改正: とあるご指摘を受け、改正いたします。
学園都市全体でのレベル4の人数を50名と調査ミスをやらかしておりました。
その件の内容を改正させていただきます。2013 6/30
大砲の轟音と、十数メートルには達するだろう水柱。それが一分間という短い時間の中、きっかり十度。轟音と水柱が交互に繰り返された。
『きっ、記録――砲弾初速1130m/sec。連発能力10発/min。着弾分布 12.9mm』
その砲撃主たる御坂 美琴は、自分の結果をどうだ!といわんばかりに、後ろで見学する執事……書類上の兄である御坂 深音にドヤ顔で自慢する。
今までの結果の中でも相当自信があったのだろう。その相手には身長ではかなうはずもないのに踏ん反り返って見下そうとしていた。
……見下そうとして、そこに誰もいないことに気づく。
『総合評価、レベル5』
「たくさん計器がありますね……こんな水辺に近いところで大丈夫でしょうか」
「…………(ブチッ)」
……凄いんだぞー、という所を見せようと思い集中し、自己ベストを更新する結果を記録した。
しかし残念かな、傘を差した深音の意識はそれらを計測する機器と、それを操作する教員の説明にしか向いていない。
恥ずかしさと怒りにより、その『緒』は容易く、あっけなく切れる。
測定外の十一発目のリロード。顔を真っ赤にして高電圧をチャージする美琴に、深音が冗談だと苦笑するまであと数秒。
……深音のすぐ近くにいた教員は、自分の顔から血の気が引くのを実感したそうな。
「――ったく、見学に来たってんならしっかり見てなさいっての……」
「申し訳ありません。軽い冗談だったのですが、美琴お嬢様が撃鉄の幻聴を聞かせるまで本気でお怒りになるとは……」
「うるさいっ!」
超電磁砲を、コインを取り上げるという方法で食い止めた深音は、不機嫌を隠そうともしない美琴に続いて常盤台中学の廊下を歩いていた。
すれ違う生徒の大半に振り返られるか凝視されるのは、もはや覚悟の上だった。後方でヒソヒソと深音を知る寮生が噂を拡大させていっていることも。
「……で、なんでここでも執事モードなわけ?」
「……不審者として通報されないため、です」
本心からの苦笑をチラリと見せ、すぐに執事スマイルに戻る。
ただの自衛手段だった。
「アンタもなかなか難儀ねー……で、そっちの結果はどうだったの?」
「『電撃使い』のレベル4、とのことです。美琴お嬢様のレールガンのような特技もありませんので、純粋に放電能力の測定でしたが」
何処から取り出したから分からない検査用紙を眺めながら、喜ぶでも悲しむでもなく。執事モードであることを抜きにしても、とても淡々としていた。
(最大電圧・2億ボルト。操作性・S++。推定継続時間・78時間……)
「は……?」
歩きながらその結果を盗み見た美琴は、目を二度三度瞬かせ、その用紙を奪い取って目を走らせる。
「で、電圧こそ私の二割くらいだけど……操作性は私より+が一個多いし――なによこの78時間って?! 三日間も能力を使い続けられるってどういうことよ?!」
推定ではあるものの、能力をフル活用できる時間をさまざまな項目から算出することが出来るのだが――電撃使いの場合、ほかの能力者とは少し意味合いが変わる。
美琴の最大電圧は深音の五倍の10億ボルト。観測された雷の最大電圧にも並ぶが、それだけの電圧を維持して放出し続けるとなれば30分が限界だろう。
当然、日常生活で雷級の雷撃を用いることなどまず無ければ、長時間放電し続ける、ということも殆ど無い。
しかし体内の蓄電量、とでも言えばいいのだろうか。それを使い切ってしまえば他の要素を問わず、電撃は使えなくなる。その上、全身を酷い倦怠感が襲うため身動きも出来なくなるのだ。
また人間の体は微弱ではあるが電気を生成しており――電撃使いである美琴は常人よりも発電量が多く、それを能力の充電に当てているのだが……深音はおそらく、この蓄電量か発電量のどちらか、あるいはその両方が、美琴の数倍、数十倍のスペックを誇るのだろう。
レベル5の美琴から見ても、その事実は驚異的なものだった。
瞬間的には美琴が圧倒し、継続的・回復力面では深音が圧倒する。
「……これで何でレベル4なのよ?」
「所詮は『推定』の限界時間、ということでしょう。レベル考察にはあまり影響が無いのかも知れません。むしろ、美琴お嬢様の二割程度の電圧でレベル4をいただけただけでも有難いです」
(って言ってるのに何で無表情……?)
