うちの父はLBX開発者です   作:東雲兎

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アングラビシダス 決着

 

 インパクトカイザーによる爆発はフィールドをえぐり取り、余波で周囲の城壁を破壊した。まさしく必殺の名にふさわしいその惨状の爆心地にて、騎士はその形を保っていた。

 

 

 

 

 へし折れたメイスの柄を手に、『アキレス・リュカリオン(L)』は立ち上がる。

 

 完全に必殺だったタイミングの一撃、バンは『アキレス・L』の体を逸らさせると共に鍔迫り合いを行っていたメイスとハカイオーアームを犠牲にし、致命を回避した。

 しかし、代償としてメイスの破損と……『アキレス・L』の半身の破損、そして片腕の喪失だった。

 

 腕はハカイオーアームがコアスケルトンごと消失し、腕が繋がっていた胴体は装甲亀裂の下にコアスケルトンがこちらを覗いている、直撃に近い場所は必殺ファンクションのエネルギーによって焦げ、今も音を立てて融解していた。

 

 

 バンは焦りを抑え、CCMを操作しながらその惨状を確認し、戦闘続行可能と判断を下す。

 

「(ハカイオーの腕で助かったな。郷田に礼を言わないと)」

 

 そう、咄嗟に盾とした腕がこの大会を通して使っていた頑強なハカイオーのアームであったことが功を奏した。消失する代わりに必殺ファンクションの威力を減衰させたのだった。

 

 彼はCCMから視線を上げ、爆心地からすこし離れた城壁にめり込んでいるジンと『エンペラーM2』を見やる。

 至近距離でのインパクトだったからか少なくない自爆ダメージをうけ、踏ん張りがきかなかったからか城壁まで吹き飛ばされていた。

 片膝立ちになりながら顔面に突き刺さった鉄針を引き抜くとスパークが奔り、片方が伽藍洞となった目で『アキレス・L』を睨む。

 

 ダメージレースは見た目的には圧倒的に『アキレス・L』が不利に見えるが、実際は五分五分であった。如何せん、損傷箇所とその具合による差だ。

 

 腕がコアスケルトンごと破壊されたが、それは動きの幅が狭まっただけで、直接戦闘不能には直結しない。胴体のダメージも浅くはないがコアスケルトンは無事なので見た目ほどの酷いダメージではない。『アキレス・L』のもととなったアキレスに備えられていたプラチナカプセル保護用の防御力様様である。

 

 対して『エンペラーM2』の破損箇所は頭部、人体での急所はLBXにおいても致命的ともいえる。頭部と胴体、それぞれのコアスケルトンはまさしく急所であり、どんなLBXもそこまで損傷が及べば戦闘不能になる。故にアーマーをつけて防護するのだが、AX-00のときは実は本当に危なかったのだ。

 

 前にバンが戦った首狩りガトーも行っていたが、頭部を失うことはLBXの戦闘不能を意味するので、彼のそれはパフォーマンスであると同時に急所を狙う堅実な戦い方でもあるのだ。

 

 それはそれとして、現在武装が折れたメイスの柄である状況は非常にまずいなとバンは戦場を俯瞰し、ランスの場所を確認する。幸いにもあまり離れていない箇所で突き刺さっている。ランスさえ取り戻せば押し切るという選択肢も出てくるので取りにいかない選択肢はない。

 

 『アキレス・L』はメイスの柄を投げつけると同時に駆け出し、ランスを回収する。

 その背後には、飛来した柄を弾いた『エンペラーM2』が既に迫ってきていた。振り向きざまにランスで横殴りにするも、相手は片腕で難なく受け止め、あろうことか勢いを失った穂先を抱え込み、お返しとばかりにハンマーを振りかぶる。

 

 迫るハンマーにバンは苦渋の決断としてランスを捨てる選択をした。労力を割いたとはいえやられてしまえば元も子もない。

 

 『アキレス・L』は回避するために『エンペラーM2』の懐に飛び込む。空振りに終わったハンマーを後目に、残った腕で頭部を殴りつけようと拳を放つ。

 『エンペラーM2』もランスを離して腕でガードするが、構うものかとそのガードごと殴りつけ、相手も思わずよろけた。

 続けてそのまま体を捻り、ブレイクダンスを始めるかのような動きで、天地を逆さにしながら蹴りを放った。重量の乗らない勢いだけの威力の少ない蹴りだが頭に当たればまずいのは変わらない、たまらずといった様子で数歩引きながらハンマーを盾にした。

