世間一般的に天使と聞いて、殆どの人は背中に白い翼が生えていて、頭に光る輪っかが浮いた女性を思い浮べるだろう。
世間一般的に悪魔と聞いて、殆どの人は背中に蝙蝠の様な翼が生えていて、頭に角が生えた恐ろしい顔の種族を思い浮べるだろう。
天使は神の使いで、善なる存在で、悪魔とは悪の象徴である。
俺の貧相なおつむではゲームや漫画で得た知識だとその程度の認識しかなかった。
だが、俺は自分のその考えが間違っていたことを思い知った。
天使とは意外と悪魔的な考えを持っていて、悪魔は意外と真面目だった。
「あ、ヤベェ。もうこんな時間だ」
薄暗い部屋でパソコンを弄ってた手を止め、そう呟く。
「おい、ガヴ。もう七時だぞ。そろそろ学校に行く準備しないと」
俺は背後で人のベッドに横になり、同じネトゲをしてる少女、天真=ガヴリール=ホワイトに声を掛ける。
「学校~?いいよ、今日は休みだから」
「勝手に学校を休みにするな。とにかく、俺はもう落ちるからな」
そう言って、やっていたネトゲをログアウトし、パソコンの電源を落とす。
「てか、毎日毎日学校から帰ってくるたびに、俺の部屋に来てネトゲするの止めろよな」
「いいじゃん。直接会ってプレイする方が、連携取りやすいし、ここなら晩飯タダで食えるし」
「人の家で実家並にくつろいでるんじゃねぇよ」
そう言い、俺は鞄に教科書を詰めて、制服に手を伸ばす。
「着替えるから早く自分の部屋に帰れよ。そして、学校に行く準備しろ」
「ちぇ~、分かったよ」
そう言い、ガヴはしぶしぶとパソコンを手に取り、部屋を出て行く。
「…………アイツ、ちゃんと学校に行くのかな?」
制服に着替えつつ、そんな事を考える。
仕方ないし、家出る前にガヴの部屋に寄るか。
制服を着替え終え、簡単な朝食を作りて食べ終えると、家を出る。
俺が住んでるのはごく普通のアパートで、ガヴは俺の隣の部屋に住んでる。
「あれ?ヴィーネ?」
「あ、
「ああ、おはよう」
家を出ると、ガヴの家の前に俺とガヴの友人である少女、月乃瀬=ヴィネット=エイプリル、通称ヴィーネが居た。
「ガヴを連れに来たのか?」
「そんな所。だけど、さっきから全然反応なくて」
「アイツ……やっぱり学校に行く気ないな」
「仕方ないわね」
ヴィーネはそう言い、ガヴには内緒で作った合鍵を使い、扉を開ける。
玄関には山積みにされた雑誌が置かれ、廊下はゴミ袋で溢れていた。
そんな中を歩き、俺とヴィーネはリビングの扉を開ける。
そこでは、ガヴが床に横になりながらネトゲをやっていた。
やっぱり学校に行く気なかったか………
そんなガヴに呆れながら、ヴィーネは三叉槍を取り出し、LANケーブルをぶった切る。
「おおおおおおお!?なっ………な!」
「まったく、朝っぱらから何やってるのよ、ガヴ。だらしないわね、天使がそんなんじゃダメなんじゃない?」
「ちょ、ちょ、ちょっとヴィーネ、なんてことしてんの!?今、ヴァルハラ王国が危機的状況なんだよ!?」
ガヴはそう叫んで、ヴィーネに詰め寄る。
「は?ヴァルハラ?なんのこと?」
「ネトゲだよ。ヴァルハラって国を舞台にしたRPG」
「ソラの言う通り!今、ヴァルハラの民がモンスターに襲われて大変な事になってるんだから!天使ともあろう私が、民を見捨てることになるなんて……罰当たりもいいところだよ!」
「それ以前に、天使とあろう者が朝からネトゲやってるんじゃないわよ」
違うんだよ、ヴィーネ。
本当は昨日の夜からずっとだ。
「それより、学校に行く支度しなさいよ。今日も休むのはまずいんじゃない?」
「いいよ、学校とか今日休みだから」
ガヴはそう言って、新しいLANケーブルを繫ぎ、ネトゲを再開する。
「まったく、あんた最初に会った時」
『全ての方を幸せにするのが私の夢なんです!』
「って言ってたじゃない」
「はぁ?そんなこと知らないよ。人類とか勝手に滅んでくださいって感じ?」
(こいつ本当に同一人物か?)
