かなり長い静寂の後、かちゃりと部屋の扉が開いた。
穏やかに流れる爽やかな空気を物ともせず、黒服がずかずかと部屋に入ってくる。
「休暇は終わりだ。任務に戻れ」
苛ついているのか、口元から聞こえるその声はかすかに掠れていた。
フィオラは顔をしかめると、側に剣を横たえる。
「おい、聞いているのか」
黒服の声が大きくなり、言葉にはっきりと苛立ちが混じる。
何がそんなに気に入らないのだろうと内心で首をかしげ、フィオラはベッドに座ったまま、黒服に非難の眼差しを向けた。
「大声を出さなくても、聞こえてますよ。次の依頼は急ぎなんですか?」
珍しく低い彼女の声に、黒服はぴくりと片眉を動かす。
「……いつもは場所さえ聞こうとしないくせに、今日は随分と積極的だな。本部が嫌いなのか?」
「いいえ」
首を垂れ、フィオラは拗ねたような小さな声で呟いた。
まだここに居たい。妖魔退治なんてしたくない。組織に戻るたびにそう思ってしまう。
戦士になった時とは大違いだ。1年間でフィオラは大きく変わった。いや、周囲が彼女を変えた。
妖魔を退治しても喜ばれず、当の人々からは嫌悪の対象として見られる。
英雄?英雄を助ける存在になりたい?……何が英雄だ。ただの嫌われ者じゃないか。
そんなわけで、彼女が思い描いていた理想は崩れつつあったのだ。
だがそれは許されないこと、フィオラは無理やりそう割り切る。
もし、緊急の依頼ならば、ここでのんびりしている時間などない。即刻その場所に駆けつけて妖魔を殲滅しなくてはならない。
全くもって気が進まないが、それが仕事だ。
そう思いなおして仕事に戻る姿勢を示したのに、なぜわたしは茶化されているの。
それにそもそも、仮にも他人の部屋に勝手に入らないでほしい。
清々しい朝だというのに、数分前とは打って変わってフィオラの機嫌は悪くなる一方だった。
「さて、今回の任務は妖魔退治ではない。覚醒者討伐だ」
「は?」
フィオラの口がぽかんと開く。
まるで、目の前にいきなりお菓子を置かれた子供のようだった。
「お前にとっては初の団体行動だが、不満でもあるのか?」
「いえ、いえいえありません」
我に返って慌てて返事をするフィオラ。耳元で髪が跳ねる。
数秒考え、そしてまた口を開いた。
「ただ、また妖魔殲滅の依頼でもきたのかと思っていたので、その……予想外だったんです。
まだ印を受けて1年だから、わたしが覚醒者の相手をするには絶対的に経験が足りないと思いこんでいて」
「1年なら、ちょうど平均的な経験値だ。お前は、その1年でナンバーを13も上げた。それに、お前の妖魔を秒殺する姿はナンバー1桁といっても過言ではない。覚醒者討伐には十分すぎるほど強いはずだ」
黒服は淡々とフィオラの功績を告げる。
確かに見た目はきらびやかだが、それはあくまで表面上のもの。中身がない。
その評価は明らかに過剰だ。
「側からではそう見えるかもしれませんが、経験を差し引いてもわたしは身体能力的に弱いです」
「つべこべ言うな。もう決まったことだ。
それとも何か?やはり不満なのか?」
フィオラは無言で小さく首を振る。
「ならいい。ここから西に3日行くと、オーマという小さな町だったところがある。そこが集合場所だ。
今回指揮をとるのは、1桁ナンバーの中でもナンバーがかなり若い戦士だ。お前が自分を弱いと思うなら、せいぜい鍛えてもらうことだな」
鍛えてもらうという言葉に、反射で彼女の表情が引き締まる。
「はい、了解しました」
「頼んだぞ」
そう言い残すと、黒服はフィオラにくるりと背を向け、部屋を出て行った。
