うちの父はLBX開発者です   作:東雲兎

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今回は話を動かさない回です。遅筆でごめんね?





悔しい、羨ましいーーー妬ましい

「ああ、くそ! 何体いるんだよ!」

 

 『ハンター』の狙撃が敵LBXを撃ち抜いて、一息つく暇すらなく次の敵に照準を合わせる。カズはあまりのうっとおしさに耐えかねて苛立ち交じりの愚痴をこぼした。

 

 隣のミカが『アマゾネス』で相手から奪った武器で敵LBX達を串刺しにしてだんご三兄弟を作りあげてから反応する。

 

 

「ん、だるいね……。でも、早く片付けないと、バンたちの決着に間に合わない」

 

「だな、けどこの数……ホントに一中のやつらの仕業なのか?」

 

 

 物量戦による戦い、既にカズとミカだけで二十は撃破していた。ここら辺の不良どもを纏めたとしてもこの数の説明をつけるには若干不足を感じた。

 

 こんな時にアミがいてくれていれば何かを察してくれていたかもしれないが彼女はいまアキハバラだ。

 何やら家族に頼まれた買い物だとかなんだとかそこらへんは詳しくはわからないが、宇崎さんからもなにか頼まれていたので、こんな修羅場にいないことを責める気に友達であるカズは、全くなれなかった。むしろ心配しているくらいだ。

 

 

「全く、アミはこういう時にいない……」

 

 

 しかしてミカはアミと友達であると同時にライバル関係なので、結構ズケズケと言い放っていく。カズは思わずムッとしたが、すぐに思い直す。

 一見無表情でいることが多い彼女だが、同級生組のリュウを含めたいつもの五人の中で一番の仲間想いであることをカズは知っている。

 単純に関係性の違いだろう。手を取り合うか、競い合うか。どちらがいいともいえるようなものではない。

 

 

「全く、ミカはアミには結構容赦ないよなぁ。アミにも言えるけど」

 

「……当然。私はあの物の怪には絶対負けない」

 

「物の怪って……いや違うっていえねぇのがホント……」

 

 

 ご近所であるのをいいことにLBXを使ってバンをひそかに監視してるやつだもんなぁと内心カズは頭を抱えた。あとそれを知ったときアミが「バンの全てを管理したい(意訳)」などとぶっちゃけたのも未だにカズの脳裏にこびりついてる。ああいうのを背筋が凍るというのだろう。バンが行方不明になっていた間の濃ゆい時間はカズのSAN値(正気度)を確実に追い詰めていた。いや、元々そんな気はしてたのでバンへの同情を更に加速させた面が強かった。(ついでにミカも怪しいし)どうにか守ってやらねばとカズはキリキリと締め付けられる感覚に従い、胃のある部分を手で押さえた。

 

 

「何やってんだい! 次の敵が来るよ!」

 

 

 うへぇと静かに胃を痛めていたカズの意識を、共に戦っていた郷田三人衆のリコががなり立てて戦場に引き戻す。対象ではなかったミカもその声で敵の増援に気付き、直後に連続した爆発が起こった。

 

 

「ごわすぅっ!?!?」

 

「ぬおおおっ! リコっ早く援護をっ テツオがピタゴラスイッチみたく連鎖で吹っ飛んだゼ!」

 

「ああもう! 世話が焼けるねえ! ミカにカズ手伝いな!」

 

「わかった……って多すぎだろ!」

 

 

 追加でさらに三十はゆうに超えるLBX達。結構限界が近くなっていたのでこれはまずいと。リコを含めた三人は顔を顰めた。先ほどまでは郷田三人衆のテツオが愛機『ナズー』の水中型特有の堅牢さで戦線を維持できていたのだが、先ほどギャグの様に吹き飛んだためすぐには復帰できない。

 

 このままでは押し切られるとその場の誰しもが考えたとき。

 

 

「起動せよ『ジ・エンペラー』!」

 

 

 黒き騎士が外套を靡かせ、手にした大槌で敵LBXを粉砕しながら戦場へと降り立つ。その瞬間、戦いは蹂躙へと変貌を遂げた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 グングニルによって(コア)を貫かれ、胸元から下の吹き通しが良くなったキラードロイド。二度と動くことはないだろうが、しかして辛勝とすらいえない

 

 

「痛み分け……よりもひどいな。郷田、『ハカイオー』は?」

 