(こんなのでも天使なんだな……)
そうガヴは天使なのだ。
別に、○○ちゃんマジ天使とかの意味ではなく、正真正銘の本当の天使だ。
最初であった時は、品行方正で金髪碧眼のサラサラのロングヘアーが似合う美少女だったのだが、今ではネトゲに嵌り、自堕落とした生活を送ってるダメな奴だ。
そして、俺の隣にいるヴィーネも人間ではない。
ヴィーネは悪魔だ。
だが、真面目で困っている人を見ると助けてしまうなど一般的イメージの悪魔からはほど遠い性格をしており、とてもいい奴だ。
本人は悪魔らしくないことを気にしているが………
お前ら二人とも、中身入れ替えるか、立場変わればいいんじゃね?
「私は下界に来て決めたことがあるの」
「何を?」
「私は天界には帰らない。下界でずっとこの生活を続けて行く」
「「はっ!?」」
「人間たちの娯楽に触れて気付いたんだ。展開に居た頃の優等生な私は偽りだった……本当の私は怠惰でぐーたらな救いようのない駄目天使、そう、駄天使だってことにね!」
言い切りやがった!
「そんなわけで、人間が幸せになろうが不幸になろうがご自由に。私は学校には行かないから」
「ここまでハッキリ言われると、清々しいわ」
「下界にもこういう人間居るから、あながち笑えないな。てか、ヴィーネ、そろそろ行かないと遅刻するぞ」
「そうね。じゃあ、私とソラは先に行くけど、ガヴも来なさいよ」
「気が向いたらねー」
そう言うガヴに背を向け、扉を開けようとすると、ヴィーネがガヴの方を振り返る。
「あー、そうそう。学校に来る来ないはガヴが決めることなんだけどさ、だらけ過ぎて天界に強制送還される………なんてことにならないようにね」
ヴィーネはそう言い残し、部屋を出て行く。
「じゃ、待ってるから来いよな」
俺もそう言い残し、ヴィーネの後を追う。
「アイツ来るかな?」
「どうかしらね。一応忠告はしといたけど、結局はガヴが決めることだし」
本当に悪魔らしくないよな………
「ところで、ヴィーネ。昨日の宿題で一つ分からない所があったんだけどさ」
「ん?何処?」
「ここなんだけどさ………」
ヴィーネに宿題の事を教えてもらったり、世間話をしているうちに学校に着いた。
教室に行くと、何故か誰かの机の周りに男子たちが集まって手を合わせていた。
どうしたんだ?
「あそこって、ガヴの席じゃない?」
「そう言えば……どうしたんだ?」
場所がガヴの席だったこともあり、気になり近づく。
机の上には女性物の下着が置いてあった。
あれってもしかしてガヴのパ「ちょっ!?ソラは見ちゃダメ!」
ヴィーネに思いっきり、顔を掴まれ後ろを向かされる。
「ぐおっ!?……く、首が!」
首を抑え、蹲ってる間にヴィーネはガヴの下着を回収していた。
その後、首の事はしっかり謝ってくれた。
やっぱ悪魔らしくないな………
「で、なにやってるのガヴ?」
「なんで学校にお前じゃなくて、下着が来てたんだ?」
放課後、ガヴの家に行くと、ガヴはベッドの上で、布団に包まっていた。
「まさか、下着だけ学校に来て、出席になると思ってたわけ?」
「思ってないわ!」
布団から顔を出し、ガヴが叫ぶ。
「だって行けるわけないじゃん!私のパンツが高校デビューしたんだよ!?ありえない!」
「まぁ可哀想だと思うけど……(自業自得だけど)」
「こうなったら……」
ベッドの上に立つと、ガヴはある物を取り出す。
「見た奴等を全員消すしかない!!」
それは角笛だった。
「ちょ、それ世界の終わりを告げるラッパでしょ!?」
「お前、パンツ見られたぐらいで世界を滅ぼすつもりか!?」
「それも止む無し!」
「止む無しじゃねぇーよ!」
「とりあえず、落ち着けー!!」
結局、ヴィーネと俺で必死に説得し、世界が滅亡することはなかった。
こうして今日も、俺、