黒服のよく響く足音が廊下に聞こえなくなったのを確認し、フィオラは小さく息を吐いた。
大きく伸びをして立ち上がり、自分の防具を手に取る。
いつもよりそれが重く感じるのは、気のせいだろうか。
「本当に、わたしなんかでいいのかな」
無意識に呟きが漏れる。それに気づき、フィオラは慌てて口を覆った。足、腰、手首と順に防具をつけ、最後に肩からマントを下げる。
剣を背中にしまうと、再びため息が漏れた。
自分の移動速度は中の下くらい。
妖気読みは、誰がどの位置にいるのかが正確に分かる程度で、体のどの部位が動くかはおぼろげだ。実情はほぼ勘に近い。
つまり、ナンバー13を与えられながら、基礎身体能力は最低ラインをさまよっているのは間違いないのだ。
身分不相応。それはたとえ姉に言われずともフィオラが常日頃から感じていることだった。
「でも、もう決まったことなんだ。やるしかない」
小さな声が、誰もいない廊下に響く。
どんな理由であろうとも自分が望んだ道。自分が選んだ仕事は戦士となることだ。
自分に自信がないから。そんな勝手な感情で、組織に逆らうわけにはいかない。
そんなことは自分の誇りが許さない。
フィオラは唇を強く噛み、小さな拳を握りしめて、オーマの街へと向かっていった。
すでに陽は傾き始め、白から橙へとその色を変えつつあった。
壁にひびが入った廃屋が両脇に並ぶ。中にはすっかり崩れ落ちて跡形もないものもある。
夫婦だろうか、その瓦礫の隅に寄り添っていた2羽の鳥が、金属音に驚いたのかせわしく羽を広げて空に飛びたつ。白黒が入り混じった羽が宙を舞った。
それを見送り、フィオラは街に足を踏み出す。
「本当に、ここでいいんだよね……」
先ほどから街の中を探っているが、戦士の妖気を全く感じない。自分が早く着きすぎただけかもしれないが、自然と心細くなる。
もし、ここじゃなかったらどうしよう。1人だけ遅れたらどうなるんだろう。
そんな心のざわめきをかき消すように、フィオラは街の中心へと、足を早めた。
その、時だった。
ごく僅かな、微風といって間違いないほどのかすかな風が背中に吹き付ける。フィオラは何も考えず、条件反射的に剣を抜いた。
キィィン!
激しい剣のぶつかり合う音。その衝撃に耐えきれず、フィオラは剣ごと後ろに吹き飛ばされる。
風景が暴風のように唸りを上げて耳元を通り過ぎ、衝撃波で頭がぼやけ、
そして、一瞬、空にふわりと体を包み込みこまれたと思った瞬間。
フィオラは廃屋に叩きつけられた。
一瞬意識が暗闇に途切れ、すぐにまた、白光の中に飛び出していく。
一応は家の形を保っていたものが、轟音を立てて体に落ちる。
瓦礫と化していくその下で、血がじわじわと地面に広がっていく。
その中でフィオラは目を固くつぶり、歯を食いしばって、全身を貫く痛みに耐えていた。
しかし左腕にささった壁の残骸が、傷から湧き出る血が、その意思を早くも打ち砕こうとする。
ここから出なきゃ。
わたしは覚醒者を狩りに来たんだ。自分が傷つくためにきたんじゃない。
口から時折漏れる熱い息を押し殺し、フィオラは考える。
体の上の重量からして、まだ、全てが倒壊したわけではないはず。きっと、壁が1面やられただけだ。
完全に崩れる前に、脱出することは不可能ではない。左腕は……あとで直せばいい。
ある程度の妥協を胸に、フィオラは覚悟を決めた。
「全く、いい具合に崩れたもんだな。ま、こんなボロ建物が崩れないわけねぇか」