「……完全にスクラップだ。吹っ飛ばされた片腕が辛うじて残ってるくらいだな」

 

「そうか、仙道は?」

 

「『ジョーカー』達なら二つは同じくスクラップ。残ったのもブレイクオーバー寸前だ」

 

「そうか……二人とも、すま―――いや、ありがとう。二人がいなかったらあの怪物は倒せなかった」

 

 

 今持てる敬意と感謝を込めて頭を下げる。先ほどまで猛威を振るっていた相手はキラードロイドの恐らくは雛型とも呼べる個体。だとしても兵器としては優秀であることには変わらない。何せエンジェルスターにいた大型作業機械イジテウスを破壊できるLBXを容易く壊せてしまえるのだから。

 

 ……冷静に考えるとやっぱりLBXの性能が頭おかしいよな。

 

 閑話休題(それはさておき)

 

 郷田は完全に破壊された『ハカイオー』に少しの落ち込みを見せていたが、俺に応えようと快活な笑みを作ってみせた。

 

 

「ああ、なんとかなってよかったぜ。あんなの相手によく勝てたもんだ」

 

「ふ、当然だ。俺が協力してやってたんだ。負けるはずがないだろう?」

 

「はは、言うじゃねえか。だがお前の活躍は俺が守ってやってたからというのを忘れんなよ?」

 

「―――くくっ」

 

「あん? バン、なに笑ってやがるんだ?」

 

 

 つい笑いがこぼれた。失敗したなと少し反省して、弁明の言葉を考える。いや考えるまでもなく、自分の中でさっき感じた思いが単語として固まっていた。

 

 

「いやすまない。思ったよりも仲良さそうだな、と」

 

 

 結構、物語初、中期の険悪な雰囲気とは明らかに違う。強敵を打ち倒し、乗り越えたことで目に見えない繋がりが結ばれた気がした。こういうのを絆とでもいうべきなのか。それをいの一番にうれしいと感じたのだ。

 

 そこで思い出したかのように仙道がバッと俺達から離れた。

 

「な、んっ。いやそうじゃない。よし、共闘もここまでだな! さあ喧嘩の再開と行こうか!」

 

「いや、今更か。というか俺の『ハカイオー』は腕だけになっちまってるし」

 

「俺の『アキレス・リュカリオン』だって片腕ないしな。それになんか戦える雰囲気でもなし。また今度というわけには?」

 

 

 思ってたより仙道は絆されていたようで、つい微笑ましくなる。仙道のほうが肉体年齢上だけど。精神年齢は知らん。多分肉体に引っ張られてるから俺が下だろう。

 

 

「くぅ……いいや! これはケジメだとも。バトルを受けやがれ山野バン!」

 

 

 なんか戦う流れになってしまった。是非もなし(しかたないにゃあ)、と肩をすくめてからそのバトルを受諾した。だがその前に。

 

 

「先に応急処置をさせてくれ」

 

 

 さすがにこのダメージは、店長に頼まないと完全な修復はできないだろう。それでもある程度のメンテナンスをしてやりたかった。おそらくCPUがほとんどイかれてるだろうし。モーターとバッテリーがだって酷使し続けたのだからとてもバトルできるような状態ではないのだ。

 

 

「―――そうだな、そうだったな。俺も『ジョーカー』も戦闘不能(ブレイクオーバー)寸前だったか」

 

「マジで勢いだけだったのかよ……」

 

「うるさいぞ郷田(バカ)! サッサとしてバトルをするぞ」

 

 

 呆れた郷田という珍しいものに笑いをこぼしつつ、近くの机を借りることにした。

 携帯していたメンテナンス道具を用いて『アキレス・リュカリオン』の装甲を解体する。

 

 コアスケルトンの胴体にあるコアボックスを開けると焦げ臭いにおいがかすかに広がる。やはり内部パーツがかなりイかれてる。

 郷田が座る俺の頭越しにその惨状を覗き込んできた。

 

 

「うお、モーターが焼き付いてやがる。こんなにひでぇのは初めて見たぜ」

 

「……必殺ファンクションの連発が原因だろうな。特に最後のがマズかったか。CPUがほぼほぼ壊れてる」

 

 

 プシューと体に悪そうな臭いの煙を上げるCPUをピンセットで外し、拾い上げる。こんなの初めて見た。そもそもCPUって焼けるものなのか。これは捨てないとだめだな。高かったんだが……

