とある科学の超兵執事 【凍結】   作:陽紅

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……キャラ崩壊のタグを、つけるか否か……!


2人の電撃使い   2-3

 ストローからズゴーと音を立ててジュースを飲み干し、コップをテーブルに置く。

 

 あまり上品とはいえないが、そんなありふれた行為を2人が意図せず完全にシンクロして行うさまは、ちょっぴり感動的でもあった。

 

 

 

「っはぁー……んで、私のファンってその子が?」

 

「え、あ。はい。そうですの。ジャッジメントの同僚の子でして……ほら、以前深音さんの件で一緒にいたではありませんか。その子がどうしてももう一度お会いしてオハナシをしたいと何度もお願いされまして。

 もちろん、お姉様が常日頃ファンの子達の無礼な振る舞いに閉口しているのは存じております。ですが、初春は分別を弁えた大人しい子。それに、ワタクシが認めた数少ない友人でもありますの。ここは、黒子の顔を立てると思って」

 

 そう言いつつ、鞄から取り出したのは一冊の手帳。対面に座る御坂兄妹は表紙に書かれた『秘』の字をばっちりと確認した。

 

 

「もちろん! お姉様のストレスを最小限に抑えるべく、今日の予定はワタクシが完璧

「深音ー」「了解です」ちょ!」

 

 

 深音が手帳を奪い美琴へパス。深音はそのまま黒子の頭を押さえ、美琴は悠々とその内容に目を通す。

 

 兄妹というより、ボスと秘書の関係であった。

 

 

 

「"初春を口実にしたお姉さまとのラブラブデート大作戦"ねぇ……」

 

 その一 ファミレスで親睦を深める

 その二 ランジェリーショップで下着(最終決戦用)を購入

 その三 アロマショップで媚薬(皮膚浸透性)購入

     初春駆除

 その四 ホテルで朝までアバンチュール

 

 

「つまりはなに? その分別を弁えた大人しい子をダシにして私にいっ――いかがわしいことをしようとしたと……私としてはそれで十分ストレスなんだけど……!?」

 

 

 いかがわしい、のくだりで深音がいるのを思い出す。書類上は兄妹であろうと、十日ほどしか経っていないのだ。異性として意識するのは普通である。

 

 もっとも、意識された深音はいろいろと聞きなれない単語ばかりで、大作戦の内容の半分も理解できていないだろう。現に、女性用の下着を買いに行くのであれば私は帰ったほうがーなどと呟いている。

 

 普段より強めで長めのアイアンクローにタップする黒子だが、レフリーのいない野良試合ではタップはあまり意味がない。

 きっかり三十秒、握力がそろそろ限界という所まで締めた美琴は、2人のやり取りを苦笑しながら眺めている深音を見る。

 

 

 

「……まあでも、初春さんがいたから深音を助けられたようなものだし――黒子の友達じゃあ、しょうがないか」

 

「おね「なっ!」えさまがそんなにも黒子のことをお思いになってくださっていたなんて黒子は! 黒子はもうどうにかなってしまいそうですの!」

「この! 離れなさいっての……!」

 

 黒子が美琴の膝の上にテレポートし、周囲の迷惑を無視した音量で騒ぎ出す。もちろん、美琴の発言の深音救出のお礼か、それとも黒子の友達だからか、どちらに重きが置かれているのかは堂々と無視して。

 

「あ」

 

 窓の外には丁度話題に上がっていた初春と、やたら疲れきっている佐天がいて――

 

「あの、お客様? ほかのお客様のご迷惑になりますので……」

 

 そして店員もいた。

 

 

 

 

「……とりあえず、外に出ましょうか?」

 

 

 

 

 ゴィンッ!!

