終わりなき飛翔   作:コーリング

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1週間ずつ投稿する予定だったのに遅れて申し訳ありません!
昨日見てくださった皆様、心よりお詫び申し上げます。



第2話 跳躍

「ガ、ギガガガ」

 

目の前にいたはずの男の腕が8つに分裂したかと思うと、みるみるうちに全身が黒に染まっていく。

それとともに感じる妖気も飛躍的に上昇し、フィオラの顔を僅かながら顰めさせた。

つまり、妖魔が現れたのだ。

 

周囲では悲鳴が上がり、怒号が飛び交っている。

男たちは扉に閂をきつくかけ、女たちは我が子を守ろうと、しっかり子供を抱きかかえる。

それらを胡乱な目で見回すフィオラ。

 

だから、妖魔が正体を現す前に仕留めたかったのに。

町を騒がせることなく、静かに妖魔を殺し、静かに町を出ていく。

その予定が台無しだ。

 

「むしすんな!」

 

眼前に妖魔が迫る。

妖魔との距離はほぼ無いに等しく、背後は家の壁で逃げ切れない。

 

「さよならだな、くれいもあさーー」

 

クレイモアさんよ。そう言おうとした妖魔が言葉を止める。

彼と壁の間に、少女の姿は見えない。彼は1瞬絶句し、慌てて周りを見まわす。

しかし、やはりその姿はない。

 

「っ、どこにいーー」

 

そんな彼に、頭上からフィオラは言う。風に吹かれ、耳元で髪が激しくなびく。

 

「こちらこそさようならです。妖魔さん」

 

鋭く迫る斬撃が、彼が最期に見たものとなった。

 

 

 

町を出、そのまま森林に分け入る。

進めば進むほど緑は深くなり、日射しは乏しくなっていく。その中をフィオラは歩いていた。

染み入るような静けさに、朝露の滴が落ちる。

そんな中、彼女の歩調に合わせるような、カチャカチャという金属の触れ合うような音が微かに響く。

しかし、程なくしてそれは止まった。

 

「お金、回収したんですか?」

 

フィオラは振り向くと、背後の1本の木を眺める。その枝が揺れ、どこからともなく黒服が現れた。

 

「心配はいらん」

 

黒服は小さく頷く。

 

「随分早いですね。お金、回収し忘れちゃったのかと思いましたよ」

 

「早いのはお前の方だ。まさかあれほどあっさりと妖魔を倒すとは」

 

まだ印を受けて1年とはとても思えない。黒服には、フィオラが何をしたのか理解できなかった。

 

 

 

「そういえば、先ほどお前は何をやったのだ?」

 

それに、フィオラは小さく苦笑した。やはり、黒服にはあれが見えないのか。

クレイモアの本気の移動を人間が視認するなど、猛獣と鬼ごっこをして生き残るのと同じくらい無理な話だ。

彼女の動きが見えるわけがない。

 

「ああ、あれですか。上に跳んだんですよ」

 

単純に素早く妖気を高め、脚力を強化させたのだ。

いくら妖魔とはいえ、瞬間的に妖気が上昇したことを感知できるものはいない。

それは、フィオラがこの1年で積んだ経験だった。

 

「なるほど」

 

納得したように頷く黒服。

用は済んだと歩き出す背中に彼は声をかける。

 

「これからどこに行くつもりだ」

 

「1度スタフに戻る予定です」

 

フィオラの返事は簡潔だった。

 

「そうか」

 

「大丈夫です。2、3日で終えますから」

 

急な任務はありませんよね。と黒服に確認を入れる。

もっとも、もし任務があったとしても、出来るだけそれを先延ばしにするつもりだが。

 

それに、そろそろ帰らないと、また姉に叱られてしまいますしね。

口の中でそう呟くと、すたすたと迷いのない足取りで、暗い森の中にフィオラは入っていった。

 

 

 

これほど怖い女もあるまい。

黒服は、今しがたフィオラはが消えた森の奥を凝視し、ふっと2度目の溜息をついた。

 

まだ印を受けて1年だというのに、既にナンバー26から13まで上り詰めている。

その間のナンバーの戦士たちもそう弱くはない。その彼女らの殆どが口を揃えて言うのだ。

この子には自分はとても敵わない、と。

 

更に、彼女はダーエから直々に任された戦士だ。つまり、フィオラは将来を彼から期待されているのだ。

自分も詳しく知るわけではないが、ダーエは、戦士をいかに強くするか、それ一事に研究を重ねている。

その彼に目を付けられるとなると、相当の素質を持っているに違いない。

黒服はそう確信していた。

 

だから、それなりに覚悟を決めていたのに、実際彼女に会ってみると驚くことばかりだった。

まだほんの少女ではないか。

この、あどけない顔つきで自分を見上げる、曇りのない瞳を持つ少女が、それほど強いとはとても思えなかったのだ。

 

しかし卒業試験でその戦いぶりを見た彼は、恐怖した。まるで、ライオンの前の赤子のような気分だった。

彼女は、底が知れない。

底なし沼のようにその身体から湧き出る戦闘力。彼はそれに怯えた。

 

 

 

その日の陽が沈む頃。フィオラは、スタフの本部のとある部屋の前にいた。

……この中に、姉がいる。

静まり返った廊下に、ごくりと唾を飲み込む音が吸い込まれる。

フィオラは息を止め、扉にとその手をゆっくり伸ばしていった。




実はまだ、ここの使い方がよくわかっておらず、連載する方法をイマイチ理解していませんでした。
そんなこんなですが、来週もよろしくお願いします。
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