「リコルさん、くれぐれも粗相の無いようにお願いしますね?」
トランプ城、女王の間の前。
ベルスターはリコルに念を押していた。
スキッティの謎のスパルタ教育であほの気は無くなっていたが、本当に大丈夫なのか心配であった。
「わかってますベルスターさん!アレですよね!1に挨拶2に敬礼3に背筋ピンッ、ですよね!」
「え、ええ…。女王陛下は特に跪け、とかそういうのは好んでいらっしゃらず、庶民的な挨拶だけでもいいと言われておられますが…。スキッティさんは一体何を吹き込まれたのですか?」
「スキッティ姐さん式の普通デス…」
リコルの目のハイライトが消えている気がするが気のせいだろう。
「そろそろいいか?ベルスター殿。何、我らが女王陛下だ。仮に失礼な事をしても笑って済ますだろうよ」
憲兵に催促され、渋々といった感じでリコルから離れるベルスター。
「とにかく、変な事はしないでくださいね!」
「わかってます!」
「わんっ!」
そう言って、リコルとフリーは女王の間に入っていった。
「ふぅん、君がリコル?」
「ドーモ女王=陛下。リコルです」
「わんっ!」
まさか開幕早々やらかすとはベルスターも予想していなかっただろう。のちに知る事になろうベルスターに合掌。
「ふふふっ、君面白いね!」
今の挨拶が気に入ったのか笑う女王。
彼女は王座から立ち上がると、両手を合わせているリコルの前に来る。
「私はアリス。一応『不思議の国』の女王やってるわ。よろしく!」
そういって手を出す。
「あ、よろしくお願いします!」
リコルも慌て手を出し、握手。
その手を上下にブンブン振りながらニコニコする女王。
(この人がアリス女王…?でも、18歳くらいにしか見えないけど…?)
国民を愛し、愛される素晴らしい女王と聞いていたリコルは、彼女がまだ18歳ほど、つまり自分と3つくらいしか変わらない事にかなり驚いていた。
「あ、私こう見えて、500年は生きてるわよ?」
表情に出てたのか、リコルの疑問の答えを言うアリス。
「500年!?そんなに!?」
「あら、貴女のご先祖様だって1000年近く生きてたって噂よ?」
「そ、そうなんだ…ですか?」
「ふふ、無理して敬語にしなくて良いわよ、私は気にしないし」
みんなにも同じ事言ってるんだけど、敬語やめる人中々いないのよねー、とため息。
「だから、リコルだけでも私と普通に話してくれると嬉しいな?」
「わかりました!ん?分かった、かな?了解です、かな?」
「ふふふふふ!リコルとは仲良くやっていけそうな気がするな!」
「わんっ!」
「あれ?この子は?」
「フリーって名前で、私の相棒!」
「フリーって言うのね。よろしく、フリー」
「わんっ!」
そこでアリスは表情を切り替える。
「えーっと、私としてはリコルとこのまま話してたいんだけど、そうもいかないから本題に入るね」
パチンッとアリスが指を鳴らすと、何処からともなく二つの椅子とテーブルが現れる。
テーブルの上には紅茶とクッキーがあった。
「ささ、座って座って」
「あ、うん」
促されるまま座るリコル。
「本題ってのはね、君の旅の話なんだけど」
そう言って何処から取り出したのか、『不思議の国』の地図を広げるアリス。
「リコルの旅の目的。それは分かるよね?」
「うん。『混沌』の魔王を倒すこと」
それを聞いてアリスは頷く。
「リコルはヴェローナが『混沌』の魔王じゃない事を知ってるみたいだね。なら話を続けるよ」
アリスは地図の上に指を置く。
「貴女の旅は、主に3工程よ。
1、ヴェローナに会って『混沌』の魔王の事を知る。
2、『混沌』の魔王の居場所を突き止める。
3、『混沌』の魔王を倒す。
なんだけど、問題がいくつかあるの」
「問題?」
