今日は朝から腕の痛みが酷かった。
だいたい家に帰ってから痛みが出始めることが多いのに、なんで大会前の大事な日に……
果南「ワン、ツー、スリー、フォー」
今日も今日で
梨子「……。」
ルビィ「……。」
2人からの視線が痛い……
それに
善子「……。」
昨日のことがあってか、善子ちゃんからの視線も正直キツかった。
鞠莉「……。」
ダイヤ「一旦休憩にしましょう。」
千歌「ふぅ〜。なかなかいい感じ!」
鞠莉「ちかっちは自信アリってところね♪」
花丸「曜ちゃん!まる、上手く回転できるようになったずら!」
曜「うんうん。キレがあるから、一つ一つのダンスが綺麗に見えるよ!」
ダイヤ「……浮かない顔をしていますね。」
果南「ダイヤ……。」
ダイヤ「何か問題がありましたか?」
果南「……いや、形にはなってるけど、なんでだろ?ダンスが前に向けてやってない気がする……」
ダイヤ「気持ちが入ってないと?」
果南「気持ちが入ってないというか……。」
そこまで言って果南ちゃんは私のことを見た。
曜「?」
私が首をかしげると、ダイヤさんは果南ちゃんに耳打ちをしはじめた。
ダイヤ「曜さんの動きのことですか?」
果南「いや。曜の動きに問題はないかな……。」
ダイヤ「では、なんです?どうして曜さんを見たりなんか……」
鞠莉「それはみんなのハートが曜に奪われているからよ。」
ダイヤ「ま、鞠莉さん!?」
果南「心が奪われてるというのとは違うような……」
鞠莉「It's joke!」
ダイヤ「茶化すのはやめてください。こちらは真剣なのですから。」
鞠莉「ダイヤったら……
ほーら。あんまりシリアスな顔してるとぉ」グイッ
ダイヤ「ぶっ!」
鞠莉ちゃんが手を使ってダイヤさんの顔を私に向けさせた。
鞠莉「曜に心配をかけるわよ。」
ダイヤ「ぁ……。」
ダイヤさんは何かを言おうとしていたけど、ためらう動きをしたあとに伸ばしていた手をひっこめた。
三年生に限らず、全体的に雰囲気があんまり良くない。
理由はわかってる。
私のせいだ。
こういう時は原因になってる人が責任を取らないと……
曜「よし!休憩もとったし、ラストスパート頑張ろー!」
私が明るく振る舞えばきっとみんなだって明るくなってくれるはず。
鞠莉「テンション『よーし』こーね♪」
善子「っ!善子言うなっ!!」
果南「疲れてそうだけど、みんなのやる気はいかがかなん?」
曜「ダイブ『よーし』こー!」
善子「善子言うなーっ!!」
花丸「善子ちゃんはダイブ元気ずら。」
千歌「あははっ!」
梨子「ふふふっ。」
ルビィ「えへへ…。」
ダイヤ「さて。一笑いしたところで練習を再開しましょう。」
ほら。
私が元気印になって明るく振る舞えば、みんなも笑顔になってくれる。
ほんとうに?
今のは本当に私が明るく振る舞ったからみんなも笑ったの?
鞠莉「……あと2日。ここまできたらfightよ、曜。」ボソッ
曜「!」
……違う。
鞠莉ちゃんや果南ちゃんが盛り上げてくれたからだ……
私が明るくしたところでただの空元気に終わってたよね。
果南「曜。」
曜「果南ちゃん……。」
果南「大会が終わった後さ、久しぶりに遊びに行かない?」
曜「遊びに……?」
果南「うん。」
嬉しいけど、なんで……?
果南「千歌と一緒に3人でさ!」
そうだね!とか、楽しみだよっ!とか返したかったのに、声が出てこなかった。
その代わり体の中からこみ上げてくるものがあって、背中がぶるって震えた。
果南「……頑張ろ。」
曜「うん。」
私は二人みたいに誰かのために何かできているのかな……
曜「ハァ…ハァッ……」
その後の練習中は腕の痛みがずっと続いた。
痛みで頭がクラクラして、左手を使う振り付けの時はズンと響くような鈍い痛みを感じる。
サビになると一気に大きい動きに変えないといけないから、痛みがどんどん大きくなる。
ダイヤ「曜さん、ワンテンポ遅れていますわ!」
曜「あっ……くっ……!」
……まずい、集中が切れてる!
