そこは、気合いで読んでいただけると…。
お願いしますねなんでもしますから
「リコルさん、着きましたよ」
「これが…、王都」
旅立ちから2日後、二人は『不思議の国』の王都、トランプに到着した。
「えっと、…、人、多すぎ…」
「ふふふ、リコルさんは王都は初めてでしたか」
「う、うん」
あまりの人の多さにリコルはかなり緊張する。無理もない。ただでさえガッチェ以外の人に会う機会自体あまり無かったのだ。いきなり数百もの数の人を見れば緊張もする。
「リコルが望むなら買い物でもしますか…、と言おうと思ってたのですが、その様子なら早く宿に行った方がよさそうですね」
「…お願いしますぅ…」
リコルはフリーを抱えて青い顔をしていた。
フリーが心配そうにフリーを舐めるが反応一つしないところを見るとかなり重症だ。
(これがトラウマになって対人恐怖症なんてなったらシャレになりませんね…。なんとかしないと…)
いきなり面倒な事になったと、小さくベルスターはため息をつきつつ、宿へ向かった。
少し、そっとしておこうか。
その判断が間違っていたことを彼はまだ知らない。
「き、緊張した…」
ベルスターに案内された宿ー彼女は知る由もないが、そこは知る人ぞ知るVIP用の宿である。もちろん、高い。その宿泊費が国から降りず、自分の財布から出す事になった魔術師がいた。合掌。ー彼女はそのベットに飛び込んでいた。
ボフン、と音がして少し身体が浮き上がる。
うつ伏せのまま三十秒。
「…よし!こんなんじゃいけない!まず人に慣れなければ!」
リコル復活。ダウン時間わずが三十秒である。どんな思考回路ならこの短時間でその解答に辿り着くのだろうか。
さすがリコルである。
「そうと決まれば街中へゴー!いくよフリー!」
「わんっ!」
「勝手にいなくならないでくださいよ本当に…」
今後の予定を話そうと部屋に来た魔術師の頭が痛くなるのはもう少し後。
机の上に出掛ける、と手紙があるだけ良かったが。
「ねぇフリー」
「わん?」
「どうしてこうなったんだっけ?」
そこは酒場『宝石箱』。リコルはいつの間にかその店で…
「うおりゃあぁぁ!」
「わわっ!」
「こんにゃろう!」
「くそがっ!」
「どりゃぁ!」
「ぐはぁ」
乱闘騒ぎに巻き込まれていた。
「どうしてってリコル…、一応原因あんただからね?」
「ぇぇ…」
ついさっき知り合った女性に呆れられてしまった。
話はリコルが宿を出て数分後まで遡る。
「よぉ、嬢ちゃん、一人かい?」
「はい?」
リコルが宿を出てひとりウロウロしていると、ニヤニヤした四人の男達が声をかけてきたのだ。
この男達、人買いを生業とするゴロツキどもであった。
こんな大きな街で少女が一人、物珍しげに辺りを見ながらウロウロしてるのだ。攫ってください、といっているようなものだ。
「あ、一人です」
「この王都は初めてかい?」
「そうです…。何処かいいところないですか?具体的には楽しかところで」
「そうか、ならとっておきの場所がある。ついてきてくれ」
そういって路地裏へ誘う男達。
もちろん、案内する気などない。
もはやこの手のお約束のアレである。
どんな世界にもそんな輩はいる。
しかしリコルはそんな事など知らず、ついていった。
結果どうなるのか。
「なにすんですか変態っ!」
「ぐべらっ!」
「ほべっ!」
「ひでぶっ!」
「あばらっ!」
こうなる。
ベルスターの予想通り、彼女は腕力だけならそこら辺のゴロツキどもを真正面から殴り倒せる。
しかし、彼女が『英雄《ストライカー》』レベルの腕力の持ち主なんて知るはずもなかった不運な変態もといゴロツキどもは、四人綺麗にリコルの拳でTKOされた。
取押えようにも単純に力の差で振りほどかれ、一撃。
驚きながら武器をとりだそうともするも、取り出す暇もなくあっという間に四人全員伸びてしまった。
当たり前だ。ユグドラシルのを真っ二つに出来る少女がこんなゴロツキどもに負ける訳がない。まぁ、ガッチェに少しばかり護身術を習っていた、というのもあったが。
しかし、ここで別の問題が発生した。
「えーっと、この人達、どうしよう?」
四人の気絶した男達を前にし、途方にくれるリコルであった。が、その問題はすぐ解決した。
「そんなクズどもなんかほっといていいんだよ」
「こ、今度は誰ですか?」
「警戒するのもわかるけど…、一応怪しくないよ、と言っておこうかな?」
そこには全体的に露出の高い女性がいた。
「…痴女?」
「なんでそうなった…?」
女性はため息。
「私はスキッティ。ベルスターの旦那に頼まれてあんたを探してた」
「あ、ならいい人ですね!」
「わんっ!」
「いや、少しは疑えよ…」
これは頭が痛くなりそうだな、と思うスキッティ。
頭を抑えながら自分に頼んできたベルスターに心の中で合掌。
「まぁ信用してくれるにこしたことは無いしな。とりあえず、ここから出ようぜ?」
「さんせーい!」
「わんっ」
「いやぁ、人攫いに連れ込まれた時は慌てたけど、一人目をアッパーで打ち上げた時は目を疑ったよ」
今二人がいるのは酒場『宝石箱』。
スキッティはそこでベルスターと合流する予定だった。
「え、あれ人攫いだったんですか…?」
今更恐怖を感じるリコル。
実際に襲われた時は恐怖より怒りの方が強かったのだ。
「まぁ、あんたが仮に抑え込まれても、あんな奴ら私一人で追い返せたさ」