戦士は独白した。他の誰にも聞こえないような小さな声が、空中に吐き出される。
眼前ではもうもうと土埃が立ち上り、ロクに前もわからない。当然、瓦礫の下敷きになったはずの戦士の姿も見えない。
戦士は埃をなぎ払って視界を確保しながら、目を細めて戦士ーーというよりは少女の姿を探す。
「本当にあいつがナンバー13なのか?」
そう戦士が呟いたその時、大きな瓦礫が再び轟音をあげ、彼女の方へと飛んできた。
膝を曲げて地面に降り立ち、フィオラはくまなく周囲を見渡した。心臓は体の中で跳ね回っているが、表情はあくまで平静を保つ。
感情が表情を作るのは周知の事実だが、それと同時に表情も感情を作るのだ。
せめて表面だけでも冷静にと、フィオラは剣を構えた。
左腕の瓦礫の破片を引き抜き、すぐさま再生に入る。
どこから襲われるのかはわからないから、準備を万全にしておこうというわけだ。
両脇を家に囲まれ、前と後ろに雑草に支配された道が続いている。
さて、どちらからやってくるのやら。
それほど間を空けず、かすかな振動が足に伝わった。
……来る。
剣をしっかりと握りしめ、意識を振動に集中させる。
辺りを見回すなんて無駄なことはしない。どこから来るかなんて、どうせ来ればわかる。
「お前、本当に戦士なんだな」
頭上から声がかかり、フィオラは空を見上げた。
勢いよく伸びた短髪を風になびかせ、1人の戦士が屋根に立っている。
その表情は、戦士の好戦的な性格をよく表しているように見えた。
「あなたは誰ですか?」
「あたしはノエル。ナンバーは3。今回の覚醒者討伐のリーダーだ」
黒服が言っていた"ナンバーがかなり若い戦士"とはこの人のことか。
ノエルが、わたしを襲った張本人だろう。妖気からそれがわかる。おそらくさっきまではわざと抑えていたであろう妖気から。
だが、どうもノエルからは戦意を感じとれない。
どうやら戦わなくても良さそうだ。そう結論づけ、フィオラは構えを解いた。
……左腕もまだ傷はふさがっていないことだし。
「そうですか。それで、1つ聞きますね。なぜわたしを襲ったんですか、俊敏のノエルさん?」
自分の声が低くなる。それに気がつき、フィオラは内心でため息をついた。
ここ数日怒る回数が増えている。全く、精神に悪いことこの上ない。
ストレスの多い環境が悪いのだろうか。
一方ノエルは驚きもせず、しれっと言いかえした。
「そりゃお前の実力を知りたかったからさ。黒服から1年でナンバー13になったやつがいると聞いた。
だからお前が本当にナンバー13に相応しいか試してやろうと思ったんだ。面白ぇしよ」
「それで、結果は?」
少しばかり興味を惹かれ、フィオラはどうせ悪いだろうと思いながらも続きを待つ。
「実力は確かにあるみたいだな。ただ経験が絶対的に足りねぇ」
「そんなことないです。実力もナンバー13には不相応ですよ。ナンバー30くらいがお似合いです」
目を見開き首を思いっきり振るフィオラ。驚きのあまり声も高くなる。
もし本当に自分の実力がナンバー13なら、先ほどのアレはなんだ。
一撃目で簡単に吹っ飛ばされて家を半壊させた挙句に、左腕を損傷。
ありえないとぶんぶん首を左右に振るフィオラに、ノエルは早くも呆れた顔で両手を大きく広げた。
「お前の思い違いだろ。謙遜しすぎも度を超えると嫌味だ。喧嘩を売ってんならいつでも買ってやるよ」
今からどうだ?
軽い声とともに地面へと飛び降りると、ノエルは前傾体制でフィオラに剣を向ける。
謙遜なんかじゃない、本当のことを言っただけだ。
それなのになぜ、信じてくれないの!
