向日葵に憧れた海   作:縞野 いちご

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#2 津島 善子

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ようやっと、見つけたわ。」

 

 

一人で海岸を歩いていると、いつの間にか後ろに誰かがいた。

 

いや、誰かなんて声でわかる。

 

 

 

曜「善子ちゃん……」

 

善子「ここまで来たのに、会えないで終わると思ってた。」

 

 

ここまで来たってことはわざとここに来れたってこと?

 

 

曜「どうやってここに来たの?」

 

善子「私は堕天使よ。異世界と繋がるガフの扉は持ち合わせているに決まってるじゃない。」

 

何を言ってるのかわからないけど、本当に呪文か何かで来たってことなのかな。

 

善子「そんなことはどうでもいいわよ。それよりも曜さんはずっとここにいる気?」

 

曜「え?」

 

善子「帰ってこないのって聞いてるのよ。」

 

帰ってこないかどうか。

ルビィちゃんの話を聞いた限りだと、目を覚ますためのタイムリミットはもう超えてしまっているようだった。

 

 

曜「できることなら帰りたいけど、こうなっちゃった以上、諦めるしかないのかなって。」

 

 

私の言葉を聞いた善子ちゃんはニヤリと笑った。

 

 

善子「諦める?フフッ。

この堕天使ヨハネにかかれば、人の一人や二人、地上に帰すことなど造作もない!!」

 

ルビィちゃんの時と比べると、善子ちゃんは大分いつも通り。というか、むしろいつもよりテンションが高い?

 

曜「…本当のことなの?」

 

善子「もちろん。堕天使に二言はないわ。」

 

 

善子ちゃんの自信に満ち溢れる瞳の奥で、何かが揺れていたことを私は見逃さなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

善子「ここよ!!」

 

 

善子ちゃんに案内されて着いたのは、浅瀬なのに妙に渦が巻いている浜辺だった。

 

曜「この渦……」

 

善子「そう、正しくここが地上とここを繋ぐ、言わばヘブンズゲート!」

 

 

ヘブンズゲートか。ということはここは天国なのかな。だとしたら、天国なんて良い場所じゃないね。

 

曜「私はどうすればいいの?」

 

善子「何も考えずに入ればいいのよ。」

 

曜「善子ちゃんは?」

 

善子「まあ、とりあえず先に曜さんに入ってもらおうと思ってるから。」

 

 

今の善子ちゃんの顔で私の疑いは確信へと変わった。

 

 

善子ちゃん、ここに残るつもりだ。

 

 

 

曜「本当に…戻れるんだ。」

 

善子「そうよ。だから早く入って、みんなも会って来なさいよ。」

 

曜「まずみんなに謝らなきゃだね。」

 

善子「…本当よ。どれだけみんなに心配させてるのよ。」

 

曜「あはは…申し訳ございません。」

 

 

善子ちゃんの一言一言には何かを噛みしめるような重みがあった。

 

 

曜「もしここから帰ったら、命の恩人である善子ちゃんに何かしたいであります!」

 

善子「……別にいいわよ。」

 

曜「だからさ、デートでもしよ。」

 

善子「っ。」

 

 

いつもなら、「堕天使とデートをしたいなんてあなたも愚かね。」とか、「リア充イベント!……べ、別に行ってもいいけど。」とか来そうなものなのに。

 

 

目の前の善子ちゃんは何かを堪えるのに必死になってる。それってきっと…

 

 

曜「あのね?」

 

私はこんなことをしてほしいって思ってないよ?

 

 

 

善子「早く行きなさいよ!!」

 

曜「っ!」

 

善子「お願いだから、早くみんなと会ってきてよ。みんな、曜さんが帰ってくれば元に戻るから!」

 

 

元に…戻る?

 

 

曜「うわわわっ!?ちょ、ちょっと!」

 

後ろから善子ちゃんに押される。私はその善子ちゃんの力をいなしながら、善子ちゃんの後ろに立った。善子ちゃんからはさっきの明るさは消えていた。

 

 

善子「早く戻ってきてよ!!」

 

そう。善子ちゃんは辛いという気持ちを蓋して、必死に明るく振舞おうとしてた。

 

善子「もう…みんなが辛そうにしてるところを見たくない。曜さんが帰れば、みんなは笑える。」

 

曜「笑えないのは誰がいなくなったって一緒だよ!私か、私じゃないかなんてどうでもいい。」

 

善子「それは違うってわかる。曜さんはAqoursにとって、少なからず千歌さんにとっては絶対にいなくちゃならないって。」

 

 

千歌ちゃんにとって……

 

 

 

曜「……。」

 

善子「…わかったなら早く行ってよ。」

 

曜「じゃあ善子ちゃん、ハグしようよ。」

 

善子「は、ハグぅ?」

 

曜「じゃなきゃ私は行かない。」

 

善子「…したら行くのよね?」

 

曜「決心するよ。」

 

 

善子ちゃんは「ハァ」と一つため息をつくと

 

 

善子「ん。」

 

手を広げてハグを受け止めようとしてくれた。

 

 

曜「よーしこー!」ダキッ

 

善子「っけちょっ!ヨハネだってば。」

 

曜「あー!私もいい後輩を持ったもんだっ!」

 

善子「…何を行ってるのよ。恥ずかしくなるからやめて。」

 

曜「堕天使パワーをチャージ!」

 

善子「…さあ、気がすんっ!?」

 

 

 

私は善子ちゃんに抱きついていた腕を思い切り振り回した。

 

 

善子「んなっ!?」

 

 

善子ちゃんは完全に体制が崩れて、背中から着水する形になった。

 

 

 

 

 

曜「千歌ちゃんにとって必要なのは、千歌ちゃんを慰める人(渡辺曜)じゃない。千歌ちゃんをまた奮起させる人(善子ちゃん)なんだよ。」

 

 

 

私は千歌ちゃんを甘やかしちゃうから、きっと千歌ちゃんも強くなれない。

 

もし千歌ちゃんだけを思うんだったとしたら、私はここにいるべきなんだ。

だから、善子ちゃんには悪いけど、私はここに残るよ。

 

 

 

 

 

曜「憧れの先輩かぁ。」

 

 

私にはちょっと難しかったのかも。

 

ごめんね。

 

 

 

 

 

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