に内密で進めたいのだと判断して関与していませんでしたが――まさかずっと監視されるとは。

 

 何でしょう――信用されていないようで少しショックといいますか。それにしてもやたらと本格的な監視でしたね……。

 

 

 ちなみに、美琴さんと佐天さんは私の死角に利用して着いてきたようですけど、通行人の方々に何度か目撃されてます。その方たちの不自然な動作で誰かいるとは判断できるんですよ?

 

 黒子さんと固法さんは――途中から、黒子さんが身を乗り出すときがちらほらありましたので――多分、わざとでしょう。

 

 初春さんは顕著ですね。私の移動速度に合わせて動く監視カメラが十数台も続けば、流石に怪しいですよ?

 

 

「――説明ありがとう。でも、多分それで察知できた上に知り合いだって判断できるのは君くらいだと思うよ? まず間違いなく」

 

 

 

 ……以外と、訓練をつめば出来るようになると思いますけどね。能力は一切使わない方法ですし。

 大きな花束を抱えて、少し高価なお酒も購入して――病院の、裏庭とでも言えばいいんでしょうか。両脇を木々と、たまに立つ街頭のトンネルの中を進んでいく。

 

 カエル先生の話では、昔は屋外でのリハビリに使われていたそうです。今はほとんど使われなくなってしまったみたいですが、カエル先生の要望でいまも残されている、らしいです。

 

 

「ああ、そうそう。木山君の教え子さんたちだけどね? 君のおかげで、予定よりずっと早く日常生活に戻ることが出来そうだよ――とはいっても、学業復帰は夏休み明けになることは変わらないけれどね」

 

 

 ありがとうと、カエル先生は笑いながら、そう報告してくれました。木山先生にもその件についてのお礼はすでにいただいているんですけどね。

 これも種明かししてしまえば……『肉体操作』の応用技、とでも言えばいいんでしょうか。木山先生の誕生日に、先生の新陳代謝をコントロールして超改善したのですが、それの強化版、と考えれば妥当ですかね。

 

 念入りに行うためには接触面積が広くないと出来ませんが――木山先生と同程度の接触面積で十分に治療可能でしたし。風邪や擦り傷などであれば、手で触れるだけですぐに治せますし。

 

 

「医者の立場が霞んでしまうね? ……もっとも、医者の出番が無いことに越したことは無いんだけど。――君としては、使いたくても使えなかった力が堂々と使えるわけだから、開放感とかもあるんじゃないかい?」

 

 多重能力者ということがばれてしまえば、学園都市の科学者たちに狙われる、と厳重注意をしてくれたのはカエル先生でした。

 

 

 

 ――いえませんね。結構な頻度で電撃使い以外の二つも使っていた、なんて――

 

 

 何とか苦笑してごまかして……多分、見透かされている可能性が高いですが。

 

 

「はぁ……『無理だけはしないように』――なんて言葉は君に何の重みも与えないだろうから、少しきつい言葉にさせてもらうよ?」

 

 

 そういうとカエル先生は突然足をとめて、そのまま振り返り着た道を戻っていく。少し歩いてまた立ち止まって――今度は、振り返りませんでした。

 

 

「君の命。それはもう君だけのものじゃないはずだ。その命を無駄にするということは、それは全員への冒涜となる。……君が何よりも守ろうとしている、彼女たち全員への侮辱だ」

 

 

 絶対に、忘れるんじゃないぞ――そう、言い残して、カエル先生はそのまま歩き去っていきました。

 

 

 その背中に答えを告げずただ見送って――私は、また前を見据えて歩を進める。木々のトンネルの終わりはすぐに訪れ、視界に広がったのは……。

 

 

 

「これは、凄い――ですね」

 

 

 一面の夕焼け空と、そして、学園都市の一望。今日通ってきた場所の大半を見渡せるその場所では――遠く遠くの都市の喧騒が、余計に静けさを強調していました。

 

 

 ……そして。この高台の何処よりもこの学園都市と、天上に広がる大空を独占できる場所にあるもの。それは、最後に見たときと、なんら変わっていませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――では。

 

 『約束』を、やり直すとしましょう。

 

 

 

 

 

 

 

「皆、お待たせしました……やっと、やっと。約束が、本当の意味で、果たせます」

 

 

 499枚からなるドックタグ。かつて電流で一箇所に集めて、電磁熱で一枚一枚接合。正直、あんな状態でよくアレだけの量を制御して、そのうえで融解させるだけの電量を出せたものだと少し自分を褒めたくなりましたね。

 

 

 一つ一つのタグ。そこに刻まれた名前を、もう一度。心に刻み付ける。499人の名前の刻まれた、形が少し歪な……それは、一本の十字架です。

 

 

 その十字架の前に花束を置いて、名前も味も知らないお酒の栓を開ける。年齢からして、飲める人たちもいますから問題は無いでしょう。

 お酒にボトルについていた、一口で飲み干せるサイズのグラスが二つ。その両方に琥珀色のその液体を注いで、一つは花束の隣に、もう一つは私に――

 

 

「みんな……随分、長くお待たせしました。空、ですよ。綺麗ですね。夕焼け空というらしいです。……約束は、守れました。ここでゆっくり、休んでください」

 

 

 

 ああ。やっと。

 

 やっと、みんなと同じ空を、見上げることが出来ました。

 

 

 

 これを報告しよう。あれを伝えるべきだろう、って。

 おかしいですよね。ここにくるまでに、散々考えたはずなのに。全部どこかに飛んでいきましたよ。

 

 グラスを回して、琥珀を揺らす。アルコールの香りが強い――度数も気にせず買いましたからね……。結構、強いお酒? なのかもしれません。

 