 けれど『プラチナカプセル』は別の場所であるためになんら影響がないのは幸いか。

 

 

「バッテリーの充電は?」

 

「ない、がまだ使えそうだ。充電を頼んでいいか?」

 

「りょーかい。仙道、お前のは?」

 

「む、ならついでに任せる……細工をしようなんて考えるなよ?」

 

「誰がするか、誰が」

 

 

 呵々と笑う郷田は俺たちのバッテリーを受け取り、店の充電器を借りに行った。こういったLBXバトルができる店は整備するための設備や道具が用意されている場合がほとんどだ。バッテリー充電器とかは一回の使用ごとにクレジットを取られるが、バトルフィールドを使わせてもらうのはただなのだから文句など出るはずもなし。

 焦げをふき取り、予備のパーツへと付け替える前にメンテナンスグリスで―――

 

 あ、ない。消費アイテムを模型店で補充するのを忘れていた。

 

 

「仙道、メンテナンスグリスの小さいやつはないか?」

 

「なに? なくなったのか? 間抜けめ」

 

「かもな。中くらいのと二個で交換しよう」

 

「Mサイズとなら4個だ、貸しにはしない」

 

「感謝する」

 

 

 受け取る際に、仙道の手元を見やる。『ジョーカー』のアーマーフレームが外されたコアスケルトンが目に入る。そのカスタマイズに思わず唸った。

 

 

「なるほど、関節にそんな加工を」

 

「ほう、わかるか」

 

「ああ、整備の為に齧った程度だがな。だからあの大鎌を持ちながらあの挙動が可能なのか。しかし……」

「お前が考えることもわかる。懸念は強度だろう? だが問題ない」

「む、もしや。フレームか?」

「正解、パーツごとに一部分だけパテモリを施すなどで負荷の分散、および補助をさせている」

「なるほど、対して負荷の少ない部分は削って重心のブレを無くしているのか」

「俺の戦いはトリッキーさを売りにしているからな。裏を返せばピーキーな動きを多用する。それに合わせるにはどうしても同じくピーキーなカスタマイズが必要なわけだ」

「ふむ、俺の求めた運動性とは別の方向か。しかし、俺でもわかるほどの完成度。素晴らしいな」

「だがまだ発展途上であるのは確かだ。お前のも見せてみろ」

「ああ、いいぞ」

 

 頷きながら『AX-00 改』を見せる。『アキレス・リュカリオン』に強化された際に改造されたコアスケルトン。

 

 ところどころレックスや店長、カズたちの手を借りて俺用のチューニングを施しているがまだまだ粗削りであることは当然である。なので仙道に見てもらうことで何か新たな発見を得られないかと愚考したのだ。

 

 仙道は片腕のないコアスケルトンをまじまじと確認し、「ほぉ」と漏らした。

 

「なるほど、齧った程度というのには納得だ。確かにこんな特殊なLBXは初めて見るな……上半身と下半身で別フレーム種を使ったのはないこともないが、ここまで混ぜ込んだのは前例がないんじゃないか? こんなもの、整備するにしてもある程度の知識が必要というわけだな」

 

 

 仙道はこのLBXの複雑さを瞬時に見抜き、そして勝手に勘違いしたのだった。多分このいびつなLBXのせいだろう。俺の知識は父親の影響なのだが、今はあんまり関係ないので黙って肯定も否定もしないようにしておこう。コアスケルトンの構造に夢中な彼をわざわざ現実に戻す必要はないのだから。とても楽しそうだ。

 

 ああ、だめだ。心の底から湧き出る感情、俺は仙道を羨ましがっている。いいや仙道だけじゃない。みんなのことが羨ましい。俺はそんな余裕がなかったから。義務感で腕を磨いていたから。だから楽しめている彼らが羨ましい妬ましい、本当に悔しかった。けれどそれを表には出さない。出したらきっと歯止めが利かなくなってしまう。

 

 まぶしいなぁ、本当に……

 

 




ちょっと最近、異聞帯インドから平安京まで走り抜けてたので、情緒をかき乱されまくってました。いやぁ、最近ぐだが曇ってるのいいなあって。分身系の主人公だったはずなのに、いまでは推しに成り果てました。

と関係ないことをつらつらと書いたところで、今回はこれくらいで。


PS.ULTRAMANが参加できたんだからダンボール戦機は出ませんかスパロボさん?
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