向日葵に憧れた海   作:縞野 いちご

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#4 出てって

 

 

 

 

 

 

 

もしかしたら内緒でみんなは集まっているかもしれない。

 

 

そう思った私は部室の前にやってきた。

 

 

 

 

曜「やっぱり……。」

 

 

 

部室の前まで来た私は、中でみんなが話をしている姿を見た。

 

仲間外れにされていたらどうしようかとか、私の陰口を話していたらショックだとか色々と考えは浮かぶ。

 

それでも私は聞き耳を立てた。このまま帰りたくない。

すると一番最初に聞こえてきたのは花丸ちゃんの声だった。

 

 

 

花丸『曜ちゃんをこのままにはできないよ。』

 

ルビィ『そうだね……』

 

ダイヤ『曜さんがいなくてもやっていけるようにしないとならないと思いますわ。』

 

 

 

は……?

 

 

 

私が居なくても?

 

 

 

 

 

咄嗟に私は自分の体を抱いた。

体の震えが止まらなかった。

 

 

辞めさせられる?

 

 

 

そんなわけが…

 

 

 

 

 

 

来なきゃ良かった。

 

 

 

こんなに悲しい思いをするくらいなら、知らない方が良かった。

 

 

 

 

善子『ケガしてるんだし、これ以上はね……』

 

ダイヤ『曜さんには衣装係としての役目もありましたが、ルビィも手伝いを通して経験しましたし、やっていけますね?』

 

ルビィ『う、うん!

曜ちゃんほど上手にはできないかもしれないけど。』

 

鞠莉『大丈夫♪ルビィだって手先がExcelentよ☆』

 

 

 

 

なんで……

 

 

私のやることがどんどん奪われていく……

 

 

 

 

そういえば梨子ちゃんの声が聞こえない。何をしているんだろう……

 

 

 

 

梨子『……!』

 

 

 

私が覗くと、梨子ちゃんと目が合ってしまった。

 

 

 

梨子『っ!』ガタッ

 

 

 

鞠莉『梨子?どこ行くの?』

 

ダイヤ『梨子さん!』

 

 

 

ま、まずい!このままじゃ私がここにいるってみんなにバレちゃう!

 

 

私は必死になって部室から逃げ出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

曜「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

 

 

部室から少し離れて、体育館の裏まで逃げてきた。

 

 

 

曜「なんで…私は逃げてるの……」

 

 

 

よくわからない。私は何がしたいのだろう?

 

 

 

 

「……ちゃん。」

 

 

曜「もう……こんなの……」

 

 

「曜ちゃん!」

 

 

曜「いやだよ……」

 

 

梨子「曜ちゃん!」

 

 

気がつくと目の前に梨子ちゃんがいた。

 

 

曜「りこちゃん…」

 

梨子「私たちの話、聞いていたんだね?」

 

曜「梨子ちゃんたちが何を話していたかなんて気にしてないよ。」

 

梨子「嘘だよ。」

 

曜「なんでそう言い切れるの?」

 

 

ああ…嫌だ……

また梨子ちゃんに対してイライラしてしまっている。

 

 

梨子「私が曜ちゃんの立場だったら悲しいって思うから。」

 

 

悲しい……

 

 

曜「り、梨子ちゃんに…」

 

 

私の気持ちを知られたくなんかない。

 

 

 

曜「私の何がわかるって言うの!?」

 

 

 

こうしてまた私は梨子ちゃんを傷つけた。

 

 

 

 

私が叫び声をあげたことでAqoursメンバーが続々と集まってきた。

 

 

鞠莉「曜!」

 

花丸「なぜ曜ちゃんがここに…?」

 

ダイヤ「今日は練習は休みだとお伝えしたはずでは…」

 

 

 

そうだ。

 

 

 

曜「悪いのはみんなじゃん」

 

 

善子「曜さ」

 

曜「悪いのはみんなの方だ!

私は悪くない!私は悪くない!!」

 

 

ルビィ「ピギッ」

 

 

ダイヤ「わ、私は誰が悪いかという話はしてい」

 

曜「だって騙したのはそっちなんだから!私は悪くない!」

 

 

私は混乱しきっていた。

 

 

 

梨子「曜ちゃん、落ち着いて!」

 

 

喚く私とオロオロしているみんなに梨子ちゃんが一括した。

 

 

梨子「私も考えていたんだよ。これでいいのかなって。」

 

善子「どういうこと?」

 

梨子「曜ちゃんの言った通りだよ。曜ちゃんに嘘ついて、こんな話をしていていいのかなって。」

 

 

花丸ちゃんからは悲しそうな視線、ダイヤさんからは焦りの視線が梨子ちゃんに向けられた。

 