レベル4であれば学園都市230万人の中でも、数百人しかいないエリート中のエリート。
レベル5の美琴でさえその検査結果には一喜一憂するものだが、深音は今にも検査結果の用紙を丸めてゴミ箱へと投げ入れそうな勢いがあった。
「それより美琴お嬢様。これからのご予定は? 私はこのまま常盤台寮へ戻ろうかと思いますが」
「私は黒子と一緒にファミレスでお茶してくるわ……そだ、アンタも来なさいよ。この一週間執事ばっかで全然遊んで無いでしょ」
「遊ぶ……ですか?」
「社会勉強も兼ねてるって言えば、寮監だってダメとは言わないでしょ。そうと決まれば善は急げってね」
深音の返事を待つことなく、そして深音自身も待つことなく。美琴は何処ぞへと駆け出してしまった。
有無を言わさず連れまわすやり方は、深音を病院へ運んだときと全く変わっていない。
そして、深音が浮かべていたのも笑顔だということも、やはり変わっていなかった。
「……困りました。道が分かりません。そしてこれ二回目のような気がします」
結局探すのを諦めて、校門の前で待機することにしたそうな。
***
「U-I-HA-……」
その少女は、某蛇氏並みの隠密スキルで標的に接近し。
「RUuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuu!!!!」
ラーメン忍者ばりの忍ばなさで、目的を遂行した。
「ふぇ――……? ひゃわあぁああぁぁあぁぁ?!」
人知れず忍びより、結果は周囲の誰も見逃さない。そんな矛盾した行為をやってのけた長い黒髪の少女は、一つ頷いて内容を吟味する。
「今日は、淡い! ピンクの!! 水ぃ玉か―――ッ!!」
少女、佐天涙子の絶叫の内容に、『それ』を見てしまった周囲の男子生徒達が顔を赤くして足早に去っていく。……当然、見た内容と聞いた内容をガッツリ記憶しながら。
「さ、な、何をするんですか佐天さん! 男子もいる往来でなんて暴挙を……!」
「クラスメートに敬語とか相変らず他人行儀だねー……よし! 親睦を深めるために、アタシは敢えて鬼になろう!!」
「ならなくていいですし……連続でスカートめくらないでーッ!!」
前を守れば後ろが。後ろを守れば前が。
片手で前後守れよと言われるかもしれないが、そんなことも考え付かないほどテンパっているのだとご理解いただきたい。
周囲の生徒がほぼ全員『それ』を見たところで、悲劇は終了した。
「いやー、ゴメンゴメン。そこに初春のスカートがあったもんだからついつい」
「酷いですよ……しかも全然反省してないし……」
親指をグッと立てて謝罪しても、逆効果なので注意である。
お詫びに自分のスカートを、などといって周囲の男子の目を集めるが、初春当人に拒否されたため仕方なく下ろす。周囲から複数の馬鹿正直な舌打ちが聞こえたような気がしたが、空耳だろう。きっと。
「んで、どーだった? システムスキャンの結果は」
「相変らずのレベル1ですよ。担当の先生も花咲きパワーで咲き誇れーとかわけの分からない激励してくるし」
「花咲きパワー、ねぇー……」
佐天の目が、初春の頭で咲き誇る花々に向けられる。常々リアルな花飾りだとは思っていたものの、此処に来て生花疑惑が浮上。
真偽を検分するべく手を伸ばしても、次の瞬間には初春の頭は手の届かない位置にある。めげずに二度・三度。そしてラッシュへギアを上げていくが、花飾りどころか初春本人にも掠りもしない。
運動音痴ではなかったのか、と問いたくなるほどその動きは機敏だった。
「(か、回避行動が無意識だよこの子……) ま、まあ別にいいじゃん? 1だけでもあるだけさー、アタシなんて相変らずのレベル0! 無能力者だもん」
「でも、だからどうしたーって開き直って日々を面白おかしく過ごすのが佐天さんですよね」
「……ほほぅ、言ってくれるね初春――まあ事実だけどさ。それよりこの後CDショップ行くよ! 一一 一のプレミアム限定グッズ付録のアルバムをゲットするよ!」
一一 一の真のファンを宣言する佐天に、初春はただ苦笑する。
レベル0という結果に微塵も打ちのめされた様子などなかった。
「あ、でも私は白井さんと約束が」
「白井、って――確かジャッジメントの同僚の人だっけ?」
「はいー、念願かなって御坂さんに会わせてもらえるんですよー。ちょっと前にジャッジメントのお仕事でお会いしたんですけどなんのお話も出来なかったですし……はぁ~、学園都市に七人しかいないレベル5、常盤台のエース御坂美琴さん。どんな人なんだろ」
研究所で見せたバトルジャンキーやらクラッシャーな一面や、先週の病院での行動は、なんとも都合よく彼女の記憶からスッパリとデリートされているらしい。
夢見る乙女と化している初春に、佐天は苦笑を浮かべた。
「レベル5ねぇ……どうせ威張り散らしたいけ好かない奴なんじゃないの? レベル4とか3とかでも見下してくる奴らいるし――ああいうのが一番嫌いなんだよねぇ私……しかも常盤台のお嬢様なんて」
「いいじゃないですかお嬢様! いえむしろお嬢様『だから』いいんじゃないですか!」
「アンタ、ただ単にセレブ族にあこがれてるだけなんじゃ……」
「そんなことはナイデスヨ? ……そうだ、どうせなら佐天さんも一緒会いに行きましょう!」
そうして立ち上がるなり、佐天の腕を組んでぐいぐいと引っ張っていく。左腕で左腕を組むと、互いの向きは当然逆になり、佐天としてはとても歩き辛い。
「いやだからアタシはアルバムを――って外れない?! そして移動速度が緩まない?! 初春アンタ運動音痴じゃなかったの?! せめて向きだけでも変えてってアタシの話聞けぇぇえええ!!」
……スカートをめくられた恨みは、存外に強かったらしい。
<おまけ>
「っ! どこかに私と同じような思いをしている人が!?」
「? よくわかんないけど、アンタなに食べんのよ」
「あ、はい。このかるぼなーら? というものを……」
何かを感じ取った、ビリビリ兄妹の兄がいたそうな。
読了ありがとうございました。
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改行の間を意識しているつもりですが、いかがでしょうか?