とある科学の超兵執事 【凍結】   作:陽紅

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とある科学の超兵執事、第二期がこっそりこっそりスタートします。


……原作タグはとある魔術にしたほうがいいんでしょうか……?


とあるいつかの暗躍者たち

 

 

 

 無意味になまで広く、不思議なまでに暗く。おおよそ快適などという言葉からは程遠いその空間を、『相変わらずだ』と画面越しの声が鼻で笑っていた。

 

 しかし、そんな空間を居住としている者にとって、その反応は少なからず反感を抱かせても仕方ないだろう。

 

 

 

 

「やれやれ――久方振りの連絡の、その第一声がそれとは。些か以上に礼儀知らずなのではないかね? ……仮にも一組織のトップなのだから、僅かなりとも礼儀・体裁というものを気にしてはどうだ?」

 

 

 そして――その声の主を知っているものであれば、嫌な意味で鳥肌を立てずにはいられないだろう。こんなにも人間らしい皮肉をのたまうなど――明日はきっと、神話級の武装が雨霰と降ってくるのではないだろうか。

 

 ……などと馬鹿げた比喩を、八割ほど本気で考えてしまうほどに。

 

 

 

『―― 一体全体、何をしようと画策しにけるのかしら? 正直に白状(ゲロ)するべきであるのよ』

 

「……」

 

 

 

 機嫌が良い。そう自覚はしている。だが、その返答を聞いてむしろ、そちらがどうしたのだ? と問い返したいほどに話し相手たる彼女の言葉遣いは酷いものだった。その声が、うら若い少女のものであるのだからなおのこと。

 

 

 

(……仕事つかれて非行に走るような年齢でもあるまいに……)

 

『……何かしら、今不快なる気配が……』

 

(そして無駄に鋭い。しかも一々口に出して言うあたり確信しているか……)

 

 

 

 そろそろ切り替えねば迷走し続けるだろうと判断する。

 

 

 

「なんてことは無い。私とて、父母から生まれた命なのだ。些細なことに喜びもするし、浮かれもするさ」

 

『それが不気味だとここに断言し候』

 

 

 

 どちらだろう。どっちに不気味を感じたのだろう。父母から生まれた、というほうか。それとも些細なことへの喜びか。

 

 

 

『前者と後者、双方に相違なきにける』

 

「――読心の遠距離魔術でも開発したのかね?」

 

『乙女の勘という人類創造以来の秘術であるからして――まあ、そのような些事など捨て置いて』

 

 

 

 声が、いまだ不可思議な韻と方言にまみれているかが、雰囲気を変える。

 

 それを聞いて、ああ、やっと本題に入れるのか。とため息をこぼしそうになったのは秘密である。

 

 

 

『進調は、いかなるか?』

 

「問題ない――全ては、順調に進んでいる。我々の思惑通りに進んでいることも、思惑に反して立ち止まっていることも」

 

『……そ、それは、まこと順調と言いしべきことなるか?』

 

 

 訝しげな声は、その言葉の返答として当然だろう。順調といいつつも、予定通りに進んでいないといっているのだから。

 

 しかしだからこそ、彼――アレイスター・クロウリーは美笑を浮かべる

 

 

 

「順調だよ。ことこれらにおいて、不必要な事象は一つも無いのだから……」

 

 

 

 真っ直ぐなレールほど快適で、しかし、つまらないものは無い。

 

 

 

(……否、そもそもレールなどという都合の良いものは存在していない。か)

 

 

 道なき道をがむしゃらに駆けるように、暗中をなんの灯火もなく、突き進むように。そこにはなんの保証も確証もなく、どうなるのかさえ分からない。

 

 それを知り、理解してなお。

 

 

 

 アレイスターは、順調だと宣言した。

 

 

 

『真に不気味なること。……しかして、その言葉を信ずるわ。こちらも概ね順調と言えることだし、現状に不備不満はなしとなりけるわね?』

 

「不備も不満も何も、その時になってみなければ分かるまいよ。私も、そして君も……描いたシナリオはとうの昔に破り捨てているのだから」

 

 

 

 予定通りに進まない。それで苛立つのは三流。

 

 予定通りに進まない。それを上手く修正するのは一流。

 

 予定通りに進まない。しかし、それに面白いと笑みを浮かべるのは――。

 

 

 

『今だキャストさえ出揃わぬなど。……退屈せぬことよね、全く……』

 

「違いない。いまこの現状で配役の決まっている者に頑張ってもらおうではないか」

 

 

 画面越しに二人は、ニヤリといい(・・)笑顔を浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……して――その言葉は、どうしたのだ? 極東独自の言葉でなくとも会話は出来たろうに」

 

『ふふん♪ ようやく聞きしね。まあ難し無きことよ。舞台は日の本たるそちら、人聞きでは感動他もろもろも半減なること明白なり。なれば――』

 

「……ふむ。まあ、ご苦労なことだ」

 

 

 

 どこか自慢げに、画面の向こうで胸を張っている彼女。

 

 アレイスターは正直に言うべきか、それとも温かく見守るべきか一瞬悩み。

 

 

 

 

「――では、またなにかあったら連絡を入れよう。そちらも同じようにしてくれ」

 

 

 

 関係ないと放置することにした。

 

 是(ゼ)と、本当に一音だけで返してきた彼女から通信を切ったことを確認し、ニヤリと笑みを、深くする。

 

 

 

「いやはや……もしかしたら、キミも配役に名を連ねるかもしれないな? ローラ=スチュアート」

 

 

 

 イギリス清教が最大主教(アークビショップ)。そんな大物が舞台に上がるかも知れない。

 

 

 今のままなら、ピエロくらいにはなれるだろう。ヒロインは少々難しいだろうが――んどという、本人が聞いたら烈火のごとく猛るだろう感想を。そして、らしくない思考を打ち切りつつ、無数の映像を呼び出す。

 

 

 そして、眼に留まった画面を拡大し、眼を見開いてまた笑みを浮かべる。

 

 

 

 

「……ほう? これまた――」

 

 

 

 ……観客とも、監督とも言える特権立場。それを生かして精々見守り、楽しむとしよう。

 

 

 

「ローラの差し金……というわけではなさそうか、しかし、ふむ……」

 

 

 

 

 おもしろくなりそうだ――と。さながら、たとえ居るとされる、『 』のように。

 

 

 ――ただただ、見守ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

  開演の刻限にはまだ遠くも、観客席に今だ空席は多く。

 

 

  舞台には今だ、多くの空白が多く。

 

 

  だれも居ない場所を照らし続けるスポットライトは――さながら誰かが選ばれるのを、ただ待っているように。

 

 

 

 

 

 しかして、開演を待たずして。

 

 

 舞台は、ただ一人の観客(監督)を前にして――静かに幕を開けた。

 

 

 

 

 科学と魔術が交差を繰り返し、螺旋を描いていく物語。

 

 

 

 それが今……静かに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     ―― 始 ま る 。

 

 





 読了ありがとうございました。

 アークビショップの台詞に大苦戦しましたが……。

 
 誤字脱字・ご指摘などありましたらお願いします。
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