 

「っ……」

 

 

 ――熱い。

 

 美味不味の前に、そもそも味なんてほとんど分からなくて。

 ただ熱いものが喉を通って、体の真ん中にある。――これが、お酒ですか。

 

 

「――乾杯は、しませんよ。私は、当分そちらへはいけません。当分はいくつもりもありません。どれだけ時間がかかるか分かりませんが、その時まで待っていてください」

 

 

 

 ――背後から、ずんずんという勢いの足音が近づいてきますね。振り向きませんけど。

 ずっと腫れ物みたいに監視されたんですから、お返しですよ。

 

 

「――奇遇ですね、美琴さん。こんな所で会うなんて」

「う……うっさい未成年飲酒。アンチスキルに報告するわよ」

 

 

 ――というよりも、ジャッジメントのお三方がいるわけですが。

 美琴さんは、そのまま私に並ぶ位置で、止まる。 

 

「……いい、ところじゃない。空も独り占め。学園都市も独り占めできるなんて。なかなか無いわよ?」

「私もそう思います。兄さんたちも姉さんたちも、喜んでくれるといいですが――」

 

 

 他の皆さんも、どこか遠慮するように静かに、そろりそろりと後ろに。

 ――ああ。一番大切な報告を忘れてました。

 

 ですが、言葉にするのは恥ずかしいので、ここで、伝えますね。

 

 

 

 兄さん。姉さん。

 この人たちが、私の――大切な人です。みんな、素敵な人ばかりなんですよ?

 

 

 

 初春さんは、友達のために心から涙を流せる心の強い女の子です。

 佐天さんは、皆を笑顔にといつも考えている優しい女の子です

 黒子さんは、誰にも知られないところで誰よりも頑張る頑張り屋さんな女の子です。

 固法さんは、自分に出来る精一杯以上で誰かを守ろうとする真っ直ぐな女の子です。

 

 

 そして、私の隣に立っている女の子。……なんと、私たちの末妹ですよ?

 

 意地っ張りで、負けず嫌いで。

 ちょっと短気で、それを直そうとしてもなかなか上手くいかなくて。

 少し子供っぽい趣味があって、それを何とか隠そうとしていても周知の事実で。

 

 

 ……でも、私なんかが自慢していいとはとても思えないけど、私の自慢の、妹です。

 

 

(だから、私なんかより、彼女を、彼女達を。どうか――見守ってあげてください)

 

 

 

 

 ……沈黙は、肯定と受け取りますよ?

 

また、来ます。必ず、皆で。それまでゆっくりと、眠ってください。

 

 

 

 

 

《 おまけ 》

 

 

 

「――深音。それ貸して」

 

「……はい?」

 

「だから、そのコ、ップ貸しなさいっての!」

 

 深音の手に持っていたグラスを奪うようにして取り上げ、少し躊躇してから、ボトルを傾ける。淵ギリギリまで満たされたその液体に顔を近づけて、匂いにだろうか一瞬、顔をしかめていた。

 

「ちょっ!? お姉様!?」

 

 しかし、そのまま。深音同様一気に煽り干した。グラスを握りつぶさんばかりに握り、声にならない悲鳴を上げ――何かに耐えるように身体を震わせること、数秒。

 

 カッと眼を見開いき、胸はる。

 

 

「安心しなさいよ! こにょバカの心配は! あらし達でしろくから!!」

 

 

 

 言いたいことは言い切ったのか、そのまま仰向けに倒れていく美琴を、優しく抱きとめる兄が、いたそうな。

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 窓もなく、扉もない。

 不自由どころか、まともに生活すら出来ないだろうその空間で、『天を見下す』存在は、いっそ優しげな笑みを浮かべている。

 

 部屋にあるスピーカーからだろう。何人ものヒステリックな男(稀に女)の声が聞こえるが意に返すことなく。夕暮れの中、十字架の前に立つ少年たちを画面越しに見届ける。

 

 否。 少年たちではなく……自分の中の決意を、再認識している、一人の少年を。

 

 

『見せておくれ。君の咲かせる花を。教えておくれ。君が結ぶ果実を。我がいとしき、我らがいとおしき――種子たる種子よ』

 

 

 ひとしきり画面を眺め――少女が眼を回して少年に抱えられる瞬間まで眺め。そこで静かに目を閉じる。

 

 今まで一方的に声を通してきたスピーカー達は黙り込む。そして、一方的に命令を伝える道具に成り下がっていた。

 

 

『統括理事会の名において、多重能力者・御坂 深音。および、その周辺に一切の手出し口出しを禁ずる。そして、これは決定事項である。反するものは、この都市の暗きの手にかかるだろうことを、覚悟せよ』

 

 

 そしてまた一方的にスピーカー達のつながりを断ち切り、満足げな笑みを浮かべた。

 

 

『……さて。これでいいかな? 我が盟友よ。――もっとも、頼まれずとも手は打ったのだが……』

 

 

 

 画面に視線を向け、どこかの屋上で夕日を眺めている名医に笑みを向ける。

 そして、おそらくそれと同じ景色の元にあるだろう少年を思い浮かべ――その存在はただただ、優しげな笑顔を浮かべた。

 

 

 

 

『――もうすぐだ。種子よ。心せよ――魔と科かが続けた平行線の終焉は、君を起点に渦巻くのだから』

 

 

 眉をを潜め、心配そうに。

 

 しかし、それでも。 

 笑みを浮かべて、見守り続けた。




読了ありがとうございました。


 OVA、書きます。書くだけ書きます。出すかどうかは分かりませんが。


 誤字脱字・ご指摘などありましたらお願いします。
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