 

 わずかだが距離が出来たと槍に天地が逆のまま手を伸ばす『アキレス・L』だが、させるものかと、引いた数歩分の助走をつけた乱雑な蹴りが腹部に喰い込んだ。

 

 どうにか受け身を取って立て直すと、蹴りによって砕けた鎧の一部がボロボロと下へと落下する。動けば動くほどアーマーへ負荷がかかっているのは明らかで、バッテリーも考慮すると全力戦闘を続ければ無駄にできる時間はないと判断を改めるバンの頬に汗が伝った。

 

 その精神的な乱れをジンは好機と見て果敢にも攻め立ててきた。

 

 「行けエンペラー!!」

 「くぅっ!」

 

 再びハンマーが迫る。『エンペラーM2』が虚ろとなった片目の奥にスパークを覗かせ、『アキレス・L』へと跳びかかった。バンは即座にハンマーの側面に回し蹴りをぶつけ、ハンマーの軌道を逸らす。

 

 空振りに終わったハンマーを『アキレス・L』は踏み付け、次に回し蹴りの返しで『エンペラーM2』の頭部へ後ろ回し蹴りを放つ、しかし破損を気にしてか動きが鈍く、『エンペラーM2』も首を逸らして容易く回避した。直後、先ほどまでとは打って変わりアーマーへの負荷を考えない動きで機体を捻り、もう片方の足を追撃の蹴りを放つ。

 

 「!?」

 「ブラフさ!」

 

 破損を気にしていたという(ブラフ)を脱ぎ捨て、急にギアを上げた『アキレス・L』の動きに、不意を突かれたジンもこれは回避しきれないと判断、腕でガードを図った。『ハンター』由来の爪が喰い込み、一瞬の間の後に『エンペラーM2』をガードごと蹴り飛ばす。

 

 「うぉっ!? ハンマーが!」

 

 代わりに『アキレス・L』は相手が蹴られた反動でハンマーを地面から跳ね上げた一撃をもろに受けた。

 が苦し紛れの一撃だったのか、それともそもそも攻撃ですらなかったのか、どちらにせよダメ―ジは致命傷にならずに抑えられた。

 

 そしてバンは狙ったわけではないが、攻撃を受けた際にハンマーを抱きしめる形となり、結果的に相手のハンマーの奪取に成功した。

 

 一方『エンペラーM2』は蹴り飛ばされた先で、偶然にもバンが使っていたランスにたどり着いていた。互いに新たな武器を拾い上げ、対峙する。

 

 奇しくも武器交換となったそれを、戦場のふたりは特に気にすることはなく受け止め、次の行動に移る。

 何故なら今は相手に勝ちたいという情動を満たすために使えるものはすべて使うと割り切っていた。

 

 「行くぞ、山野バン!!」

 「ああ、来い、海道ジン!!」

 

 半壊したハンマーを使い、相手の振るうランスと打ち合うバン。片腕であるがゆえに大振りとなるが、後隙を鋭い蹴りで埋め、対するジンはラグに適応し始めたのか、卓越した先読みでバンの動きを予測し、その上で果敢に攻め立てる。

 

 決め手もなく、互いに消耗を続ける。しかしその動きは万全の時よりも冴え始めている。相手を上回ろうと秒単位で技量が更新されていく。

 

 互いに時間切れが刻々と迫り、そんな中途半端な決着なぞ求めていないと二人は更に攻撃の手を加速し、少しずつ相手の防御をすり抜け始める。

 致命になる代わりにアーマーが削れ、破片があたりに散らばる。それを意に介さず踏み砕きながら、追撃を放つ。

 

 

 

 拮抗が続く、しかして破綻は唐突に訪れた。

 

 

 「! しまっ」

 「今!!」

 

 行動のラグが積み重なり、僅かだが行動に余白が生じてしまった『エンペラーM2』 バンは即座にハンマーをランスのように突き出し、大質量による突き飛ばしを行った。

 