驚きが怒りへとすり変わるのは時間の問題で。
フィオラは唇を強くかみしめて剣を引き抜くと、前に右足を1歩踏み出し構えの体制をとった。
両者の距離わずか数メートル。
相手を挑発するような顔に、フィオラは左腕の痛みも忘れて駆け出す。
ノエルは薄笑いを顔に浮かべ、こちらも相手に対抗すべく、剣を構える。
そして、両者が今にも再びぶつかりあおうとした時ーー
「2人ともやめろ!」
叱声が響き渡り、フィオラの前方から2人の戦士が駆けてきた。
「最後の1人が到着した。これ以上無駄な時間を過ごす必要はない」
「そうか。じゃ、やめておこう」
ノエルはあっさりと体制を戻し、剣を背中にしまう。
「悪いな。また今度だ」
「え……」
「あたしたちはこれから覚醒者討伐に行くんだ。お遊びは終わりってことさ」
ノエルはくるりとフィオラに背を向け、2人の戦士を見た。
1人は髪を肩でまとめた長身の戦士で、全体から気の弱そうな印象を受ける。
もう1人は、胴のあたりに頭がくるフィオラほどではないもののかなり小柄で、活発そう。
先に口を開いたのは、その小柄な戦士だった。
「ノエル、その女の子は何だ?まさか戦士なのか?」
「そのまさかだぜ。こいつは正真正銘の戦士だ」
その言葉に、戦士の声音が疑いを増す。
「冗談ならその辺にしておけよ、全く面白くない」
「ほう?あたしの言うことが信用できねえってのか?」
上等じゃねーか、剣を抜けよ。
ノエルは手の関節を小気味よく打ち鳴らす。そして相手を、まるでバカにするような目で見た。
もともとノエルは短気な方で、売られた喧嘩は全て買う方だ。
そして、売られておらずまだ市場に出荷された段階の火種まで発火させることも度々あった。
対して小柄な戦士は困惑する。
……これこそ冗談、それがどうして本気で返されるんだ。
だが確かにそれとともに諦めの気持ちも戦士にはあった。ノエルと1度覚醒者狩りで一緒になったことがある。その時のノエルとソフィアとのやり取りを思い出したのだ。
そういえば、こいつは売ってもいない喧嘩を作る性格をしていたな、と。
だが、諦めたからといって喧嘩までをも放棄する気はない。
わざわざ向こうが作ってくれた喧嘩だ、買ってやらなくては申し訳ない。それに、たとえ自分に勝ち目が全くなくとも、逃げたくないという意地も十分にあった。
要するに、弱いくせにご立派な騎士道まがいを持っていたわけだ。
小柄で細身の体が、ノエルと睨み合う。両者の間で激しく花火が散る。
「ちょ、ちょっとやめろよ2人とも」
部外者の長身の戦士が恐る恐る2人の間に割って入ろうとするが。
「20番代はひとまず黙ってろ」
「お前には関係のないことだ」
そこだけピタリと息を合わせて凄む2人に、その努力は脆くも砕け散ったーー
それまでをただ呆然と眺め、ようやくフィオラは我に返った。
実力が云々という怒りは一連の出来事の中でいつの間にか消し飛び、もはやどこにもなくなっていた。
今の心境は、ただ目の前で起こる急展開に唖然とするほかない状態だ。
目の前では、いつの間にかノエルと細身の戦士が一触即発状態になっている。
自分の横では、さっき虚しく精神力を大幅に削ったらしい長身の戦士が遠くを見ている。
きっと、100年くらい前に家に引きこもったお爺さんが久しぶりに外に出たらこんな気分なんだろうな。
とりあえず、猛スピードで流れる現実を見るのはやめて、一度沈みゆく太陽でも見つめるか。
そう、左腕は痛くないし穴も開いてない。
ノエルさんと他の2人もいないし、もちろん喧嘩なんてない。
目の前には、いつもの見慣れた部屋があって、その窓から空を赤く染める太陽が落ちていって……
「お、おい」
……やっぱり、ここは部屋じゃない。
フィオラはうろんな顔つきで、左腕の痛みを元通りに戻した張本人を眺めた。
「何ですか。わたしは今、重要な考え事をしていたんですけれど」
軽い皮肉が混じったのは、気のせいではない。
「そうか、それは悪かったな、だが、多分その考え事は、わたしと同じだ」
早口でまくし立てる戦士。
「え?」
「目があっちを向いていた。それより、早く何とかしてくれ」
「何とかって……何をですか」
「わかるだろ、あの2人だよ」