「す、凄くカッコいいですスキッティさん…!」
「よせやい、照れる」
目をキラキラさせるリコル。
その目が純粋過ぎて少し眩しく感じてしまうスキッティ。
昔は自分もこうだったのかなと思ってしまう。
「そんで?あんたは一体何者なんだい?」
「私?リコルだよ?」
「違うそうじゃない」
前言撤回。自分はこんなあほじゃ無かったはずだ。
「あのベルスターに探すよう頼まれたのがただの少女のはずがねぇしな」
実際ゴロツキとはいえ大の大人四人を一撃で沈める少女が普通なはずがない。
「普通じゃないの?」
「わん?」
「は?」
「いや、私他の私くらいの子見たことないから…」
(…めんどくせぇ…)
なんて聞けば望む答えが返ってくるのか。
予想以上のあほの子にスキッティは頭が痛くなってきた。
「あー、聞き方が悪かった。えっと、なんでベルスターの奴と王都に来たんだ?」
「わかんない」
「なぜに!?」
「いや、ベルスターさんが、『まず、『不思議の国』の王都に行きましょう』って言ったくらいで、私此処に来た理由まだ聞いてない」
「お前本当に大丈夫か!?」
「え?大丈夫だよ?怪我してないし」
此処までくると逆に尊敬してしまう。
「うん、分かった。もういいや、後でベルスターに直接聞くわ」
スキッティは諦めた。
その判断は正しい。スキッティは賢い人なのだ。
「にしてもベルスターさん遅くないですか?」
「あ、あいつはああ見えて忙しい奴だからな。もうちょい此処で待つことになるだろうぜ」
飽きて来たのだろう。あほの子もとい、リコルはそわそわしている。
「ねぇスキッティさん」
「スキッティでいいぞ」
「キティー」
「それはまずい」
「スキッティ」
「なんだい?」
「あれ何やってるの?」
リコルが指差した方では、むさい男が一つのテーブルで盛り上がっている。
「あれか。あれはこの店でよくやっている腕相撲だな」
そこまでいってハッとする。
リコルがソワソワしている理由は、
「まさか…、やりたいのか?」
「やりたい!」
「わんっ!」
「やっぱりか…」
やらせたら確実に面倒事になる。
ほぼ確実に。間違いなく。
「いや、だ…」
めだぞ、と言葉は続かない。
なぜなら、目の前にその人がいないから。
慌て後ろを見ると、
「リコル、15歳!」
「ははははは!ガキだからって手加減しねぇぞ!」
「始まってんじゃん!」
嗚呼、頭が痛い。
此処の酒場に集まる奴らは短気だか根はいい奴らばかり、変なことが起きないことが救いか。
しかも、
「どりゃああ!」
「ぬぉぉぉっ!?」
「しょ、勝者リコル!」
勝っている。圧勝である。
しかしまだ続く。
「リコル、3連勝!」
「次は俺だぁ!」
「待て次は俺だ!」
「何ぃ?」
「順番くらい守れクソがっ!」
嫌な予感。
「てめ、殴りやがったな!」
「お、やるのか?こいよ」
「野郎テメェボコってやらぁぁ!」
「うりゃあ!」
「喧嘩か!」
「俺もまぜろぉ!」
予感的中。
そして、話は初めに戻る。
「あの…、何があったんですか?」
ちょうどその時、店にベルスターが来る。
「腕相撲の順番争い」
「それどんな状況ですか」
二人してため息。
「スキッティさん」
「どうしたベルスター」
「リコルさんをしばらく預かってもらえませんか?」
「理由は?」
「3日後に女王陛下の面会があって…」
「…他にいい奴知らないのか?」
「私が頼めそうな人の中では知りませんね…」
二人はリコルをみて遠い目になる。
本人は頭に?を浮かべているが。
「報酬」
「一日5万。これが限度です」
「…はぁ。受けた」
「どうか、よろしくお願いしますね?」
「善処するよ…」
大人は大変である。
「リコル、あんたには今から常識っつうものを知ってもらうぞ」
「え?」
酒場を出た後、スキッティはリコルの両肩を正面から掴んで言った。
「いいな?」
「わ、わかりました!」
有無を言わせぬスキッティ。
恐怖に逆らえないのは仕方がない。
「じゃ、早速街回るぞいいないくぞ?」
「あ、ちょ、待って!」
その日から2日間、王都では少女の悲鳴と女性の殺気があちこちで確認されたのは言うまでもない。
3日後。
「スキッティさん、どうなりましたか?」
女王陛下の面会のためベルスターがリコルを迎えにいくと、
「こんにちはベルスターさん!お久しぶりです!」
「あの…、コレは?」
「コレって…、リコルだが?」
「こんな雰囲気でしたっけ?」
2日前まであほな感じの明るい子だったリコルが、今はあほの空気が無くなっていた。
「あぁ、ちょっと『普通』を教えたらこんな感じになったんだよ」
もともとリコルは賢い。ただかなり常識を知らない天然だっただけだ。が、
「『普通』、あぁ、普通コワイ…」
「…何があったかは聞きませんよ」
何があったのだろう。知ったら最後帰ってこれない気がする。
「では行きますよ、リコルさん」
「わかりました!あ、フリーも連れて行っていいですか?」
「いいですよ」
「よし、行こうフリー!」
「わんっ!」
「リコル」
「スキッティ姐さん?」
(姐さん!?)
本当に何があったのだろう。
「行ってらっしゃい」
「い、行ってきます!」
そしてリコルはベルスターに連れられ、面会のため城ートランプ城へ向かった。
キャラ2
No2011
ベルスター
魔人 バランス型
キャラ3
No2005
スキッティ
妖精族 砲撃型