果南「よ、ようっ!」
曜「!?」
しまった!テンポが遅れて、ポジションの移動まで遅れて…!
曜「ううっ!」トッタットッ
ダイヤ「……。」
梨子「……っ。」
ルビィ「〜〜っ!」
花丸「ルビィちゃん…。」
ダイヤ「少し休憩をとりましょうか。」
みんなに心配させてる……
ライブには出ないとみんなに迷惑をかけるし、出たとしてもみんなに迷惑をかけるかもしれない。
こんなの、どうすればいいの……
千歌「曜ちゃん!!」
曜「うわっ!?」
千歌「うわっ、じゃないよぉ〜。
何回も曜ちゃんのこと呼んだよ?」
曜「ご、ごめ」
ルビィ「よ、曜ちゃん!」
ルビィちゃん?
千歌「ルビィちゃん?」
ルビィ「やっぱり…やっぱり…!」
ま、まさか…!
千歌「?」
曜「ルビィちゃ」
ルビィ「やっぱり、もうやめようよ!」
なんで……
ルビィちゃん…約束したよね…
千歌「???
やめる?曜ちゃんが?」
曜「そ、そんなわけないよ!ルビィちゃんは何を言ってるの?」
ルビィ「うぅ……。」
ダイヤ「なんの騒ぎです?」
花丸「ルビィちゃん!?」
ひどいよ…
果南「曜。」
曜「や、やだなぁ。そんなに怖い顔しないでよ!」
果南「これ以上隠していても、何も良いことはないよ。」
どうしてこのタイミングで……
いやだよ…
梨子「ダイヤさん。」
ダイヤ「なんですか?」
梨子「曜ちゃんを本番まで休ませてあげてください。」
千歌「え……」
曜「なっ!?」
ダイヤ「なぜ?」
梨子「曜ちゃんがハードワークしてしまうと、本番のパフォーマンスが落ちてしまうので。」
曜「大丈夫だよー!
ほら、心配しすぎだって!」
梨子「曜ちゃん!!」キッ
曜「っ!」
梨子ちゃんが私を睨みつけていた。
その目はいつものやりとりで千歌ちゃんを睨んでる目ではなくて
芯が通って、絶対曲げない。ここは譲れないと言ってるような目だった。
果南「……曜。休みな。」
曜「ま、待ってよ!」
千歌「曜ちゃん、お願い。」
なんで?
曜「わかった。なんか、ムード壊しちゃってごめん。」
ルビィちゃんも梨子ちゃんもひどいよ……
果南「ワン、ツー、スリー、フォー!」
みんなのステップの音が聞こえてくる。
果南ちゃんと私のところにぽっかりと穴を開けたまま、綺麗に形をキープしている。
千歌ちゃんと梨子ちゃんの動きも軽快で、私がいないからか動きも伸び伸びとやっているように見えた。
練習をたくさんしていたおかげで、みんなの動きもダンス中に指摘が入ることもなかった。
なぁんだ。
私、いらないじゃん。
曜「っ。」
果南「みんな良かったよ!」
鞠莉「ダイナミックでエレガントだったわ!」
花丸「横文字だらけずら…。」
千歌「まあ、良かったってことはわかるよね。」
善子「曜……さん……」
ダイヤ「?
……!曜さん…」
あ、こっち見ちゃったんだ……
ルビィ「よ、ようちゃん……」
やだなあ。
今、すごく見られたくなかったのに。
千歌「ようちゃん……泣いてるの?」
こんな私は見せたくなかったよ……
良かった雰囲気が一瞬にして凍りつくのを感じた。
本当、なんで私はここにいるの?
それは千歌ちゃんのため……のはずだった。
でも、千歌ちゃんの隣はもう私じゃないんだ。
さっきのダンスの時に確信したよ。
曜「りこちゃんは、いいよね……」
鞠莉「!」
なんで私じゃダメなの?
曜「梨子ちゃんはいいよね!」
梨子「!?」
曜「梨子ちゃんがいなければ……
こんな気持ちになんてならかったのに!!」
千歌「曜ちゃん!?何を言って…」
ああ……
もう止まらないや
曜「梨子ちゃんなんて大嫌いっ!!」