戦士は指をくい、くいっとノエルたちに向ける。
まあ、わかる、断じてわかりたくないが、わかる。
けれど……
「あの、ノエルさんじゃない方の人はナンバー幾つなんですか?」
「ナンバー10番代だが」
「ああ、じゃあ無理です。普通に無理です」
「なぜだ」
「たかがナンバー13が、ナンバー3と10番代を同時に相手できるわけないでしょう。自明の理です」
「じゃあナンバー20番代がその2人を相手にできるわけもないな、ナンバー13でさえできないんだから」
「……」
「……」
「お願いだ。あの2人を止めてきてくれ。まだお前の方が可能性はあるんだから」
「そんなこと言われても……」
それにどうせ2人がぶつかったところでナンバー3と10番代、すぐ決着がつきますよ。
その言葉をフィオラは内心で呟く。だがそれを口には出さなかった。
流石に小柄な戦士に失礼だと思ったからだ。
となると、次取るべき行動は1つしか残っていない。
フィオラはノエルたちを見やり、そしてもう一度長身を見やり、大きく肩を落とした。
「あ、あの、2人ともやめましょうよ」
「チビは黙ってろ!」
「お前にも関係はない」
2人の迫力に、フィオラは一歩後ずさる。
同時に、僅かな燐光を発していた太陽が最後とばかりにきらりと光り、そして地平線へと落ちていった。
瞬く間に暗闇が空を覆い始める。
「で、でも、もう夜ですよ。どこか休むところを探さなきゃいけないんじゃ……」
「……」
「ちっ」
顔を背けて剣を収めると、ノエルは廃墟を出口に向かって歩き始めた。
顔を見合わせ、やれやれとばかりに2人は息をもらす。その中に多分に安堵が含まれていたのは、いうまでもない。
「大丈夫か?メラニー」
「ああ、平気だ、とはいえ少し疲れた」
「えっと、あの」
「そういえば、自己紹介がまだだったな。私はメラニー、ナンバーは16だ。よろしくな」
つい数分前とは打って変わって陽気な声でメラニーは言う。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「で、こっちの長身がハンネ。ナンバー27だったはずだ」
「よろしく、頼む、えっと……」
ハンネの声が止まる。フィオラは笑って言った。
「フィオラです。よろしくお願いしますね、ハンネさん」
カツンカツンと4つの足音が響く。
結局、小さな洞窟の中で一夜を過ごし、日が上る前に土埃の匂いで目覚めた。
今や日は高く上っている。ただ、頭上が遮られていて光があまり拝めないのが残念だが。
慣れない環境でそこまで熟睡できていないフィオラは、時折体に残る怠さをごまかしながら湧き出る欠伸を噛み殺していた。
不意にノエルが振り返る。
「チビ、お前何歳だよ?」
「あ、えっと12歳です」
「その歳でよく戦士にしてもらえたな」
フィオラの背後から、律儀にメラニーが驚いた声を出す。
「あ、正確には、印を受けたのは1年前ですよ」
みんなが驚くので少し得意になり、フィオラはちょっぴり自慢げに言った。
「どうして印がもらえたんだ?」
誰かの声を遮るように、ノエルが言った。
「おい、お前ら。どうやら着いたらしいぞ」
そこは、薄暗い森の中だった。
頭上には葉が生い茂り太陽の光はほとんど届かない。
「ここは?街ではないようですが」
「お前、覚醒者は街に出るもんだと思ってたのか?」
3人が、今度は呆れた表情でフィオラを見やる。
フィオラは疑問を感じながらも素直に頷いた。
「はい、じゃないと食料調達できないじゃないですか」
「あのな、街に住んでたらあっという間に戦士がやってくるだろ。殺されちまうじゃないか」
「それもそうですね」
納得するフィオラ。
「で、今回の覚醒者はこの付近に出るらしいんだ」
「そんなの初めて聞いたぞ……いや、なんでもない」
「とにかく到着できたんだからいいじゃねーか!」
ハンネの声を遮る勢いで、ノエルは大声を出した。
「で、覚醒者はどこだ?確かにこの辺に一番強い妖気を感じる」
だが、誰もいない。
「おい、あっちだ!」
メラニーがいち早く叫び。
「あら、バレちゃった?」
木の幹に、長いネグリジェを着た細身の女性が座っていた。
毎度毎度ギリギリですみません。