 

 

 

 

「うぅ……というわけで、改めて紹介いたしますの。こちら柵川中学一年、初春 飾利さんですの」

 

 視点変えの効果音に頭を使われた黒子は頭をさすりつつ、ホストとしての役割を全うするべく、初春を紹介する。

 美琴を前に緊張でもしているのか、いつも以上に背筋がピンとしている。

 

「ど、どうも。初春飾利です。先日はお世話になりました」

「で。えーと、そちらがー……?」

 

「え、えと! 佐天涙子です! 初春……さんのクラスメートです! ヨロシクお願いします!」

 

 

 同じく全身を緊張させ、ギリギリ裏返ってない声で自己紹介をした佐天。しかし初春とは違い頭を下げた先は美琴ではなく――

 

「あー、初春さんに佐天さんね。私は御坂 美琴。ヨロシク。……で、コッチが――」

 

 

「御坂 深音です。こちらこそ、ヨロシクお願いします」

 

 

 唯一の男性、深音に向けてであった。

 

 執事モードではないにせよ執事服のままなので大変目立つが、常盤台の2人が側にいるためだろう。深音を観察していたものはどこか納得したように視線を戻していく。

 当人はそれを一切気にすることなく、のほほんとした笑みを浮かべている。

 

「ちょ、ちょぉーっと初春――さん! お話があるんですけどよろしいですか?!」

「佐天さんが敬語とかこw」

「「「……?」」」

 

 

 

 常盤台組が首を傾げる中、佐天は猛ダッシュで離れていった。

 少し離れた物陰に入るなり、初春の両肩を掴んで揺らす。

 

(何?! あの男の人誰?! あんたが会うの御坂さんと白井さんだけじゃなかったの?!)

(あの人も御坂さんですって。……いえ、ここに来ることは知りませんでしたけど。美琴さんのお兄さんですよ)

 

 お兄さん、と呟きつつ美琴と深音を見比べる佐天。内心似てないと思いつつも、自分の弟もそこまで自分に似てないことを思い出す。

 

 しかし――

 

 

(ッていうかなンなンですかァ?! 人の直球ド真ン中な人はァ!? 一目惚れとかハァ? ッて言ッていた昨日までの私ッて何?!)

(佐天さーん、呂律がなんか変ですよー? しかし、そうですかー、深音さんが佐天さんの好みの男性ど真ん中……と)

 

 誰か乗り移ったらしい。そして相当混乱しているらしく、自分で一目惚れなど暴露していた。

 ニヨニヨしていた初春もそこまで言われて、改めて深音を観察してみる。

 スラリとした背は高く、180センチあると自慢げにしていた中学の先輩より少し高い。体は細いが弱々しさは一切ない。黒い長髪をシンプルにうなじで結い、凛とした顔をそのまま体言したような顔。それが、優しげな、ほっとするような笑みを浮かべている。

 

 

(……あっれぇ、なんで私今までノータッチ……?)

 

 結論。めっちゃくちゃ『はいくぉりてぃ』であった。

 

 

 

 

 

「ど、どもー。お待たせしましたー」

「ちょっと作戦会議してましたー」

 

「作戦会議? ――まあいいですけど、少々予定はずれてしまいましたけど、今日の予定は黒子がバッチr」

 

 次弾・着弾。

 

「ったく……ま、こんなところにいてもしょうがないし。とりあえず、ゲーセンでもいこっか」

 

「ま、またお姉様はそのような所を……もっと常盤台のエースとしての自覚を「アンタの予定よりはマシだと思うんだけど?」……」

 

 

 美琴の冷たい視線に、もはや黙るしかない黒子。

 

 

「深音ー、アンタはどうする? ゲーセン」

 

「行った事がないのでなんとも。ただ女の子四人の中に私1人というのはどうかと思いますので皆さんで楽しんで「「いえ、深音さんも是非ご一緒に!」」……なぜでしょう、私の意見はまったく採用されないことのほうが当たり前のように感じるのは」

 

 背を押され腕を引かれる。引き剥がすことは容易だが、そんなこと当然出来るわけも無く。美琴にもポンと肩を叩かれる始末。

 

 

「はいはい拗ねない拗ねない。意見無視されたって悪い方向に進んだことなんてないんだからいいじゃん」

 

