「えーっ、そんなこと、していいんですかあーっ?」
めぐみんの声が、屋敷の一室に響く。そこでパーティ会議が開かれている。
幽霊退治して以来、今この屋敷はカズマのものだ。ふだんから、パーティメンバーといっしょに住んでいる。そのメンバーはカズマとめぐみんのほか、女神アクアがいる。
アクアは、そもそもカズマがこの世界に来るときに、いっしょに連れてきた。彼女は女神というだけあって、ステータスのポテンシャルは高い。しかし日常では、借金返済に必要な金を酒代に使ってしまうなど、駄女神らしいポンコツぶりを発揮している。
パーティにはこのほか、聖騎士(クルセイダー)ダクネスもいる。ただし今は、お見合いのため、一時的にここを離れ、実家に戻っている。
この臨時会議室には、カズマとアクア、めぐみんとゆんゆんの組が、テーブルで向かい合って座っている。カズマは冒険者風の服、アクアは僧侶風の服を着ていた。
「魔法使いなら、もうわたしがいるじゃないですかあーっ!」
さて、会議の議題は、ゆんゆんをパーティに入れるかどうか。これに、めぐみんは猛烈に反対していた。もし実現すれば、実質的にゆんゆんとの同棲生活になることが、目に見えているからだ。彼女に一日中つきまとわれてはかなわない。しかし、カズマが反論する。
「いやあだって、めぐみんは一日一発しか、魔法が撃てないじゃないかあー!」
「うんうん、そうね」
「そのせいで、カエルごときに苦戦するし、ダンジョン攻略クエストが難しくて、借金返済にも支障をきたしてるんだぞおー!」
「うんうん、そうね」
「だから、バランスよく魔法を覚えた、ゆんゆんをパーティに入れた方が安定するだろおー! 銃と大砲のようなもので、ふたりは強さの方向性がぜんぜん違う」
「うんうん、そうね」
アクアが相づちを打つ。夫婦のような息の合い方だ。なぜアクアも賛成するのか? ゆんゆんから贈られた高級酒が、彼女の足下に置いてあったからだ。それに、ゆんゆんの魔法でクエストをこなせば、一本どころではなくもっと酒が飲めるだろう。
「だって、ゆんゆんにセクハラされちゃって、お嫁に行けなくなっちゃう~」
めぐみんが声をあげる。と、その隣から彼女に抱きついている、ゆんゆんも負けじと発言した。
「いや、大丈夫です! めぐみんの処女は私が守りますから!」
「じゃあ、下手な男に引っかかるより、安心じゃないかあー」
「ちょ、なんですかー、その謎理論!」
「レズが嫌いな男はいません!」
「カズマさん、そんな無茶なー!」
グッジョブと親指を立てるカズマ。半泣きで抱きついてくる、ゆんゆんの顔をグイグイ押すめぐみん。一方、アクアとゆんゆんはニコニコしている。茶番の空気だ。
「じゃあお前ら、決を取るぞー」
「「賛成」」
「反対!」
「はい、二対一で決定」
「そんなあぁ~(泣)」
こうして、ゆんゆんはカズマのパーティに加入した。
その流れで、ゆんゆんはいっしょにカズマの屋敷にも住むことになった。このときにもめぐみんは反対していたが、今度は三対一で押し切られてしまう。
いっしょに屋敷に住めば、日課で爆裂魔法を撃つめぐみんを自分が連れて行く、とゆんゆんが提案した。これは、とくにカズマに対して説得力があった。
「ゆんゆんが連れて行ってくれるなら、オレは楽だからなあ」
「いやいや、動けないわたしがゆんゆんに、毎回いやらしい~ことされちゃいますぅ~」
「じゃあオレになら、いやらしい~ことされていいの?」
「ええーっ何ですか、その返し!? 意味分かんないんですけどぉ~」
一日中そんな会議をしていて日が暮れて。風呂に入る時間になったので、めぐみんは風呂に入りに来た。まず、脱衣所で魔女の衣装を脱ぐ。彼女は脱ぎながら、今日の話を思いだす。
めぐみんは、カズマの自分への態度が分からなくなった。カズマは自分のことが好きなのか? それとも、アクアかダクネスが好きなのか?
考えてるうちにめぐみんは、自分のカズマへの態度も分からなくなってきた。もしかりに、カズマが自分のことを好きで、だからゆんゆんと引き離すとしたら、それを受け入れるだろうか?
さらにゆんゆんは、ゆんゆんへの態度すら分からなくなってくる。もちろん、同性愛ではなかったが、憎めない娘だとは以前から思ってきた。好意を寄せるゆんゆんを、どこか本気で嫌がれないところがある。
めぐみんは脱ぎ終わって裸になったので、浴室に入った。そして、身体を洗おうとすると――。
「ガラガラッ」
「!?」
急に浴室の扉が開いて、背後からだれか入ってきた。
「めぐみん!」
「ゆんゆん!」
「背中流してあげるよ!」
「いやあーっ!」
「私たち女同士だし、別にいいでしょ」
「いやいや、ゆんゆんはわたしの身体目当てでしょ!」
「身体目当てじゃないわ」
「えっ……?」
「めぐみんが本当に好きなの! 本当は前からちょっと……」
「えっ、えっ……?」
あらためてゆんゆんに直球で迫られて、めぐみんはカアーッと赤面してしまう。一方でゆんゆんは、サクサクと洗う準備を進める。そして、石鹸で泡立てた手でめぐみんの身体をなでる。
「(ヌルヌル)」
「ひあっ、ちょっ、だめっ」
「今日もヌルヌルプレイで、感じさせてあ・げ・る♪」
「いや~ん……」
ゆんゆんは手の泡を自分の胸に付ける。自分の乳房を揉むようにして、泡まみれにしていく。そして、めぐみんの背中に両胸を押しつける。
「ゆんゆん、あ、当たってるよぉ」
「当ててんのよ」
めぐみんもゆんゆんも年頃の娘なので、水を弾くピチピチの肌をしている。美肌の上で泡の花が咲き乱れる。ゆんゆんは花を摘むようにその泡で遊ぶ。めぐみんは顔を赤らめ、目をつぶって、震えて耐えている。
「(ペロリ)」
「ひぁっ!」
とつぜん、めぐみんは奇声を上げて目を開く。ゆんゆんに耳を舐められた。たまらず、身体が熱くなってしまう。このまま身を任せていては、おかしくなってしまう。いや、いっそ、おかしくなってしまってもいいかも……?
「ガラガラッ」
「「!!」」
「ちょっと、めぐみん、長湯じゃないの~?」
服を着たままアクアが浴室に入ってきた。しかし、泡まみれのふたりの姿を見ると、目を丸くする。
「あ~、お邪魔でしたかあ~」
作り笑いを浮かべ、スーッと去っていくアクア。
「ちょ、アクア、助けてよ~」
めぐみんの声は届かない。
次の日、カズマの屋敷に来訪者が来た。出迎えるカズマとアクア。
「「……あなた、だれ?」」