「そう。まず1つ目。ヴェローナの居場所は分かっているのだけど、ヴェローナが正気か如何かが問題その1。正気じゃなかったらどうにかして正気に戻さないといけないし。
その2は仮にヴェローナが正気であったとしても、あの子が『混沌』の奴の情報を知っているか如何か。
それに『混沌』の奴は未だいるか如何か確認すらされてないわ。そんな奴の居場所がわかるかどうかがその3」
そこでアリスはリコルを見る。
「それら全てがうまくいったとして。
ここで一番の問題」
突然、リコルの頭に衝撃が走る。
それが自分が床に倒れた、と気づくのに少し時間がかかった。
目の前には自分にマシンガンを向けるアリス。
「この程度の攻撃…。私程度の攻撃を避けれないような貴女が、果たしてヴェローナを闇堕ちさせた『混沌』に勝てるの?」
そうなのだ。
リコルは確かに筋力的な力はある。
しかし闘う力があるかどうかと訊かれれば、無い。
当たり前だ。今まで闘う力なんて必要がなかったから。
しかし、リコルは『混沌』を倒さなければいけない。
「だから、私から一つの案があるんだけど、聞いてくれる?」
リコルに手を伸ばしながらアリスは言う。
あと、リコルに急に床に押し倒してごめんね、なんて謝っている。
「聞きたいです!」
「リコルには直接ヴェローナのとこに行くんじゃなくて、少し寄り道してもらうの」
彼女は地図にこれまた何処から出したかわからないペンで線を書く。
「迷いの森、呪いの廃砦、サラマンダーの山。この3つのダンジョンを制覇すれば最低限の戦闘は出来るようになると思う」
「サ、サラマンダーの山!それって、」
「うん、生還率5%切ってる有名なダンジョンの一つだね」
でも、あれヴェローナ単騎余裕突破だったしなぁとアリス。
これでリコルが諦めてくれたら、と思うアリス。
彼女が諦めたら、自分で軍を率いて『混沌』を倒しに行く予定だった。
むしろ、諦めてほしい。
自分の臣下を闇堕ちさせられて何も感じ無いほどアリスは非情じゃない。
それに、リコルとは本当に仲良くしたいのだ。
いるかわからない奴のために命をかけて欲しくない。
しかし、リコルは
「分かった。でも行く」
諦めなかった。怖気付かなかった。
その目が500年前、とある闘いに向かうロイゼに似てて。
「本当に…、なんて聞くのは不粋ね」
はぁ…とため息。
「さすがにリコル一人だけだと無理だから、筆頭騎士の中から頼りになるのを一緒に行かせるわ」
「え、あ、ありがとう」
空気的に止められると思ったリコルは少し拍子抜けする。
「彼、頼りにはなるけど、変わり者だから気をつけてね」
「うん。うん?」
「他にも必要となる道具とかお金とかはもうこっちで用意しているから、あとはそれを持って出発するだけね」
「え、それってつまり…?」
「リコルの準備出来次第、迷いの森へゴー!やったねリコル、タダで旅できるよ!って事」
さすが一国の王。やる事が早い。
「だからね、リコル」
あまりの急展開にちょっと頭が追いついてないリコルの肩にアリスは手を置いて言う。
「無理しないで、何かあったら此処に帰ってくる事。時には退くことも大事だから」
あの人のように、帰って来ないなんて嫌だからね、と。
そこには、先程までの女王としてのアリスはおらず、一人の人間としてのアリスがいた。
「うん…。私、必ず帰ってくるよ。約束する」
だから、リコルはそんな友達のために約束をした。
「必ず、だよ?」
「うん、必ず」
「リコルさん、何も変なことしませんでしたよね?」
女王の間から出たリコルを出迎えていたベルスターは真っ先に聞いた。
「おいおいベルスター、そりゃねぇって」
流石に呆れる、同じく出迎えたスキッティ。
「リコルを何だと思ってるんだあんたは」