 

花丸「でも…。でも……」

 

 

ダイヤ「…そうしたら花丸さんや私が悪いと間接的に言っていると受け取ってよろしいですか?」

 

 

計画したのはこの2人なんだ

 

 

 

梨子「そんなこと言ってないです。

でも、曜ちゃんのことを考えればこうなるってことくらい予想できた気がして。」

 

 

梨子ちゃんが私の心を弁解してくれている気がした。

 

 

 

鞠莉「意地悪な質問をしてもいいかしら?」

 

梨子「…なんでしょうか?」

 

 

いつもとは違う、明らかに冷たい鞠莉ちゃんの視線が梨子ちゃんに刺さる。

 

 

鞠莉「あなただったらどうしたの?」

 

梨子「……。」

 

鞠莉「他人の批判はいくらだってできるわ。でもね?何かTryしようとすると上手くいかないものよ。」

 

梨子「私だったら……」

 

 

 

 

 

善子「どうだっていいわよ!

こんな責任のなすりつけ合いなんて!」

 

ルビィ「よ、よしこちゃん…」

 

善子ちゃんが怒鳴った。それは悲鳴にも近いものだった。

 

 

善子「私たちは曜さんのことを話していたわ。曜さんのいないところで。」

 

 

 

善子ちゃんははっきりと私を見てそう言った。

そうだ。これくらいはっきりと言ってくれた方がまだ気持ちとしてはスッキリとする。でもこれではっきりとしたよ。

 

 

 

 

善子「でもそれは!」

 

 

曜「もういいよ。

ありがとう善子ちゃん。みんなもごめん。みんなのことを悪いなんて言って。」

 

花丸「そんな…」

 

 

曜「薄々は気づいてたよ。みんなの考えてることに。でも怖くて踏み出せなかったんだ。」

 

 

鞠莉「ということは、もう踏み出せるのね?」

 

 

先ほどの刺さるような視線は鞠莉ちゃんからは微塵にも感じられず、まるでコワレモノを扱う様な慎重な声色で私に聞いてきた。

 

 

曜「うん。もう決めたよ。」

 

ダイヤ「しかし一体何を決めたと言うのです?」

 

 

 

 

気づいてた。

 

邪魔だったんだ。

 

 

何でも1人でやって、勝手にケガして、1人でナーバスになって、迷惑なことばかりしてくる人なんて

 

 

 

 

チームにはいらないんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

曜「私ね」

 

 

次の言葉を出そうとした時だった。

 

 

 

梨子「ダメ!」

 

 

梨子ちゃんが出したとは思えないほど大きな声で私の言葉は遮られた。

 

その声にダイヤさんが連鎖的に反応してしまった。

 

 

ダイヤ「まさか、あなた…!!」

 

 

 

梨子ちゃんやダイヤさんに制止されても止める気なんてなかった。私は今、言わなくちゃいけないんだから。

 

そう思って口を開いた瞬間。

 

 

パァンッ!!

 

 

 

私の右頰に強烈なビンタが飛んできた。

 

 

鞠莉「梨子……あなた………」

 

 

 

梨子「これ以上は言わせない!何としても私は……私はっ!!」

 

 

ルビィ「梨子ちゃん落ち着いて!」

 

花丸「ぶ、ぶつくのは良くないずら!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イラッ

 

 

 

イライラ

 

 

 

 

 

イライライラ

 

 

 

 

 

曜「一番ずるいのは梨子ちゃんだ!」

 

梨子「!?」

 

 

もう我慢できない。言ってやるんだ。私の思ってること全部!

嫌われたっていい。どうせ今日でおしまいなんだから!

 

 

曜「転校してきてすぐに千歌ちゃんと打ち解けて、自分に自信が持てないフリして千歌ちゃんの興味を向けさせて、挙げ句の果てには私のいた場所まで奪っていくんだ!!」

 

 

鞠莉「曜っ!!」

 

 

 

鞠莉ちゃんに肩を掴まれたけど、私の思いはこんなもんじゃないんだ。そんなんじゃ止められないよ。

 

 

 

曜「そしてどこにいても善人ぶってるんだ!

みんなの前では他人を心配するような素振りをして、ピアノの大会があれば自分を優先して!

みんながどうなるかなんて考えないで……本当にずるいよ!

 

一番ずるいのは梨子ちゃんだ!」

 

 

 

 

私は心の中にあったものを全部吐き出した。

 

 

 

戦慄。

 

みんなの顔からは明らかに恐怖を感じられた。

今、目の前にいる渡辺曜は、普段知っている明るく前向きな女の子ではなく、ドス黒い塊のようなものでできている化け物だとみんなは感じているようだった。

そしてそのように私を見つめていた。

 

 

 

曜「がっかりした?