「……深音さんの意見を無視していらっしゃる第一位は間違いなくお姉様ですの」

 

 

 都会に疎い兄を、妹達が連れ出した図――に見えなくも無い。着ている服はおおよそ場違いだが、そんな雰囲気があった。実際、深音は都会どころか田舎も知らないのだが。

 

 深音の町探索も兼ねているのだろう。あのお店はどうの、あの路地はどこへつながっているだの。大変にぎやかに進んだ。

 

 

 

 

 

「美琴さん、なんですか? それ」

「ん? これ? チラシよ。お店の宣伝とかで配ってるのよねーたまに。この先の公園でクレープねぇ……先着200名様にはゲコ太ストラッププレゼント……?!」

 

 

 その目は明らかに、メインのクレープでもなく、公園までの地図でもなく。

 ゲコ太という、髭を生やしたカエルに向けられていた。

 

 

 あまりに凝視していたため「まさか……?」という雰囲気に包まれる。黒子など「やれやれまたか」といわんばかりに、というかぼやきつつため息をついていた。

 

 場の空気を敏感に感知した美琴であるが既に遅い。しかも、三人の視線はばっちり美琴の鞄のカエルストラップに向けられている。

 

 

「さ、皆さん公園のクレープ屋まで急ぎますわよー。早く行かないとゲコ太がなくなってしまいますわー」

 

 先ほどの意趣返しのつもりか、にやりとした笑みで棒読みの黒子。

 違うのだと言い返したい。しかし、言い返せばストラップをゲットするチャンスを棒に振るかもしれない。

 

 悩みに悩んだ挙句……

 

 

 

「結局こうなったと……」

 

 先頭を佐天に、深音・美琴とクレープ屋に並ぶ。公園に着いた時点で順番待ちの列は相当長く、公園内でクレープを食べている人も多い。

 

「…………」

「落ち着いてください美琴さん。漏電してます、背中に何発か当たってます」

 

 

 腕を組み、指を叩き。脚でリズムを刻む美琴。親の仇でも見るかのように前方の列を睨んでは刻むリズムのテンポを上げる。

 時折パチパチ聞こえたのは、漏れた電撃が同じ電撃使いの深音に吸い寄せられた音だったようだ。

 

 

(……常盤台のレールガン、かぁ……)

 

 

 高位能力者、というイメージを良くも悪くもぶち壊された佐天。というよりも、深音が盾になるように割って入ってくれなければ静電気程度とはいえ被害を受けていただろう事実に冷や汗が流れた。

 

 乾いた笑いも出てこない。深音に感謝である。

 

 

 佐天の順番になり、場所をとりに行った黒子・初春の分もまとめて購入したのだが――チラシにあったはずのゲコ太ストラップとやらが出てこない。ついでに言えば、一つ前の男の子はうれしそうにもらっていった。

 

「(うわー、嫌な予感)あ、あのー。ストラップは……」

「え、ああ。ごめんなさい。さっきの子ので最後でして」

 

 

 ドサッ。

 

 

「美琴さん!? 美琴さんどうしたんですか!? いきなり後ろに向かって倒れるのは危ないですよ!?」

「ゲコ太がぁ……私のゲコ太がぁ……!」

 

 

 空に手を伸ばし倒れている美琴と、それを支える兄深音。

 ……どうして後ろに並んでいた美琴を抱き止めることが出来たのか甚だ疑問ではあるが。

 

 

 

「常盤台のレールガン、ねぇ……」

 

 親近感の湧くダメップリというのが、ある事を知った佐天だった。

 

 

 

<おまけ>

 

「とりあえず……衛生兵! メディ――ックッ!!」

「なんですかそれ……?」

「あ、こういうときに使うギャグです。深音さんもご一緒に」

 

「「衛生兵(メディ――ックッ)!!!!」」

 

 




読了ありがとうございました。
誤字脱字・ご指摘などありましたらお願いします。

アニメのほうでも漫画のほうでも、美琴以外に浮ついた話が殆ど無いのでやっちゃいました……。
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