「うー、わんっ!」
「…、リコルさん、何もしてないですね?」
「特に変なことはしてないよ?」
挨拶が少し変だった気がするが、特になんの問題もないだろう。
まだ心配そうだったが、とりあえずベルスターは追求を止める事にした。
「ま、とりあえずリコルお疲れさん」
「あ、ありがとうスキッティ姐さん」
「わんっ!」
「それじゃ、私はちょっと用事があるから先帰ってくれ」
そう言ってスキッティは、女王の間に入って行く。
「え?スキッティ姐さん?」
「スキッティさんは女王陛下に野暮用、だそうです。少し長くなるらしいんで、帰りましょう?」
「あ、そうなんだ…」
そういうことならいても仕方ないか、と帰ろうとする二人。
「あ、アリスと友達になったよ?」
「…、へ?」
ベルスターの時が数秒止まる。
「…、後デ詳シク聞カセテモライマスヨ?」
「あの、ベルスターさん?」
「拒否権ハ無イデスカラ、ネ?」
「アッハイ」
そんなやりとりをしていたせいか、城の門の前にスタンバっていた変人に気付くことなく、遭遇してしまった。
「おーっと?そこにいるのは、女王陛下が言っていたリコル殿、かな?」
「げ、」
ベルスターは思わずそんな声を出してしまう。
「はい、私がリコルです!えっと、あなたは?」
「あ、ちょっとリコルさん待って」
ベルスターが止める間も無くリコルはその変人に名前を聞いてしまった。
「私か?ふっ、私は、アリス女王陛下から、筆頭騎士エイトの名を戴いた聖騎士、ドン・キホーテである!日夜、愛の為、正義の為、国中を走り回る我は今回、魔王を倒す旅をする勇者の子孫であるリコル殿と行動を共にせよ、と命を受け此処にいる!この世が『混沌』に覆われる前に我が正義の槍と、愛馬ロシナンテのコンビネーションアタックを持って道を切り開いてみせよう!」
『不思議の国』筆頭騎士エイト、妄想と獅子の騎士 ドン・キホーテ。
彼は実力はあるものの、その設定のせいで話づらい、と有名な変人である。
実力も判断力も優れている分、かなり勿体無いと皆から言われている。
ベルスターは基本的にこの手の会話が成り立ちにくい人は苦手である。
「あ!あなたが私と旅をするっていう筆頭騎士ですか?」
「いかにも!」
「よろしくお願いします!あと、この子は私の相棒でフリーっていいます」
「わんっ!」
「ほう、中々いい相棒を持っているじゃないか。大切にするんだぞ?」
「はいっ!」
しかしリコルとは相性が良さそうである。
リコルには悪いが、ここはリコルを囮に自分は先に門に出よう、と考えるベルスター。
「と、そこにいるのはベルスター研究員じゃないか。久しぶりだな」
「うっ、」
しかしそうは問屋がおろさないようだ。
「いやぁ、貴殿とはあまり話したことがないが、噂は聞いておるぞ?どうやら、影を用いた魔術を完成させたそうじゃないか!」
「え、えぇ。あの、私とリコルはこれからすこーし予定があってですね、ほ、ほら!出発明日じゃないですか?」
「え?」
「そうであるのか?」
「だから、色々あるじゃないですか?ということでここは失礼させてもらいますね?」
無理矢理逃げようとするベルスター。
まぁ、無理なのだが。
「なら私も手伝おうではないか!何、私は旅に慣れているからな。それに大体必要な物は女王陛下から渡されておる」
「ありがとうございますキホーテさん!とても助かります!」
「よいよい。それと私に敬語はいらぬぞ?」
話は勝手に進んでいく。
頭が痛い、とベルスターは一人呻くのだった。
No 1535
不思議の国の女王 アリス
妖精族 バランス型
No1781
妄想の騎士 ドン・キホーテ
聖騎士 バランス型
関係ないですけどFFコラボ始まりましたね…。
ライトニングの友情ェ…