……そうだよ。明るいフリをして、本当は心の中ではこんなにドス黒いことを考えているんだよ。

みんなのことだって信用してないから!!」

 

 

私がそう言い放つと、花丸ちゃんは魂が抜けたように膝から崩れ落ちた。

 

 

ルビィ「は、花丸ちゃん!!」

 

 

ダイヤ「あ、あなたは……なんてことをっ!」

 

 

曜「当然でしょ?

嘘をつかれて、信じろって言う方が無茶苦茶じゃない?」

 

 

ガンッ

 

 

前から歩いてきた善子ちゃんに胸ぐらを掴まれて、後ろの壁に叩きつけられた。

 

 

鞠莉「善子っ!」

 

 

善子「許さないわよ。」

 

曜「こっちのセリフだよ。」

 

善子「私が大好きだった、優しい曜さんを返せ!」

 

 

 

なに、それ?

 

 

 

曜「優しくないんだったら私なんていらないんだ?」

 

 

善子「え……」

 

 

曜「ケガしてて練習できなくて、衣装も作れなくて、迷惑ばかりかけて、大会の邪魔をして、みんなを泣かせる私なんていらないんだ!?」

 

 

善子「ち、ちがっ!」

 

鞠莉「ストーップ!!」

 

 

 

曜「Aqoursなんて辞めてやる!!

みんなにとって私なんかいない方がマシなんでしょ!?」

 

 

梨子「お願いだからやめてぇぇっ!!」

 

 

 

泣き叫ぶ梨子ちゃんの声が響いた。

 

本当にずるいよね。悲劇のヒロインを演じてさ……

 

 

曜「…なら梨子ちゃんが辞めて。」

 

 

とっさに出た言葉に私は驚いた。どこまで私はこの子のことを嫌いになってしまったんだろう。

 

 

 

梨子「やめる……やめるよ……

曜ちゃんが納得するなら、私がやめるよ………」

 

 

ダイヤ「ふ、ふ、ふざけるのも大概にっ!!」

 

 

鞠莉「Crazy.

曜、本当にどうしたの?」

 

 

本当さ、この人達も鈍いというか何というか……

 

 

 

曜「いっそのこと千歌ちゃん以外やめてよ。」

 

 

善子「!?」

 

鞠莉「……。」

 

ダイヤ「な、なぁっ!?」

 

 

ダイヤさんに胸ぐらを掴まれそうになった時だった。

 

 

千歌「よ…う……ちゃん……?」

 

 

曜「え……」

 

 

建物の脇からこちらを見て口を開けている千歌ちゃんがいた。

 

 

千歌「な、なにを……」

 

 

果南「……曜」

 

 

 

もう取り返しなんてつかない。

 

もう後戻りなんてできないんだ。

 

 

 

曜「みんなが私のことを騙してたから、怒ってたんだよ。」

 

千歌「でも、やめてって…」

 

 

 

千歌ちゃんが大事なのは私よりも梨子ちゃん達の方だ。

私が辞めろって言ったら、きっと……

 

 

 

曜「本当にみんな卑怯だよね。」キッ

 

 

 

私がダイヤさんたちに振り向いて睨んだ時だった。

 

 

 

 

千歌「みんなを傷つけないで……」

 

 

 

震えた声の方を見直すと、千歌ちゃんの顔には今まで私に向けられたことのない、最高潮の怒りが込められていた。

 

 

 

千歌「曜ちゃんが出てってよ!」

 

 

果南「千歌! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

曜「……。」

 

 

 

私は何をしているんだろう?

 

 

 

 

自分で自分が制御できていない気がした。

 

 

 

 

 

鞠莉「曜……。」

 

 

目の前に鞠莉ちゃんの顔が映し出された。

 

 

 

曜「……ちゃんと……いいます」

 

 

鞠莉「……聞きたくないわ。」

 

 

曜「わ、わたしは……」

 

鞠莉「やめて。」

 

 

 

千歌ちゃんも言っていたんだから、ほら、早く。

 

 

 

曜「わたし……わたなべよ……ようは……」

 

果南「曜。」ギュッ

 

 

 

果南ちゃんの腕の中。

あったかい。

 

小ちゃい頃からこうして慰めてもらったよね。

 

 

 

 

ありがとう。

 

 

 

 

お陰で言う勇気が出たよ。

 

 

 

 

 

 

曜「Aqoursから抜けます。」

 

 

 

 

 

 

 

 

さようなら。

 

 

 

 

 

 

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