 僅かな距離、しかしお互いに最も重い一撃を放てるであろう距離。

 

 一秒にも満たない刹那の間隙、ここを逃せばLBXのほうが持たないと判断し、武器を握りしめ相手に迫るバン。そして体勢を立て直し、後の先(カウンター)を狙うジン。

 

 勝敗を分けたのは……

 

 

 

 

 

 「必殺ファンクション!」

 

『AttakFunction/インパクトカイザー!』

 

 

 武器種による必殺ファンクションをセットしているか否かだった。

 

 

 

 

 『『エンペラーM2』! ブレイクオーバー!!! 奇しくも決着を分けたのは海道ユウヤの時と同じ要因!! アングラビシダス決勝を制したのは、山野バンと『アキレス・リュカリオン』!!!』

 

 

 

 

 響くような音とともに痛恨とも呼びうる一撃によってブレイクオーバーする『エンペラーM2』。

 

 ハンマーの分類に区分けされていたメイスを使用しており、それ用の必殺ファンクションをセットしていたバン。練度はジンと比べるべくもないが、それでも消耗しきった二人においては十分な一撃となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 アドレナリンが切れ、張り詰めたプレッシャーが途切れる。想像以上の消耗に肩で呼吸をしながらどうにか整える。アキレスを手元に戻し、そのまま肩に乗せて、勝利宣言のように拳を突き上げた。

 

 更に歓声が強まり、会場は興奮の渦に包まれ、バンの仲間たちのミカ、リュウ、仙道がその空気に飲まれたのかはしゃいでいる。

 

 しかしバンは、会場どころか仲間にすら目を向けず、常に視線を一点に向け続けていた。

 

 海堂ジン、先ほどまでバンと同じく肩で呼吸をしていた彼と見つめ合っていた。

 

「先制点だ、次も勝って突き放す」

 

「そうはさせない、次は僕が貰う」

 

 ジンは破壊された『エンペラーM2』を手に取り、会場から降りて、その場を後にする。

 

「ちょっとジン! 待ってよぉ!!」

 

 それを追いかけるユウヤがチラリとこちらに目を向けて、自身のCCMを操作した。

 

 ピロリンと電子的な音と共に、バンのCCMにメールが届く。送り元は海堂ユウヤ。いつのまに……と考えてるうちに、ユウヤはジンと共に会場を去っていた。

 

 

 どうしたものかと考えていながらも、取り敢えず確認すべきかとCCMを操作しようとして、やめる。 レックスが現れ、この後の賞品の授与と閉会式っぽいものがはじまる気配がしたからだ。

 

 

 気になりはするが、我慢してみんなに目を戻した。喜んでいるミカ、リュウ、そしてブッスーと変な顔をしている仙道にサムズアップで、応えた。

 なんとなく浮かれているなと自己分析が出来て思わず苦笑した。

 

 そうして、アングラビシダスは終わりを迎えたのだった。

 

 そして山場が一つ終わったということは次の困難に当たることとなる。その前に修理をしなくてはならないなと神谷チームに合流するにはどうすべきかと頭を悩ませるのであった。

 

 

 

 

◎???◎

 

 

 

 

「いいの?」

 

「なにが」

 

彼と話さなくて

 

「問題ない、むしろ今接触すれば逆に悪化する可能性も高い

 

「ん、それで僕の名前の件も含めてやっぱり……?」

 

「ああ、十中八九はそうだろう」

 

「そっか、でも反応からして『  』じゃない?」

 

「そうだな、それか僕らの知っているあの状況が『         』物だったとか

 

「……てことは、本来を知っているけどって事?」

 

「可能性が高い。というだけだが。僕はそう考える

 

それでおじいさまは?

 

救えるのならば救いたい。が無理はできない。既に無理を押し通してる状況だ

 

「……うん、わかってる。全員は守れない

 

「僕らは彼らの意思を、無念を果たさなくては

 

「必ず」

 

託されたのだから」

 

 

 




 転職……それは自由時間の喪失を指す。

 転職してからほんとに時間がないです。でもそれでも完結を目指さなきゃと合間を縫って執筆してたけれど全然です。
 すごく遅筆ですが、それでも頑張って生きています……。
 更新された際は生きてたんだ~くらいのノリでお願いいたします。
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